FC2ブログ

名作童話『びりっかすの子ねこ』感想

01びりっかすの子ねこ
『びりっかすの子ねこ』ディヤング・作/マクマラン・絵/中村妙子・訳/偕成社

ネコを素材にした作品は多い。好きなタイトルは色々思い浮かぶが、オススメの1冊をあげるとすれば──僕なら『びりっかすの子ねこ』(ディヤング・作/中村妙子・訳)だろう。納屋のすみで産まれ、親や兄弟とはぐれてしまった、ちっぽけな〝びりっかすの子ねこ〟が、色々な目にあいながら、とうとう〝自分の居場所〟をみつけるまでのハラハラ・ドキドキ&心温まる名作童話。読み終えた後には〝しあわせ〟とは何かを改めて考えてみたくなる──そんな1冊だ。

この作品の魅力を語るには、物語の概要を紹介する必要がある。以下、いわゆるネタバレとなるあらすじを記すので、そのつもりで──。

『びりっかすの子ねこ』のあらすじ
びりっかすの子ねこが産まれたのは、犬屋の納屋の片隅だった。納屋には犬が入ったケージがたくさん並び、エサも貯蔵されている。このエサをネズミから守る目的で納屋にはネコも1匹飼われていて──このネコが7匹の仔猫を出産したのだ。びりっかすの子ねこは6匹の兄弟たちが産まれたあと、おまけみたいに産まれた末っ子だった。
この末っ子は6匹の兄弟たちとのおちち争奪戦ではじき出され、いつもお腹をすかせていた。6匹の兄弟たちがかたまって温まっているときも、押し出されて寒い思いをしていた。
ある日、母猫は6匹の子どもたちをくわえて、順々に下におろした。吠える犬たちにならすために。しかし、母猫は末っ子を迎えには戻らなかった。びりっかすの子ねこは、痩せっぽちで足もよろよろしていたので、連れ出すのが無理だったのだ。
それでも、びりっかすの子ねこは6匹の兄弟たちのあとを追って、下におりようとする。そして、目が見えず耳もきこえなくなった寂しい老犬(犬屋が飼っていた犬)の上に落ちてしまう。
そのとき老犬はミルクを飲んでいた。びりっかすの子ねこが落ちてきたひょうしに、あごがミルクにつかり、驚いてミルク皿をひっくり返してしまう。何事かと老犬はあごを突き出し──そのミルクで濡れたあごがびりっかすの子ねこに触れた。びりっかすの子ねこは思いがけないミルクを懸命に舐め始める。老犬にはそれがここちよかった。眠くなってあごが下がってくると、びりっかすの子ねこは温かく感じ、老犬のあごの下で眠ってしまう。
ミルクと温もりをもたらした老犬をびりっかすの子ねこは慕い、老犬はびりっかすの子ねこと出逢ってさびしくなくなった。

老犬の飼い主(犬屋)は日に2回、あわただしくミルクを与えに来るのだが、そのとき老犬は寝ているので、そのあごの下に小さな猫がかくれていることに気がつかない。天気のよいある日、飼い主は日光浴をさせるために老犬のケージを納屋から出す。
目覚めて老犬のあごのしたから這い出したびりっかすの子ねこは、初めて見る明るく広い世界にビックリ。それまで納屋の中が全世界だった子ねこにとっては、見るもの聞こえるもの全てが新鮮で驚きに満ちていた。虫を追ったり枯れ草とじゃれたり、遊んでいるうちに日が暮れてしまう。
遊びつかれ、お腹をすかしたびりっかすの子ねこが戻ったとき、老犬のケージはすでに納屋にしまわれ、戸口は閉められていた。
帰る場所を失ったびりっかすの子ねこは、とほうにくれて鳴き続ける。しまいには声がかれてしまうが、閉ざされた戸は開かない。ひとりとり残され、あたりは暗くなっていくばかり。
納屋の並びには7軒の家が連なっていて、びりっかすの子ねこは、この1軒1軒を訪ね歩く。色々な犬や猫、人間と遭遇するが、どこにも身の置き場かはみつからない……そして、一晩の冒険の最後にたどり着いた7軒目の家は、犬屋の住居だった。その日は犬屋の誕生日で、そのタイミングで現われた仔猫を、犬屋はお祝いに来てくれたようだと歓迎。びりっかすの子ねこにもおくりものをと考える。そして彼が運んで来たケージに入っていたのは、あの目が見えない老犬だった。突然の再会をはたしたびりっかすの子ねこは老犬のあごの下にもぐり込む。ちっぽけな仔猫と老犬のうちとけたようすに何も知らなかった犬屋はびっくり。びりっかすの子ねこは、老犬とここで暮らすことになる。やっと自分の居場所をみつけ、自分が必要とする・そして自分を必要とする者と暮らすことがかなったのだ。それはびりっかすの子ねこのみならず、老犬、犬屋、それぞれにとってのしあわせでもあった。

『びりっかすの子ねこ』の魅力
びりっかすの子ねこの幼気さや、ささやかな幸せを手に入れることの尊さが胸を打つ──あらすじだけで、僕が感想を差し挟まなくても、本作の魅力・感動といったものがあるていど想像できるだろう。それだけ筋立がしっかりしているということだ。ハッピーエンドの意外性も、物語をたくさん読み込んだ読者であれば予想できるかもしれないが、ピュアな子どもの読者には新鮮に感じられるだろう。いずれにしても読者が望む結末なので、落ち着きのよい読後感が残るはずだ。

あらすじだけでも魅力が伝わる作品だが、物語を展開する文章が的確で魅力的だ。気取らない、わかりやすく簡潔な文章で、猫や犬のしぐさをとても自然に生き生きと描いている。実際に猫や犬を飼ったことがある人には、描かれた光景がリアルに目に浮かぶことだろう。このリアリティが、幼気なびりっかすの子ねこへの感情移入・共感を生み、ドラマへの没入感を深める。
ストーリーのおもしろさだけでなく、〝登場する動物たちの姿が目に浮かぶように生き生きと描かれている〟ことが本作の魅力だろう。

『びりっかすの子ねこ』は童話(児童文学)だが、〝子ども向け〟というより〝子どもから楽しめる(子どもにも読むことができる)小説〟といえる。訳者の中村妙子さんは巻末の【作者と作品について】の最後に、次のように記している。


なんべんもくりかえしよんで、おとなになっても、おもいだしてはひらいてみたくなる、そんな『びりっかすの子ねこ』を、だいじにしてくださいね。

大人になってから読み返しても感動できる──大人の鑑賞に堪える名作童話だと僕も思う。
古い作品(初版が1966年/2訂が1985年:2019年に23刷が出ている)だが、感動は色褪せない。今後も絶版になることなく、版を重ね、読み継がれていってほしい作品の1つだ。


※本ブログ内のネコがからんだ記事
愛しいまぼろし(読み切り短篇小説)
猫婆ちゃんのアルバイト(ショートショート)
禍まねく招き猫!?(ショートショート)
イタチmeets猫(実写4コマ&猫はなぜとぼけるのか?)
猫に小銭(猫にコイン)

エッセイ・雑記 〜メニュー〜
作品評・感想など(映画・本)〜目次〜
創作童話・ショートショート・漫画メニュー
◎チャンネルF+〜抜粋メニュー〜➡トップページ

スポンサーサイト



コメント


管理者のみに表示