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蟻そっくりなアリグモ

なんちゃってアリ!?

春、色々な虫が活動を始める頃になるとよくみられる、はぐれアリ!?




アリグモは巣を張らずに徘徊して獲物をとらえるハエトリグモの仲間で、大きさといい、色あいといい、スタイルといい──クロヤマアリにそっくり(とくに♀は)。
もちろんクモなので脚は8本──昆虫(6本)より多いわけだが、アリグモはこの2本の前脚をアリの触角のようにかざし、動きまでもアリに似せている。アリに擬態することで天敵から敬遠され、生存率が高まるという効果があるのだろう。




オスの大きな上顎(鋏角)にはカマキリの前脚のような牙状のトゲトゲがあって、強力な捕獲武器のように見える。
しかし♀の上顎(鋏角)は普通サイズ(?)──とくに大きいという印象は無い。それでも♀はちゃんと餌をつかまえて生きているわけだから、♂の巨大上顎(鋏角)はハンティング用の必須アイテムということでもないのだろう。
同じ種類で♂と♀でこれだけ違いがある(性的二型)というのは、繁殖に関連する理由からなのかもしれない。
上顎の大きな♂の方がモテるとか、♀をめぐる♂同士の争いで上顎が大きい方が優位に立てる──ということでもあるのだろうか?

アリそっくりな理由は?

クモでありながら、とにかくアリにそっくり。これだけ似ているのは、とても偶然とは思えない──きっと何か理由があってのことだろう。
攻撃的で強い昆虫であるハチやアリに姿を似せて身を守っている虫は他にもいる(ハチそっくりのカミキリハチを思わせる蛾)。アリグモもきっとそうなのだろう。巣をかまえず、歩き回って獲物をさがすアリグモは天敵の眼にもつきやすいはずだ。アリに化けていればスルーされる可能性が増える。こうしてアリグモは生存率を高めていると解釈するのが自然な気がする。





アリグモの擬態については、《アリに近づき補食するための偽装》という説もある(あった?)らしい。
しかし、Wikipedia【アリグモ】によれば、アリグモがアリを補食したという観察例はほとんどなく、むしろアリに出会うと逃げるという話もあるそうだ(※昆虫フォーラムでは、アリグモがアリを補食するのを見たことがあるという発言があった)。
確かに単にアリを捕らえるだけなら、視覚的な擬態をここまで発達させる必要があったのだろうか……という疑問が浮かばないでもない。視力も運動能力も高いハエトリグモの仲間なら、アリに見つかるより先にアリを発見し、偽装するまでもなくたやすく急襲をかけることができそうな気がする。

一方アリは一般的には視力はそれほど良くないそうだし、視覚ではなく嗅覚で仲間を識別しているというから、対アリ用の擬態だとすれば化学擬態を進化させる方が得策だろう(アリグモがニオイもアリに擬態しているのかどうかはわからないが)。
ハエトリグモ仲間には、主にアリを補食するアオオビハエトリというのがいるが、アリグモほど(ルックスは)アリに似てはいない。アリに極端に似ていなくてもアリをハンティングすることに支障はない──という実例だろう。



ということは、アリグモのアリそっくりな擬態は、やはり他の天敵(捕虫生物)から身を守るための対策に違いない……そう考えて某所に書き込みをしたところ、虫屋さんから「小昆虫を捕獲するためにアリに似た形態が有利だったのではないか」というコメントをいただいた。

アリに酷似していることで、ハンティングの成功率が上がる──というようなことは、あるのだろうか?
視力の弱いアリや動きの鈍いイモムシを襲うのであれば、なにもアリに擬態する必要も無さそうな気がするが……それでは視力が良くて動きのはやい獲物であった場合はどうか……。

例えば翅をもつ虫なら、天敵が攻撃圏内に入る前に飛んで逃げることが可能だ。素早いハエトリグモが近づいてくれば、すぐに飛翔体勢に入るだろう。
しかし、近づいてくるのがアリであったらどうだろう? 緊急性はハエトリグモよりも低い。もしかしたら比較的無防備になるかもしれない。
アリなら、かなり近づいてから逃げても間に合う──そう判断して油断する虫がいるとすれば、アリグモの擬態は有効だろう。
飛ぶ虫なら視力が良い連中も多いに違いない。眼の良い獲物に対してはルックスがアリに酷似している事は意味を持つはずだ。
アリに似ていることで獲物を油断させて近づき、ハンティングの成功率を高めている──そんな可能性も、あるいはあるのかもしれない。
いずれにしても、アリグモの擬態の完成度の高さには、きっと何らかの理由があるはずだ。



  しかし……、


※↑あくまでも想像

蟻えないほど似てる虫!? ※ホソヘリカメムシ幼虫&アリグモ♀

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コメント

No title
アリグモの存在を知らない人は、アリグモを見ていてもアリと認識しているのだろうと思います。
地面を這っているのはほとんどアリかもしれませんが、ちょっと高い所を単独で歩いているアリ(っぽい虫)はアリグモの可能性が高いかも。

それにしてもアリグモ♂の上顎の大きさには驚きますね。下唇に皿を入れるムルシ族を連想してしまいます(ムルシ族では皿を入れるのは女性だそうですが)。
No title
こんにちは
アリグモはまだ見たことがありません。
これからアリを見たら足の数とあごの形に注目します。
No title
ご無沙汰しております(^^)
>2本の前脚をアリの触角のようにかざし

これすごいですね~。学習したわけで無くて、本能的行動でこれですか~。

相変わらず、興味深いお話、ありがとうございます。
No title
>>isannkmwさん

上顎の大きな♂はまだ見分けやすいのですが、♀だとホントにアリそっくりですよ。
実際に動いている姿は画像以上にアリっぽいです。


>>やわらか☆不思議猫さん

ごぶさたしてます。freemlの方は使いにくくなって、今はもっぱらYahoo!ブログの方です。こちらは、つねにトップに表示されるTOPページを設定できるのが気に入っています(メニュー用に使えるので)。
1回の日記で書ける字数に制限があって、それが少なめなのがちょっと不満ですが……。

虫(昆虫やクモなど)は誰に教わったわけでもなく、複雑な行動をするのが不思議ですね。ハード(体のつくり)の多様性にも驚かされますがソフト(行動)の多様性がまたスゴイと思います。
No title
訪問頂きありがとうございます。虫に詳しいんですね~~~
また訪問させていただきます~~~
No title
虫に詳しいというわけではないのですが、おもしろいので見たり調べたりするのが好きなもので。
庭の蛹の方はルリタテハですね。
ちなみにツマグロヒョウモンの蛹にも金色の突起があります。
(キマダラカメムシの記事↓の中に画像があります)
http://blogs.yahoo.co.jp/ho4ta214/27573834.html
No title
初めまして、アリグモはよく見ますが、オスはこんなにイカツイ感じだったんですね~。今度よく見てみます。
No title
僕がアリグモを知ったのは、このいかついオスが目に止まったからでした。
最初はアリが何かをくわえて運んでいる──と思い、よく見ると……アリそっくりのクモ!?
あまりにもアリに似ているのでビックリし、メスはもっとアリに酷似しているのでまたビックリ!
おもしろいというか、フシギというか……あきれるくらい感心しました。
No title
初めまして

アリグモの雄こんな牙してたんですね。
知らなかっです。

私も擬態と言う点では、アリに近付く為というより、天敵の目をごまかす意味かな…と感じますが、イラストのようなのも有りですよね。

失礼しました。
No title
メスに比べてオスの上顎の大きさは尋常ではありませんね。
ハエトリグモの仲間にはオスとメスでデザインがずいぶん違って見える種類がいるようですが、オスとメスで「見た目の違い」がハッキリしているということは、それだけ眼がいいからだ(視覚にうったえる部分が進化した)──ということなんでしょうね。
なんで、こんなにアリに似ているのか、なんでオスとメスでこうも違うのか──想像力を刺激するクモですね。
No title
田舎に住んでいるので、たまに、家の中に迷い込んできます。アリだと思って近づくと動きがクモで、「あれっ」と思わされます。
No title
家の中でハエトリグモを見ることはたまにありますが、アリグモは見たことがありません。
動きでクモとわかるのはさすがですね。以前、虫屋さんが「動きでわかる」と言っていたことがありますが、僕はしっかり確認するまでなかなか見分けられません。
No title
アリグモの雄には大きな顎があるんですね。
私の頭の赤いクモで出っ歯のと言うタイトルで
アップしたクモもそうでした。
なるほど、ハエトリの仲間と納得する事が出来ました。
No title
頭の赤いクモの出っ歯、拝見しました。上顎(挟角)ですかね。
メキシコは日本以上に昆虫やクモのバリエーションも多いことと思います。
日本では出会う虫の種類もだんだん減りつつある季節です。
No title
はじめまして。
星谷仁ブログは昆虫好き、自然好き、ヒーロー好きな方々には絶賛されるのではないでしょうか。
たぶん天然の人達は大好きですな(笑)
私も好きな内容の掲載です。勉強になります!!
No title
コメント、ありがとうございます。
あれこれ統一感の無いテーマをアップしていますが……とりあえず、自分が面白いと思うこと、感心のあることをまとめておくつもりで作成しています。

ちなみにアナグマは僕が出会った時はキレイな写真がとれませんでした……。
ハクビンにも出会っているのですが、デジカメをとりだす間に逃げられてしまいました……。
No title
興味深く拝見させていただきました。

栃木県で教員をしている者です。

アリグモを使った教材の開発を考えているのですが、
このブログで紹介されているイラストや写真を利用させていただけないでしょうか。

連絡先が分からなかったため、コメントをさせていただきました。
メールアドレスを教えていただければ、正式にご挨拶させていただきたいと思っております。

ご検討のほど宜しくお願い致します。
No title
>>TYさま

コメントありがとうございます。

>アリグモを使った教材の開発を考えているのですが、
>このブログで紹介されているイラストや写真を
>利用させていただけないでしょうか。

教材関連に使っていただくぶんにはかまいません。

ところで、いただいたコメントは、こちらで「承認」すると、公開されます。
2つ目のコメントにはアドレスが記されてあったので、そのまま公開しててよいものかどうか、「承認」する前に確かめようと、そのアドレスにメールを送信してみたのですが、エラーとなったようです。

ということで、1つ目のコメントのみ「承認」してリコメしたしだいです。
No title
星谷 様

イラストおよび写真の使用に関して御快諾いただき
有難うございます。

またアドレスの公開に関して御配慮いただき有難うございます。
迷惑メールが送られてくる可能性があるため、アドレス付のコメントは非公開でお願いします。

アドレスが間違っていたようですみません...
No title
>>TYさま

わかりました。アドレス付きだったコメントは削除いたしました。

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