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2018年11月の記事 (1/1)

クロスジフユエダシャク:婚礼ダンスに異変!?



見どころは♀の容姿と♂の婚礼ダンス

クロスジフユエダシャクは冬にだけ出現する蛾・フユシャクの1つ。メスは翅が退化して飛ぶことができないというユニークな特徴を持つ。そのため、出会いを求めて飛ぶのはオスの仕事。メスが放つフェロモン(ニオイ物質)をたよりにオスが《婚礼ダンス》を舞うことによってメスをゲットするのはこれまで何度か紹介してきた通り(*)。
クロスジフユエダシャクの見どころは、(オスとはかけ離れ、とても蛾には見えない)小さな可愛らしい翅をもつ「メスの風変わりな容姿」と日中観察できる「オスの婚礼ダンス(によるメス探し)」だと僕は思っている。雑木林ではごく普通に見られる昆虫だが、発生時期が冬の初めに限られるので、いつでも見られるというわけではない。鑑賞期間限定なのでこの時期になると見ておきたくなる。

《婚礼ダンス》について簡単に説明しておくと、メスと交尾する直前のオスが激しく羽ばたきながら歩き回る行動(羽ばたき歩行)のこと。クロスジフユエダシャク♂は落葉が積もった雑木林の林床を低く飛び続けるが、これは落葉の下などに隠れているメスを探してのこと。メスの存在が近いと察知したオスは、降りて婚礼ダンス(はばたき歩行)を開始する。メスが放つフェロモンを探知するのは触角だが、羽ばたくことによって前方の空気を触角に引き込み「嗅ぐ」機能を高めていると考えられる。羽ばたきながら向きを変え、どちらを向いた時に左右の触角が均等にフェロモンを捉えるか──方角を調整しながらより強くニオイを感じる方へと進むことでその発生源であるメスに到達する仕組みである。
《婚礼ダンス》はカイコガで知られていた行動だそうだが、クロスジフユエダシャクも同じことをする。クロスジフユエダシャクは昼行性なので、日中そのユニークな行動を観察することができる。
ということで、クロスジフユエダシャク♂が舞う雑木林で婚礼ダンス待ちをしていたときのこと──。落葉の上を後ろ向きに歩くクロスジフユエダシャク♂が目にとまった。これは交尾状態でメスがオスを引きずっているのだろうと思い、よく見るとやはり──↓。


フユシャクは、まずオスの姿が目にとまりがちだか、その翅の陰にメスが隠れていることも少なからず。メスはなかなかパワフルで、時々オスを引っ張って歩いている姿を見かける。
この状態では交尾中のオスも羽ばたかないし、近くでメス探しに飛びまわっているオスも関心を示さない(婚礼ダンスの気配も見せない)。メスがいてもフェロモンを放出していない時は、オスの婚礼ダンス・スイッチはONにならないのだろう。
一方、ひとたび婚礼ダンスのスチッチが入ったオスたちは、我先にメスに到達しようと懸命に羽ばたくことでその位置を嗅ぎあてようとする。隠れている1匹のメスに複数のオスたちが集まることも多く、僕の観察では通常、婚礼ダンスを舞う複数のオスたちがいた場合は、徐々に互いの距離が縮まり、集まってくる。それぞれがメスに近づいていくためだ。そしていち早くメスを見つけたオスが交尾を成立させるとゲームオーバー。フェロモンの放出がシャットダウンするのか、あるいは《売約済み》の情報でも発信されるのか……情熱的な婚礼ダンスは突然打ち切られ、タッチの差で敗れた者も未練を残すことなく、あっさりと引き上げて次のメス探しに出かけてしまう。
婚礼ダンスは突然はじまり、オスたちが収斂していくと、あっけなく終了してしまう──そんな印象が僕にはある。

狂乱の婚礼ダンス!?その意外な原因は…

ところが、先日(僕の感覚では)尋常でない婚礼ダンスを目の当たりにした。雑木林の一角で10匹を越えるクロスジフユエダシャク♂が婚礼ダンスを始めたのだ。その様子をカメラに収めようとしたが、範囲が広くて全景をとらえるのは困難──画面を広くとると個々のオスが小さく写って背景にまぎれてしまうため静止画では判別できなくなってしまう。婚礼ダンスは分散しているので、どれがメスに近づいている本命個体なのか判断できない。これだけのオスが探しているのだからすぐにメスは見つけ出されて婚礼ダンスは終了してしまうのではないかと気をもむが……婚礼ダンスはエスカレートするばかり。普通なら収斂していくはずの婚礼ダンスはむしろ拡散していくようにも見える!?
何が起こっているのかよくわからないまま、とりあえず♂密度の高いポイントを撮ってみた。


いつもなら、フレーミングやフォーカシングの間に終了してしまいがちな婚礼ダンスが、いつになく長く続いていて「普通ではない感」が高まっていく……。
オスたちが集中するポイントをのぞき込むと──不自然な動きのクロスジフユエダシャク♀が目に入った。その周囲をアリが取り囲み──♀を運んでいたのだ。狂乱の婚礼ダンスの原因は、フェロモンを放つクロスジフユエダシャク♀へのアリの襲撃にあったようだ。




12月を目前にクロヤマアリがこれほど活発に活動していようとは思わなかった。今年は立冬を過ぎてからもアブラゼミが鳴いていたし、昆虫の活動終了時期がズレ込んでいるのだろうか?
アリの襲撃に、飛んで逃げることができないクロスジフユエダシャク♀はひとたまりもなかったろう。しかし、メスのピンチをよそにクロスジフユエダシャク♂は交尾しようと次々に押し寄せてくる。中にはクロヤマアリにとらわれ引きずられて行くオスもいるが、オスの婚礼ダンスは続く……。フェロモンが放出され続け、婚礼ダンスのスイッチがONのうちは、本能が定める行動が継続されるということなのだろう。こんな状況下でも機械的な反応を続けるオスたちが小さなロボットのようにも見えた。


クロスジフユエダシャク♀の体の構造はよくわからないが、婚礼ダンスの元祖(?)カイコガの場合は、産卵管の根元にフェロモン腺という器官があって、これを腹端からのぞかせることでフェロモンが拡散するらしい。クロスジフユエダシャク♀も同じようにしてフェロモンを放ち、オスたちを呼び、交尾が成立した段階でフェロモン腺を収納しフェロモン放出をシャットダウンするのだとすると……アリの襲撃を受けたクロスジフユエダシャク♀は交尾を完了していないからか、あるいはアリの攻撃にもがくことで断末魔の叫びならぬ断末魔のフェロモン放出を続けているのか──フェロモン放出をシャットダウンできずにいるのかもしれない。カイコガではフェロモン腺をこすりつけたろ紙やガラス棒にもオスは反応し(メスがいなくても)婚礼ダンスをするそうだが、アリに運ばれるクロスジフユエダシャク♀でも、もがきながら露出したフェロモン腺が周辺の落葉などに接触すれば、そこにフェロモン臭が残ることになるだろう。アリに連れ去られるクロスジフユエダシャク♀本体だけではなく、引きずられたあとに残されたフェロモン臭のするポイントにもクロスジフユエダシャク♂が集まってきた──これが婚礼ダンスが拡散した理由ではないかと思われる。
フェロモンはおそらく物理的にはごくごくわずかな量なのだろうが、アリの攻撃にさらされながらも交尾をしようとしたり、メスがいないのに婚礼ダンスを舞ったりするオスの姿に、行動を支配するフェロモンのすごさを改めて感じたしだい。


ところで、クロヤマアリに引きずられていくクロスジフユエダシャク♀の画像を見て気がついたことだが──フユシャクの口吻がこれほど伸びるものとは知らなかった。フユシャク成虫はエサはとらないものが多いらしいので機能しているのかどうかはわからないが……想像していた以上にクロスジフユエダシャク♀の口吻は長かった。過去に撮った擬死状態のクロスジフユエダシャク♀の画像と比べてみると──↓。


オスが集まるのに婚礼ダンスが始まらない場所!?

雑木林でクロスジフユエダシャク♂の婚礼ダンス待ちをして気になることがある。本来ならもっと積もっていて良い枯葉が緑地管理のためか、かなり撤去されている。人が往来する道路ならともかく、緑地内で必要以上に撤去することもなかろうに……と思わないでも無い(落葉の中で越冬する昆虫が少なからず影響を受けそうな気がする)。こぎれいになった雑木林内の小道ではクロスジフユエダシャク♂が飛び交う姿が見られるが、《オスの密度が高く、今にも婚礼ダンスが始まりそうな気配を漂わせながら、そのわりに待っていても婚礼ダンスがいっこうに始まらない》ということがよくある。
おそらく……人がよく通る小道や、落葉撤去作業が頻繁に入る場所では落葉の下で踏みつぶれれたクロスジフユエダシャク♀もいて、そのフェロモンを含むニオイが地面や周囲の落葉などにしみ残っているのではあるまいか。これがクロスジフユエダシャク♂を誘い、まどわしているのではないかという気がしないでもない。飛来するオスは多いのに、いっこうに婚礼ダンスが始まらない場所には、ひょっとするとそんな事情があるのかもしれない。フェロモンの残り香にオスが反応を示すことは、今回の狂乱の婚礼ダンス騒動(?)でも明らかになった気がする。


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クロスジフユエダシャクのペア集

クロスジフユエダシャクのペア

昼夜行性のフユシャク(冬尺蛾)・クロスジフユエダシャクが雑木林周辺を飛ぶ姿が多数見られるようになった。メスは翅が退化して飛ぶことができないので、舞っているのは全てオス。落葉の上を低く徘徊飛行しながらメスを探し続ける。今回はペアが成立したクロスジフユエダシャクを集めてみた。


法面の緑化ブロックにとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↑。単独のオスがとまる時は頭を上に向けることが多いが、交尾中のオスは下の方を向いていることが多い。上を向いてとまっているメスと交尾をするためだろう。
木柵にとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。


やはり木柵の支柱にとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。メスにはオスとは比較にならないほど小さいながら、ちゃんと4枚、翅がある。


はちきれそうに膨らんだ♀の腹↑。節のすきまから卵の淡い緑色が透けて見える。
コナラの幹にとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。


クヌギの幹のくぼみに隠れるようにとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。




クロスジフユエダシャク♀は落葉の裏や樹皮のくぼみなどに隠れていることが多い。サクラの樹皮の隙間に隠れていたメスと交尾していたクロスジフユエダシャク♂↓。


雑木林の中の古い切株にとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。


撮り始めるとオスが飛び去ったので交尾後のメスの単独ショット↓。


周囲にメスを探して飛び続けるクロスジフユエダシャク♂はいるが、交尾後のメスにはまったくの無反応。しかし、落葉の下に隠れている未交尾♀には反応し、《婚礼ダンス(はばたき歩行)》で見つけ出すことができる。

婚礼ダンス(はばたき歩行)によるメス探し

雑木林の林床を低く飛び続けるクロスジフユエダシャク♂はメスが放つフェロモン(ニオイ物質)をたよりにメスを探り当てる。近くにメスの存在を察知したオスは着地し激しく翅を羽ばたかせながら歩き回る──これが、カイコガで知られる《婚礼ダンス》。家畜化されたカイコガは飛ぶことができないが、メスの放つフェロモンを感じ取ると《婚礼ダンス》をし、メスとの交尾に至る。目隠ししたオスはメスにたどり着けるが、翅を固定したり切除したオスはメスにたどりつけなくなるという。羽ばたく翅は吸引ファンの役割りをし、「(フェロモンを)嗅ぐ」ために触角へと空気を引き込む。体の向きを調整しながら左右の触角のステレオ効果でニオイ源の方向を割り出し、より強くニオイを感じる方向へと進むことで発生源(メス)を探し当てることができるわけだ。
以前、轢死したクロスジフユエダシャク♀の周りで複数のクロスジフユエダシャク♂がカイコガのような《婚礼ダンス》をしているのを見て驚いたことがある。クロスジフユエダシャクのメス探しもカイコガと同じように行われているのだろうと考え、クロスジフユエダシャク♂の《婚礼ダンス》に注目し、これによってオスが葉の裏など見えないところに隠れているメスを見つけて交尾することが観察できた。

《婚礼ダンス》に注目すれば、オスがメスを見つけるところが確認できるわけだが──《婚礼ダンス》はいつ始まるか判らない。比較的短い間に複数回観察できることもあるが、なかなか始まらず待たされることも多い。おそそらくメスがフェロモンを放つタイミングで近くを徘徊飛行していたオスが反応するのだろう。飛び交う♂は多いのに《婚礼ダンス》はなかなか始まらず……始まると、あっという間に終わってしまったりする(婚礼ダンスから交尾までは早い)。
今回も、婚礼ダンスを始めたオスがいたのでカメラを向けるが、フレーミングとフォーカシングでまごついている間に♂は枯葉の下にもぐり込んでしまっていた……↓。


メスが見えるアングルを模索し手前の落葉などの障害物をどけて撮ったのが↓。


やはりメスは落葉の裏に隠れていた。ちゃんと見えるように、ゆっくりと落葉を裏返そうとしたのだが……横着して右手にカメラを持ったまま左手で作業したところ、落葉同士が引っかかっていて、それが外れる反動でクロスジフユエダシャク・ペアをはじき落としてしまった。落ちたクロスジフユエダシャク・ペア↓。


別の場所──低い笹がのぞく一角でクロスジフユエダシャク♂の婚礼ダンスが始まった↓。複数のオスが引き寄せられたようにやってきてはげしく羽ばたきながらせわしなく動き回る。


オスの1匹がメスを探り当てて交尾が成立したのだろう。ほどなく婚礼ダンスは終了し、他のオス達は何事とも無かったかのように去って行った。一瞬にぎやかだった笹の陰に逆さになったオスの姿がのぞいている↓。


角度を変えて確かめてみると──やはりメスは葉の裏に隠れていた。


雑木林で待機中、数メートル離れた落ち枝で4~5匹の♂が婚礼ダンスを始めた。近づいてカメラを構えるが……例によってフレーミング&フォーカシングの間に婚礼ダンスは終わっていた。成立したてのクロスジフユエダシャク・ペア↓。


婚礼ダンスの最中は我先にと情熱的に動き回っていたオスたちだが、交尾が成立すると、とたんに淡白になる。メスが放っていたフェロモンが、交尾の成立でシャットダウンするのか、あるいは交尾が成立した時点で《売約済み》のシグナルが発信されるのだろうか?
甲虫類では1匹のメスにオスが何段重ねにもなっていることがあるが、クロスジフユエダシャクは潔いというか、諦めが良い!?


冬の蝶!?クロスジフユエダシャク

冬のチョウ!?クロスジフユエダシャク♂

今シーズンは11月15日に初確認したクロスジフユエダシャクだが、目にする頻度も増えてきた。年に1度、冬に成虫が出現するフユシャクのひとつで、フユシャクの中では早い時期に出てくる。フユシャクの多くが夜行性だが、クロスジフユエダシャクは昼行性。日中オスが雑木林の林床近くをメスを探して舞い続ける。最盛期、落葉の上を低く乱舞するクロスジフユエダシャク♂たちは、ちょっと幻想的でもある。その光景を見て「(冬なのに)チョウがたくさん飛んでいる!」と驚く人もいる。昼間飛ぶところや優雅な飛び方がチョウに見えるのだろう。しかしクロスジフユエダシャクはチョウではなく蛾の仲間(フユシャクは全てシャクガ科の蛾)。とまった姿を見ると、蛾だということがわかる。


ふつう蛾らしいとまり方をするクロスジフユエダシャク♂だが、チョウのように翅を閉じて(立てて)とまっていることがある。


翅を立てた姿はチョウっぽくも見える。セミヤドリガの羽化でも見られたが、蛾の仲間は羽化後、翅が展開する過程で、こうして翅を閉じた姿勢をとることがあるようだ。蝶のように翅を閉じた羽化後と思われる蛾は、しばしば目にする。
翅が伸びきっていないクロスジフユエダシャク♂もいた↓。羽化不全ではなく、その後ちゃんと翅は展開していた。


枯葉擬態の名人(蛾)アカエグリバやヒメエグリバは頭を下にしてとまっていることが多い(その方が擬態効果が高まる)が、フユシャクは頭を上にしてとまっていることが多い。


通常上を向いてとまるクロスジフユエダシャク♂の頭が下の方を向いていたら、メスと交尾している可能性が高い。上向きにとまっている♀と交尾をしようとすると♂が下を向くことになる──ということなのだろう。


木柵の支柱にとまっていたクロスジフユエダシャク♂の向きが怪しいので、よく見るとやはり交尾中だった。


別々に見るとオスとメスは全く別の昆虫のようだが、こうしたシーンを見ると同種なのだということがわかる。
別のところにいたクロスジフユエダシャク・ペア↓。




飛べない蛾!?クロスジフユエダシャク♀

フユシャクのユニークな特徴(メスは翅が退化して飛ぶことができない)を観察できるのはメスだが、フィールドで目にするクロスジフユエダシャクはオスが圧倒的に多い。飛ぶことができないメスは落葉の下や樹皮の裂け目などに隠れていることが多いので目立たず、オスはメスを探して飛び回らなければならないので目につきやすいということだろう。
たまたま目立つところ──案内板の支柱にとまっていたクロスジフユエダシャク♀↓。


小さいながら翅が4枚あるのがわかる。


こうした目立つところにクロスジフユエダシャク♀が出ていることは少なく、たいていメスは見えないところに隠れている。隠れたメスをオスはどうやって探しあてるのか──というのが、なかなか興味深かったりする(*)。

クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか
意外な翅の役割り!?クロスジフユエダシャク

その他の蛾など



晩秋の蛾・ニトベエダシャクはこのところ、ちょくちょく見かける。


木の幹にとまっていたケンモンミドリキリガ↑。あわい緑の分断模様が周囲の地衣類にマッチしているように見えなくもない。


花のまわりを飛びまわりホバリングで吸蜜するホシホウジャクはハチドリのようだが、とまっている姿はずいぶんと印象が違う。


前回投稿したエゾギクキンウワバに似たイチジクキンウワバ↑。鉛直面に頭を下にしてとまっていた(画面右が下側)。
蛾でも昆虫でもないが……ついでに、ビジョオニグモ♀↓。





ミミズク似!?エゾギクキンウワバ~冬尺蛾

ミミズクに似た蛾!?エゾギクキンウワバ



ワイヤーフェンスにゴミっぽい感じの蛾がとまっていた。エゾギクキンウワバ──というのは帰宅後調べて判明した和名。現場では正体不明の蛾で、よく見るとおもしろい形をしていたので撮ってみたもの。


胸の背面に平たい耳介状の突起があって、ミミズク(耳蝉)の成虫↓に似ていると感じた。






ミミズク似(?)のこの蛾は初めて見る種類だった。蛾は種類が多く、手がかりが無いと名前を調べるのもなかなか面倒だ。科がわかればある程度絞り込めるのだが、外見から科の見当をつけるのは僕には難しい……。最初はミミズクを連想させる特徴からサカハチトガリバが思い浮かび、その周辺を調べてみたのだが該当せず……。似たような蛾を以前撮った記憶を辿ってイチジクキンウワバの画像を引っ張り出した↓。


これは近いと感じてキンウワバの仲間をさがし、エゾギクキンウワバにたどり着いたしだい。ちなみに、ミミズクっぽい(?)サカハチトガリバはこんな蛾↓。


エゾギクキンウワバはミミズクを連想させる耳介状突起が目をひくが、背びれ風の突起もイイ感じ。そして「あれ!?」と思ったのが翅の中央にある白っぽい条紋だった。




じつはエゾギクキンウワバを見つけたとき、「ゴミのような蛾」と認識したあと、この白条紋を見て「あれ!? 蛾のように見えるゴミ!?」とプチ混乱があった。白い部分が浮き上がったゴミに見え、その下が少しへこんでいる──(蛾の翅にはないだろう)立体的な段差があるように見えた(錯覚した)からだ。




白条紋があることで、実際にはない段差の立体感(錯覚)が強調されて、白っぽいゴミが付着した暗色のゴミの塊のように見えた。ユニークな耳介状突起も尾びれ風突起もボディーラインをかく乱するような効果があるのかもしれない。ゴツゴツした樹皮や枝あるいは枯れ草などにとまっていたら気づくのは難しいだろう。天敵に対する隠蔽効果がありそうだ。
エゾギクキンウワバの幼虫は和名にあるようにエゾギクなどのキク科植物やヒルガオの葉や花弁を食べ、成虫は花の蜜を吸うらしい。成虫の大きさは、こんな感じ↓。


今季初の冬尺蛾クロスジフユエダシャクも出てきた



晩秋の蛾・ニトベエダシャク↑。この蛾が出てくるとフユシャク出現も近い──というようなコトを前記事に記したが、フユシャク(冬にだけ成虫が出現しメスは翅が退化して飛ぶことができないという特徴を持つシャクガ科の蛾の総称)も現われた。




今シーズン初のフユシャクはコンクリート擬木でみつけたクロスジフユエダシャク羽化不全♂だった。その47分後に笹の葉にとまった2匹目のクロスジフユエダシャク♂↑を確認できたので、その画像を採用。
今シーズン初のフユシャクを確認した5日前にはアブラゼミが鳴いていたのだから、今年は季節感がつかみづらい……。


タテスジグンバイウンカ~ウバタマムシ

タテスジグンバイウンカ~ウバタマムシ



葉の上に初めて見る昆虫がとまっていた↑。「おっ!? なかなかキレイ」──ということで撮ってみたもの。直後にピン!と跳ねて姿を消してしまった。帰宅後調べてみるとタテスジグンバイウンカ(タテスジウンカ)というらしい。
ウンカといえば……先月初めて見たヒロズクサビウンカがフェンスの上にいた↓。


ヒロズクサビウンカ(仮称?)は外来種のマルウンカで広食性らしい。中国ではモクセイ科の植物も加害するというが、近くにキンモクセイが植えられていたのでそこで発生しているのかもしれない。動き回るのでうまく撮れず……最後は例によって跳ねて消えてしまった……。
木製の手すりの上にいたアカスジキンカメムシ5齢幼虫↓。


アカスジキンカメムシは普通、5齢幼虫で越冬する。


遠目には白黒の配色が鳥の糞にも見えるが、黒っぽい部分には鈍い金属光沢があって、よく見るとキレイ。脚や触角も輝いていて、キンカメムシの片鱗を感じさせる。




落葉の頃になると、それまでいた場所では吸汁しにくくなるためか、越冬場所へ移動するためか、あるいは葉と一緒に落ちた個体が登ってくるのか……木の幹や擬木、手摺、フェンス等で終齢(5齢)幼虫を目にする機会が増える。
同様にこの時期、人工物で見かける機会が増えるのが、これ↓。


ワイヤーフェンスの上にいたニホントビナナフシのメス↑。翅は短めだが、これで成虫。オスの翅はもっと長いが、(単為生殖するため)オスを見かけることは稀。『ナナフシのすべて』(岡田正哉・著/トンボ出版/1999年)によると《九州以北ではおもに単為生殖、屋久島以南では両性生殖をすると思われる》とのこと。
しかしながら、僕は狭山丘陵(東京側)でニホントビナナフシのペアを確認したことがある(*)。また半分♂半分♀という雌雄モザイク個体に遭遇したことも2度ある(*)。通常は緑色のニホントビナナフシ♀だが、黄色い個体も見たことがあり(*)、僕には不思議な昆虫というイメージがある。
不思議といえば──ホストの植物から離れた場所にポツンととまっていたアカボシゴマダラの幼虫↓。




特定外来生物に追加指定され、今年から、飼養・栽培・保管・運搬・放出・輸入・譲渡・販売等が規制されることとなったアカボシゴマダラ(*)。このあたりではすでに定着し、もっとも良く見かけるチョウの1つになっているのでカメラを向けることも少なくなってしまったが……「どうして、こんなところに!?」という場所にいたので撮ってみた。多摩湖(村山貯水池)の堤防欄干の束柱というのか間柱というのか──の部分に幼虫がとまっていた。堤防の南端からはおおよそ100mほど、北端からは500mほど離れている。翅のある成虫ならともかく、幼虫がいったいどうやって、ここまでやって来ることができたのか不思議に感じた。
何らかの理由で人の服orバッグ等にくっついて人とともにここまで移動して落ちたのだろうか? あるいは、幼虫がとまっていた葉が強風で飛ばされ、堤防の途中まで運ばれたのか……?
少し前に堤防斜面に生えた雑草を取り除く作業が行われていたのを思い出した。もしかすると雑草にまじってエノキ(アカボシゴマダラ幼虫の食草)の幼木があったのかもしれない。アカボシゴマダラ幼虫はちょっとしたエノキの幼木で見つかることも多い。堤防にエノキの幼木があったのだとしたら、飛来した成虫が産卵することは充分考えられる。そこで育ち、除草作業で食草を失ったアカボシゴマダラ幼虫が近くの束柱で見つかったとしても、ちっとも不自然ではない──この可能性が一番高そうな気がする。



今シーズン初のニトベエダシャク↑。ブラウン&ベージュのシンプルなデザイン&配色がオシャレ。この蛾が出てくると、まもなくフユシャクも出てくる!?
このニトベエダシャクがとまっていたのは(たまたま)松の枝先だったが……この松で探していたのはこれ↓だった。


松ぼっくりと松葉の間に頭を突っ込むようにとまっていたウバタマムシ。成虫は松葉を食べる。この画像では、その姿がよくわからないので、てのひらに乗せて撮影↓。


隆起した縦縞模様が美しい。昆虫が少なくなってきたこの時期にであう甲虫類としては大きく立派で存在感がある。
松ぼっくりに戻して、1円硬貨(直径20mm)と大きさ比較↓。


ウバタマムシ成虫は狭山丘陵において1月~12月まで全ての月で成虫を確認している


立冬すぎのアブラゼミ!

立冬を過ぎて鳴いていたアブラゼミ

蝉と言えば夏の風物詩だが……立冬(11/7)を3日も過ぎて、まだ鳴いているアブラゼミがいた!
今日(2018/11/10)午前11時半頃、都内の公園でアブラゼミの鳴き声を確認。前回(11/5)アブラゼミを確認した場所から400~500mほど離れた雑木林の中だった。
これで僕が確認した《最も遅いセミの終鳴日(シーズン最後に鳴き声を聞いた日)》は《アブラゼミの11月10日》となった。


アブラゼミの鳴き声はハッキリと聞こえてくるが、木の高いところにとまっているらしく、姿が確認できない。これまでの経験から、鳴き終わった後に飛んで移動するだろうと予想し、見つけやすい飛翔の瞬間を待つことにした。やがて思った通りアブラゼミが飛び立つのが見えた。その姿を目で追ったのだが……交錯する枝にまぎれて着地点がよくわからない……。移動後またすぐに鳴き出したので、その音をたよりに姿を探すが……なかなか見つからない……。
それでも飛び立つのを待って、その姿を追い続けていれば、いずれ見つけやすい位置にとまることもあるだろう──そう考えて気長に粘ることにした……のだが……。飛翔待ちをしているとき、突然それまでとは違う、ヂヂッという短い鳴き声がひびいた。ヂヂッ! ヂヂッ!──という断続的な鳴き声はみるみる遠ざかって行く。この鳴き方には聞き覚えがある……2014年10月27日にアブラゼミの終鳴を確認したのと同じ──おそらく鳥にゲットされ、連れ去られて行くアブラゼミの断末魔だったのではないかと思われる。その後、雑木林は静かになった……。

そんなわけで、今回はアブラゼミの鳴き声と飛翔する姿は確認(目視)できたものの、その姿を画像に収めることはできなかった。話題にしている昆虫の画像がないのは寂しいので、今シーズン終盤のアブラゼミの画像を載せておく。
終鳴日(シーズン最後に鳴き声を聞いた日)ならぬ終接写日(10/29)のアブラゼミ↓


(※【10月29日の油蝉】参照)

終鳴日ならぬ終撮影日(11/5)のアブラゼミ↓


(※【11月に鳴くアブラゼミ】より)

セミといえば(特にアブラゼミは)夏の昆虫というイメージがあったが、意外に遅くまで鳴いている(個体もいる)ものである……。『八日目の蝉』なんていうタイトルの作品があったが、立冬過ぎのアブラゼミは、いったいいつ羽化したもので、これが何日目になるのだろう?
もしかすると、遅めに出て来てしまい繁殖活動を果たせなかったオスが意外に長く生き続けることで(未交尾成虫は長生きしがち?)、こんな時期まで鳴き続けることがあるのではないか……などと思ってみたりもしたが、本当のところはわからない……。

11月に鳴くアブラゼミ

11月に鳴くアブラゼミ@東京/終鳴日再更新



11月に入ってセミが鳴いているのを初めて聞いた。11月5日・午前11:30頃、アブラゼミの鳴き声が聞こえてきたのでビックリ。午前中は陽が射す時間帯もあったのだが、セミの鳴き声が聞こえてきた時はかなり曇っており、雨が降りだしそうだった。天候的にも時期的にもセミが鳴くとは思いもよらない状況。
先日【もっとも遅いセミの終鳴日】という記事を投稿して、10月30日で今年のセミは終わったかと思っていたのだが……終鳴日は11月5日へと更新された(※追記:このあと更に終鳴日を11月10日へと更新立冬すぎのアブラゼミ!)。
鳴き声をたどっていくと、10月29日に鳴いていたあたりのサクラの梢の方から聞こえてくる。その姿を確認すべく、懸命に眼を凝らして「あのあたり」と思われる枝を見ていくが、加齢による視力の衰えで逆光側が暗くて全然見えない……。
とまっている姿を見つけるのは困難に思われたが、前回のように鳴き終わった後に飛翔して別の枝にとまるかもしれないと思い、監視を続行。しばらくすると予想通り、アブラゼミが飛び立つのが見えた。目標は近くに植えられていた別の桜へと移動。とまった位置までは確認できなかったが、移動後ほどなく鳴き出し、ついにその姿を確認することができた。TG-2で撮るには高かったが、とりあえず証拠として押さえたのが冒頭の画像。不鮮明ながら、これが11月5日に鳴き声・姿・飛翔を確認したアブラゼミである。
撮影しているときに小雨が降り出し、アブラゼミはまた別の枝に移動。再び鳴き始めたものの、すくに鳴きやんでしまった。雨で泣きやむ直前のギリギリのタイミングで11月に鳴くアブラゼミを確認できたわけである。

11月5日の昆虫から

時間は前後するが、この日見られた昆虫の中から……。


松の枝先でヤニサシガメの幼虫が食事中だった。獲物はヒシバッタのようだ。


ヤニサシガメは幼虫で越冬する。
松の枝先を見ていくと、ウバタマムシがいた。ウバタマムシの成虫はマツ類の葉を食べる(幼虫はマツの枯木に穿孔)。


狭山丘陵では1月から12月まで、全ての月でウバタマムシ成虫を見ることができる
ジャコウアゲハの蛹↓。


体を支える帯糸が食い込んでいるのを見ると痛そうに感じてしまうが……これで安定をはかっているのだろうか。


映画の誤記情報

『文学賞殺人事件 大いなる助走』で主人公が勤めていた会社名は?



さて、前記事(*)で紹介した邦画『文学賞殺人事件 大いなる助走』だが、この映画情報について気になったことがある。本作に関するいくつかのサイトを閲覧してみたところ、主人公・市谷京二(佐藤浩市)の勤め先がみな「大徳商事」となっていることだ。映画の中では「大徳産業」である(「商事」ではなく「産業」)。市谷京二が名刺を渡す場面でも「大徳産業の営業におります市谷と申します」と名乗っているし、会社の外観シーンではちゃんと「大徳産業」の社名が映っている。


原作の小説『大いなる助走』でもこの設定は同じで、「大徳商事」ではなく「大徳産業」となっている。誤記というのはありがちだが、どうして同じ誤記があちこちで見られるのか不思議に思った。

今回購入した『文学賞殺人事件 大いなる助走』のHDニューマスター版DVDには「劇場用パンフレットの縮尺再編集版」が封入されていたが、この中にあらすじを紹介したページがあって、市谷京二の勤め先が「大徳商事」と記されていた。「縮尺再編集版」を作る過程で誤記が起こったとは考えにくいから、公開当時の「劇場用パンフレット」の時点ですでに誤記があったのだろう。これが色々なところで引用されて誤記が拡散したと考えると合点がいく。
映画情報というのは、劇場用パンフレットを公式情報(?)として引用することになっているのだろうか? 

それにしても、今回のHDニューマスター版DVDのリリースは公開されてから30年ほど経ってる。当時のパンフレットに誤記があったことは多くの人がとっくに気づいていただろうに、どうしてこの機会に訂正することができなかったのか……やはり不思議な気がする。

映画情報の中には、他にも同じように劇場用パンフレットの誤記が引き継がれ、公式情報(?)となっているものがあるのだろうか?


久しぶりの『文学賞殺人事件 大いなる助走』

最近リリースされた30年前の『文学賞殺人事件 大いなる助走』DVD



筒井康隆の小説『大いなる助走』を映画化した『文学賞殺人事件 大いなる助走』のHDニューマスター版DVDが今年の5月にリリースされていた。鈴木則文監督によるこの映画が公開されたのは1989年1月28日(Wikipedia情報)だそうで、DVDジャケットにも「©1989アジャックス」と記されている。しかし、本編では最後の「大いなる助走」と記されるシーンで「©1988 AJAX」とスーパーが入っている──こちらの方は製作された年ということなのだろうか? ジャケットと本編で©の年が違っているのが、ちょっと気になった。

作品の概要は──、
主人公・市谷京二(佐藤浩市)は地方都市の大企業「大徳産業」に勤めるエリートサラリーマン(※DVDジャケットの【ストーリー】やWikipediaの【あらすじ】では「大徳商事」と記述されているが、映画・原作ともに「大徳産業」が正しい)。地元の同人誌「焼畑文芸」を拾ったことがきっかけでこのグループに入り小説を書き始めることになるのだが……初めて「焼畑文芸」に掲載した『大企業の群狼』(※Wikipediaの【あらすじ】では「大企業の群像」と記されているが「大企業の群狼」が正しい)が、中央の文芸誌「文學海」に取り上げられ話題となる。そしてなんと権威ある「直本賞」の候補作品になってしまう。しかし、この作品は大徳産業の内幕を暴露したもので、顧問を務めていた父や大徳産業の後ろ盾で市議会進出を企てていた兄は激怒。会社はクビとなり勘当されてしまう。同人誌仲間には妬まれ、居場所を失った市谷京二は上京。なんとしても「直本賞」をとって文学で身を立てねばならない……追いつめられた市谷京二は直本賞世話人(受賞請負人)多聞伝伍(ポール牧)の助けを借り、全てを投げ打って受賞のために奔走するが、直本賞の選考は二転三転して落選。市谷京二は怒りにまかせて、自分を落選させた直本賞選考委員たちを次々に殺して回るという私怨作品『大いなる助走』を書くが……それまで面倒見がよかった雑誌編集者たちからも冷たく見放されて、書いたことを実行して行く。

原作の『大いなる助走』を書いた筒井康隆氏自身が「直木賞」の候補に3回選ばれながら受賞していない経緯もあって、連載当時は注目され、色々物議をかもしたらしい。編集部に「あの連載をやめさせろ」と怒鳴り込んで来た文壇の長老もいたとか。今回HDニューマスター版DVDでは特典として筒井康隆氏と鈴木則文監督の対談映像(2002年収録)が収録されているのだが、この「怒鳴り込んで来た文壇の長老」のエピソードについても触れられている。実名を伏せて話している最中に、つい筆名を言ってしまうというハプニング(?)もあった。また、筒井氏は映画にもSF作家の役で出演し、文壇バーで暴れるシーンを演じている。

エンドロールの同人誌にビックリ

僕が初めて『文学賞殺人事件 大いなる助走』を観たのは1992年12月25日深夜(正確には26日未明)。TBSテレビで放送されていたものだった。原作の『大いなる助走』は読んでおらず、予備知識なしに視聴していた。僕もいくつかの同人誌活動を経験していたので、同人誌やアマチュア文学家にありがちなエキセントリックな言動・ディテールに「あるある・ありそうだなぁ」と共感しつつ引き込まれていた。権威ある直本賞の選考委員を皆殺しにするというスゴイ展開になってしまうわけだが、僕が一番驚いたのは、最後のエンドロールを眺めていたときだった。エンドロールでは全国から集めたと思われるたくさんの同人誌が次々に映し出されるという演出があって、これには圧倒感があった。今ではブログやSNS、YouTubeなどでアマチュアが不特定多数の人たちに自由に発信できる場があるが、当時はアマチュアが自分の書いたものを世間に発表する場はほとんどなく、時間・労力・お金を費やし、苦労して作った同人誌に載せるくらいしかなかった。しかし読むのは大抵関係者で一般の読者の手に渡ることは少なく、そういった意味では苦労の割に報われることが少ない媒体だった。その1つ1つにアマチュア作家達の夢や執念が込められた同人誌が次から次へ画面に映し出され、「焼畑文芸」のように日の目を見る事が少ないアンダーグラウンドの活動が実際に数知れず存在することを物語っていた。
その同人誌が次々に映し出されていくエンドロールの最初の方で、見覚えがある表紙が……僕が描いた図案が、いきなり目に飛び込んできた。僕も参加していたことがある「MON48」という同人誌の第3号がそれで、知らずに観ていた映画の中に突然親しい友人が登場したかのような驚きを覚えた。


「MON48」について触れておくと──、朝日カルチャーセンターの中の講座のひとつ「大衆文芸の書き方(講師:光瀬 龍)」の受講生による同人誌。受講生の中には既に商業出版している人、プロとして活動している人も何人か含まれていた。受講の成果として(?)受講生たちが書いた作品を集めて同人誌を作ろうということになって誕生したのが「MON48」だった。誌名は、この講座が毎週月曜日(MON)・新宿住友ビルの48階の教室で開かれていたことに由来する。誌名は皆で候補を出し合った中で僕の案が採用された。表紙も僕が描くことになったのだが、翼を広げたペンが新宿住友ビルから飛び立つ──といった図案になっている。

朝日カルチャーセンター由来の同人誌MON48が映画『文学賞殺人事件 大いなる助走』の最後に登場したわけだが、映画本編の中にも「朝日カルチャーセンター」を「朝目カルチャーセンター」ともじってでてきた部分があった。直本賞世話人(受賞請負人)多聞伝伍(ポール牧)が市谷京二のライバル候補者について技術的には稚拙だと評すシーンがある。そこで「朝目カルチャーセンターで小説作法を学んだ程度だからな」なんてセリフがでてくる。



『文学賞殺人事件 大いなる助走』の本編とは別の話になってしまうが……初めてこの映画を観た時は、「MON48」がいったいどういう経緯でエンドロールに登場したのだろうかと不思議に思った。「MON48」のメンバーには同人誌発行に尽力したH女史がいて、彼女の師匠である団鬼六氏がこの映画に地方文壇の名士・萩原隆役で出演している──そのつながりで「MON48」が渡ったのだろうかとも想像したが、エンドロールで映し出された同人誌は文藝春秋社が提供したものだったらしい。
エンドロールで流れた「MON48」を見て(これは第3号だったが)、第4号(1988年)に《H女史が直木賞を辞退しMON48賞に選ばれて驚喜する》という掌篇コントを載せたことを思い出した。これは埋め草として僕が書いたものだが、もちろん当時は「MON48」が「直木賞」をネタにした映画のラストに使われようとは想像もしていなかった。
余談だが、「MON48」創刊号で発表した僕の『ねこにかかったでんわ』は後に単行本として商業出版されている。



『文学賞殺人事件 大いなる助走』本編とは直接関係のない、あるいは他の人からすればどうでもよい個人的な事を長々と記したが、「MON48」ひとつとっても当事者にとっては色々あるわけで……エンドロールで流れる膨大な同人誌──その1つ1つに同じような色々思いを馳せる関係者がいるだろうということだ。そうした同人誌の世界があるということを踏まえて『文学賞殺人事件 大いなる助走』を観ると、また一段と味わい深い気がする……。

この映画を最初に見た時は録画しておらず、それを悔やんだものだが、その後フジテレビの深夜枠で放送されたものをビデオ録画──しかし残念ながらそれはオリジナル(129分)より15分程短いカット版だった。ノーカット版が欲しくてネットで検索してみたこともあったのだが、当時はDVD化されていないかったようだ。そんなわけで、今年になって『文学賞殺人事件 大いなる助走』のHDニューマスター版DVDが出たことを知り、購入して久しぶりに完全版を鑑賞することができた。やはり映画の内容だけでなく、同人誌にまつわる色々なことが思い起こされる……。随所にコミカルな演出がほどこされていて面白かったが、はたから見れば徒労・不毛な努力を続ける人・続けざるを得ない人たち──そうした同人誌作家たちの物語として観ると滑稽さだけでなく、やるせなさも伝わってくる。
久しぶりに鑑賞して、当時の同人誌活動の感覚というのは、インターネット世代にはちょっとわからないのではないか……という気がした。昔はアマチュアが作品を発表する場がほとんどなく、自分が書いたものを他の人たちに読んでもらおうとすれば苦労して同人誌を作るくらいしなかった……そんな時代に比べ、今では誰もが手軽にブログやSNS、YouTubeなどで全世界に向けて情報を発信できる。ブログを始めて「あのときの努力は何だったのか?」と思ったりしたものだ(*)。
もちろん同人誌はインターネット以降も作られ続けるだろうが、その意味合い・実感は昔とはずいぶん違ってきているのではなかろうか……。そうした時代感も含めて『文学賞殺人事件 大いなる助走』は味わいのある作品だと改めて感じた。




もっとも遅いセミの終鳴日

もっとも遅い油蝉の終鳴日@東京を更新



10月29日にアブラゼミの姿↑と鳴き声を確認し、《もっとも遅いセミの終鳴日(その年の最後に鳴き声を聞いた日)》を更新したばかり(*)だが、翌30日も晴れて気温が高めだったので、もしやと思って同じ場所へ行ってみると……やはりアブラゼミは鳴いてた。10月29日はサクラの樹で鳴いていたが、10月30日はその近くのケヤキの高い枝から鳴き声が聞こえてくる。なかなかその姿を見つけられずにいたが、鳴き終わった後に飛翔し、別の枝にとまるアブラゼミの姿が見えた。
位置が高すぎて不鮮明な画像になってしまったが、とりあえず撮ってみたのがこれ↓。


これが(今のところ)シーズンで最も遅くまで活動していたアブラゼミの姿。この枝にとまるとすぐに鳴き始めた。10月30日にはアブラゼミの姿と鳴き声、そして10月29日には確認できなかった飛翔も確認できた。また、画像の個体を撮っているとき、近くの木で別のアブラゼミも鳴き始めた。2匹目の姿は確認できなかったが、10月30日には2匹のアブラゼミが健在だったことになる。


あくまでも個人的な記録ではあるが、この日(10月30日)が(僕の)《もっとも遅いセミの終鳴日》となったので記しておくしだい。
※【追記】このあと更に終鳴日を更新立冬すぎのアブラゼミ!

ついでにこの日みつけたプチ大魔神──こと(?)アゲハの蛹↓。


この蛹はこのまま冬を越し、(寄生されていなければ)来春羽化するのだろう。

11月に入って、まだセミが鳴いていたらアッパレだと思って同じ場所に行ってみたが、アブラゼミはもう鳴いていなかった。
かわりに今シーズン初のケンモンミドリキリガが見つかった。


美しいこの蛾には「フユシャクの前触れ」という印象がある。毎年、ケンモンミドリキリガを目にするようになると、まもなくフユシャクが現れる。