FC2ブログ

2018年07月の記事 (1/2)

胸赤マメコガネ!?



ムネアカマメコガネ!?前胸背が赤いマメコガネ



マメコガネはごくふつうに見られるコガネムシの仲間。光沢のある緑色の体に上翅(翅鞘)は小豆色、腹の側面に白い房毛の列がのぞいていて、なかなかオシャレな昆虫だ。色々な植物の葉や花を食べているのを目にする。








子どもの頃から緑と小豆色のカラーリングが美しい虫だと思っていた。見た目はキレイで可愛らしいマメコガネだが、明治時代にアメリカに持ち込まれたものが大発生して農作物に大打撃を与えたそうで、アメリカでは「ジャパニーズ・ビートル(Japanese beetle)」と呼ばれているそうな。


この本来(?)緑色──だと思っていた前胸背板が赤っぽい個体がいることに、最近、気がついた。「赤っぽいのがいるな」と意識するようになったためか……前胸背が赤いものが目につくようになった気がする。昔は「緑型」ばかりいたような気がするが……きちんと見ていたわけではないので、はたして「赤型」の割合が近年増えきているのかどうかは定かではない。
マメコガネの光沢のある緑の前胸背板は光線の具合や見る角度で赤っぽく見えたりする。




光沢昆虫で緑⇔赤に見える現象はアオマダラタマムシアオクチブトカメムシでもあった。だから単に光の加減による「見え具合」の問題かとも考えた。
しかし……やっぱり、「赤く見える」マメコガネがいる。


「どうして赤みの強いものが目につくようになったのだろう?」と考えているうちに、ふと頭に浮かんだのがキリギリス。「チョン・ギース」という鳴き声が、いつの頃からか「チョン」の部分が聞こえづらくなり、「ギース」の部分だけ聞こえるようになっていることに気がついて愕然としたことがあった(*)。加齢によって、若い頃には聞こえていた音域が聞こえにくくなったことで起こる現象だろう。
聴力もくたびれてきた感があるが……視力の方も老眼が進み心もとなくなってきている。フォーカス機能のみならず、(聴覚同様に)加齢によって、かつて見えていた色調が見えにくくなるという現象があるのではあるまいか?……昔は緑色に見えていたマメコガネの前胸背が(加齢によって緑の感知能力が落ちたことで)赤みを強く感じるようになったのでは?──そんな考えが脳裏をよぎる。
しかし、昔同様に前胸背が緑色に見えるマメコガネもいるし、撮影した画像を見ても、赤⇔緑の格差は確認できる──単に「見え方」の問題ではなさそうだ。


前胸背が「緑」と「赤」のツーショット画像も撮れたので、光の加減とは別に、色違いが存在することは確かだろう。






というわけで、マメコガネに前胸背が赤いものがいるということに最近気がついて、いささか驚いたしだい。しかし、考えてみれば、これまでマメコガネをしっかり観察したことはなかった。おそらく僕が気がついたのが最近というだけで、きっと昔から赤みの強い個体はいたのだろう……。






スポンサーサイト



ピッカピカのアオオサムシ

メタルグリーンに輝くアオオサムシ



雑木林のふちでみつけたアオオサムシ。ミミズや昆虫などを捕食する地表徘徊性甲虫。よく見かける美しい昆虫なのだが、接写しようと近づくと草陰や落葉の下に隠れてしまうので、たいていうまく撮れない……。これが出会う機会の少ない昆虫なら、粘ってでも撮ろうと頑張るのだろうが……ちょくちょく目にするので「もっと撮りやすい条件のときに撮ればいいか……」と簡単に撮影をあきらめてしまうため……OK画像が少ない虫だったりする。それが今回はほぼ全身見えるところでじっとしていたので撮ることができた。




画像ではきらめき感がだいぶ目減りしているのだが(光沢昆虫の撮影はいつもそう…)、緑色に輝くボディーが美しい。しかし、よく見ると、この個体は上翅に外傷がある。


さらによく見ると、ピッカピカの前胸背板も、わずかに陥没しているように見えなくもない? 鳥にでも襲われた痕だろうか? 周辺ではカラスに腹を食われたカブトムシの残骸がよくみつかるが……あるいはカラスにつかまりかけながら逃げることに成功した強者なのかもしれない?
オサムシ類は「イタチの最後っ屁」のようにピンチの時に尻から刺激臭のする酸液を放つ。これが皮膚に付くとヒリヒリ痛み、目に入れば激痛となるらしい。カラスにくわえられ絶体絶命のピンチを迎えて、この秘密兵器(秘密屁器?)を駆使して脱出したのではあるまいか? 酸液が口内の粘膜を直撃すればカラスといえどもひるむだろう──そんなアッパレな想像が展開した。


「イタチの最後っ屁」ならぬ「オサムシの最後っ屁」(いずれも正確には屁ではない)──オサムシを捕まえると放つ酸臭液は、防衛用の武器なのだろうということは誰でも想像がつく。しかし、実際にこの秘密屁器が役に立っているシーンを確認した人は、そう多くないのではなかろうか? 動物の糞の中にオサムシの残骸が混じっているのを見て、「結局、食われちゃってるんだから、秘密屁器は役に立っていないんじゃないの?」とその効力に疑問を持っている人もいるかもしれない。
僕は虫見を始める前に、アオオサムシの秘密屁器が効果を発揮するシーンを目の当たりにしたことがある。それは元祖・イタチの最後っ屁を装備したフェレット(家畜化されたケナガイタチ)↓を散歩させていた時のことだ。


アオオサムシと、かつて飼っていたフェレット・グランジのエピソードは【フェレット漫画:最後っ屁対決!?】に記してあるが、その場面(22コマ目~29コマ目)を再掲載↓。





元祖・イタチの最後っ屁を装備したグランジを撃退するとは、アオオサムシの最後っ屁、おそるべしっ!──その効果に感心したものだ。
タヌキやアナグマ、イタチ・テンなどは、おそらく同じように嗅覚を駆使して葉陰に隠れた獲物をみつけだすのだろう。その鼻先に酸臭液をかませば、レーダーとしての鼻は嗅覚的眩惑状態となり、追跡不能に陥るだろう。直撃をくらえば痛みもあるだろうし、眼に入れば視覚もシャットダウンしてしまうだろう。経験豊富な捕食者は、これをかわす術を持ちうるのかもしれないが……少なくとも捕食者に対してかなり有効な防衛屁器であることは実感できた。

余談だが……フェレットの散歩中に遭遇したオサムシやケバエ幼虫(【フェレット漫画:超魔術イタチ!?】に掲載)などがきっかけとなって、僕は虫見を始めるようになった。

オオホシカメムシの臭腺開口部/ヒメホシカメムシとの比較追記

オオホシカメムシの腹面と臭腺開口部



アカメガシワの幼果にオオホシカメムシ(成虫)が来ていた。なんとか撮れる位置ではあったが、腹面しか見えない……腹面が見えているので、この機会に撮っておくことにした。


オオホシカメムシに良く似たヒメホシカメムシというのがいて、両種ともにアカメガシワの花穂で目にすることがある。虫見を始めた頃は、このオオホシカメムシとヒメホシカメムシの違いがよくわからなかった。当時、虫屋さんに腹面に違いがあると教わり、腹部が赤い→オオホシカメムシ/黒い→ヒメホシカメムシと見分けられるようになった。これは腹部腹面が赤いのでオオホシカメムシ。カメムシがニオイを発する部分──臭腺開口部(開孔部)も見えていたので、アップで撮ってみた。




カメムシの臭腺開口部は成虫では腹面にある。中脚の付け根と後脚の付け根の近く──中胸と後胸の境い目に開口している。ちなみに、カメムシの幼虫では臭腺開口部は腹部背面にある。
腹面を念入りに撮ったので、背面ショットも……と思ったのだが、オオホシカメムシは幼果から落下。ツツジの葉の上に着地した。


臭腺開口部を確認したのだから、ニオイの方も確かめておこうと、この成虫をてのひらに握って軽く揉んで嗅いでみた。
今回は(?)かすかに薬品のような(?)ニオイがしただけだった。元々あまりニオイが強くない種類なのか、個体の(コンディションの)問題なのか……キマダラカメムシやクサギカメムシのような強烈な悪臭ではなかった。
とりあえずオオホシカメムシの背面ショットも撮れたので、比較用に以前撮ったヒメホシカメムシの画像もあげておく↓。見慣れてくれば背面を見ただけで見分けられるが、デザインがよく似ているので最初は違いがわからなかった。


前胸背がツートンのオオホシカメムシ



その後、同じアカメガシワの幼果にオオホシカメムシが背中を向けてとまっていたので、背面ショットを改めて撮ってみた。


撮影中は気づかなかったが、このオオホシカメムシ、前胸背が上下(前葉・後葉)で2色に分かれていた……。


前胸背が前葉と後葉で色違い(というより後葉の色が異常?)のオオホシカメムシを見たのは初めて。何かの疾患・不全のようなものなのだろうか? それとも時々、こんなタイプ(?)も発現するのだろうか……?

【追記】ヒメホシカメムシと腹/オオホシカメムシとの比較

オオホシカメムシがいた同じアカメガシワにヒメホシカメムシが来ていたので、その画像を追加。




オオホシカメムシとヒメホシカメムシの違い──腹部腹面の比較↓。


オオホシカメムシの腹部腹面は赤いが、ヒメホシカメムシは黒い。


トラフカミキリ擬態の妙

なんちゃってスズメバチ!?トラフカミキリ擬態の妙



葉の上にトラフカミキリがとまっていた。パッと見はスズメバチ──あまりの「そっくり感」に感心する。いわゆる「擬態」──毒針を持つ危険なスズメバチに似ていることで捕食者の攻撃をためらわせる効果があるのだろう。


虫見を始めた頃、ネット上の画像でトラフカミキリのことを知った。「スズメバチ感」満載なので、見てみたいと思っていた。そして実際に目にしたときは、予想以上にスズメバチに酷似していると感じて驚いた。知識上はカミキリだとハッキリわかっているのに、実際に目の当たりにすると本能的に(?)近寄りがたさを覚える──「擬態の妙」のようなものを実感した。


──ということで、擬態のモデルとなった本家のスズメバチ(コガタスズメバチ)↓。




パッと見の印象はよく似ている↑。カミキリというと長い触角をイメージしがちだが、トラフカミキリの触角は(カミキリとしては)かなり短め──こんなところもスズメバチに似ている。色合いもスズメバチやアシナガバチの警告色と同じだ。しかし、よく見ると、ボディーラインや模様はずいぶん違っている。
スズメバチの目立つ腹の模様──黒&黄の警告模様をトラフカミキリは上翅(翅鞘)で表現しているが、そうすると、ススメバチの翅にあたるパーツがトラフカミキリにはないことになる。警告色の模様も、スズメバチでは腹の節に沿う形でデザインされているのに対し、トラフカミキリの方は「く」の字模様になっていたりする。
細部を比較すると必ずしも似ているとは言えないのに、全体の印象としては「そっくり!」に見えるのが興味深い。
もし仮に、トラフカミキリのボディーラインにスズメバチの模様と同じデザインをほどこしたとしたら……体型の違いが逆に引き立つことになって「そっくり感」は薄れ「違和感」が生まれるに違いない。スズメバチにはない「く」の字デザインが入ったことで、実際には無い《胸と腹の間のくびれ》や《「ハ」の字に開いた翅》がなんとなくあるかのような錯覚が生み出されている気がする。このあたりに「擬態の妙」を感じるのだ。


自然界の生存競争の中で生き物が敵から逃れたり、狩りを成功させるには、それらの相手をいち早く見極める能力が重要になってくるはずだ。遭遇するたびに、いちいち相手の細部まで観察して判断していたのでは(敵に)襲われたり・(獲物に)逃げられたりしてしまう。そこで、対象となる生き物の特徴を圧縮したイメージでとらえ──言ってみれば《記号化したイメージ》にあてはめて瞬時に識別する認知方法がとられているのではなかろうか──などと想像しているのだが……この認知システムに対応しているのがトラフカミキリの擬態ではないかという気がするのだ。「《実物(擬態のモデル)》そのものに似る」のではなく「《記号化したイメージ》に似せている」ことで成立し、効果を発揮する擬態。

《記号化したイメージ》に対応した擬態の例では他にアカエグリバが思い浮かぶ。トラフカミキリの擬態は警告的なものだが、アカエグリバの場合は隠蔽擬態──擬態の対象は枯葉だ。


(※【枯葉チックなアカエグリバ&冬尺蛾】より再掲載↑)
ひとくちに枯葉と言っても、植物によって葉の形・大きさは違うし、しおれて変形したり欠けているものもあるから形状はバラバラだ。1枚1枚形が違う枯葉を我々はみな「枯葉」だと認識することができる。個別の形ではなく、共通する特徴を《記号化したイメージ》として捉えているからだろう。
アカエグリバは枯葉そっくりだが、個別の葉に似ているというより《記号化した「枯葉」イメージ》に合致しているといえる。
数ある枯葉のなかから任意の1枚を持ってきてアカエグリバと比較すれば、おそらく、アカエグリバの方が「枯葉感」は大きい。「枯葉を代表する枯葉らしい枯葉を1枚選んで撮ってみてください」と課題を出されたとしたら、撮影された1枚の枯葉よりも、アカエグリバの画像方がきっと「枯葉らしい」。
個別のポイントに着目すれば必ずしも似ているわけではないのだが、全体のイメージはそっくり──こうしたところに「擬態の妙」を感じるのだ。

ちなみに一般的に目につきやすいカミキリ──キボシカミキリ↓。カミキリというと思い浮かべるのは、こんな姿ではなかろうか?


カミキリなのにスズメバチそっくり見えるトラフカミキリのアッパレ感が再認識できる。

余談だが……この時期、車の窓を全開にして走行していると、虫が飛び込んで来ることがある。これがトラフカミキリであった場合、運転者がスズバチだと誤認しパニクって大きな事故を起こす危険がある。通報を受けた警察が駆けつけた時には、トラフカミキリは窓から外へ飛び去ったあとで、運転者および同乗者が即死であれば、原因不明の事故ということになりかねない。運転者からはアルコールも麻薬も検出されず、「謎の暴走事故」として関係者を不思議がらせる……。
こうしたトラフカミキリに起因する交通事故のことを「トラフィック・アクシデント(Traffic accident)」と呼ぶ……なんて、これは冗談。


パリコレならぬハリコレ~ハリサシガメ幼虫:擬装の意味

パリコレならぬハリコレ!?ハリサシガメの宝飾コレクション



土粒で体をおおい隠し、さらに背中に色々なモノをデコレーションする珍虫ハリサシガメの幼虫。個体ごとにデコ素材やそのレイアウトが異なるので、個性あふれる作品(!?)を鑑賞するのもおもしろい。


この幼虫はダンゴムシとメタリックな輝きを放つ宝飾コレクションを身につけていた。


メタルグリーンに輝く宝飾コレクションは昆虫の体の一部のようだ。以前にも同じ宝飾コレクションをデコったハリサシガメ幼虫を見たことがあった……ということで過去の画像の中から、ハリサシガメ幼虫のコレクション──パリコレならぬハリコレをいくつか。


デコレーション素材は、捕食後のアリの死骸からゴミのようなもの、金属光沢を放つきらびやかなコレクションまで色々。先日記事にした羽化殻も銀色の装飾品をつけていた↓。


まるでアクセサリー!? 《オシャレをする昆虫》──なんていうキャッチフレーズは大げさだろうか。


こちらのデコ・コレクション↑はカメムシ系の頭部だろうか? 同個体を反対側から撮ったもの↓。


メタリックな宝飾パーツも目をひくが、「でかい頭部」のコレクションも、怪しげなオーラを放っている!? ハリサシガメ幼虫自身の頭部は土粒に隠され、触角や眼くらいしか見えないので、自然と視線はデコられた巨大頭部に誘導される。


ハチに擬態した昆虫は多いが……強面のアシナガバチ頭部をかかげていると、何か御利益(ごりやく)があるのだろうか? 「虎の威を借る狐」ならぬ「アシナガバチの威を借るハリサシガメ幼虫」みたいなこと──アシナガバチ(の頭)に怖れをなして撤退する天敵がいれば大したものだ。しかし、このハリサシガメ幼虫が、たまたま手に入れた素材を警告効果と結びつけるのは、いささか強引かもしれない。


まだ小さめのハリサシガメ幼虫がデコっているのは大型アリの頭部↑──これもなかなかインパクトがある。ハリサシガメは成虫も幼虫もアリを捕食するが、看板の(?)大型アリは、この小さなハリサシガメ幼虫がしとめたものでないだろう。サイズ的に獲物としては大きすぎるし、触角が脱落した頭部だけ──という損傷ぶりから新鮮な死骸とは思えない。
「でかい頭部」の周囲にあしらわれた小型のアリ──全身そろっているのが、このハリサシガメ幼虫の捕食後(狩って体液を吸った後)の死骸だろう。
ハリサシガメ幼虫は本人(本虫)がしとめたとは思えない大きな昆虫パーツをデコっていることがよくある。


それにしても、ハリサシガメ幼虫はどうしてわざわざこんなものをデコるのだろう?
しとめた獲物をかかげて自分の力を誇示し、見栄を張って自分ではしとめられない大物までもデコっているのだろうか? だとしても何のために?
そもそも、こうしたデコ素材をハリサシガメ幼虫はどこで調達してくるのだろう?
アリのゴミ捨場(?)から、アリが廃棄したものを拾ってくるのではなかろうか──僕はそう考えている。ハリサシガメ幼虫が背負っている昆虫パーツは分解されており中味はきれいに無くなっていたりする──これはアリが解体&利用したあとの残骸だからだろう。
ハリサシガメ幼虫のデコ・コレクションの中にはアリの繭(抜け殻)と思われる物が混じっていることもあって、「アリの廃棄物」であることを示唆しているように思われる。


それでは、なぜアリの廃棄物をデコるのか?

ハリサシガメ幼虫のコレクションのうち、自力で狩ったアリの死骸はのぞいて……「アリの廃棄物」と思われる昆虫の残骸などをデコるのはなぜか?
これは、獲物のアリに警戒されることなく近づくための擬装だと僕は考えている。
ハリサシガメは成虫も幼虫もアリをエサにしている。しかし強靭なアリを相手にまともに闘いを挑むのは危険が大きい。アリたちに気づかれ、集団で反撃されたらひとたまりも無いだろう。非力なハリサシガメ幼虫が狩りを成功させるには奇襲攻撃──アリたちに気づかれずに近づき不意打ちをかけるしかない。そこで、アリが廃棄したゴミをまとい、そのかげに隠れてアリに近づいたり待ち伏せしたりするのではないか……。

アリは一般的に視力はあまり良くないという。接触してニオイで相手を判断しているらしい。ハリサシガメ幼虫が土粒をまとうのは、アリの接触──触角タッチを阻むための擬装コーティングで、アリの廃棄物をまとうのは、不審物を確かめに来たアリに「用済みのゴミ」と誤認させ、警戒を解除するための擬装ではないかと僕は考えている。

昆虫死骸はデコるのに、自分の脱皮殻は外そうとする!?

このように、色々な昆虫の死骸をデコるハリサシガメ幼虫だが、ときには、自分の脱皮殻まで背負っていることがある。


セモンジンガサハムシの幼虫なども自分の脱皮殻を背負っているので、カムフラージュとして自分の抜け殻を背負うことはめずらしいことではないのだろう。だが、ハリサシガメ幼虫の場合、自分の抜け殻を積極的にデコったわけではなく、むしろこれを外そうとする。
というのも、ハリサシガメは脱皮のさいに、古い殻を脱ぎながら古い殻についていたデコ素材を背負って出てくる。──その結果、引き継いだデコ素材に脱皮殻がくっついてきてしまうということが起きるのだ(それが上の画像)。ハリサシガメ幼虫はこれを嫌って懸命に脱皮殻を剥ぎ取ろうとする。




自分の抜け殻をつけていたのでは、アリの触角タッチで獲物や攻撃対象として認識されてしまう危険がある──そう考えると、自分の抜け殻をデコ・コレクションから外そうとするのもうなずける。
抜け殻がアリたちのターゲットになるのか……と思ったこともあるが、実際にカマキリの抜け殻にアリがたかることもある↓。


アカスジキンカメムシも脱皮や羽化のさいに抜け殻落としをするが、これも1つにはアリ対策──カメムシの生活圏もしくは脱皮&羽化圏にアリを呼び込まないための予防措置行動ではないかという気がする。
今年5月の観察では、羽化後のアカスジキンカメムシが羽化殻落としをする前にアリが抜け殻を嗅ぎつけて来たということもあった。


アカスジキンカメムシ新成虫はアリを嫌って羽化殻落としをせずに撤退。残された抜け殻はアリたちによって持ち去られた。


抜け殻はアリを呼ぶ(アリの狩りの対象になる)──ということを考えると、アカスジキンカメムシが抜け殻落としをしたり、ハリサシガメ幼虫が、デコ素材から自分の抜け殻だけを外そうとするのも、もっともなことだと納得できる。

捕食したアリの死骸をデコる意味



アリが廃棄した虫の残骸をデコるのは、アリにゴミと誤認させ警戒を解くため──と僕は解釈しているわけだが、それでは、ハリサシガメ幼虫自身が捕食したアリをデコることには、どんな意味があるのだろう?
ハリサシガメ幼虫は、個体によって同じ種類と思われるアリを集中的にコレクションしているものがいる。これは同じ巣の近くで同一家族のアリを狩り続けているということなのかもしれない。




アリの体表面は炭化水素の薄膜で覆われ、巣ごとに微妙にニオイが異なっているそうだ。このニオイによってアリは仲間(同巣)と敵(他巣)を区別するという。ハリサシガメ幼虫は同じ巣のアリをコレクションすることで、同巣の仲間のふりをしてアリに近づき、狩りを効率的に行うことができるようになる──その結果、同巣のアリのコレクションはさらに増え、同巣のアリに近づきやすくなる──デコ・コレクションのアリが揃いがちになるのには、そういった狩りのスタイルがあるからではないかという気もする。

ハリサシガメ幼虫の擬装行動:3つの意味

ハリサシガメ幼虫の擬装行動には3つの意味があるのではないか……すなわち──、
①土粒による全身コーティング……ニオイで相手を認識するアリの触角タッチをブロックする擬装。
②アリの廃棄物のデコレーション……アリに「用済みのゴミ」と誤認させ、警戒を解除させる擬装。
③自力で狩ったアリの死骸のコレクション……同巣のアリの警戒を解くため。またはアリの注意をハリサシガメ幼虫本体からデコったアリにそらす陽動擬装(不意打ちをかけてしとめやすくなる)。

今は、こんなふうに考えているしだい。


金緑色カミキリと樹液の間欠泉

金緑色にきらめくアカアシオオアオカミキリ





雑木林内の葉の上にアカアシオオアオカミキリが休んでいた。夜行性で樹液に集まるカミキリだが、7月初旬にも同じように日中、葉の上でまったりしているところを見つけて記事にしている。そのときは雑木林のふちにある葉にとまっていたが、今回見つけたのは雑木林の中だった。


金緑色にきらめく体は美しいが、緑色の葉の上にとまっていると意外に目立たないのかもしれない。赤みを帯びた長い脚や触角は植物の茎や枝っぽく見えなくもない……少なくとも日中に樹液ポイントにいるより、こうして葉の上でじっとしている方が目立たないのは確かだろう。日中は見つかりやすい樹液ポイントから離れて、こうして葉の上で休んでいるのがこのカミキリのスタイル(?)なのかもしれない。


枝の間からさしこむ日光があたると緑色のボディが金色がかってきらめく。


吹き出す発泡樹液!?樹液の間欠泉

アカアシオオアオカミキリが休んでいた葉の近くには樹液を出しているクヌギがあって、夜になるとここで食事をしているのだろう──そう思って昆虫酒場をのぞいてみると、いくらか客はきていた。樹皮の隙間に頭を突っ込んでいるカナブンにカメラをむけると──突然、泡立った樹液が噴き出してきた。


画面右下の数字は「時:分:秒」。


樹液が噴き出した瞬間は頭を突っ込んでいたカナブンもビクッと見をひいたが、すぐに食事を再開。
何年か前にも音を立てて樹液が噴き出しているクヌギを見たことがあった。ボクトウガの幼虫が穿孔した孔や樹皮下の隙間にたまった樹液が発酵して密閉空間でガスの圧力が高くなると間欠泉のように吹き出してくるのだろう。
子どもの頃、カブトムシやクワガタとりをしてクヌギやコナラが樹液を出すことは知っていたが、ゆっくりとにじむように染み出てくるものだとばかり思っていた。
突然の噴出には驚かさされたが、涌き出すポイントにいた虫にとってはラッキーだろう。カナブンが吹き出した樹液をなめる姿を見て、ねばっていたパチンコ台から出玉をひきあててウハウハのパチンコ親父を連想してしまった……。

ついでに、近くで見られた昆虫をいくつか──。


ウバタマムシ↑にセモンジンガサハムシのペア↓。


日中、カナブンなどが集まる樹液ポイントで見ることも多いアカボシゴマダラ↓。


アカボシゴマダラは特定外来生物】でも記したが、アカボシゴマダラは今年から外来生物法の特定外来生物扱いになっている。許可なく飼育したり放蝶すると処罰の対象となるので注意が必要だ。



ハリサシガメ羽化殻のレガース

ハリサシガメ羽化殻のレガース(脛当て)



石垣の鉛直面にハリサシガメの羽化殻が残されていた。これまで羽化殻はいくつか見つけているが、羽化後に落ちたり飛ばされたりしてきたものではないか……と思われるものが多かった。1度観察できた脱皮では幼虫は石垣の鉛直面に頭を下にしていたので、きっと羽化もそうに行われるのだろうと予想していた。
今回見つけた羽化殻は鉛直面に頭を下にとまっていたので、おそらくここで羽化したのだろう。飛ばされたり落ちてきた羽化殻が、この位置でひっかかるとは考えにくい。
ただ、腹と背中のデコレーション素材が頭の方に垂れ下がって左後脚が大きく浮き上がっていたので、羽化殻はなんともわかりにくい形になっていた。


この羽化殻をプチ容器に回収(採集)↓。


羽化のさいに破れた背中の裂け目から腹面の殻の内側──「脚が抜けた穴」が見える。デコレーションの中にはプラチナ風(?)の昆虫の腹部の一部がコレクションされていた。
容器に入れて移動したあと、撮影し直すために葉の上に乗せると、元の形に整っていた↓。


今回みつけたハリサシガメ羽化殻の背面↑。
腹面↓をみると、前脚と中脚の脛節内側にレガース(脛当て)のようなパーツがあるのがわかる。


このレガースは成虫にもついているが、羽化殻──つまり終齢幼虫にもある器官。先日ファーブル昆虫記で読んでハリサシガメとよく似ていると感じたセアカクロサシガメだが──標本図を見るとセアカクロサシガメには、レガースはついていなかった。




ハリサシガメは成虫も幼虫もアリを捕食する。アリを狩るときは前脚と中脚の4本の脚でしっかり押さえ込んで口吻を刺すのだが、レガースはアリを押さえるさいに滑らないように──アリの体表面にフィットしてグリップ力を増す役割りを果たしているのではないかと僕は考えている。狩りのさいに(獲物を押さえるのに)使われない後脚には、この器官はない。
ハリサシガメが前後&中脚を使って獲物をコントロールするようすを【本とは違う!?ハリサシガメ】から再掲載↓。




今回見つけた羽化殻の大きさは……直径20mmの1円玉と比べると、こんな感じ↓。


アリを捕食するカメムシ

アリはどこにでもいるものだが、その割にアリをエサとする捕食者は少ない気がする。アリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)なんていう有名どころはいるが、ハリサシガメのようにアリを狩る昆虫は珍しいのではないだろうか?
しかし、アリを狩るカメムシは他にもいた──。


葉上の小さな虫影──目に入ったときは極小のハエかと思った。よく見ると小さなカメムシでアリの頭部に口吻を突き刺している。


オオメナガカメムシ──体長5mm前後ということだが、もっと小さく感じた。葉の表面の微細な棘(?)──肉眼では気づかない──と比べても、小ささがわかる。オオメナガカメムシはアリの他にも小さな昆虫を捕食する雑食性(植物の汁も吸う)カメムシだそうだ。


ハリサシガメとファーブル昆虫記

砂まみれのサシガメ幼虫・ファーブル昆虫記にも



とてもユニークな昆虫なのに、その割に情報が少ない気がしてならないハリサシガメ。先日ふとファーブル昆虫記あたりに似た種類がとりあげられていないだろうか?──と思った。ファーブル昆虫記は小学生の頃、子ども向けの本でチラッと読んだ記憶がある。しかし当時はあまり印象に残らなかった。セミのそばで大砲を撃ってもセミは鳴き続けていた──セミには「聞こえていない」というエピソードは覚えていて……というより「そんなことがあるのだろうか? 聞こえないのにどうして鳴くのか?」と疑問に思ったことを覚えている。あとはスカラベの挿絵を覚えている程度で、何を読んだのかもさだかではない……。
虫屋でもある奥本大三郎氏によってファーブル昆虫記の完訳シリーズが出版されたというニュースはうっすら知っていて、大作だったらしい? 全10巻(それぞれ上下巻に分かれているので計20冊)ともなれば、その中にユニークなサシガメに触れた部分があっても良いのではないか?──そう思いついた次第。
「ファーブル昆虫記 サシガメ」で検索してみたところ『完訳 ファーブル昆虫記 第8巻 上』の第6章に「セアカクロサシガメ──肉食のカメムシ」という項目があることがわかった。内容紹介で「サシガメの幼虫は、なぜ砂まみれなのか?博物学の不朽の名著、画期的な個人完訳版」という文章をみつけ、「!」と思った。土粒コーティングするサシハリガメかそれに近い種類のサシガメに言及している──そう確信してさっそく市内の図書館へでかけ、この本を借りてきた。


立派な本を開くと、冒頭のカラー頁の口絵にはセアカクロサシガメ(成虫)の写真が載っていて、これを見た瞬間、逆ハの字模様こそないものの、ハリサシガメによく似た虫だと感じた。同じ口絵ページには「体に砂埃をまとったセアカクロサシガメの幼虫」の写真も掲載されており、その隣には「クロオオアリを捕えたハリサシガメの幼虫(日本産)」の写真まであって「おおっ!?」と思った。
以前読んだ岩田久二雄・著『昆虫を見つめて五十年(II)』の中ではクロオオアリはハリサシガメ若虫の餌には不向き(受け付けなかった)というような事が記されていて(僕は成虫・終齢幼虫ともにクロオオアリを捕食することを確認しているので)「違うな」と感じていた。それが『完訳 ファーブル昆虫記 第8巻 上』ではクロオオアリもハリサシガメ幼虫の捕食対象であることを記す写真が掲載されていて──これで、ちょっとスッキリした。

本文の第6章「セアカクロサシガメ──肉食のカメムシ」で取り上げられていたのが口絵にあったサシガメで、ファーブルはこの虫を精肉店で見つけ、成虫を持ち帰って飼育観察を始める。
セアカクロサシガメは夜行性で、狩りのシーンを見ることはかなわなかったが、餌となる昆虫はあまり選り好みしなかったという。そのあたりは昼行性で餌はもっぱらアリというハリサシガメとは違うところ。しかし後に記されていた幼虫が砂をまとうというユニークな点はハリサシガメと共通している。


日本産のハリサシガメはクビアカサシガメ亜科だが、ファーブルが観察したセアカクロサシガメもクビアカサシガメと同属だという。第6書訳注ページで知ったのだが、日本で見られるクビアカサシガメも幼虫は砂まみれの姿で暮らしているとか。幼虫が土粒をまとうというユニークな生態のサシガメがハリサシガメの他にもいたことを知って、がぜん興味が湧いてきた。

ファーブルは飼育下のセアカクロサシガメ成虫が産んだ卵が孵化するようすをかなり詳しく記しているが……僕にはちょっと理解しづらく、「これ、ホントかな……」と思わないでも無かった。というのも、ファーブルが「爆発」と称した現象を観察したのは1度だけらしい。小さな卵に起こった現象を1度見ただけで正確に把握できるものかどうか……また、その現象が起こる仕組みについての解釈にも疑問がある。本文を引用すると↓。

私はこの現象を二度と観察することができなかったので、これほど微妙な出来事を理解するには不充分である。だから、たぶんこうであろう、と単に思うだけなのだが、私としては次のような説明を試みたい。(P.206)

──として、孵化で起こる「爆発」の仕組みについて推理を記している。

カメムシの仲間の卵には、なんという見事な仕掛け、驚きに満ちた構造があることであろう。辛抱強く鋭い目で観察していれば、どれほど興味深い結果が得られることか!(P.207)

ファーブルはよくできた(?)孵化の仕組みに対して称賛しているが、それは「事実」というより、あくまでも「ファーブルの解釈」という気がする。

僕が興味を持って読んだのは、孵化以降──(ハリサシガメ同様?)砂まみれになる幼虫についての部分だ。もちろんセアカクロサシガメとハリサシガメは別の種類なので、同じように考えることはではないが、共通する特徴として比較しながら読み進んだ。
卵から孵ったセアカクロサシガメの1齢幼虫が、ときに卵の蓋を体につけているのを見てファーブルは次のように述べている。

この壷の蓋は、偶然、幼虫に触れたことで体に貼りついたのである。しかも、かなりしっかりとくっついている。というのは、この円盤を体からはずすには、次の脱皮まで待たなければならないからである。このことからして幼虫は、体から、通りがかりに触れた軽いものをべたべたくっつける粘液をだしていることがわかる。(P.208~P.209)

また、最初の脱皮を終えた2齢幼虫が砂粒をまとうことについては──、

二週間ばかりの間に幼虫たちは大きく肥り、そのうえ元との姿はなくなってしまう。というのは、体じゅう肢の先まで砂がくっついているのである。
 この砂の皮は脱皮した直後からできはじめる。最初、この小さな虫は、体のここかしこにぱらぱらとくっついた土の屑で斑になっている。それが、いまでは体じゅうを覆う土の衣になっているのだ。(P.211)


ファーブルは孵化直後、脱皮直後から、幼虫の体はベタベタしていて、砂粒が「勝手についてくる」ものだと、すんなり解釈している。
しかし──孵化や脱皮のとき、幼虫の体が最初からベタベタしていたら、殻から脱出するさいに不都合なのではないか──僕はそう考えていた。孵化や脱皮は虫たちにとって大変な作業だ。孵化不全や脱皮不全あるいは羽化不全で命を落とす個体もいる。


(※【ヤニサシガメぷち飼育中】より↑)
こうした事故を防ぐために孵化時・脱皮時には体表面は滑りが良くなくてはならない……だから離型剤の働きをする脂の被膜(?)のようなものが体表面と殻の間にできるのではないか……などと僕は想像していた。
滑りが良くなくてはいけないのに、逆に体表面がベタベタしていたのでは都合が悪かろう──だからそんなことはないはずだと僕は考えていた。
体表面がベタベタしていることで知られているヤニサシガメで、脱皮後はベタベタしているのかどうかを確かめるために飼育したことがある。




(※【ヤニサシガメのベタベタは分泌物なのか松ヤニなのか?】より↑)
やはり脱皮後のヤニサシガメ幼虫はベタベタしておらず、スベスベだった。こうしたことから、「脱皮幼虫がベタベタしているわけがない」との考えを強めていたので、ハリサシガメの脱皮で、抜け殻の背負っていた擬装素材を新幼虫が背中にひっつけながら出てきたのを見たときは、大いに驚いた。擬装素材の塊をどこかで引っ掛けて脱皮するのだろうか?──などと考えたこともあったが、よく解らずにいる。
脱皮しながらの擬装素材の引き継ぎは──これがファーブルの言うように、幼虫は最初からベタベタしていたのだとすれば、説明はつく。しかし、それではベタベタした体で孵化や脱皮をしたのか──という疑問が残る。ファーブルはこうした疑問を考えなかったのだろうか?
あるいは新幼虫の体表面と殻の間では滑りがよく、しかし他の物には粘着性のある──そんな分泌物が体を覆っているのだろうか?

幼虫が砂まみれになるユニークな生態についてファーブルは次のように記している。

 この襤褸(ぼろ)衣裳は意図的なもの、つまり奇襲作戦に役に立つものであって、獲物に近づくために自分の姿を覆い隠す手段なのだ──と思ったとしたら、そんな間違った考えは棄てなければならない。セアカクロサシガメは、わざわざ工夫を凝らしてそんな外套をこしらえたのではない。姿を紛らわせようとしてこんなものを担いでいるのではないのだ。それは何の工夫もなくひとりでにできてしまうのである。その仕組みはちょうど、円い楯がわりに背負った卵の蓋が、先ほど私たちにその秘密を明かしてくれたとおりである。
 幼虫は体から、一種のねっとりした液体を出す。それはおそらくは、幼虫の食物である脂肪に由来するものだろう。体から分泌しているこの鳥黐(とりもち)によって、幼虫自身が別に何かしなくても、移動するたびに触った埃が体にくっつく。サシガメが服を着るのではなくて、体がかってに汚れるのである。この幼虫は塵の球になる。つまり、歩く汚れそのものになるのだ。それは幼虫がべとべとした汗をかくからなのである。(P.211~P.212)


ファーブルはセアカクロサシガメ幼虫が砂粒まみれになるのは擬装目的があってのことではなく、幼虫が積極的に砂をまとうわけではないと記している。しかしハリサシガメ幼虫の場合は、積極的に土粒をまとう行動を僕は何度も見ている。




(※【ハリサシガメ幼虫のデコレーション&コーティング】より↑)
ハリサシガメ幼虫の土粒コーティングは獲物であるアリに気づかれることなく近づくための擬装だと僕は考えている。
大胆にもアリの列のそばで狩りをするハリサシガメ幼虫を観察したことがあるが、驚くほとアリたちは無反応だった。








アリたちに気づかれ総攻撃をしかけられたらハリサシガメ幼虫はひとたまりも無いだろう。ハリサシガメがアリを狩るには奇襲攻撃しかない。ハリサシガメのまとう土粒はアリたちをあざむく「天狗の隠れ蓑」の役割りをしているのだろう。僕はそう考えている。

ファーブルが言うようにセアカクロサシガメ幼虫が砂粒まみれになることに意味がないのだとしたら……たまたま幼虫がベタベタするサシガメが誕生し、その中から土粒にまみれることでアリに気づかれにくくなった→アリを狩るハリサシガメが誕生した──というシナリオになるのだろうか?

ファーブルはセアカクロサシガメ幼虫がベタベタするのは、《幼虫の食物である脂肪に由来するものだろう》と言っているが……この根拠も怪しい気がする。
飼育下のセアカクロサシガメの2齢幼虫(孵化した1齢幼虫は何も食べず、2日後に脱皮する)はファーブルが餌として与えた虫をことごとく拒絶したという。ファーブルは成虫が集まっていた精肉店にあったもの──として脂肪を与えてみたところ幼虫たちはこれを好み、順調に育ったという。それでファーブルはセアカクロサシガメ幼虫の餌は脂肪だと考えたようだが……しかし、脂肪などないところでは、2齢幼虫は何を餌にしているのだろう? 脂肪以外の本来の餌が存在するのではないかという気がする(注釈ではイガやカツオブシムシの幼虫の可能性が指摘されている)。であるなら、幼虫が砂まみれになるのは脂肪のせいではないはずだ。
あるいは、セアカクロサシガメ幼虫が身にまとった砂粒の擬装が役に立つような捕食対象や生態があるのではないか……そんな気もしないではない。

ところで……図書館で借りてきたこの本──『完訳ファーブル昆虫記 第8巻 上』(2010年の初版)のカバーには「本体2800円+税」と記されている。ところが、ネット上で価格を確認すると「3,600円(本体)+税」となっていたので、ちょっと驚いた。値上げがあったのだろうか?(8年で800円の値上げ!?)


擬装する幼虫

擬装する幼虫









植物片(?)を身にまとったアオシャクの仲間の幼虫↑。7月上旬に撮ってトリミングしキャプションもつけていたのだが、投稿する機会がないまま……このままでは時期外れ→お蔵入りになってしまいそうなので、擬装昆虫ネタで投稿しておくことにした。一見ゴミにしか見えないアオシャク幼虫の装飾は天敵の目をあざむくためのものだろう。

ナショジオ《驚異の装飾系動物6選》に選ばれた幼虫は

装飾する生き物は色々いるが……以前、ナショナルジオグラフィック日本版サイトに『自らを飾る驚異の装飾系動物6選』という記事がアップされていた。2015年6月16日付けだが、現在も見ることができる。「レディー・ガガなど目じゃない自然界のベストドレッサーたち」という副題とともに紹介されていた「奇抜なファッションに身を包む動物」は、モクズショイ(カニ)・トビケラの幼虫・イノシシ・サシガメ・ヒゲワシ・クサカゲロウの幼虫だった。数ある装飾系動物の中からどうしてこの6種が選ばれたのか良くわからないところもあるが……「6選」の中の3種が昆虫(トビケラの幼虫・サシガメ・クサカゲロウの幼虫)だった。
「トビケラの幼虫」については画像が示され《トビケラという水生昆虫の幼虫の多くは、身の回りにある材料をつかって自分用のハードケース(ケーシング)をつくる。体から出した糸で材料を綴り合わせ、捕食者から身を守る頑丈なよろいに仕上げるのだ》という文章が添えられている。
最後の「クサカゲロウの幼虫」は画像無しだったが、よく見かける虫だし、この仲間で擬装するものがいることはよく知られている。以前僕が撮った画像から↓。


自らを飾る驚異の装飾系動物6選』の記事の中では《クサカゲロウの幼虫はアブラムシを食べるが、その際、アブラムシが分泌する綿毛のようなロウ状物質を自分の体に移すことで、アブラムシの世話をするアリから身を守ることができる。実験では、クサカゲロウの体からこの衣を剥ぎ取ってしまうと、アブラムシと協力関係にあるアリから侵略者と認識されて追い払われてしまうという》と紹介されている。
クサカゲロウ(の仲間)の話題ついでに……1年前にリトリミング&キャプションをつけてそのままになっていた画像↓もこの機会に……。


サクラの花外蜜腺にきていたので「クサカゲロウの幼虫も花外蜜腺を利用するのか」と意外に思って撮っておいた画像↑(幼虫は画面左を向いている)。過積載ぎみに背負っているのは植物片だろうか?

自らを飾る驚異の装飾系動物6選』の記事に戻って……「トビケラの幼虫」と「クサカゲロウの幼虫」はわかるが……「サシガメ」というのが、多くの人にはピンと来なかったのではなかろうか? 記事につけられていた画像は装飾していない普通の(?)サシガメ成虫。キャプションには《この写真には写っていないが、サシガメは捕食者から逃れるためにアリの死骸の山を背負うことがある》と記されていた。
これはハリサシガメ──これ↓のことだろう。








ハリサシガメの幼虫は捕食後のアリをデコる。これ↑はおそそらく4齢か5齢ではないかという気がするが、近くにいたやや小さい──3齢ではないかと思われるハリサシガメ幼虫↓。


ハリサシガメ──こんな昆虫がいることを(僕が)知ったのは2年前。一般的には知名度は低い昆虫ではなかろうか。ナショジオの記事でアリの死骸をデコったユニークにして魅力的な(?)ハリサシガメ幼虫の画像がなかったのは残念だ。しかし、ハリサシガメなら《驚異の装飾系動物6選》に選ばれるのも納得できる。


クビアカトラカミキリの模様

クビアカトラカミキリの模様



雑木林の草の葉の上にきれいな配色の昆虫がとまっていた。クビアカトラカミキリだった。このカミキリは時々目にするが、たいていすぐに飛び去ってしまってじっくり撮れたことがない。このときも何枚も撮れないだろうと思いながらそっと近づいて接写。


クビアカトラカミキリは足早に葉の上を移動したりするものの、意外なことに飛び去る気配はない。グルーミングでたびたび立ち止まるので予想外に撮りやすかった。上翅を開いては後翅をたたみ直そうとする仕草がくり返されて、どうやら後翅がうまく収納できずに手こずっている感じだった。




近くの葉へ飛び移る姿は見せたので全く飛べないわけではないようだが、飛翔コンディションは良くなさそうだ。
大きさの感じがわかるように恒例の1円玉比較を試みようかと思ったが、さすがに難しそうなので指先にとませらてみた。大きさは、こんな感じ↓。






この機会に上翅(翅鞘)のアップにも挑戦。




トウキョウトラカミキリの模様ヨコヤマトラカミキリの模様と同じように、上翅の白い模様は白い毛で描かれていた。
クビアカトラカミキリの赤・黒・白のカラーリングは緑の葉の上で映えて見えた。小さな昆虫は(天敵に)目立たない方が安全そうな気がするが……こうした目立つ配色が採用(?)されているということは……これには何か意味(警告パターン?)があるのだろうか?