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手すりの昆虫ドラマ

手すりは意外な虫見ポイント!?





【ゴマフカミキリ】の色や模様は《複雑な自然の景色》の中では目立たないが、《表面パターンが単純な人工構造物》にとまっていると見つけやすい。また小さな昆虫も自然物の中では輪郭をとらえるのが困難だが、手すりやフェンスなどの上では比較的目につきやすかったりする。






【ヨツボシチビヒラタカミキリ】はこのあたり(狭山丘陵)では、4月頃よく見かける(今年はGW明けにも見られた)。【ヨコヤマトラカミキリ】は5月にしばしば目にする。ヨコヤマトラカミキリはアリに擬態しているのではないかという説(?)があるが、たしかに遠目にはムネアカオオアリっぽく見える。白い模様がウエストラインをアリのように細く見せるデザインのように見えなくもない。他にもアリに擬態していると思われる虫は色々いるようだ。昆虫を食うハンターの間でもアリはスルーされがちなのだろう。

手すりは虫見ポイントとして便利(?)だし、飛ぶことができる昆虫にとっても活動温度確保するのに都合の良い場所なのかもしれない。手すりの接続部にある隙間は昆虫やヤモリなどの越冬場所にもなっている。

手すり遭難!?

しかし、飛ぶことのできない幼虫にとっては、この手すりは容易に脱出できない迷宮トラップでもある。
風で枝から落ちた虫、地表に産み落とされた卵から孵った幼虫、落ち葉の下で冬を越した幼虫などがエサとなる葉を求め樹上を目指すとき、誤って手すりに登ってしまうと迷路にはまり込む。


草食幼虫は葉(エサ)があるはずの枝先や梢──「上」をめざすが、のぼりつめてもそこに求めるものはない。擬木の切り株(?)にそってグルグル円を描くように歩き回らされる。少し戻って(下って)水平部分を隣に移動して「上」を目指しても同じことのくり返し……飛ぶことのできない幼虫がこの迷宮から逃れるのは難しい。
【ナナフシ(ナナフシモドキ)】は枝に擬態した昆虫だが、手すりにいたのではカムフラージュの効果はあまり期待できない。こうした虫にとって、手すりは危険なトラップといえる。



春の歩道ではよく見かける光景。蛾の幼虫が糸にぶら下がって降りてくる。蛾の幼虫が繭を作るさいに糸をはくことは知られているが、幼虫の糸にはクモのしおり糸のような役目もあるのだろうか。
鳥などの敵からのがれるために葉から落ちたのか、風に揺さぶられて枝から落ちたのか──忍者のようなワザでピンチを逃れたかのように見える(?)蛾の幼虫だが……1度手すりに脚をかけてしまうとやはり迷宮トラップをさまよい続けることになる。手すり遭難者(虫)には蛾や蝶の幼虫も多い。




【ウスタビガ】のように、こうした迷宮のトラップ──ガードレールの反射板・フェンス・手すりで遭難している幼虫は多い。
人工物のために遭難者(遭難虫?)が続出するのは、なんだか可哀想な気もするが、彼らもただそこでムダな死をとけるだけ──というわけでもないようだ。

手すり上のサバイバル

手すりの上で迷子になるのは草食幼虫だけではない。昆虫食の幼虫やクモもいる。
手すりの上部(僕はステージと呼んでいる)で待っていれば、意外に多くのエサが自分からやってくる。


見通しの良い手すりでは、鳥などの外的に狙われるリスクは増えそうな気がするが、エサのみつけやすさからすると、昆虫食の虫やクモにとっては良い猟場なのかもしれない。遭難した草食幼虫はこうした昆虫食の虫の生命を支えている。




ヨコヤマトラカミキリの《アリ擬態説》については首を傾げる人もいるかもしれない。しかし、クロヤマアリそっくりな【アリグモ】に関しては誰もがアリへの擬態を認めるところだろう。
蟻そっくりなアリグモ

同種間での餌の奪い合いに限らず、手すりの上ではハンター虫同士の食う・食われるの闘いもある。
それでは草食幼虫については、手すりに迷い込んだ時点で飢え死にするか他の虫の餌食になるか──死が確定しているのかと言えば、必ずしもそうではないのかもしれない。
蛾の幼虫が這い回ったあとにはクモのしおり糸のようなものが残る。これに風で飛ばされて来た葉や植物片がひっかかっているのはよく見る光景で、こうした《天からの贈り物》を食べている幼虫もやはりよく見られる。


2匹の幼虫が食べている葉は、糸が無ければこの場所にとどまっていられず落下しているはずだ。糸の主がこの幼虫たちかどうかはわからないが(クモのしおり糸の可能性もある)、蛾の幼虫が手すりの迷宮をムダに這い回っている(かのように見える)ときに、糸を残していることはある。これが落ちてくる餌(葉や植物片)を受け止めるトラップの役割をはたし得ることにちょっと驚いた。
もちろん蛾の幼虫が糸を吐く機能は、もともとこんな目的のためのものではないはずだし(葉から離れたとき戻るための道しるべ?)、虫が落ちてくる葉をキャッチすることを意図して行動しているとは思えない。単に偶然の副産物にすぎないのだろうが、手すりという非自然環境の中で、こんな意外な形でしおり糸(?)が役立つことがあるとは……。
もし手すり環境がずっと続いたとすれば、遠い未来に、やがて餌を確保する目的で糸を吐く蛾の幼虫が現れるかもしれない……そんな妄想が頭に浮かんだ。
しかし考えてみれば、クモが巣(糸のトラップ)を張るのも、もともとは《しおり糸》にひっかかる獲物がいて、そこから餌の確保用に機能が進化してきたものなのかもしれない。
だとすると、蛾の幼虫が餌確保に糸を使うようになる──というストーリーも、あながち荒唐無稽な妄想ではないかもしれない?

草食幼虫の中には蛹になる際に積極的に(?)手すりを利用するものもいる。水平にわたされた擬木の下側にぶら下がって蛹になるのだ。安定した水平面は足場として適しているのだろう。


手すり(擬木)の下で蛹になると天敵に見つかりやすいというデメリットがありそうな気もするので、これが生存率に有利に働くのかどうかは疑問だが……とりあえずここを利用するガやチョウはいる。

虫たちにとって、自然にはなかった手すりという人工物は、想定外の環境だったはずだ。ヒトにとってはただの手すりだが、虫たちにとっては迷宮トラップとなる巨大な迷惑装置──最初はそんなふうに思ったものだが、ここでの虫たちをみているうちに、どうもそう単純ではないらしいと考え直すようになった。
人工的環境変化に対して自然はもろいという印象があるが……手すりの上で繰り広げられているドラマの一端をかいま見て、自然の潜在的対応力・フレキシブルさ──みたいなものを、うっすらとながら感じた気がした。
自然の川を流れる水は自然の形をしているが、人工物のコップですくえば水はコップの形で安定する……生命の営みにとって「自然か人工か」はさして意味が無いのかもしれない。そこにある環境に適応したシステムが構築されて行く──それが自然というものなのかもしれない。



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コメント

No title
昆虫達も、色んな場所で生きるための工夫(??)をしているようですね^^
壮絶なバトルも勿論ですね^^:
そうして最後に勝ち残っては、自分たちの子孫繁栄に頑張っているのですね^^
私には、ただの虫でしか無かった昆虫達でしたが、わずかですがスルーしがちだった昆虫に目を見張っている自分がいることに、我ながら驚いています(^。^)

まだまだ、触ったり出来る虫は限られていますが、興味深く 眺めています^^:

有難うございます(#^.^#)♪
ポチ☆です!
No title
ふだん人があまり気にとめにいような虫たちの世界も、よく見ると色々あるんだなぁ……と感心します。
小さな虫が自然の奥深さを感じさせてくれることもあり、今回はてすりくくりでちょっと感じた事をまとめてみました。

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