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2019年11月の記事 (1/1)

今季初フユシャク確認

今シーズン初のフユシャク(冬尺蛾)を確認
雪をかぶった富士山が見える狭山丘陵では、さほど落葉は進んでいない。葉をすっかり落とした木もあるが、まだ緑色の葉をつけたコナラやカエデもある。そんな中、今シーズンも初フユシャクを確認。今シーズン初のフユシャクはクロスジフユエダシャクだった。
今回の画像はないが……こんな蛾だということで昨年の画像から⬇。

01黒筋冬枝尺ペアA
02黒筋冬枝尺ベアB

今シーズン初のクロスジフユエダシャク:オス&メス&婚礼ダンス
昨日(11/29)、雑木林の縁で低く飛ぶクロスジフユエダシャクのオスを確認──これが今シーズン初のフユシャク(冬尺蛾)だった。とまりそうでとまらずに飛び続けるクロスジフユエダシャク♂──メスを探しているが見つからないときの飛び方だ。
おそらくオスはメスより早めに羽化しているのではないかと思うのだが、メスがいなければ飛ぶのを止めて待機状態に入る──まだ、とまっているオスが多いので(枯葉にまぎれて見つけにくいために)目にとまる個体が少ないのだろう。この日目にしたオスはこの1匹だけだった。
メスが現われれば飛翔するオスが目につくようになるはず──そう思って今日(11/30)、前日オスを確認した場所に行ってみると、10匹前後のオスが飛んでいた。そのうち数匹は比較的狭い範囲に集中しており、婚礼ダンス(はばたき歩行)をしているものもいる。メスが近くにいる──そう思って近づくと、低い植込みの枝にとまっているクロスジフユエダシャクのメスが目に入った。今シーズン初のフユシャク♀である。ふつうは落葉の葉の裏に隠れてオスを(フェロモンで)呼び寄せるのだが、まだ落葉が少ないせいもあってか、このメスはヒト(僕)の目にとまりやすい枝にとまっていた──そのおかげで、僕は婚礼ダンスでニオイをたぐって♀を探り当てるクロスジフユエダシャクのオスたちより早くメスを見つけることができた。ほどなく婚礼ダンスするオスの1匹がメスに到達し交尾が成立。今シーズン初の婚礼ダンス&ペアとなった。

この時期になると、期間限定のクロスジフユエダシャクの婚礼ダンスによるペアリングは見ておかないと……という気になるが、婚礼ダンスはいつでも簡単に見られるものでもない。オスは飛べども婚礼ダンスがなかなか始まらない……ということも少なくない。一方、たまたま通りかかった時に婚礼ダンスが始まることもある──昆虫観察は運任せのようなところがある。
それが、今シーズンは初フユシャク♀を確認したとたん、ほぼ待機時間0でに初婚礼ダンスによるペア成立を観察できたというラッキーな出だしとなった。夏休みの宿題が初日に片付いてしまったみたいな感じ?


まるで別種なフユシャクの♂と♀〜冬尺蛾記事一覧

フユシャクの婚礼ダンス
クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか
意外な翅の役割り!?クロスジフユエダシャク
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ムシヅカサシガメとハリサシガメ

養老孟司『虫の虫』特装版DVDの謎のカメムシ
01虫の虫DVD特装版
養老孟司・著『虫の虫』DVD付き特装版(廣済堂出版・刊)という本を買った。DVDなしバージョンもあるのだが、映像が見たかったので特装版の方。発行は2015年で、本の存在自体は以前から本屋の棚で見知っていたのだが、最近この本の特装版DVDのダイジェスト版をYouTubeで見つけ、にわかに興味が湧いてきた。というのも、このダイジェスト動画に気になる昆虫が出てきたからだ。

1分35秒頃に出てくるアリの死骸を背中に盛った捕食性カメムシが、僕の興味の対象・ハリサシガメの幼虫によく似ている。僕が知っている日本のハリサシガメは地上性で、アリの死骸だけでなくアリの捨てたゴミ(?)と思われるものや土粒を身にまとっている。しかし「ハリサシガメ」で画像検索すると、外国産のサシガメで葉や茎などにとまっている良く似た虫もヒットし、外国には樹上性のハリサシガメ(の仲間?)がいるのかと気になっていた。
それと良く似た虫が「養老先生が行くラオス昆虫採集記」ダイジェスト版にはチラッと映っていたので、がぜん興味を覚えた次第。
また、この「養老先生が行くラオス昆虫採集記」では虫屋さんの生態(?)も見られるようなので、そのことにも興味を持った。僕はテレビを離脱する前、昆虫に関する番組はよく見ていたが、虫にスポットをあてた番組はあったものの、虫屋の活動自体を記録した映像は意外に少なかった気がする。僕は虫屋ではないが、昆虫同様(?)謎めいた虫屋の生態には興味があった。そんなわけで、養老氏らの虫屋っぷりも見たくて『虫の虫』DVD付き特装版を購入した次第。


ラオスのムシヅカサシガメ!?
まず付属のDVD「養老先生が行くラオス昆虫採集記」(74分)から鑑賞。お目当てだったアリをデコったハリサシガメ幼虫風の昆虫は、4:20〜6:35にかけて紹介されていた。同行者の池田晴彦氏は「見たこと無いよ、こんなの」といい、養老氏も「すげ〜ヘンなの」と見つめていた。YouTubeのダイジェスト版では名前が示されていなかったが、DVD本編では「ムシヅカサシガメ(幼虫)」というスーパーが付けられていた。養老氏はナレーションで、名前が無いのでムシヅカサシガメとつけた──というようなことを言っていた。『虫の虫』(書籍)の方でも【ラオスのサシガメ】として「ムシヅカサシガメ(幼虫)」と紹介されている(P.3)。
ちなみに、日本のハリサシガメ幼虫はこんな姿↓。

02ハリサシガメ幼虫F1
03ハリサシガメ幼虫F2
特装版DVDでは見つけたムシヅカサシガメを飼育し羽化させた成虫とその羽化殻の映像も収録されていた。幼虫はハリサシガメより敏捷で、成虫のカラーリングも違うものの、ハリサシガメとよく似た印象を受けた。成虫は黒い体に白い双紋、小楯板の棘状突起と腿節が赤というきれいなサシガメだった。
「ムシヅカサシガメ」という初めて知った名前(仮名?)を足がかりに、何か新しい情報が得られないかと検索してみたのだが……何もヒットせず……。
「ハリサシガメ」でヒットする「ムシヅカサシガメ」と思われる画像をたどって、こんなブログ記事をみつけた↓。

タイで昆虫採集>背中にお荷物を背負ったサシガメ

ラオスの隣国タイで撮影されたサシガメのようだが、養老氏のいう「ムシヅカサシガメ」と同じ種類のように見える。草木上で暮らしているからだろう──地上性のハリサシガメ幼虫のような土粒はつけておらず、そのぶん(?)デコったアリの密度が高く感じられる。
DVD「養老先生が行くラオス昆虫採集記」を見た後に『虫の虫』本編(書籍)を読んだのだが、巻末に、付録DVDと書籍にでてくる昆虫の学名一覧があった。そこでムシヅカサシガメをみると斜体で「Inara alboguttata」とあった。学名で検索すると欧文のサイトがゾロゾロとヒットしたのであった。


「養老先生が行くラオス昆虫採集記」の感想
特装版DVDに話を戻すと……新種のクチブトゾウムシやカミキリを含め、色々珍しい昆虫が紹介されており、幻のチョウと呼ばれるテングアゲハの生態映像も貴重なものらしい。僕にとっては、ラオスの自然もさることながら、養老氏はじめとする虫屋仲間たちの楽しげ&真剣な虫屋っぷりもみどころだった。
夜の灯火採集(ライトトラップ)では、シーツに集まる昆虫よりも、耳につめものをし(虫の潜入を防ぐため?)、吸虫管をくわえて真剣にまなざしでシーツを睨みつける虫屋さんたちの方が見応えがあった。地球の生き物を調査に来た宇宙人がいたら、灯火に集まる虫の標本の隣にその虫に集まっていた虫屋さんたちの標本を並べたくなるに違いない。
DVDの最後には特典映像として、ラオスで採集した昆虫がどのように標本になるのかを紹介した「養老先生流 標本の作り方」(9分弱)が収録されている。標本作りをしない僕には、この行程の映像も興味深かった。昆虫関連の番組の中で虫屋がネットを振る(虫を採る)映像は時々見ることがあったが、標本づくりの映像はほとんど見たことがなかった気がする。


『虫の虫』の感想
本の方は「虫採りエッセイ集」ということになっていて、「虫を見る」と「ラオスで虫採り」の2つの章で構成されている。
前半の「虫を見る」では昆虫について虫屋がどんな見方をしているかについて記されているのだが、これは編集者から提案されたテーマで書かされた(?)ものらしい。じゃっかん抽象的で、DVDを観たあとに読むと、いささか面白味が薄い……。おそらく編集者から出された課題に対し、養老氏が普段感じたり考えたりしている雑多なコトの中から対応する内容を引っ張り出し、その方向で書いていけば何とかなる(まとめられる)と見当をつけて書き始めてみたものの……あまり話が広がらなかった……みたいな感じだったのではないか? 個人的には共感できる部分もあったが、「あたりまえのことを書くのに、いささか手間取った感じ」がしないでもない。虫屋でない僕には感覚的によくわからないところもあった。僕の個人的な好みは別にして……前半のエッセイは著者自身がノッて書いた文章ではなかったろうことが感じられる。
ところがしかし! 後半の「ラオスで虫採り」になると、がぜん文章が活き活きとしてくる。ノッて書いているのが伝わってくる。前半の抽象的なテーマから、体験的・具体的テーマになったこともあって、読者にも分かりやすいし、執筆している側も書きたいことがどんどん湧いてくる状態だったのだろう──その意欲が感じられる。しかし「活き活き」の最大の理由は「虫採り」に付随するエッセイだったからだろう。アシナガバチに刺されてアナフィラキシーを体験したというおそろしい話もあったが、虫屋っぷりが発揮されるエピソードでは何度か笑ってしまった。そんなエピソードをまとめた「実録・虫屋武勇伝」でも書いたら、かなり面白いのではあるまいか。


虫屋・養老孟司
僕が養老孟司という人を知ったのは確かNHKのテレビ番組だった。オーストラリアの昆虫を紹介するシーンで灯火にやってきたニジイロクワガタ(こんな虫がいることもその番組で初めて知った)などについて語っていたのが養老氏で、その姿が印象的だった。このときは昆虫学者だとばかり思っていて、本業が解剖学で脳の権威だと知ったのはしばらく後だった。NHKの『驚異の小宇宙 人体II 脳と心』では解説役で登場していたが、「こっちが本職のはずなのに、以前見た時より、なんだかテンションが低いな……」と感じながら観ていたのを覚えている。最初は体調でも悪いのだろうかなどと訝ったが、毎回なのでそうではないらしい。他にも脳に関する科学番組に解説者として出演している番組を見たことがあったが、やっぱりテンションは低め。これが養老孟司氏の普段のテンションなのだろうと思うようになった。
それが、「養老先生が行くラオス昆虫採集記」ではなんと活き活きしていたことか! 僕が初めて養老氏を見た時の「(昆虫を語る)あのテンション」だった。本業の仕事をしている時より、虫と向かっている時の方がテンションが高い──仕事的には脳の権威なのだろうが、本質的には根っからの虫屋なのであろう。
《水を得た魚》ならぬ《虫を得た養老孟司》──『虫の虫』DVD付き特装版はそれを実感させる映像&エッセイ集だった。


ハリサシガメぷちまとめ2
ハリサシガメ記事一覧


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汎用リモコンにイジェクトボタンがないのはなぜ?

01イジェクト謎

購入したマルチリモコンにイジェクトボタンボタンがない!?
僕は地デジ化(アナログ放送終了)を機にテレビから離脱している。現在の放送を受信する機器が無いのでテレビは何年も観ていない。しかし、過去に録画した番組や撮影した映像、DVD化された映画・ドラマなどは現在も鑑賞している。そのさいに使っているのは地デジ化前から利用しているテレビやHDD&DVDビデオレコーダー、ビデオ一体型DVDレコーダーなどだ。操作はリモコンで行うわけだが、使う頻度の高い操作ボタンはくたびれて反応が悪くなってきている。これまでにも市販の汎用リモコン(マルチリモコン)で代用してきたが、今回、DVD再生に使っているデッキのリモコンボタンの反応が悪くなってきていたので「学習AVリモコン」なるものを購入。主要メーカーのテレビ・チューナー・BD/DVD機器に対応した汎用リモコン(マルチリモコン)で、設定されている各社コードの中から使用中の機器メーカーを選択することでリモコンが使えるようになる。これでストレス無くリモコンが使えるようになった……と思いきや、ディスクを入れたり取り出したりするさいのイジェクトボタンがついていない!?
「まさか、BD/DVD機器でディスクを使用する際に必須の《イジェクト》ボタンがついてないはずはないだろう?」──そう思って何度もよ〜くリモコンを眺めてみるが……やっぱり見当たらない。
イジェクトボタンはデッキ本体にもついているし、ディスクを出し入れするためには本体に近づかなくてはならないわけだから、本来ならリモコン側で操作しなくてもよさそうなものだが……僕はふつう本体側のイジェクトボタンを使うことが無い。リモコン側のイジェクトボタンを押して、トレイが開閉する間にセットするディスクを準備したり、取り出すディスクしまうケースを準備するのが常だからだ。ディスクや収納ケースを準備して本体側のボタンを押し、トレイが開くのを待つのがわずらわしい。
それに、本体のイジェクトボタンが壊れら、(リモコンにボタンが無ければ)困るだろう?
デッキ本体の付属リモコンにはイジェクトボタンがあるのだから、汎用リモコン(マルチリモコン)にだってあってよいはずだ。僕の感覚では《イジェクト》はリモコンの中では使用頻度の高いボタンだ。そのためくたびれて反応が悪くなっている操作ボタンの1つだった。気なって他の汎用リモコン(マルチリモコン)を調べてみると、やはりイジェクトボタンはついていない……。
とりあえず購入した「学習AVリモコン」には、使用しているリモコンの信号をコピー(受信)して登録する「学習」機能があったので、これを使って使用リモコンのイジェクト信号を空きボタンに登録して、操作上の問題は解決した。

ただ、汎用リモコン(マルチリモコン)に《使用頻度が高いと思われるイジェクトボタンがなぜ無いのか?》という疑問が残る……。
各社の汎用リモコン(マルチリモコン)メーカーがそろって付け忘れたなどということは考えられないから、汎用リモコン(マルチリモコン)にイジェクトボタンがついていないことには、きっと何か理由があるのだろう。その理由について検索してみたが、解答を見つけることはできなかった。

ということで、勝手にあれこれと《理由》について想像してみた。
汎用リモコン(マルチリモコン)には対応する複数のメーカーのそれぞれの操作ボタンごとに個別の操作信号が設定されているはずだが、あるメーカーのイジェクトボタンに使われている操作信号が他社メーカーの操作に使われている信号とダブっていたりするのではなかろうか? 汎用リモコン(マルチリモコン)をあるメーカーに設定して使った場合、イジェクトボタンを押したら、別社の機器が誤作動してしまうようなことが起きたのでは都合が悪い。あるいは設定したメーカー機器を操作するために押したボタンで別社製品で再生中のデッキが排出されたりしても困る……。そうしたトラブルが発生しうることから「(イジェクトは本体で操作できるのだし)イジェクトボタンは汎用リモコン(マルチリモコン)から外された」──ということなのだろうか?
しかし、どうしてイジェクトボタンだけ……と首を傾げたくなる。
さらに考えてみると……汎用リモコン(マルチリモコン)では電源ボタン以外の操作ボタンはAV機器の電源が入っていなければ押しても作動しない。電源をオンにした(使用状態の)機器だけに働くようになっているから誤作動も起こりにくい。しかし、イジェクトボタンは電源が入っていない機器でも押せば作動し、同時に電源が入ってしまう。電源OFF状態にある機器にも働くという意味では誤作動が他の操作ボタンより起きやすいのかもしれない。
あるいは、汎用リモコン(マルチリモコン)が対応している主要メーカーでは操作信号がバッティングしていないことを確認しているが、対応していないメーカーではバッティングしている可能性が否定できない。そうした未確認の機器でイジェクトボタンによる誤作動で電源が入ってしまうといようなことが起こりうるとなれば問題だ。単一機種での操作を前提に作られた純正の付属リモコンではイジェクトボタンがあるのに、複数のメーカーにまたがった機器を対象に作られた汎用リモコン(マルチリモコン)では、誤作動リスクが否定できない……そのためにイジェクトボタンは外されたのではなかろうか……というのが、僕の想像。確信があるわけではなく、今のところ他の可能性が思い浮かばないというところ。

以前【謎のなんちゃって東屋!?】を見た時にも、「いったい何で?」とキツネにつままれたような気がしたのを思い出した。ときどき、日常の中にこういった不可解なコトがまぎれこんでいることに気づいて「?」となることがある。
気にとまらなれば何と言うことも無いのだが……一度「なんで?」と思ってしまうと、気になるものである。
むかし「地下鉄はどこから入れたか……なんてね」なんて漫才があったが、ちょっと、そんな心境?

※【追記:訂正】機種によっては汎用リモコンの再生ボタンを押すと再生機の電源が入ってしまう(OFFからONになる)ことが判明。イジェクトボタンだけがなぜ排除されているのかは謎のまま……。


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エサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし&亀虫臭

エサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし
先日、擬木で羽化中のエサキモンキツノカメムシを見つけた。羽化後の《抜け殻落とし》(羽化殻落とし)が観察できるチャンスと思い、(おどかさないように)3〜4mほど離れたところから、しばしウォッチング。そのもようを記しておく。カメラはなかったので今回の画像は無いが、エサキモンキツノカメムシがどんな昆虫で、どのような形で羽化をするのか──イメージが描けるように、過去の画像をあげておく。
01江崎紋黄角亀虫成虫A
02江崎紋黄角亀虫羽化14

羽化殻落とし(羽化後の抜け殻落とし)とカメムシ臭
今回(2019年11月15日@東京)観察した羽化殻落とし(羽化後の抜け殻落とし)行動は以下の通り。

【10:46】遊歩道の擬木で羽化中のエサキモンキツノカメムシを見つける。新成虫の体はほとんど露出し、腹端が抜け殻の中に残りぶら下がっている状態。見つけたときは脚はまだ見えず(抜けきっていないようだった)。

【11:05】新成虫は腹端で抜け殻にぶら下がり脚も6本とも抜けて擬木につかまる(上記羽化画像と同じ状態)。

【11:08】腹端を外し完全に抜け殻から離脱。頭部を上に向ける(まだ羽化殻とは向き合っていない)。

【11:20】新成虫が羽化殻の真下で羽化殻と向き合う(抜け殻落としは頭突きするように行われる)。

【11:28】新成虫は下から頭で羽化殻を押し始める(抜け殻落とし行動)。しかし、すぐわきを自転車が通りぬけ、動きを止める。

【11:30】新成虫が羽化殻(抜け殻)落とし行動を再開。羽化殻は落ちかけるも……すぐ下にひっかかって宙吊り状態となる(羽化殻は上向きになる)。

03羽化殻落とし図解E1
擬木にはクモのしおり糸や蛾の幼虫が徘徊して残した糸が残っており、意外に抜け殻がひっかかりやすい。

【11:31】3〜4m離れて観察していたのだが、突然、カメムシ臭を感じる。以前、エサキモンキツノカメムシやモンキツノカメムシに触れた時に発せられたニオイと同じ。近づいて確認してみると、やはり観察中の新成虫のものだった。カメムシの抜け殻落とし(脱皮殻落とし&羽化殻落とし)はこれまで何度か見てきたが、観察中にカメムシ臭を感じたのは初めてだった。

その後、1時間の間に何度か新成虫は抜け殻の横で向きを変えるが、動き始めると人や自転車の往来があって停止ということを繰り返す。

【12:31】新成虫が動きだし、2度目の羽化殻落とし行動。しかし羽化殻は数cmほど落ちたところでまたひっかかってしまう(羽化殻は下向きになる)。新成虫は落としたと認識したのか(?)上の方を向く。

04羽化殻落とし図解E2
【12:32】新成虫が真上を向く。
【12:37】羽化殻の方を向く(引っかかっていることとに気づいたか?)。
【12:38】新成虫は斜め上を向く。

【12:43】新成虫が羽化殻を向いて横向きになる。3度目の羽化殻落とし行動にでるかと思いきや、羽化殻から離れて擬木支柱を登っていく。なかなか落ちない羽化殻に負けて(?)自分が移動したのか?

【12:46】擬木支柱を登る。
【12:47】擬木支柱の上まで登りつめると──、
【12:48】支柱を下り始める。羽化殻から離れようと上へ移動を始めたが、それ以上進めないので、より遠くへ移動できる方向を模索?

【12:50】羽化殻の横を降りて下の横棒(平桁)を進む。
【12:53】羽化殻から160cmほど離れた場所で上を向いて静止。

05新成虫移動図解E3

──ということで、今回の観察では、羽化後のエサキモンキツノカメムシ新成虫は2度、羽化殻落とし行動を見せ、そのつと羽化殻は落ちかけるが、クモもしくはガの幼虫が残したと思われる糸にひっかかって宙吊りでとまってしまう。すると落ちない羽化殻を嫌ってか、新成虫は自分が移動して羽化殻から160cmほど離れた場所で静止(翌日おなじ場所にいた/体色はほとんと整っていた)。
羽化殻が落ちていれば、新成虫は移動せずにその場にとどまって体色が整うのを待ったのではないかと思う。
今回、興味深かったのは、1度目の羽化殻落としに失敗し、新成虫と羽化殻が並んでしまったときに、カメムシ臭が発せられたことだ。3〜4m離れたところにいた僕にもハッキリわかる強さ(濃度)だった。過去にエサキモンキツノカメムシやモンキツノカメムシに触れた時、何度か嗅いだニオイだが、敵に襲われるなど《身の危険を感じたとき》と同様の反応であったとすると、新成虫は、少し前まで自分の体だった羽化殻を《敵》もしくは《身の危険》と認識するのだろうか? そのために《攻撃(羽化殻落とし)》をしかけて追い出そうとしたり、それができないと自らが《逃亡》をはかる──という行動にでたのだろうか?
(一部の?)カメムシが抜け殻落としをするようになった原因行動(?)と何か関係があるのかもしれない……。



カメムシの奇行!?抜け殻落としプチまとめ ※抜け殻落とし&その意味

ハートフルな亀虫エサキモンキツノカメムシ
ハート亀虫羽化 見守るキリスト!? ※初めての抜け殻落とし
笑顔とハート(愛)のエサキモンキツノカメムシ
ツノカメムシの異種ペア
モンキツノカメムシとエサキモンキツノカメムシ他
エサキモンキツノカメムシの抜け殻落とし他 ※羽化殻落とし
ハート紋のモンキツノカメムシ&… ※紋型では見分けられない
ハートカメムシとブロークンハート亀虫!? ※ハート紋も色々
昆虫など〜メニュー〜
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まるで別種なフユシャクの♂と♀〜冬尺蛾記事一覧

まるで別種!? フユシャクのオスとメス
先日読んだ『不思議だらけ カブトムシ図鑑』(小島渉・著/彩図社)には《カブトムシほどオスとメスの区別が容易な昆虫は他にいないだろう(P.74)》という一節がある。しかし「オスとメスの違いっぷり(性的二型)」ということでいえば、フユシャク(冬尺蛾)は、カブトムシの上をいっている。カブトムシはオスの特徴であるツノをのぞけば、オスとメスは体つきも色合いも似ていて「同じ種類」もしくは「同じ仲間」っぽさを感じさせる。ところがフユシャクでは、オスは何の変哲もない普通のガなのだが……メスが変わっていて同じ種類どころかガにさえ見えないものも多い。カブトムシはオスのツノが発達しているが、フユシャクではメスの翅が退化している。そのため容姿がオスとメスでは、かけ離れたものになっているのだ。体色や模様がオスとメスで違う種類もいる。
今年もそろそろフユシャク(の成虫)が現れる時期。これまで狭山丘陵周辺で撮ったフユシャク画像から、オスとメスの「違いっぷり」をまとめてみた。

01黒筋冬枝尺♂♀F
02茶翅冬枝尺♂♀F
03一文字冬波尺♂♀F
04黒帯冬波尺♂♀F
05広翅冬枝尺♂♀F
06白斑冬枝尺♂♀F
07霜降棘枝尺♂♀F
08白棘枝尺♂♀F
09漣冬波尺♂♀F
10途切冬枝尺♂♀F
11縁黒棘枝尺♂♀F
12薄翅冬尺♂♀F
13黒点冬尺♂♀F
フユシャク(冬尺蛾)というのは、年に1度、冬に成虫が出現し、メスの翅が退化した特徴を持つシャクガ科の蛾の総称。フユシャク亜科・エダシャク亜科・ナミシャク亜科にまたがっている。オスかメスかは一見して容易に判断できるのに種類は識別するのが難しいものも少なからず──種の違いよりも雌雄の違いの方が、はるかにかけ離れているのがおもしろい。カブトムシは「ツノが進化した(特徴を持った)オス」に関心が向きがちだが、フユシャクでは「翅が退化した(特徴を持った)メス」の方にに関心が向いてしまう……。
オスとメスの違いっぷり(メスの容姿のユニークさ)もさることながら、僕が初めてこの虫を知ったときに驚いたのは、《昆虫なのに(わざわざ)冬に活動(繁殖)する》という生態や《ガなのにメスは(翅が退化しているため)飛ぶことができない》という意外性だった。


フユシャクの風変わりな生態
オスとのかけ離れた容姿を生み出している《メスは翅が退化して飛ぶことができない》ことと、《昆虫なのに冬に繁殖活動する》という二大ユニークな生態は、きっと無関係ではないだろう。昆虫は外温性(変温)動物なのだから、本来なら気温の低い冬は活動に向かないはずだ。実際、多くの昆虫は活動を休止した状態で冬越しをしている。それなのにどうしてわざわざそんな時期に活動するのだろう? おそらく、捕食者である他の外温性(変温)動物(昆虫・爬虫類・両生類)が活動していない「天敵不在の時期」だからだろう──当初はそんな生存戦略なのだろうという解釈で納得していた。そう考えると、天敵がいなければ「飛んで逃げる」必要も無い。メスは翅や飛ぶための筋肉にあてていた資源を卵の生産に回すことができる。繁殖のためにオスとメスの出会いは必要だが、オスに飛翔能力を残しておけばメス探しはできるから何とかなる。寒い冬に卵を抱えた身重のメスが飛ぶより、身軽なオスが飛ぶ方が容易いだろうから、繁殖相手をさがす役割り(飛翔担当)はオス──というのは納得できる。メスは飛翔能力を放棄し卵の生産性を上げることに専念し、繁殖相手を探して飛ぶのはオスにまかせるという役割り分担をしてことで、オスとメスの違いっぷり(性的二型)が顕著化したのだろう……フユシャクを知った当初は、そんなふうに想像していた。

冬でも存在する天敵
しかし、フユシャクを見ているうちに《天敵がいない冬に活動する》という解釈に疑問がわいてきた。フユシャクの多くは夜行性だが、もし天敵がいないのであれば、気温が高い日中に活動する種類がもっと多くても良さそうなものだ。また、オスとメスで翅の有無による体型の違いがあるのはわかるが……体色や模様に違いがあるのことの意味は何だろう?
オスは翅が落葉にとけこむ「隠蔽擬態」仕様に見える種類も多い。翅が退化したメスにはボディラインをかく乱するような模様(オスにはない)があったり、とまっている幹や樹皮上の地位類に溶け込むような色(オスとは違う)のものもいる……これは天敵の目をあざむくための進化なのではないか──つまり冬にも天敵が存在することをあらわしているのではないかと思うようになった。
実際、フユシャクの成虫がアリに襲撃されたりクモに食われたりしているのを見たこともある。冬とはいえ、捕食者が全くいなくなるわけではなく、天敵は存在しているようだ。

14黒筋冬枝尺蟻襲撃
15冬尺亜科♀クモ捕食
フユシャクの卵塊を物色する寄生蜂らしき虫を見たこともある。フユシャクの中には産卵した卵塊に腹端の毛を塗りつけてコーティングする種類もいるが、これは防霜(?)効果や物理的な保護などのほかに寄生蜂対策や(鳥などに対する)隠蔽効果としての役割りもはたしているのではないかと思えてくる。
また、フユシャクの中では小数派の昼行性であるクロスジフユエダシャクは、メスが落葉の下などに隠れていてオスをフェロモンで呼び込む。天敵がいなければ目立つところに出ていた方がオスに見つけてもらいやすそうなものたが(その方が繁殖に有利)……わざわざ隠れているのは、天敵がいるからではないか? 鳥類は冬場でも活動しているが、彼らにとってみればフユシャクはこの時期の数少ない食料源のひとつなのかもしれない。鳥による捕食圧があるために昼行性のクロスジフユエダシャクはメスが葉の下に隠れ、フユシャクも昼行性の種類が少ないのではないか……と考えるようになった。

昼行性のクロスジフユエダシャクはメスが落葉の下などに隠れているのに対し、オスはメスを探して落葉が積もった雑木林の林床を舞い飛ぶ。そのためオスばかりが目立つが、オスは落葉の上に降りると周囲に溶け込んで隠蔽能力が高い。これも鳥に狙われる機会が多いことで隠蔽擬態の精度を高めてきたのではなかろうか。とはいっても日中舞い飛ぶオスの方が被捕食リスクは高そうだ。しかし、それも理にかなった役割り分担なのだろう。種の存続にはメスの産む卵の数が多い方が良いわけだろうが、メスが捕食されれば、そのぶん卵の数は減ってしまう。オスならば少々食われても、他のオスがカバーすれば卵の生産量を確保できる。
クロスジフユエダシャクの繁殖行動(オスの婚礼ダンスによるメスの確保)を観察していると、落ち葉の下隠れたメスが発したフェロモンに反応し、あっという間にオスたちが集まってくる。この様子を見ているとオスが多少、捕食間引きされても繁殖にはさして影響がなさそうな気もする。

16黒筋冬枝尺♂4舞
17黒筋冬枝尺PRB2
メスでは種の存続のためにも自分の遺伝子を残すためにも卵を無事に産むことが最優先されるはずだ。オスが自分の遺伝子を多く残すためには多くのメスと交尾をする必要があるので、リスクをおってでもメス探しの役割りを担うというのは理にかなっているように思われる。
フユシャクをみていると、いろいろなことを想像する。


フユシャク(冬尺蛾)記事一覧
冬の間(晩秋〜初春)にかけて(成虫が)見られるフユシャクだが、種類によって発生時期にはズレがあって、それぞれの旬の時期は短かったりする。見られるうちに見ておかねばとそのつど記事にしてきたが、記事の数が増えて、何をどこに書いたか自分でもよくわからなくなってきている。
ということで、とりあえずフユシャク関連記事のタイトル一覧を作ってみることにした。


フユシャク:翅が退化した♀/翅でニオイを嗅ぐ♂
空目フユシャク
なんちゃってフユシャク?
ゼフィルス的フユシャク!?
ヒメシロモンドクガの冬尺化!?
フユシャクの婚礼ダンス
フユシャク探し
フユシャクの口
ユキヒョウ的フユシャク
フユシャク♀34匹/日
フユシャクの交尾・産卵・卵
雪豹フユシャクふたたび+産卵&卵
シロトゲエダシャク
トギレフユエダシャク&なんちゃってフユシャク:メスコバネマルハキバガ
この冬みられた冬尺蛾
どんより曇りはフユシャク日和
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『不思議だらけ カブトムシ図鑑』と《角のジレンマ》

01甲虫図鑑表紙
『不思議だらけ カブトムシ図鑑』(小島 渉・著/じゅえき太郎・絵/彩図社)という本を読んだ。5年ほど前に《カブトムシの角は、雄同士の闘争では長い方がよく、天敵から食われるのを避けるには短い方がよい、という深刻なジレンマを抱え込んでいることことがわかった》という研究が報じられ、疑問に感じていたことがあったのだが(*)、この《カブトムシの角のジレンマ》の研究者が、本書『不思議だらけ カブトムシ図鑑』の著者・小島渉氏である。最近、小島氏がカブトムシに関する本をいくつか上梓されていることを知って、《角のジレンマ》についての言及もあるのではないかと期待して最新刊(2019年7月発行)と思われる本書を入手したしだい。読書の動機が《カブトムシの角のジレンマ》についての興味(というより疑問)からだったので、その視点で少し感想を記してみたい。
02カブトムシ♂角比較

カブトムシの《角のジレンマ》について──、
まず、僕が感じた疑問について、どういう記事を読んでどう感じたか──その経緯を記しておく。
2014年3月に報じられた【カブトムシの角は矛盾だった】という記事から趣旨のロジックを構成する部分の抜粋してみると──⬇。


カブトムシの雄の角は、雄同士の闘争では長い方がよく、天敵から食われるのを避けるには短い方がよい、という深刻なジレンマを抱え込んでいることを、東京大学総合文化研究科の小島渉(こじま わたる)学振特別研究員らが見つけた。

研究グループは「カブトムシの角の進化に天敵がどう影響したかを探る手がかり」としている。

長い角をもつ雄は、雌やえさの獲得などの雄同士の闘争で力の強さをあらわす目印として知られている。その一方で、天敵に対して目立ちすぎるため、食べられやすくなって不利になる。角の長さを追求すれば、天敵に食べられやすいという矛盾があったといえる。

関東地方では、タヌキこそがカブトムシの天敵といえる。また、タヌキやハシブトガラスは、カブトムシの雌よりも雄を、さらに角の短い雄よりも角の長い雄を多く捕食していた。

(小島渉さんは)「タヌキは目が悪いが、角も入れれば体長が7センチもあるカブトムシの雄は目立つので、食べやすいのだろう」と話している。また石川幸男教授は「カブトムシの雄の角は長すぎても、短すぎても、都合が悪い。進化の過程で、ちょうど折り合いのよい長さになっているのだろう」と指摘している。


つまり、生存競争の中で有利と考えられていたオスの特徴である「長いツノ」が、目立つことで天敵にみつかりやすくなり、捕食圧を高める(生存競争に不利となる?)側面も持っていた──という意外性のある発見である。カブトムシのユニークなツノがどのように進化してきたのかというのは、興味深いテーマだ。キャッチの良い《角のジレンマ》は複数のメディアで報じられていた。

さて、《(捕食者が)カブトムシの雌よりも雄を、さらに角の短い雄よりも角の長い雄を多く捕食していた》ことがなぜ判ったのかというと、《カブトムシの活動がピークとなる深夜の午前0~2時ごろにはタヌキが樹液を訪れて食べていた》ことをつきとめ、その残骸(タヌキはカブトムシの中胸〜腹を食い、上半身を残す)を調べた結果、トラップで採集したカブトムシの性比やツノの長さに比べて、オスが多く、ツノの長いオスの割合が多いことが確認されたからだという。この調査結果から《長いツノを持つオスは天敵に対して目立ちすぎるため、食べられやすくなって不利になる》という結論に至ったらしい。
僕はこの解釈に疑問を感じた。タヌキが樹液ポイントに現われる午前0~2時ごろといえば、カブトムシの活動が盛んな時間帯で樹液ポイントには多くのカブトムシが集中する。そのため餌場争いに勝ち残った(ケンカに強い)ツノの長いオスが多く居座っているいるはずで、タヌキが食ったカブトムシにツノの長いオスが多かったという結果は当然だろう。
また、目が悪いタヌキが、深夜の雑木林の暗がりで、カブトムシのツノのわずかな長さの差で獲物を識別(?)しているというのもおかしな話だ。僕が飼っていたフェレットが、死角にかくれたカブトムシや土にもぐって見えなかったカブトムシを嗅覚で探り出したように(*)、タヌキだって、そこにカブトムシがいれば(ツノがあろうがなかろうが)嗅覚をたよりに獲物をみつけだすことができるはずだ。嗅覚に劣るヒトでも充分に感じるカブトムシのニオイをイヌ科のタヌキが見落とすはずがない。
だから「ツノの長いオスがタヌキに見つかりやすい」という解釈は納得できない──僕はそう思っていた。しかし、《カブトムシの角のジレンマ》はNHKのニュースでも報じられ、Wikipedia【カブトムシ】にも《角は長いほどオス同士の闘争の際に有利になる反面、タヌキやハシブトガラスといった天敵に捕食されるのを避けるには短い方が有利であることが研究で明らかになっている》と解説されている。

《天敵に捕食されるのを避けるには短い方が有利》という解釈は強引すぎる……僕にはそう思えてならないのだが、僕が読んだニュース記事は、研究論文そのもの(発表されたのは日本動物学会英文誌3月号)ではない。この研究にたずさわった小島氏らは、どうして、こんな解釈に至ったのだろう?──その点も不思議に感じていた。
そして先日、公益社団法人日本動物学会のトピックスで、この研究のことだと思われる記事を見つけた。【強いオスは狙われる?:カブトムシにおける性およびサイズ依存的な捕食圧】という日本語タイトルがつけられていた。この論文(Rhinoceros Beetles Suffer Male-Biased Predation by Mammalian and Avian Predators)は《筆者たちは、日本に生息するカブトムシについて、野外調査と野外実験を実施することによって、オスの方が捕食圧が高いことを示すデータを報告した。また、主要な捕食者も同定した。これは、装飾を持つオスの方が生存にとって不利であるという仮説と合致しており、日本人にとって親しみ深いカブトムシの角の進化機構を理解する上での貴重な基盤情報である》として、日本動物学会の2015年度論文賞を受賞していた。
しかし、この記事を読んでみると、僕が当初知ったニュース記事とはニュアンスが微妙に(?)違っていた。【カブトムシの角は矛盾だった】という報道記事はタイトルにあるようにカブトムシの「ツノ」のジレンマが核心だった。ところが、【強いオスは狙われる?:カブトムシにおける性およびサイズ依存的な捕食圧】では、ツノのジレンマがでてこない。報道記事では「ツノの長さ」が問題にされていたのに、日本動物学会トピックスの記事では、これが「体の大きさ」に置き換わって(?)いて、微妙に論点がずらされている感じがする。「長いツノは目立つことで最大の捕食者であるタヌキに発見されやすくなる(ことで捕食圧が高まる)」としていた部分は、「タヌキが捕食した残骸には大型オスが多かった」ということになっており(大型♂の割合が多かったのはタヌキによる選択と特定せず、その時間帯に大型♂が多かったという可能性を許容)、その上で(理由の如何を問わず?)《大きく角の長いオスに対する高い捕食圧は性淘汰圧と拮抗的にはたらくことで、オスの性的な形質の進化に影響を及ぼす可能性があります》と、まとめている。《オスの性的な形質の進化》という表現に《ツノのジレンマ》のなごり(?)を感じるが、【カブトムシの角は矛盾だった】の報道後に、解釈の不備に気づいて、とりつくろった印象がなくもない?
それとも、論文の内容は最初からこの通りで、【カブトムシの角は矛盾だった】で報じられた《ツノのジレンマ》は報道メディア側の誤認だったのだろうか?
このあたりに釈然としないものを感じて記したのが前の記事【《カブトムシの角は矛盾だった》のか?】だった。その後、小島氏がカブトムシに関する本をいくつか上梓していることを知って、この件に言及があるのかどうか──読んでみたくなったわけである。


『不思議だらけ カブトムシ図鑑』に書かれていたこと
この本が出版されたのは今年(2019年)の7月。《カブトムシのツノのジレンマ》のニュースが報じられて5年ほど経っているわけだが……捕食されたカブトムシの残骸から確かめられた(?)《ツノのジレンマ》に該当する部分はあっさりめの扱いだった。『不思議だらけ カブトムシ図鑑』では「第2章 オスはなぜ角を持つ?」>「14 小型カブトムシの生き残り戦略」の中の【目立たないからこそ生き残れる】という小見出しの部分で出てくる。

拾い集めた残骸と、まわりで採集した生きている個体の形態を比較すれば、捕食に遭いやすい個体の特徴が分かるのではないかと、筆者らは考えた。(P.102)

捕食されたカブトムシの残骸を調べて、何か偏りがあれば、それが捕食に遭いやすい特徴だと考えたくなるのは理解できる。
──ということで、比較用にトラップで《生きている個体》を採集しているのだが……トラップを採用した理由について、こんな記述がある⬇。


樹液場などの餌場で採集すると、何時頃に採集するかで小型オス、大型オスやメスの割合が変わってしまう恐れがあるが、トラップを使えば、一度入った個体は二度と外に出られないため、その雑木林に生息する、小型オス、大型オス、メスの割合を高い精度で推定できるのである。(P.102)

樹液ポイントに集まるカブトムシの性比や小型♂・大型♂の割合が「時間帯」で変わってしまうことを、本書ではちゃんと記してあった。
捕食のために樹液ポイントを訪れるタヌキの時間帯については──、


 タヌキがやってくるのは、たいてい、カブトムシの活動がピークとなる深夜0〜3時ごろだった。また、夏の間に限り、タヌキは毎晩のように樹液へ通ってきていることも分かり、カブトムシを相当気に入っているようだった。(P.63)

と記されており、その時間帯に現れるカブトムシの特徴についても記述がある。

カブトムシの大型のオスと小型のオスでは樹液場にやってくる時間が違うことが知られている。大型のオスは深夜0時から3時ごろに樹液場での個体数が最大となる。ちょうどメスの活動が最も盛んな時間帯であり、大型のオスもそれに合わせているようだ。
 一方、小型オスはその少し前、22時から0時ごろに樹液場での個体数が最大となる。これは、大型オスとの戦いを避けるための行動であると解釈できる。小型オスが現れる時間帯はメスもまだ少ないが、大型オスとけんかになるよりはマシなのである。(P.100)


つまり、本書を読む限り、タヌキが樹液ポイントを訪れる深夜0~3時頃にツノの長い大型オスが多かったのは当然ということになり、僕が当初感じた疑問に合致する。タヌキによる捕食残骸に大型のオスが多かったのはツノの長さに起因するもの(長い角が天敵に目立ちすぎるため)ではなく、狩りの時間帯によるものだと解釈をするのが妥当のように思われる……のだが、本書には次のような可能性が挙げられていた。

 なぜ大型のオスが食べられやすいかについては不明だが、いくつかの可能性が考えられる。
 まずは何といっても、目立つということが挙げられる。特にタヌキは目がかなり悪く、撮影された映像からも、探るようにしてカブトムシを見つけ出している様子が見て取れた。そのような捕食者にとっては、オスの持つ大きな角はいい〝目印〟になってしまうかもしれない。
 また、大型オスはメスを探して樹液場の周りを徘徊する習性があるが、このような行動も捕食者の目に留まりやすい可能性がある。
 他の可能性として、大型オスは樹液場に長時間居座るから、捕食に遭う確率が高くなるということも考えられる。小型オスは樹液場の間を飛び回っている時間が相対的に長いのであれば、樹液場で捕食に遭う確率は下がるはずである。
 理由については今後さらなる研究が必要だが、小型のオスは大型のオスよりも結果的に捕食に遭いづらくなるということは間違いなさそうだ。(P.104〜P.105)


《大型オスは樹液場に長時間居座るから、捕食に遭う確率が高くなるということも考えられる》という妥当な解釈を加えつつ、《まずは何といっても、目立つということが挙げられる》として《(捕食者にとって)オスの持つ大きな角はいい〝目印〟になってしまうかもしれない》という解釈を真っ先に挙げているのが不可解だ。《特にタヌキは目がかなり悪く、撮影された映像からも、探るようにしてカブトムシを見つけ出している様子が見て取れた》とあるが、目が悪いタヌキが深夜の雑木林でカブトムシのツノを〝目印〟にしているとは考えにくい。嗅覚をたよりに餌を探し当てているはずで、この嗅ぎ当てているようすが《探るようにしてカブトムシを見つけ出している様子》に見えたのだろう。《長いツノが深夜の雑木林で視覚的〝目印〟になるかもしれない》という解釈には無理を感じる。しかし、この可能性を否定してしまうと、当初話題になった《ツノのジレンマ》のロジックが壊れてしまうことになる。それで論文発表当時との整合性を保つために「長い角が〝目印〟となって捕食圧が高まる」という可能性を残しておきたかったのではないか? 普通に考えれば、角の長さのわずかな差が、深夜の雑木林で、目の悪いタヌキの〝目印〟になるなどとは、とても思えないが(そんな〝目印〟など無くても、そこにカブトムシがいればタヌキは嗅覚で嗅ぎ当てられるはず)、それでも「角の長さの差は〝目印〟にならないことが科学的に証明されない限り」は《可能性》として残しておけるという理屈なのだろうか?

《角のジレンマ》が報道されたときには《カブトムシの角の進化に天敵がどう影響したかを探る手がかり》と自賛し、日本動物学会の2015年度論文賞の受賞理由でも《大きく角の長いオスに対する高い捕食圧は性淘汰圧と拮抗的にはたらくことで、オスの性的な形質の進化に影響を及ぼす可能性があります》と研究の意義が強調されていたが、『不思議だらけ カブトムシ図鑑』では、そうした進化レベルのアピールはなりをひそめ、《小型のオスでも得をすることがある(タヌキに食べられる可能性が大型のオスに比べると小さい)》という個体レベルの話にとどまっている。

本書では《理由については今後さらなる研究が必要だが、小型のオスは大型のオスよりも結果的に捕食に遭いづらくなるということは間違いなさそうだ》という結論で捕食圧のツノ進化への影響を示唆しているようにも読めるが、小島氏らが《大型♂が食われる割合が多い》と確かめたのは、タヌキが通う樹液ポイントに限ってのことだったのではないのか? 競争が激しい樹液ポイントからあぶれた小型のオスは拡散し、その先々で捕食されているかもしれないし、夜間、餌にありつけなかった小型オスは日中活動することになり、カラス等に捕食されやすくなるということだってあるかもしれない。樹液ポイント近くにまとまっている捕食残骸は見つけやすいが、密度の低いところにある残骸までくまなく調査するのは不可能だろう。『不思議だらけ カブトムシ図鑑』では──、


野外で採集したカブトムシに標識したのち放し、再捕獲率を調べると、小型オスの方が再捕獲率が低いことが分かっている。(P.101)

とも記されている。あるいは(調査した樹液ポイント以外で)捕食される機会が多いことで再捕獲率が低いという可能性も考えられないではない?
実態として、本当に大型オスがより多く捕食圧を受けているものなのか……『不思議だらけ カブトムシ図鑑』を読んでみて、《カブトムシのツノのジレンマ》への疑問は払拭されず、かえって深まった気がしている。


《角のジレンマ》はどうして生まれたのか?
この《角のジレンマ》に関しても、僕は2つの疑問を感じていた。1つは《カブトムシ♂の角長のわずかな違いが、視力の弱いタヌキの〝目印〟となって捕食率を高めている》という解釈に対する疑問で、もう1つは、そんな解釈がどうして生まれたのだろうという疑問だ。《角のジレンマ》は無知な素人の思いつきではない。見識が豊かなはずの学者が、どうしてこんな解釈をしたのか不思議でならなかった。

しかし、『不思議だらけ カブトムシ図鑑』を読んでみて、なんとなく「こういうことなのかな……」と思うことがあった。今回は長くなるので《角のジレンマ》に関連する部分しか取り上げなかったが、全体を通して、この著者は「知識先行でものごとを見ている」印象があった。フィールドに出て、たくさんの現象をみているうちに、「気づき」があり、それをきっかけに検証しながら考えを構築していくというものの見方をしているのではなく、学習した学術的な知識を基盤に自然を見ている……というか。自然を見ながら、頭の中に蓄えた雛形学説に当てはめて認識しようとするクセ(?)があるのではないか?

日本動物学会のトピックス【強いオスは狙われる?:カブトムシにおける性およびサイズ依存的な捕食圧】の中には《一般的に、動物のオスの武器や装飾などの性淘汰形質は捕食者を誘引してしまうと言われています》という箇所があり、2015年度論文賞のサイトには、《オスで発達した性的二型を示す装飾物は、性淘汰の観点からは有利だが生存には不利であると解釈されるのが一般的である》《装飾を持つオスの方が生存にとって不利であるという仮説と合致しており》と紹介さされている。つまり、小島氏の頭の中にはこのロジックが知識としてあったのではないか? そして、このロジックを当てはめることができそうな素材としてカブトムシに着目し、得られた調査結果から「期待にかなう解釈」にとびついて《角のジレンマ》が生まれたのではないか?
『不思議だらけ カブトムシ図鑑』を読む前は、見識があるはずの学者がどうして《角のジレンマ》という解釈に至ったのか不思議だったが、あるいは論文になりそうなテーマを探しながら自然を見ている知識先行の学者だからこそ、ロジックを完成させるネタを探し、欲していた都合の良い解釈にハマってしまったのではないか……今はそんなふうに感じているが、これは全くの個人的な想像である。


《カブトムシの角は矛盾だった》のか?

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