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死んでもタマムシ


雑木林沿いの道に落ちてていたヤマトタマムシの死骸。構造色といわれる光の加減で変化するメタリックな輝きは、死んでも失われない(実物はこの画像よりもずっとキレイ)。だからこそヤマトタマムシの翅鞘は法隆寺の国宝「玉虫厨子(たまむしのずし)」の装飾にも用いられたのだろう。「玉虫厨子」では、2,500個体以上のヤマトタマムシの翅鞘(上翅)が使われていたそうだ(レプリカでは国宝の復元版で6,622枚/平成版で36.000枚の上翅を使用したものがある)。

【腐っても鯛(腐っても鯛が高級魚であることに変わりはない→すぐれた素質や価値を持っているものは、どんな悪い状態になっても、本来の価値を失わないたとえ)】ということわざがあるが……腐ってしまえばタイもダボハゼもいっしょだろう(価値が無くなる)。この意味するところを例えるならば、【死んでもタマムシ】──こちらの方がより適切な表現ではないだろうか。

美しい昆虫は少なくないが、そのすべてが死んだ後も美しさを保っていられるわけではない。
キンカメムシの仲間などにも光沢のある美しい種類がいるが、こちらは死ぬと色あせてしてまうらしい(標本をみると「残念」な状態に…)。

【キンカメムシかタマムシか】──生きて活躍しているときは美しいが死ぬと輝きを失ってしまうキンカメムシに対して、死んだあとも美しさを放ち続けるタマムシか──というような[たとえ]があっても良さそうな気がする。

画像のようにタマムシは死んでいても宝物のような輝きを放ち続ける。この美しさをとっておきたい──と思う人も多かったはずだ。
今なら(僕がしたように)携帯やカメラで画像をおさえ、こうして他の人に見せる事もできるが、そんなものが無かった時代は、ひろったタマムシを持ち帰る人も少なくなかったのではないか?
「タマムシを財布の中に入れておくとお金が貯まる」
「タマムシを長持(ながもち)に入れておくと着物が増える」
「箪笥の中に入れておくと虫がつかない」
などタマムシにまつわる俗信があるが、これは財布や長持・タンスなどで保存されることが多かった事からうまれたものではないだろうか……と、そんな気がしないでも無い。
タマムシは漢字で書くと「吉丁虫」──おめでたい虫として扱われていた。

おめでたい虫といえば……「コガネムシは 金持ちだ」の歌い出しで有名な童謡『黄金虫(こがねむし)』(野口雨情・作詞/中山晋平・作曲)──ここでうたわれている「コガネムシ」とはタマムシ(ヤマトタマムシ)のことだとする説がある。きらびやかで「お金が貯まる」などの俗信もあることから、イメージとしては納得できる。
ところが、この「コガネムシ」は「ゴキブリ(チャバネゴキブリ)」であるとする説がいろいろなメディアで紹介され、広く知られていたりする。

ゴキブリ説の根拠となったのは《【群馬県高崎地方】では「チャバネゴキブリ」を「黄金虫」と呼び、この虫がふえると財産家になるといわれていた》という話をもとに、だから同じ北関東出身の野口雨情の記した『黄金虫』は「チャバネゴキブリ」のことであろうという推論記事だったらしい。しかし、野口雨情が生まれ育ったのは【茨城県磯原町】(茨城県多賀郡北中郷村磯原=現在の北茨城市)であって、この周辺地域では「タマムシ」を「コガネムシ」と呼ぶと記した資料が確認されている(一方、この地方で「(チャバネ)ゴキブリ」を「コガネムシ」と呼んでいたという証拠は確認されなかったという)。
(*月刊むし2010年6月号【童謡"黄金蟲"はタマムシだ!?】枝 重夫)

黄金虫=ゴキブリ説を知ったときは大いに違和感を覚えたが、後にタマムシ説を知って、すんなり納得する事ができた。

ところで、童謡『黄金虫』は「コガネムシは 金持ちだ」のあとに「金蔵建てた 蔵建てた」と続く──このフレーズは一番だけでなく二番にもでてくる。
《金持ちのコガネムシ(タマムシ)が建てた【金蔵】》とは、いったいどんなものだったのだろう?
子どもの頃から漠然と感じていた疑問だったが……うたわれている【金蔵】とはタマムシの翅鞘が装飾された【玉虫厨子】のことのではないのか?──そう考えると納得できる気がする。
野口雨情はきらびやかな玉虫厨子をコガネムシ(タマムシ)の蔵に見立てるという着想を得てこの詞を書いたのではないかと僕は想像している。

ヤマトタマムシの美しい金属光沢を見ながら、これによって装飾が施された玉虫厨子を思い浮かべると、この想像も充分にあり得そうに思われてくる……。

●宝石昆虫タマムシ/玉虫の金蔵とは!?

https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-135.html

●童謡『黄金虫』の謎
https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-127.html

●童謡『黄金虫』の解釈をめぐって
https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-128.html

■昆虫などメニュー頁
https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-902.html

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コメント

No title
ゴキブリが卵嚢(卵のう)をつけたまま歩いているのを見たとき、これがパンパンになった財布だと思ってゴキブリ説に納得していたけど、金蔵が玉虫の厨子というところまでは思いつきませんでした。
No title
ちょいと奥まった場所で自動車修理工場をやっている知り合い事務所内のガラスショーケース内には年々コイツのコレクションが増えていっています。

ゴッキーと関連付けられていた説は初めて知りました。

「コガネムシ→金蔵:タマムシ→玉虫厨子」考えたことは1mmも無かったですので面白い解釈と感じております。
No title
らいちょうさん、124090_560TEさん、コメントありがとうございます。

コガネムシ=ゴキブリ説支持派の中にはゴキブリの卵鞘が財布に見える──という見方もありますね。コキブリ説は探すと色々でてくるし、僕も当初はこういった意見にゴキブリ説を信じていたのですが……「月刊むし」2010年6月号の記事(【童謡"黄金蟲"はタマムシだ!?】枝 重夫)を読んで、タマムシ説に考えを改めました。

玉虫厨子と(童謡『黄金虫』にでてくる)金蔵とを結びつけたのは僕ではなく、知人でした。その人は童謡『黄金虫』にでてくる「コガネムシ」をタマムシのことだと思っていたそうで、玉虫厨子の事を知ったときに、これが童謡にでてきた「金蔵」だと感じたそうです。
言われてみればたしかにコガネムシ=タマムシであったとすれば、イメージはピッタリ。そこで、「野口雨情は玉虫厨子を黄金虫(タマムシ)の金蔵に見立てるというアイディアを得てこの詞を描いたのではないか」と思い至ったわけです。
No title
はじめまして、オオクモヘリカメムシを検索していてたどり着きました。青リンゴ臭だそうで、今度嗅いでみます・・・が・・・臭そうですね。金蔵建てたのはタマムシかもしれないのですね。なるほどです。らいちょうさんこちらでもお会いできるとは、ちょっと嬉しかったです。またね
No title
オオクモヘリカメムシは「青リンゴ臭」のウワサでけっこう(?)知られているみたいですね。僕が嗅いだときは「オエ~」でしたが、人によってはそれっぽく感じられることがあるようで。
個人的にはキバラヘリカメムシの方が「青リンゴ」の香りに近い気がしています。

童謡『黄金虫』の金蔵はゴキブリが建てたと考えるよりタマムシが建てたものだと考えた方が合点が行くように思います。

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