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眼状紋と眼隠蔽模様

目は災いのもと?

ニホンザルは目が合うと攻撃してくるという。人間でも目が合うと「ガンをとばした」などと喧嘩になることがある。たぶん……ヒトを含む動物の多くで《眼》は気になるパーツ。じっと見つめられると緊張が走る──そんな傾向があるのではないかと思う。

生存競争の厳しい動物の世界では、多くのハンターが最終的には視覚を頼りに狩りをする。獲物を視野にとらえロックオンすることは攻撃の予備動作。狙われる側にとっては見つめられることは、銃口を向けられているのに等しい……《眼》を向けられると緊張が走るのには、ロックオンに対する潜在的な防衛本能のようなものが刺激されるからではないか……という気がしないでもない。
ことに外敵に狙われがちな小動物や鳥たちは、自分たちに向けられる《眼》には敏感なはずだ。《眼》を察知する能力は生存率を左右する──といってもいいかも知れない。
こうした《眼》に対して過敏に反応する鳥(など)が、昆虫の《目玉模様》を進化させてきた──というような記事を読んだ記憶がある(僕の解釈)。

鳥の空目が虫の目玉模様を発達させた?

昆虫には《眼状紋》と呼ばれる目玉模様を持つものが少なくない。




昆虫をエサとする鳥でも《眼状紋》をもつ虫は避ける傾向があるという。ヘビなど天敵の《眼》を恐れ回避するよう本能に深く刷り込まれたシステムが、あまりに感度が良いために昆虫の紋にも反応(誤作動?)してしまう──ということらしい。
昆虫にとって天敵であるはずの鳥が、虫の模様を《眼》と空目(誤認)し、ビビって避ける……すると、目玉模様を持った虫は生存率が高まる……その結果、昆虫の眼状紋はより強調され目立つ特徴として進化してきた……というワケである。

鳥と昆虫の眼状紋の関係を調べた人がいて、《大きな目玉模様には捕食者を驚かす効果があり、小さな目玉模様には攻撃をそこに向けさせる効果がある》と考えられているそうだ。
たしかに大きな眼状紋は我々人間が見てもハッとする。《眼》に敏感なはずの鳥が、大きな《ニセモノの目玉》に反応し、怯えるのも解る気がする。




一方、小さな(ニセの)目玉に対しては──敵(or獲物)を無力化するために眼のある頭部に攻撃をしかけるというのは理にかなっている。

ニセの眼で攻撃を誘導する

これについいては思い当たることがある。
最近見かけるアカシジミ・ウラナミアカシジミ・ミズイロオナガシジミなどには後翅に尾状突起と呼ばれる細い張り出しがあるのだが、その付近には黒い紋があって、これが《眼》に見えなくもない。


これらのチョウは葉に止まっているとき、後翅をこすりあわせるようにして尾状突起をまるで昆虫の触角のように動かすので、その近くにある紋はよけい《眼》らしく見える。


これを見た鳥がニセの触角(尾状突起)とニセの眼(紋)がある方を頭だと認識し、攻撃をしかけたくなったとしても不思議はない。そしてじっさい、このフェイク頭に攻撃を受けたと見られる個体もしばしば見かける。


だから、フェイク頭が敵の攻撃を(頭部から)そらすための陽動術として機能しているのは本当だろう。
尾状突起と小さな眼状紋には、天敵の攻撃を(本当の頭部より)ダメージの少ないフェイク部位に誘導するという働きがあるのだろうが、体の最後尾を頭だと思わせ、そこを狙わせることで、攻撃自体をかわしやすくするという効果も大きいはずだ。
クロスジホソサジヨコバイという昆虫も頭と反対側にフェイクの眼──眼状紋を持っている。天敵が眼状紋のある方が頭だと思って攻撃をしかけると、その予想を裏切る動きで(逆向きに)逃げることで生き延びるチャンスを増やしてきたのだろう。


頭と反対側を狙わせることができれば(その時点で頭部は攻撃圏外にあることになる)、頭を狙われたとき(頭が攻撃をかわせても胸・腹がひっかかる可能性がある)より逃げ延びられる確率は高まることは想像に難くない。
マエムキダマシ!?クロスジホソサジヨコバイは誰を騙すのか?

やっぱり眼は目立つのか

さて、捕食者(鳥)の淘汰圧が、昆虫の《ニセモノの眼(眼状紋)》を発達(選択進化)させてきたという理屈は解った。それでは《ホンモノの眼》の方はどうなっているのだろう?
そう考えて思い浮かぶのが、つぶらな眼がよく目立つシロコブゾウムシのエピソードだ。
以前、葉にとまったシロコブゾウムシをみつけ、カメラを近づけたときのこと。コロンと落ちて死んだフリをした。虫ではよくある行動だが、拾い上げてみてビックリした。《つぶらな眼を閉じている》ように見えたのだ。まぶたなどないはずの昆虫がどうして!?──とよく見ると、触角がちょうど眼を隠すように畳まれていた。
よく目立つ眼を隠しておいた方が天敵にみつかりにくいということで獲得した術なのだろう。そう解釈し感心した。


逆の言い方をすると、昆虫を狙う鳥(などの捕食者)は《眼に反応する》感度の良いサーチ・システムを持っている──だからこそ、それがシロコブゾウムシに眼を隠す術を獲得させた──とも言えるだろう。
《昆虫の眼状紋を発達させたのは、鳥などの捕食者だ》という説(?)は、シロコブゾウムシが眼を隠すことからも後押しできると感じた。

眼状紋と眼隠蔽模様

ところで、昆虫の眼状紋については捕食者──主に鳥との関係で語られる事が多いような気がするが……昆虫側の《ニセモノの眼(眼状紋)》の発達(進化)ばかりに関心が集中するのは、ちょっと片手落ちな感じがしないでもない。
本当に鳥(など)に《眼に過敏に(?)反応する》サーチ・システムがあるというなら、それが本来向けられるヘビなど──鳥を襲う捕食者との関係についても同時に考えてみる必要があるように思う。

鳥が《天敵の眼》に反応し、警戒する能力を高めてきたのであれば、鳥を補食するハンター側にも何らかの対策がなければ、狩りの成功率が下がってしまうはずで、それでは分が悪い。鳥が《眼サーチ能力》を高めたように捕食者側にもなんらかの対応(進化)があってしかるべきな気がする。
そう思ってあらためて考えてみると……例えばアオダイショウの顔には眼をつらぬくような黒い帯模様が走っている。この模様は《眼》を目立ちにくくするためのものではないのか? これが《眼に敏感な獲物(鳥たち)》に気づかれにくくするための対応(進化)だと考えるとつじつまは合う。




ハンターであるフェレットの顔にもくまどりもようがあるが(フェレットは家畜で隈取り模様のない個体もいるが、原種のケナガイタチには隈取りがある)、これも《眼を隠すための模様》──《眼状紋》ならぬ《眼隠紋》《眼隠蔽模様》と言えなくもない気がする。


もっともアオダイショウやフェレットの《眼隠蔽模様》は獲物に気づかれないためのものであると同時に彼らを狙う天敵(の眼サーチャー)から気づかれにくくするため……という意味合いもありそうだが……。

いずれにしても、ハンター側の《ホンモノの眼》は(狩りの成功率を高めるために?)目立たない方向に進化し、狙われる側の《ニセモノの眼(眼状紋)》は目立つように進化しているのだろうか……だとすれば《眼》のオリジナルとダミー(フェイク)は乖離の方向へ進化しているようにも思え、なんだかちょっとフシギな気がする。

ヒトの空目は人面虫を見せる

鳥などが《単なる模様(眼状紋)を眼と空目(誤認)してしまう》シムテムと、どのていど関係があるのかわからないが……ヒトにもランダムな景色の中に、あるはずのない顔を空目してしまうシステムがある──と僕は考えている(*)。心霊写真等やしばしばブログのネタにもしている空目シリーズも、この《強力高感度・顔読み取りシステム》の過剰反応の賜物だろうと考えている。一対の紋を見れば「眼」に見立ててしまいがちだし、3点あれば「目と口」として捉えがちになる。虫の模様を見て、そこに顔をイメージできるのはこのせいだと解釈している。




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コメント

No title
こんばんは・・・
「眼を察知する能力は生存率を左右する!」
この言葉に(要は、そう言うことか!)と感銘を受けました。

捕食者を驚かせるための(眼状紋)と、捕食者に見付からぬよう隠す(眼)との兼ね合いを、興味深く読ませて頂きました。

鳥を襲うヘビも居れば、猛禽類に襲われるヘビも居る・・・
どちらの場合も、見付かればその時点で(アウト!)
(生き延びるための眼状模様)に想いを馳せると、胸がワクワクと高揚致します・・・☆
No title
> 今日も、こっそり自然観察!さん

《眼状紋》や《擬態》は好奇心を刺激しますね。いったいどのように獲得(進化)したのだろうか……と想像すると、あれやこれや……脳内シミュレーションが活性化します。
襲う側と襲われる側の両者の関係の中で発達(進化)したものなのでしょうが……自然の奥深さに感慨のようなものを覚えます。

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