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オカモトトゲエダシャクの変形翅

ユニークな変形式の翅を持つ早春の蛾



昆虫の面白さ・興味について端的にいうなら「生命の多様性を実感できること」ではないかと思う。昆虫の世界はバラエティーに富んでいる。その中でも特にユニークな特徴をもった種類にはとりわけ「多様性」を感じ関心が向きがちだ。
外温性(変温動物)の昆虫なのにわざわざ冬に出現し、蛾でありながら♀は翅が退化して飛ぶことができないフユシャクも、そんな意味で興味をひかれるのだが……フユシャクがまだ活動しているこの時期、成虫が出現する蛾にオカモトトゲエダシャクがいる。フユシャク同様、年に一回発生するシャクガ科の蛾だが、オカモトトゲエダシャクはフユシャクではない。♀にも♂と同じ飛翔可能な翅があるからだ(ちなみに上の画像は♀)。




♂の触角はクシ状になっているので♀と区別がつく。♀が放つフェロモンを感知しやすいように触角の表面積を効率的に増やそうとするとこんな形になるのだろう。
オカモトトゲエダシャクのユニークなところは、とまったとき、扇子をたたむように翅をおりたたむことだ。僕が初めてこの成虫を見た時はその異様なスタイルに「翅が縮れた羽化不全の蛾!?」と思った。しかし、これがとまったときの通常の形で、飛ぶときにはもちろん翅は広げられる。


他のチョウやガの仲間と比べ、なんとユニークなスタイルなのだろう。この【意外性】の中には何か【必然性】が隠されているのではないだろうか?──ついそんなことを想像をしてしまう。
ユニークさ・多様性を成立させた理由についてあれこれ想いを巡らせる……想像力をかきたてられるというのも虫を見る楽しみの1つだと思う。


扇子を閉じるように・あるいはカーテンを寄せるように翅をたたむ──これにはどんな意味が考えられるだろう?

まず思いつくのは「表面積を小さくする」ためではないかということ。
例えば、太陽にあたる面積を大きくしたり小さくする事で体温調整をすることは可能だろう。翅の表面積を変えたり翅の(太陽に対する)角度を調節する事で、集熱あるいは放熱の効率を高めることは、理屈としては成立しうる。
しかし、実際にはオカモトトゲエダシャクは日向にいても日陰にいても同じような姿勢でいる。翅のたたみぐあいや角度を調整しているようには見えないから、「体温調節機能・説」としての役割りでたたまれているわけではないようだ。

他に表面積の関係で思いつくのは、風の抵抗──とまったときに強風でとばされたりしないように風を受ける翅の面積を少なくする対策として翅をたたんでいるのではないかという可能性。
しかしこれも、ほとんど風がない日も翅をたたんでいること、また風の抵抗を軽減するためだとすると、こんな角度で翅を保持するのは不自然(かえって抵抗をうける)なことを考えると、「風の抵抗を減らすため・説」も違う気がする。(※*)

それでは何かに擬態しているのだろうか?──とも考えてみたが、何に似せているのか、これといったものが思いつかない。トリバガという蛾の仲間がちょっと似た翅のたたみかたをするが──トリバガの方は枯れた植物片に見えなくもないし、とりあえず蛾には見えないから、隠蔽擬態の効果はあるのだろうと思う。しかし、オカモトトゲエダシャクの場合は……この止まり方はかえって目立ってしまう。


擬態ということでいえば……オカモトトゲエダシャクの幼虫に関しては「鳥の糞に擬態している」ように見える。



もし、体内に対天敵用の毒でもたくわえているのだとすれば、ユニークな姿で目立つことは「警告」的な意味合いをもつことになるのだろうが……そんなハナシは聞いたことが無い。
ひょっとすると、昆虫食の鳥等はこうした突起状構造の虫は敬遠しがちなのだろうか?
あれこれ考えてみたが、オカモトトゲエダシャクのユニークな変形翅の理由(生存率を高める効果)は見当がつかなかった。

あるいは、翅がたたまれるのはこの蛾の体の構造的な問題で「たまたま」こうなっただけなのだろうか? 他の蛾とはちょっと違うが……この止まり方になったところで、種が絶えるほどのデメリットにはならなかった……ただそれだけのことなのだろうか?

なんだかカッコ良いぞ!オカモトトゲエダシャク

謎の答はみつけられずにいるが……とりあえず、このユニークな姿が興味をひくのことには変わりがない。
ながめているうちにカッコ良いとさえ思えてしまう。









毎年この時期、オカモトトゲエダシャクをみると、きまって《ユニークな変形式の翅》の理由・役割りを考えてしまうのだが……今年も答は得られそうにない。


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コメント

No title
こんばんは!^^

『オカモトトゲエダシャク』の《ユニークな変形式の翅》の謎についての色々な解明は面白く読ませていただきました。。

この蛾の影は確かにジエェット戦闘機の様に見えますね^^
ウンウン…^^納得しながら見ています^^本当見方によっては「かっこ良いぞー!」って言いたくなるのも納得です。。

苦手な蛾ですが^^:
興味も湧いてきています。これからは窓ガラスや壁にも張り付いている蛾にも、知らん振りしては通り過ぎていましたが^^チョッと足を止め目を凝らしてみてみたいですね(苦笑)

楽しい記事を読ませていただきました。。

ナイス☆
No title
お付き合いいただきありがとうございます。
《ユニークな変形式の翅》には、きっと何か意味があるのではないか……とあれこれ想像をめぐらしているのですが、なかなかこれといった解釈がみつけられずにいます。
理由はわからないにしても……このスタイルはユニークですよね。
自然のつくりだすデザインには感心するばかりです。

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