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小学生が大発見!?カブトムシ論文



日本の小学生がアメリカの学術誌で発表した大発見!?
日本の小学生がカブトムシの定説をくつがえす大発見をして、アメリカの学術誌に論文が掲載されたというニュースがあちこちで話題になっている。
論文の詳細や『Ecology』の掲載記事(リンク)は、こちら↓で確認できる。

●山口大学>外来植物がカブトムシの活動リズムを変化させる

『Ecology』誌に掲載された記事のタイトルは「An introduced host plant alters circadian activity patterns of a rhinoceros beetle(外来植物がカブトムシの概日活動パターンを変化させる)」で、論文の【発表のポイント】として次の3点があげられていた。
・シマトネリコという外来植物に集まるカブトムシは、夜だけでなく昼間も活動を続けることを明らかにした。
・カブトムシは夜行性であるというこれまでの常識を覆す発見である。
・小学生が自宅の庭木に来るカブトムシを毎日粘り強く調査し続けた成果である。

ネット上の関連記事をいくつか読んでみたが、かいつまんで意訳すると──《日本の小学生が「カブトムシは夜行性」という定説をくつがえす大発見をし、その研究論文がアメリカの専門誌に掲載され、専門家を驚かせている》というセンセーショナルな扱いで取り上げられている。中には【日本の小学生が大発見!外来植物によりカブトムシが「昼行性」になると明らかに】と夜行性から昼行性への逆転が確かめられたかのようなタイトルの記事も見られ、小学生の「大発見」「新発見」を賞讃している。

しかし、研究の内容を読んでみると、小学生が確かめたのは《自宅の庭の植えられたシマトネリコには夜行性とされるカブトムシが集まり、日中も活動している個体がいる》ということであって、これがタイトルやリードであおったほどの「大発見」だったのだろうか……と訝しいものを感じてしまった。
レポートのアピールに誇大な演出があったのではないか?
地道にデータを取り続けた小学生は立派だと思うが、これを伝える大人がニュースの価値を高めるために(?)ハナシを面白く盛って(誇張して)しまった印象がなくもない……。

記事を読んで僕がまず感じたのは、「観察ポイント(小学生の庭)で見られた現象(シマトネリコに来るカブトムシは日中も活動している)」は(その環境に由来する)特殊なケースなのか、それとも他の環境でも普遍的に見られる現象なのか──ということだっだ。別の場所のシマトネリコでも同様の現象が確かめられているのなら、シマトネリコに由来する現象であると考えてもよさそうだが、1つの庭の観察例だけでは、本当にシマトネリコが現象の原因なのかどうかまでは判断ができない。

また、もしシマトネリコ由来の現象であるとすると──同じ場所(同じ条件の環境)にシマトネリコとクヌギの両方があったとき、カブトムシはシマトネリコとクヌギでは違った行動を示すのただろうか? そんな疑問も思い浮かんだ。
シマトネリコでは日中集まる個体の方が多く、クヌギでは夜間に集まる個体の方が多いといった逆転現象が確認できたのであれば、「定説をくつがえす大発見」といえるのかもしれない。
しかし記事をよく読むと、観察されたシマトネリコでも、カブトムシが集まる活動のピークは深夜0時頃で、正午頃ではピーク時の半数になることが記されている。活動時間帯の昼夜逆転、もしくは拮抗が起こっているわけではないのだから、《カブトムシは夜行性》であることに変わりない。現象を適切に表現するなら《シマトネリコではカブトムシの夜行性が弱まる》程度のものだろう。《夜行性であるというこれまでの常識を覆す発見である》は〝盛り過ぎ(誇大)〟という印象を受けた。

小学生の研究は《夜行性のカブトムシが自宅のシマトネリコでは日中もよく見られる》という現象を具体的にデータをとって数値化して確かめたものだ。それを評価すべきだろう。無理矢理な解釈にこじつけて「小学生の大発見」を演出する〝盛り〟の部分は、よけいだった気がする。

僕の素人想像(仮説)だが──もし、同じ場所(同じ条件の環境)でシマトネリコとクヌギの両方があったとき、カブトムシが、より多くシマトネリコに集まるのであれば《カブトムシに対する誘引力はクヌギよりシマトネリコが強い》という可能性が考えられる。もしそうなら、日中、シマトネリコでカブトムシが(クヌギより)多く見られるという現象は、シマトネリコの誘引力がクヌギより強いことで、カブトムシの〝日中残留組〟もシマトネリコでより多く見られる──という解釈もできそうな気がする(可能性の1つとして)。
シマトネリコでの〝日中残留組〟の割合が、クヌギやコナラの在来ホストに比べて明からに増大しているというのであれば「外来植物がカブトムシの概日活動パターンを変化させた」という捉え方もできるのかもしれないが……これは《夜行性》という概日活動パターンの基本部分を変化させるほどのものではなく、誘引力(?)の差によって生じる閾値の変化という「程度の問題」と捉えるのが妥当な気もする。
「カブトムシの日中残留率がシマトネリコでは(在来ホストより)増える」という現象があったとしても、活動のピークが深夜にあることに変わりはないのだから《カブトムシは夜行性》という定説がひっくり返ったわけではない。日中活動するカブトムシがいたからといって、「カブトムシは夜行性であるというこれまでの常識を覆す発見」と見なすのは飛躍が過ぎるのではないか。

クヌギやコナラでも日中活動するカブトムシは普通に見られる
僕は小学生のときには夏になるとカブトムシを捕って遊んだが、小学生が虫捕りに出かける時間は日中(せいぜい早朝)であり、夜行性のカブトムシの活動ピーク時ではなかった。それでも樹液ポイントに来ているカブトムシはいたものだ。
01カブトムシ@クヌギ
02カブトムシ@コナラ
クヌギやコナラでも日中活動している〝日中残留組〟は珍しくないし、一部の〝日中残留組〟を見たからといってカブトムシの「夜行性」を疑うことは無かった。
《カブトムシは夜行性だが、昼間でも活動している個体はいる》というのが虫捕りをしていた子どもたちの常識だったように思う。
問題の小学生が観察した研究は、この〝日中残留組〟がシマトネリコでは(おそらくクヌギより)多い──という現象を示唆するものだった。この研究で集めたデータから、シマトネリコでもカブトムシの活動のピークは夜間であることに変わりがないことが判っているのだから、本来であれば《(シマトネリコでは)カブトムシの夜行性が弱まる》くらいが適切な表現だろう。
それをどうして《カブトムシは夜行性であるというこれまでの常識を覆す発見である》などと〝盛って〟しまったのか……。この誇大演出の部分は小学生の考えではなく、研究をサポートした小島渉氏の意向だろう。冒頭の動画の中で〝偉業を成し遂げた小学生〟は自分の研究について「シマトネリコにカブトムシがいるということは前から分っていて、それをデータをとって証明した感じだと思います」と謙虚に語っている。
今回のニュースが驚きを持って(驚きを盛って?)拡散したのは小島渉氏の演出部分が大きかったはずだ。
《カブトムシは夜行性であるというこれまでの常識を覆す発見である》という解説リードから、《夜行性である日本のカブトムシがシマトネリコという外来植物によって昼行性に転じるという驚くべき発見を日本の小学生がして、米学術誌に発表した》と理解(誤解)してしまった人は少なくないだろう。実際にこの話題を【日本の小学生が大発見!外来植物によりカブトムシが「昼行性」になると明らかに】というタイトルで報じているサイトもある。
こうした誤認(ミスリード?)を最初から狙っていたかどうかはわからないが、《(シマトネリコではカブトムシの)夜行性が弱まる》という適切な(?)表現より《夜行性であるというこれまでの常識を覆す発見》とプレゼンしたほうがキャッチが良いことは確かであり、小島氏がそれを意識しなかったわけはないと思う。
また、小学生を〝ファーストオーサー(第一著者)〟に担いでアメリカの専門誌で発表すれば、さらに注目が集まるということも意識していたはずだ。

プロの研究者というものは、自分が関わった研究の価値を高め、注目度を高めるために《わかりやすくインパクトのあるロジック》に誘導されやすいのだろうか……と訝ってしまう。

じつは、カブトムシに関するニュースで訝しい印象を持ったのはこれが初めてではない。
今回、小学生を第一著者に担いで論文発表をサポートしたカブトムシの専門家・小島渉氏だが……以前、カブトムシの角にはジレンマがあったとする学説を発表して話題になったことがある。そのニュースを知った時には、やはり《わかりやすくインパクトのあるロジック》に飛びついてしまったのではないかという疑問を感じた。
カブトムシの角のジレンマ説についてかいつまんで説明すると──夜行性であるタヌキの餌場で見つかるカブトムシの死骸(食い残し)を調べたたところ、ツノの長いカブトムシ♂の割合が多かったことから、《カブトムシ♂のツノは仲間内では長い方が有利だが、長いものほど天敵に狙われやすく(目立つことで捕食されやすく)なるジレンマを抱えている》と結論づけたものだ。ロジックとしては判りやすくて面白い。一般ウケしそうなキャッチのよいネタで、じっさい色々なところで話題になっていたが……しかし本当のところは、ツノの長さは捕食者(タヌキ)の捕食の選択を左右するものではなく、タヌキの食事の時間帯(カブトムシが盛んに活動する時間帯でもある)に餌場を占領しているカブトムシはツノの長いオスが多かった(餌場争いの勝ち組が残っていた)だけではないのか……僕にはそう思えてしかたがない。プロの研究者というのは〝ウケの良い、注目を浴びやすい新発見(解釈)〟に誘導されやすいのだろうか……などといぶかしく思っていたのだった。

プロの科学者のことはよくわからないが、生活していくためには(?)自分がかかわる研究に世間の注目を集める手腕も求められるのかもしれない。本来の科学的価値の誠実な追究よりも、世間の注目を集める手腕に長けた研究者の方が出世しやすいような仕組みでもあるのだろうか?
地道であるべき研究を派手に演出してアピールするのは、必要なことなのだろうか?──そんな疑問をあらためて感じてしまう記事でもあった。


《カブトムシの角は矛盾だった》のか?
『不思議だらけ カブトムシ図鑑』と《角のジレンマ》
昆虫の何に魅かれるのか?
昆虫など〜メニュー〜
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コメント

No title
その記事ちらっと見たような気がします。でもちょっと読んで意味ない記事だなと思ってさっさととスルーしたような気がします。
Re: No title
「カブトムシの定説をくつがえす大発見」かと思いきや……研究の内容を読んでみたら「そんなに大騒ぎすること?」──と感じた人も多かったろうと思います。
話題の中心は「小学生の大発見/米学術誌に認められた(掲載された)」という《科学的内容》からズレたものでした。
話題性を意識した演出であるなら、自分が関わる研究に注目を集めるために小学生の研究を利用したとも受け取られかねない──こうした話題作りの手法にひっかかるものを感じます。
No title
冷めた分析に脱帽。
全くその通りだと思います。
メデイアの取り上げ方も”激怒”や”号泣”などと同じよう類ですね。
Re: No title
分りやすくて面白い解釈(説)は、浸透&拡散しやすいですが、カマキリの(卵のうの高さによる)雪予想や、カブトムシの角のジレンマなど、おかしな話も少なからず……。よく知らない人にはストンと腑に落ちるのでしょうが、実際にフィールドに出て、カマキリの卵のうやカブトムシなどの現場を見ていると首を傾げたくなることがあります。

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