FC2ブログ

2017年12月の記事 (1/1)

【薄める】の反対語は?


ふと思ったことだが……【薄める】の反対語(対義語)は何だろう?

「色や味が薄い」というときの【薄い】の反対語は【濃い】だろう。
【薄くする】に対して反対の意味で【濃くする】という使い方はある。
この流れでいうと──、
【薄くする】ことを意味する言葉が【薄める】なのだから、反対語の【濃くする】を意味する言葉は【濃める】ということになりはしないだろうか?
しかし……「濃める」は聞いたことがないし、違和感がある。これはどうしてなのだろう?

味については、【薄い】⇔【濃い】に対応する表現で【薄め】⇔【濃いめ】が使われるのが一般的のようだ。
【薄め】に関しては【薄い】から「い」を外して「め」をけているのに、【濃いめ】では【濃い】の「い」を残して「め」をつけている。規則性からするとおかしな気がするが、感覚的には【濃め】より【濃いめ】の方が落ち着きが良いような気がしないでもない。
それでは──【濃いめ】という言い方があるのなら、【薄める】に対する反対語は【濃いめる】になるのだろうか?
【濃める】も違和感があるが、【濃いめる】も力いっぱい違和感がある。

この違和感がどうして生まれるのか──きっと国語学(?)的には、それなりの解釈があるのだろうが……正直なところ、そうした学術的な解釈にはあまり関心が無い。
この問題で僕が興味を覚えたのは、一見、規則性に則しているように思われる【濃める】なのに、明確な理由もなく違和感を覚えるという点だ。
一方、規則性から外れた【濃いめ】には落ち着きが良いと感じ、【濃いめる】には違和感を覚えるというのも不思議な気がする。

つまり、言葉は必ずしも文法的な規則性に支配されるものではない──もっと感覚的なものということだ。
言葉は自然発生的に誕生し、脳味噌が運用しやすい形で進化してきた。それを整理するために規則性を分析し確立されたのが文法だろう。つまり、文法はあくまで「後付けの理屈」ということになる。整合性を保つために、文法の基準にのっとり、現行の言葉やその使い方を「正しい」「間違っている」と指摘することはよくあるが、その「正しさ」は数学の「正しさ」のような絶対的なものではないはずだ。「後付けの理屈」なのだから、「脳味噌が運用しやすい現行スタイル」にあわせて変更することが必要なこともあるだろう。

自然発生した言葉を整理する「文法」は、自然発生した生物を整理する「分類」に似ている気がする。
これは、以前「ら抜き言葉」について記した時(*)にも感じたことだが、「文法」も「分類」も、どちらも「後付けの基準」だ。後付けの基準ではうまく説明できない事案もでてくることは不思議ではない。
そうした事案に対応するため、妥当性が見直され──「分類」が変遷してきたように、「文法」もきっと専門家の間では(?)リニューアルし続けてきたのだと思う。

僕を含めた日本人の多くは、ふだん日本語を、文法など意識せずに使っているはずだ。「薄める」に対する反対語が必要な状況では、「濃くする」という表現を自然に選択して、おそらく「濃める」問題(?)は意識に上がってこないのではないかと思う。「【薄める】の反対語は何?」という疑問は、むしろ日本語を文法から学んでいる外国人が抱きそうな気がする。

僕には「文法」も「分類」も難しくてよくわからないが、「文法」を詳しく知らなくても喋ったり書いたり聞いたり読んだりすることはできる。「分類」を詳しく知らなくても、生き物を見て楽しむこと──感じたり考えたりすることはできる。
「後付けの理屈」を知らなくても、あまり引け目(?)に感じることはないのではないか……。
【薄める】の反対語(対義語)は何だろう?──ふと抱いた疑問から、漠然とそんな思いに至った次第。


*「ら抜き言葉」について

https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-209.html

■エッセイ・雑記 ~メニュー~
https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-130.html

スポンサーサイト



年末のフユシャク♀2017

イチモジフユナミシャク♀の美麗条件!?

前の記事で取り上げたばかりのイチモジフユナミシャク♀だが、その後もつい探してしまう。この時期には比較的よく見かけるフユシャクなのだが、美麗個体はそう多くはない。新成虫はおおむね(?)美しいのだろうが、イチモジフユナミシャク♀は見た目の劣化が早いような気がする。
新鮮な個体も劣化した個体も、「見つけた時期が違うだけ」で、その個体自体に変わりはないのだが……やはりキレイな時の姿を見ておきたくなる。成虫は1月の上旬まで見られるだろうが新鮮な個体の割合は減っていくだろう。すでに産卵後の腹が萎んだ個体を目にすることが多くなってきている。
ということで、見られる時期に美麗個体を見ておかねばもったいない──と、ついビンボー根性で、その姿を探してしまうのであった……。




サクラ(幼虫の食餌植物)の古木で見つかることが多いイチモジフユナミシャク♀。これは産卵前のキレイな部類。
全く個人的なこの種♀の「理想の美麗基準」は──
◎前翅・胸の青みが濃いこと。
◎前翅の黒帯模様がハッキリしていること。
◎腹はパールホワイトで背面の黒紋と側面の輪紋が明瞭なこと。
◎鱗粉がきれいに整っていること。
◎腹がぷっくりふくれて張りがあること(産卵前のプロポーション)。
これは、あくまでも個人的な「希望」。希望通りの個体を目にすることは、そう多くない……。
上の個体を見つけたあと、やはりサクラッチ(桜ウォッチ)をしている人がいる──と思ったら、確認済飛行物体のnoriさんだった。そのnoriさんが見つけたきれいなイチモジフユナミシャク♀↓。


とまっているのは、やはり苔むしたサクラの幹。微妙な位置にいて、撮影時は伸ばした腕がプルプルしがちな状況。刺激して、じゃっかん動いてもらって撮った画像↓。


背景に、あわいブルーの地衣類の片鱗が写っているが、イチモジフユナミシャク♀の翅のブルーとよく似ている(*)。


産卵前の美しいプロポーション↑に比べ、産卵後はというと──↓。


腹がしぼんで、ちょっと貧相に見える。腹が縮んだことで比率的に翅が大きく感じられ、印象がずいぶん変わる。よく知らなかった当初は産卵の前後で別の種類だと思っていた。
木製の手すりの上にいた、やはり産卵後の♀↓。




擬木の上にいたこの♀は、まだ卵を持っていそう?↓






前翅&胸の青みは濃く、色合い的には申し分ないが……腹は少ししぼみぎみ。産卵の途上なのだろうか?
この♀↓は、産卵前のプロポーションだが、鱗粉(特に腹)がささくれて、ちょっとみすぼらしい……。




体をおおう鱗粉は、風雨あるいは乾燥、時間の経過などの影響で荒れてしまうのだろうか? キレイな個体との比較↓。


ということで、やはり見るなら美麗個体であってほしい──と思ってしまう。

翅が消失したフユシャク♀

イチモジフユナミシャク♀には、小さいながらも翅があって、それが魅力であったりもするのだが、フユシャク♀の中には翅が消失しているものもいる。




ホルスタインチックな白黒模様で異彩を放つチャバネフユエダシャク↑。
単独でいると種類を特定するのが難しいフユシャク亜科のフユシャク♀↓。




苔むしたサクラにとまっていたフユシャク♀も↑、noriさんが見つけた個体。


イチモジフユナミシャク♀は地衣類擬態!?

水色の小さな翅が魅力のイチモジフユナミシャク♀

今シーズンは12月半ばから目にするようになったイチモジフユナミシャク(これまで12月下旬に入って確認することが多かった)。冬限定の蛾・フユシャクの仲間で、メスは翅が退化して飛ぶことができない。その小さな翅は可愛らしく、あわい青~緑色を帯びている。この色が濃い個体は特に美しい。


イチモジフユナミシャク♀はサクラの幹でよく見つかる。このメスがとまっていた柵も桜並木沿いに設置されたもの。背景に幼虫時代を過ごしただろうサクラ(幼虫の食餌植物)が写っている。


飛ぶには小さなメスの翅。飛翔能力をもつオスの翅とは大きさや形だけでなく、色合いも全く違う。






以上5枚は同一個体。

個体によって印象もさまざまなイチモジフユナミシャク♀



サクラの古木にとまっていたイチモジフユナミシャク♀↑。
やはりサクラの古木の幹にとまっていた別個体↓。


この個体↑は前翅の黒帯模様が太め。この黒帯模様が途切れているものも多い↓。


この個体↑は青みが薄く、全体に白っぽい。
それに対し、こちら↓は全身に黒い鱗粉がまじり、ゴマをふったように見える。


擬木にとまっていたイチモジフユナミシャク♀↓は腹の背面が黒く、ぐっと印象が変わる。




腹の背面が黒いイチモジフユナミシャク♀は以前も見たことがあったが、僕がこのタイプ(?)をみたのはこれが2例目。
対照的な印象のイチモジフユナミシャク♀↓。




このメス↑は、ふくよかな腹に張りがある産卵前の個体。
産卵後は腹が縮み、体型がずんぶん変わってしまう↓。


淡いブルーは地衣類にまぎれる擬態カラー!?



このイチモジフユナミシャク♀↑は撮るにはやや高い位置にとまっており、逆光でもあったので、降ろして撮影を試みた。そのさい、擬死状態になったものの、動き始めるとせわしなく歩き動き続けて、なかなか思うように撮らせてくれない。なかば撮影をあきらめ、近くのサクラの幹にとまらせて、落ち着くようであったら撮ろうと眺めていると……メスは幹を降りていき、地衣類のあるところで静止した。


みごとに地衣類と同化して、こうなると、どこにいるのか、ちょっとわからない!?


このコケのような地衣類は桜の幹ではよく見られるものだが、あわい青~緑色をおびている──この色合いがイチモジフユナミシャク♀に似ていて、実際に《イチモジフユナミシャク♀探しモード》でサクラをチェックしていると、しばしば小さな地衣類片に反応してしまう。
イチモジフユナミシャク♀のあわいブルーは、オスにはない特徴だ。わざわざ(?)オスと違う特徴を獲得したということは、そこに何か意味があるのではないかと考えたくなる。これは地衣類にまぎれるための擬態カラーなのではないか?──そんな可能性を想像していた。
ただ、もしそうなら、もっと積極的に地衣類の上にいてもよさそうな気がするが……これまで地衣類の上に好んでいるといった状況は確認したことが無かった(地衣類から離れていてもサクラの幹上にいれば地衣類っぽく見えないことも無いわけだが)。
今回、イチモジフユナミシャク♀が、みごとに地衣類にとけこんでしまうようすを目の当たりにして、《イチモジフユナミシャク♀のあわいブルーは地衣類擬態》という見方も、あながち間違いではないのではないか……などとあらためて感じた。


こんなメスとは全く異なるオスの姿↓。


オスには飛翔用の大きな翅があって、枯葉を思わせるような体色は、この時期には目立ちにくい隠蔽色のような気もする。この翅がメスのようにブルーであれば目立って鳥などに狙われやすくなってしまうに違いない。翅が退化したメスは体の大きさやフォルムがオスとは異なることから、独自のスタイルで──地衣類に紛れる隠蔽カラーを獲得することになったのではないか……今はそんなふうに考えている。


ドラゴンを折って昆虫進化の奇跡を思う


ふとしたことからネット上に《折り鶴》ならぬ《折り龍(ドラゴン)》の折り方を紹介する動画を見つけた(*)。「折り紙でこんなもの(形)まで作れるのか!?」と、にわかに興味がわいて、動画を見ながら《ドラゴン》に挑戦。なんとか折り上げたのが冒頭の画像。出来映えはともかく……1枚の折り紙から《ドラゴン》を折り上げることができることを実体験として確認。「よく、こんな複雑な形を実現する折り方を開発したものだ」と発案者には感心するばかり。

正方形をした1枚の紙片──このシンプルな素材から多様な形を折り上げる《折り紙》は創造的な遊びだ。日本人なら(?)誰でも子どもの頃に遊んだことがあるのではなかろうか? 折り紙のスタンダード・《折り鶴》を折ることができる人は決して少なくないだろう。その《折り鶴》の場合、突起部分は両翼とクチバシ(頭部)・尾の4つ──正方形の角も4つなので、紙の角を利用して突起部分を作ることは、なんとなく「できそう」な気がする。しかし、《折り龍(ドラゴン)》はかなり複雑な形をしている。突起部分は頭・四肢・両翼・尾など多い。こんな複雑な形を正方形の紙1枚で──切ったり貼ったりすることなく折り上げることができるというのだから驚嘆する。複雑な形をした《ドラゴン》を展開していけば1枚の正方形の紙に戻ってしまうというのも、なんだか不思議な気がする。これはもはやマジックだ。折り紙を全く知らない人が見たら《奇跡》のように感じるのではなかろうか?

折り方の行程を知らない人が《ドラゴン》の完成体を見たら──「この複雑な形は、どのように実現したのだろう?」と感じるに違いない。構造を理解するために完成体を展開して折り目を確認するかもしれない。正方形の紙の上につけられた折り目(山折り・谷折り)を正確にトレースし、その図面を「設計図」と考えるのではあるまいか。かなり複雑で難解な「設計図」だ。正方形の紙の上に引くことができる線(折り目)は無限に存在する。その中から《ドラゴン》で採用された図面を見つけ出すというのは《奇跡》に近い。できあがった結果(複雑な形)だけを見れば、《ドラゴン》の実現は《奇跡的》ということになる!?

しかし、実際に《ドラゴン》を折っていく過程は──(折り鶴に比べれば行程が多い分、複雑にはなるが)1つ1つのステップは、さほど難解ではない。理屈の上では紙のどこをどう折るかの選択肢は無限に存在するわけだが……実際の折り紙では、基本的には「角や辺を(他の角・辺・折り目や対角線などの基準に)合わせて折る」あるいは「折られた部分を開いて折り目を変える」などの手順で進められる。個々の手順──「次にどう折るか(もしくは開くか)」を考えるとき、実現できる選択肢は無限というよりむしろ限定的だ。いじることの出来る部分は限られてくる。

《折り鶴》にしたって、折り紙を知らない人が見れば「1枚の正方形の紙を折って作られた」とは信じがたい《複雑》なものだろう。ところが、多くの人がこの折り方を覚えている(折り方は《単純》なので記憶していられる)。ずっと折り紙から離れ「もう忘れた」という人でも、折り始めたら完成までたどり着くのはそう難しいことではないだろう。実際に折り紙を手にしてみれば、そのつど折ることができる選択肢はそう多くない──折りながら手順を思い出し、完成にこぎ着くことができるのではないかと思う。つまり完成体は《複雑》だが、それを折る手順は意外に《シンプル》だということだ。

「一見《奇跡》のように見える複雑さ──しかし、完成するまでの行程は、実は意外にシンプルな選択で形成されている」──久しぶりに折り紙を折ってみて、そんな感想を持った。

そして連想したのが昆虫などで顕著な《奇跡的とも思える複雑な進化》だ。
例えば《擬態》などは、その極みで、まったく系列が異なるのに酷似しているものがいたりする。複雑で完成度が高い《擬態》を見ると、「よくこんなデザインが実現したものだ」と驚嘆せずにはいられない。
デザインの酷似について、無限に存在しうるデザインの中から「たまたま似たもの」が生まれて、それが自然選択で残ったなどという解釈は都合が良すぎると疑う向きもある。《擬態》を含む《進化》は、偶発的な変異に由来するとはとても思えず、超自然的な(?)《意志》のようなものが働いているのではないかと考える人もいるようだ。

しかし、複雑きわまりない進化も折り紙の行程のように、実は個々の局面では、(「無限の選択肢の中から選ばれた」ものではなく)「シンプルな選択」の積み重ねで実現した複雑系なのではないか……そんな風に思えてきたりもする。
擬態する側も擬態される側も、その形態は細胞分裂(繰り返し)によって形成される。細胞分裂の制御で実現しうるデザインにはきっと共通のパターンがあるに違いない。そう考えると、デザインの選択肢は無限に存在するのではなく、あるていど限定的(規則的)なものなのかもしれない。
擬態の効果などとてもなさそうな種類で似通ったデザインを持つ昆虫もいる。こうした「他人のそら似」現象がちょくちょく存在するのも、デザインの選択肢が限定的であるためかもしれない。「他人のそら似」現象がしばしば起これば、その中から生存率に有利に働くデザインを持ったものが自然選択され、世代を重ねる中でその特徴が洗練されて酷似といえる擬態を完成させるケースがあったとしても、そう不思議なことではない気がする。

《ドラゴン》を折ってみて、その複雑な形を、実は比較的単純な行程を繰り返すことで作り上げることができることを実感した。《奇跡》のからくりをちょっとだけかいま見たような気がしないでもない。
《奇跡》つなかがりで、《昆虫進化の奇跡》も似たようなものではないか……などと思ってみた次第。
もちろん、折り紙と生き物の体の形成は全く別のものだが……《ドラゴン》の最初の行程は正方形の紙の対角を重ね合わせ二つ折りにするところから始まる。まっさらな正方形が谷折りの対角線で2分割されるわけだが、これは受精した卵子が二つに分裂する、最初の2分割のイメージと重ならないでもなかった。

*折り紙「ドラゴン」の折り方 (Jo Nakashima) - Dragón #6

https://www.youtube.com/watch?v=kUsxMXwCW8A


エッセイ・雑記 ~メニュー~

フユシャク色々

イチモジフユナミシャクも出てきた



イチモジフユナミシャクは12月下旬に入ってから目にすることが多かったが、今シーズンはちょっと早め? とりあえず出ていたということで。


他のフユシャクは擬木で見つかることが多いが、イチモジフユナミシャクのメスは桜の幹での発見率が高い。苔むしたサクラの幹にとまっていた今シーズン初のイチモジフユナミシャク♀。フユシャクなのでメスの翅は退化しているが、この小さめの翅が個体によってブルー~グリーンがかったものがいて美しい(*)。
オスはまるっきり違った姿をしている↓。




ウスバフユシャクのペア



これも今シーズン初のウスバフユシャク。キボッチ(擬木ウォッチ)でオスの姿が目にとまり、「もう出ていたか……」と思ってよく見ると、オスの翅のかげにメスが隠れていた。


イチモジフユナミシャク♀は小さいながらチャーミングな翅を持っているが、このウスバフユシャクではメスの翅は消失してしまっている。


フユシャク(冬尺蛾)の仲間でも種類によってメスの翅の大きさ(退化の度合い)に格差があるのが面白い。

クロオビフユナミシャク



ウスバフユシャク♀の翅が消失しているのに対し、このクロオビフユナミシャク♀は(フユシャク♀としては)翅が大きめ。


とはいっても、やはりフユシャクなのでクロオビフユナミシャク♀も飛ぶことはできない。飛翔能力のあるオスの翅と比べてみれば、その差は歴然。


チャバネフユエダシャク



ホルスタインちっくなルックスがふるっているチャバネフユエダシャク♀。これも翅は消失していて、とても蛾の成虫には見えない。この個体は産卵途上なのか、少し腹が萎みかけている。同種とは思えないオスの姿は↓。


12月も半ばになってフユシャクも色々出てきたということで。


クロオビフユナミシャクとチャバネフユエダシャク

大きめの《退化した翅》が魅力!?クロオビフユナミシャク♀



ギホッチ(擬木ウォッチ)でみつけたクロオビフユナミシャク♀。冬に活動するユニークな蛾・フユシャク(総称)の1つ。


フユシャク(冬尺蛾)は、どれもメスは翅が退化していて飛ぶことができない。平凡な蛾にしか見えないオスとはかけ離れたルックスがユニークなので、メスをみると、つい撮ってしまう。種類によってメスの翅の退化の度合いにはずいぶん格差があって、そんなところもおもしろい。
クロオビフユナミシャク♀の翅も、もちろん退化しているのだが、フユシャク♀の中では大きめ。この「大きめの《退化した翅》」に描かれた模様の色合いやコントラストには個体差があって、この個体は黒・白・グレーがくっきりでた美人の部類。鱗粉も綺麗にそろっているので新鮮な成虫だろう。


擬木の上ではバレバレだが、木の幹にとまっていると見つけるのは難しい。小さな翅ながら、この模様はボディーラインのかく乱・隠蔽に役立っているように思う。例によって1円硬貨との大きさ比較↓。


退化し《消失した翅》が魅力のチャバネフユエダシャク♀







前の記事でも紹介したチャバネフユエダシャクのメス。同じフユシャクの仲間だが、クロオビフユナミシャク♀が大きめの翅を持っているのに対し、チャバネフユエダシャク♀は翅がすっかり退化して消失している。体には独特の白黒もよう(ホルスタイン模様?)があって異彩を放っている。
近くにいた別個体↓。


やはり擬木でみつけた別個体のチャバネフユエダシャク♀↓。




オスはどこといって変わったところのない平凡な蛾…

ということで、ユニークなメスばかりにカメラを向けがちなフユシャク。いちおうオスの姿も比較用に……。


12月中旬のキボシカミキリ



らんかんにとまっていたキボシカミキリ。触角は片方折れて、斑紋の「黄星」も「白星」と化していた。




よく見かけるキボシカミキリや近年さっぱり見かけなくなったシロスジカミキリは新鮮な生体では斑紋が黄色だが、生き残りや標本になると白くなってしまうという。シロスジカミキリの「白筋」は標本の斑紋の色からの命名だろうが、キボシカミキリの「黄星」は新鮮な生体の方の色を採用していることになる。ならばシロスジカミキリも「キスジカミキリ」でよかったのではないか……なんていう気がしないでもない。ちなみに「黄星カミキリ」に対して「白星(しらほし)カミキリ」という種類は別に存在する。
キボシカミキリは、5月頃から出現するが、意外に遅くまで目にするカミキリで、僕は年越し個体を2度確認している。
1月にキボシカミキリ ※2014年01月17日
新年2種目天牛はキボシカミキリ ※2015年01月08日

ホルスタインちっくなチャバネフユエダシャク♀



チャバネフユエダシャクも出てきた。白黒のまだら模様がユニークな♀↑。冬限定のフユシャク(冬尺蛾)の1つで、擬木にいると見つけやすい。近くにいた別個体↓。


擬木では、このように支柱上部に頭を上にしてとまっていることが多い。
これでも立派な蛾の成虫なのだが、翅が消失しているので、なんとも異様な雰囲気をかもしている。


ぷちホルスタインなチャバネフユエダシャク♀





《ぷちホルスタイン》と密かに呼んでいるチャバネフユエダシャク♀。本来なら昆虫の活動が鈍る冬に(成虫が)現われ繁殖活動するという変わり種だが、翅をすっかり退化させたメスの姿がふるっている。年1回冬に(成虫が)発生し、メスは翅が退化して飛べないという特徴を持つシャクガの仲間をフユシャクと呼ぶが(日本には35種類ほどいるらしい)、その中でもふくよかな体型とホルスタインを思わせる白黒模様のチャバネフユエダシャク♀は異彩を放っている。
今でこそ《冬の風物詩》となっている(?)おなじみの昆虫だが、チャバネフユエダシャク♀を初めて見た時は、これが何の仲間かわからず《謎の生命体》だった。
このユニークな姿──翅が無いのも、ホルスタインちっくな模様もメス限定。オスは何の変哲もない普通の蛾。




なぜメスだけホルスタインなのか?

フユシャク(冬尺蛾)のユニークなところは──昆虫の活動には不向きと思われる冬にわざわざ現れる蛾であり、何らかの理由でメスは翅が退化して飛ぶことができない──という点。知った当初は驚いたが、考えてみると何となく想像ができないでもない。
トカゲ類や捕食性の昆虫やクモなどの天敵が少ない冬に繁殖活動をするという生存戦略を選んだのだろう。他の外温度性(変温)動物にくらべ、寒さにいくぶん強いということなのだろうが、フユシャクにしたって外温度性(変温)動物──低温下では活動が鈍りがちだろう。卵を抱えた身重のメスのが飛び回るのは大変なので、配偶相手をみつけるための飛翔は身軽なオスに任せてメスは産卵に専念することになったのではないか……天敵が少ない冬だからこそ、飛んで逃げることができなくても、必要な生存率は保てたのだろう……当初はそんなふうに解釈していた。

しかし、チャバネフユエダシャク♀のユニークなところは、それだけにとどまらない。翅が退化したフユシャク♀の中にあって、特別異彩を放っているのが、ホルスタインちっくなルックスだ。
チャバネフユエダシャクにとって「メスの翅の退化(逆行進化)」が進化の過程での必然であったとして……それなら、メスの姿はオスから翅を取り去った姿であってよさそうなものだ。
しかし、オスの体幹にはホルスタイン模様(白地に黒い斑)がない。つまり、「翅がいらなくなった」だけなら、メスの体幹もオスと同じデザインでよかったはず……メスにだけどうして、ユニークなホルスタイン模様があるのか──という点に疑問を感じた。
そして次のように考えてみた。

オスが持つ翅の色合は枯葉などに紛れる隠蔽カラー。オスの翅に隠蔽効果があるなら、その翅を持たないメスは、別の方法で隠蔽効果のあるデザインを獲得する必要があったのではないか?
白と黒の模様で思い浮かぶのは《鳥の糞への擬態》──鳥糞に擬態していると思わせる白黒模様の幼虫はよく見かける。擬木にとまったチャバネフユエダシャク♀と擬木上の鳥糞は、遠目には感じが似ていなくもない。


また明暗のハッキリした模様には、ボディーラインをかく乱する効果もありそうだ。
体型の違うオスとメスで、それぞれに合った隠蔽デザインが分化したのだと考えれば……納得できないでもない。しかし、それは隠蔽擬態を進化(選択)させた天敵が存在することを意味している。
当初は《冬には天敵が少ないことがフユシャクが冬に活動することを選んだ理由》だと考えていたが、冬にも天敵──おそらく鳥などがいて、それなりの捕食圧はかかっているのだろうとイメージを修正した。

考えてみれば……冬に活動する天敵が全くいなければ、フユシャクの中で昼行性の種がもっといていいような気がする。にもかかわらず夜行性の種類が多いことは、やはり日中活動する天敵──鳥の脅威があるためではないか。
昼行性フユシャク・クロスジフユエダシャクの観察で、メスが落ち葉の下などに隠れて交尾をする(*)ことを知ったときには、「オスとの出会いのハードルを高めるだろうに、どうして隠れて交尾するのだろう?」と不思議に感じたが、これも天敵である鳥に対する対策として獲得した習性なのではないか……と今は考えれば、つじつまは合う。
冬には捕食性の昆虫や爬虫類の活動は少なくなるが、活動している虫が少なくなる分、昆虫食の鳥の捕食圧は集中して高まるという側面もあるのかもしれない?

もし冬に天敵がいなかったなら、チャバネフユエダシャク♀はホルスタインになる必要は無かったのかもしれない?
メスのユニークなホルスタイン模様をながめながらそんな想像をし、妙な感慨に浸るのであった。



擬木にとまっていたクロスジフユエダシャク♀↑。これもフユシャクだが、小さいながらも翅があるので、(チャバネフユエダシャク♀に比べれば)昆虫っぽく見えなくもない。



日光浴中(?)のハラビロカマキリ(褐色型)。生きていたが動きは緩慢。
昆虫ハンターのカマキリは12月に入ってからもちょくちょく目にしているが、あまり活動しているようには見えない。


クロオビフユナミシャク♂♀卵他

クロオビフユナミシャクのオス・メス・卵



クロオビフユナミシャクは冬に出現するフユシャク(冬尺蛾)のひとつ。見た目は普通の蛾──なのはオスだけ。メスは翅が退化して飛ぶことができない。オスは11月下旬から目にしていたが、メスはこれが今シーズン初個体↓。


クロオビフユナミシャク♀がとまっていたのは擬木だが、小さな空洞に卵が産みつけられていた。


よく見ると、このクロオビフユナミシャク♀は、右の翅がやや大きく形もちょっとヘン!? 本来の形である左翅と比べると、違っているのがわかる。
フユシャク♀の翅は蛹の段階で1度形成されたものがアポトーシスで萎縮するらしい。今年2月に蛹の殻(抜け殻)をつけたシロフフユエダシャク成虫♀を見ているが、蛹の翅部分が成虫の翅より大きかったので(*)、なるほどと納得していた。
このクロオビフユナミシャク♀の右翅が大きめなのはアポトーシス不全!?なのだろうか?
本来のフォルムと比較できるように、昨シーズン撮影したクロオビフユナミシャク♀の画像を再掲載↓。


(※【フユシャク3種~12月中旬の昆虫】より↑)


(【クロオビフユナミシャク♀@桜ほか】より↑)

クロスジフユエダシャク単独♀



やはり擬木にとまっていたクロスジフユエダシャクのメス。前の記事でもオスとのペア・ショットを5例あげているが、単独♀ショットということで。
小さいながら4枚の翅がハッキリ確認できる。






カバエダシャク



擬木にとまっていたカバエダシャク。フユシャクが現われる頃に目にする蛾。


本来なら翅の先端近くに白紋があるのだが、この個体では白紋が薄く、無いようにも見える。
本来の白紋が写っている画像から──↓。


フユシャクと発生時期が重なっているカバエダシャク。フユシャクと同じ「シャクガ科」の蛾だが、こちらは♀にもちゃんとした翅がある(のでフユシャクとは呼ばない)。