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幻の東京産オオクワガタを捕った思い出

幻の東京産オオクワガタを捕った思い出
〜東京の北多摩北部エリアにもオオクワガタがいた話〜

僕は小学生だったとき、一度だけオオクワガタを捕ったことがある。それも東京都の北多摩北部エリアでのこと。1968年前後のことだったと思う。

僕は虫屋ではないけれど、小学生の頃は夏の遊びとしてカブトムシやクワガタを捕るのが楽しみの1つだった。当時は雑木林があちこちにあって、自転車で虫とりに出かけていた。その頃は今とは違って、クワガタの方がカブトムシより多かった。僕の中では体も大きく立派な角を持つカブトムシが昆虫の王様で、オス1匹がノコギリクワガタ♂3匹分に相当するくらいの価値があったように思う。とはいっても、カブトムシには無い大アゴを持つクワガタ♂も充分魅力的で、ノコギリクワガタやヒラタクワガタのオスは捕れると嬉しかった。
オオクワガタについては昆虫図鑑を見て知っている程度。図鑑では実際のボリューム感がいまひとつイメージできなかったためか、特段の関心は無かった。形だけを見比べた場合、オオクワガタよりもヒラタクワガタやノコギリクワガタの方がカッコイイ──カッコイイ種類が捕れるかどうかが関心事で、あえてオオクワガタを探してやろうという気持ちは起きなかった。だから〝遭遇〟は思いがけない出来事だった。

僕が通う小学校は、校庭の西側に西武線が斜めにかすめるように走っていて、校庭ぞいの細い道と線路にはさまれた狭い三角地帯──ここにわずかに雑木林が残っていた。しかしながら、ここにはいい木──樹液にあふれた大きなクヌギはなく、貧相なコナラがあるくらいで、ふだんはシロテンハナムグリかカナブンくらいしか見られない。わざわざ虫とりに訪れるようなポイントではなかった。
夏休みの直前だったろうか──僕はふとした気まぐれで、下校時にふだんは相手にしていなかった学校裏の三角地帯──〝しょぼい雑木林〟をのぞいてみることにした。
「コクワガタでもいたらめっけもん」くらいの軽い気持ちで立ち寄ってみたものの、わずかに樹液がにじむ貧相なコナラの幹には獲物はおらず、(いなくても)「まあ、そうだろうな」と落胆もしなかった。それでも来たついでに、コナラの根っこを掘ってみることにした。カブトムシやクワガタは日中、木の根元に潜っていることも多い。落ちていた棒切れをひろって根元の土を引っ掻いてみたところ──〝想定外の広い範囲で土が動いた〟のでギョッとした。土の下に何かいる──それはコクワガタよりずっと大きなもの……ノコギリクワガタやヒラタクワガタよりもデカい。何が該当するだろうと脳内検索したが思い当たらない。おそるおそる棒切れで〝それ〟をほじり出して、初めてオオクワガタのオスであったことを知った。
「図鑑に載っていたヤツ(オオクワガタ)だ!」「デカい!」「頭部の幅がやけに広い!」「なるほど、これがオオクワガタか!」と、とにかくそのボリューム・存在感に圧倒された。いったい実際には何センチあったのか……【ゴマダラカミキリに思う…】でも触れたが、子どもの頃に見た昆虫は、やたらとデカく感じられるものである。
今であればその巨大さから、外国産の種類、あるいは放虫(飼育個体)である可能性を考えてしまうところだが、当時は外国産のクワガタは植物防疫法で生体の輸入が禁止されていたからいるはずなどなく、今のようにオオクワガタの飼育は一般的ではなかった(飼育ノウハウがまだ完成されていなかった?)。1968年前後のことだから、野生の(東京都産の)オオクワガタであることに間違いはないだろう。
「すごいものが捕れた!」という興奮はあったが、嬉しいというより、思いがけない大物の収穫に戸惑ったのを覚えている。虫捕りの準備をしてきたわけではないので虫かごなどは用意しておらず、書道セットの木箱から硯などをとり出して、そこに入れて持ち帰った。
夏の間、オオクワガタはリンゴ箱に金網を張った容器に入れて飼っていた。その立派な姿を眺めながら、こんな大物が、よくあんなしょぼい場所(狭い林)で見つかったものだと、我ながら信じがたい思いだった。
オオクワガタと遭遇したのは、後にも先にもそれっきりだった。

そのしょぼい雑木林は緑地保護地域となって(台形となっているが)今でも残っている。電車に乗って母校の小学校が見えるところにさしかかると、ちっぽけな雑木林がちらりと視界を横切って行く。
「こんなところにオオクワガタがいたなんて……」と、小学生だったときのことを思いだし、なんとも不思議な気分に引き戻される。
しかし考えてみると、そこはもとからしょぼいスポットだったわけではなく、元々はもっと大きな雑木林だったのかもしれない。小学校の周辺には他にも民家の隙間にささやかな雑木林が点在していた。どれも本格的に虫とりに行く時はスルーするような小規模なものだったが……民家が建ち並ぶ以前は点在する雑木林は繋がっていて一帯は大きな雑木林だったのかもしれない。オオクワガタを見つけた三角地帯も、線路の反対側には雑木林が広がっていたから、線路や民家で分断される以前は、それなりのキャパシティーをもつ雑木林だったと考えられる。そんな環境ならオオクワガタが根付いていてもおかしくはないだろう。僕が遭遇したオオクワガタは、宅地開発で分断された〝しょぼいエリア〟に取り残されていた最後の末裔だったのかもしれない。

僕が虫屋だったら貴重な地元のオオクワガタ末裔(?)を標本にしたのだろうが……残念ながら、そうではないので標本は無い。
物的な証拠はないが、1968年前後には東京都の北多摩北部エリアにもオオクワガタがいたという証言を残しておいてもいいだろうと思い立って、こんな記事を投稿してみたしだい。


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コメント

No title
素敵な思い出ですね!
Re: No title
まさか住宅街で──下校途中の寄り道でオオクワガタに遭遇するとは思いもよりませんでした。当時も驚きましたが、今でも電車で小学校のそばを通ると、あの頃の記憶が蘇ります。

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