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2017年09月の記事 (1/1)

飛来したトビナナフシ

飛んできた!?ヤスマツトビナナフシ

ハリサシガメの姿を探して石垣を眺めていると──目の端から飛翔する虫が視界に入ってきた。なだらかな角度で飛来した虫は、そのまま石垣に着地──その姿を見てビックリ! ヤスマツトビナナフシのメスだった(この昆虫のオスは見つかっていない)。トビナナフシの飛翔を見たのは初めてだった。


このあたりで見られるトビナナフシはニホントビナナフシとヤスマツトビナナフシの2種(僕はこの2種しか見たことが無い)。ニホントビナナフシも見かけるのはたいていメス(本州では単為生殖といわれている)。ごく稀に見つかる小ぶりな割に翅が大きいオスはともかく……ニホントビナナフシとヤスマツトビナナフシのメスは飛ぶことができるのだろうか?──と、これまで疑問に思っていた。よく出会うニホントビナナフシ♀も、これまで飛翔する姿を見たことがない。カメラを向けると警戒してジャンプすることはよくあるのだが、これは「落下」というべきもので、落ちる姿ばかり見てきたので飛翔能力を疑ってきた。
今回飛翔する姿を見たのは、ほんの1~2秒。着陸した石垣は雑木林のふちにあるので、離れた場所から飛んできたのではなく、近くの木の上からジャンプして降りてきたのかもしれない。石垣に着地する寸前に減速するようなことはなく、ぶつかるように貼り付いたので、あるいは滑空に近い形だったのかもしれない。しかし、いずれにしても、これまで見てきた「落下」とはずいぶん違うなだらかな軌跡で、その翅はちゃんと機能していて「飛翔」と呼べるものだった。
「この虫は飛べるのかな?」と疑問に思っても、飛んでいる姿を見たことがないからといって「飛べない」と決めつけることはできない。飛ぶ姿を見ないかぎり疑問はずっと「謎」のままだ。だが一度飛翔する場面を確認すれば、「飛べる(飛べるものもいる)」ということが確定できる。
「ヤスマツトビナナフシ♀は、飛ぶことができるんだ!」と驚くと同時に、ひとつスッキリした。
僕を驚かせたヤスマツトビナナフシ♀↓。


トビナナフシには見てわかるように翅があるが、パッと見で上翅(前翅)だと思いがちな部分は後翅の革質部(かくしつぶ)と呼ばれる部分で、この下に薄い膜質部(まくしつぶ)が畳み込まれている。後翅革質部の付け根にある小さなカバーのようなものが前翅。


肉眼では判りにくいが、ヤスマツトビナナフシの触角には緑色の部分がある(ニホントビナナフシにはない)。複眼に入った模様もニホントビナナフシとは少し違っている。


これがヤスマツトビナナフシ♀の小さな前翅↑。この画面でいうと白い模様の下がヤスマツトビナナフシ♀は緑色だが、ニホントビナナフシでは赤褐色(*)。


腹端の「尾毛(びもう)」と呼ばれる1対の突起↑は長め(ニホントビナナフシ♀はもっと短い)。
顔のつくりはよく似ているのに複眼の模様でニホントビナナフシ♀とはずいぶん違った印象に見えるヤスマツトビナナフシ♀↓。


複眼の模様とは別に、黒い点──偽瞳孔(擬瞳孔)が撮影角度に応じて位置を変える。


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フトハサミツノカメムシの歯状突起&臭腺開口部

9月も下旬に入ると涼しい日も増えてきたが、セミはまだ鳴いている。ツクツクボウシは「乏しいじょ! 乏しいじょ!」とうるさいが、「또(ト) 보시죠(ポシジョ)」(韓国語で「また 会いましょう」?)と夏の終わりをおしみ別れを告げていると聞き做せば風情がないでもない。ミンミンゼミもまだ鳴いているが、さすがにゼンマイが切れかかってきたような……再生スピードが落ちて間延びした鳴き声になっていたりする。45回転のレコードを33回転でかけてしまったみたいな?(レコード世代の人にしかわからない?)
先日、ハリサシガメがいる石垣へ行ってみると、地面には枯れ枝が散乱していた。雑木林のふちなので、通過した台風の影響だろう。そんな枝のひとつをまたぎかけて──またごうとしていた枝に緑色のもの──瞬時にツノカメムシの仲間だとわかった──が、とまっているのに気がついた。けとばさないように大股で飛び越し、よくみるとフトハサミツノカメムシのオスだった。

フトハサミツノカメムシ:前胸背後側縁の歯状突起&臭腺開口部



オスの腹端にはその名のとおり太いハサミのような1対の突起がある。目立つ特徴なのでオスはすぐにフトハサミツノカメムシだと判る(メスにはこの突起がない)。前胸背の後側縁には歯状突起と呼ばれるものがあって、これはオス・メスに共通するフトハサミツノカメムシの特徴らしい。




『日本原色カメムシ図鑑』(安永智秀ほか/全国農村教育協会/1993年)にはフトハサミツノカメムシの特徴の1つとして《前胸背側角の先端のみ多少黒ずむ》と記されているのだが、僕がみかけるフトハサミツノカメムシは黄色いものが多いような気がする。同図鑑には《ツノカメムシ類のなかでは非常に少ない種である》とも記されているのだが……時々みかけるので、個人的には希少という印象は無い。あるいは最近増えてきているのだろうか? それともひょっとして前胸背側角の先端が黄色くなる別の近似種がいるのだろうか?
オスの特徴である腹端の突起を見ると、まさに「フトいハサミ」なのだが……。


落ちた枯れ枝に止まっていたので、胸の腹面にある臭腺開口部(開孔部)をのぞけるアングルから撮影↓。


矢印の孔が開口部で、その周辺が分泌した臭腺液をすみやかに気化させるための蒸発域ということになるのだろう。
撮っていると、枝の後ろに回り込むように移動。葉の裏側に隠れるような行動なのだろうが、とまっていた枝が細いのでバレバレ……。


せっかくなので、さらに臭腺開口部(開孔部)周辺をクローズアップ。


フトハサミツノカメムシ成虫の臭腺開口部(開孔部)は後胸の中胸寄り(頭の方)にあるのがわかる(カメムシの幼虫では、臭腺開口部は腹の背面にある)。
ついでに腹端のハサミ状突起もクローズアップで↓。


オスにだけあるということは繁殖に関係する器官なのだろうが……ハサミ状突起にはどんな意味があるのだろう? こうしたオスがハサミ状突起をもつカメムシは何種類かいて、ネット上には《交尾のときにメスを(逃げられないように)はさむ》というような情報もあるが、ハサミ状突起を持つ他のカメムシの交尾を観察すると、はさむために使われているようには見えない……。


フトハサミツノカメムシの体長は17~18mm。20mmの1円硬貨の上に乗せるとこんな感じ↓。


ハサミ状突起のないフトハサミツノカメムシ♀はこんな姿↓


今月上旬にサクラの幹にとまっていた(【松葉を食べるウバタマムシ他】より再掲載)。ハサミ状突起はないが、前胸背の後側縁に歯状突起があるのでフトハサミツノカメムシ♀ということになる。


本とは違う!?ハリサシガメ

ハリサシガメについては興味を持って素人観察を続けている。成虫も魅力的だが、僕が関心を持ったのは幼虫が異物をまとって体の表面を覆い隠してしまうことだった。いったい何のため?(おそらくカムフラージュの意味があるのだろうが)・どのようにして盛りつけるのか?(中には脚が届かないほど高く素材を積み上げているものもいる)・脱皮のときはどうするのか?(そのたびに「丸裸」になってゼロから積み上げるのかetc.)──そうした疑問が次々にわいてきた。ところがユニークな虫であるにも関わらず、その割にこの昆虫についての情報は少ない……(僕の調べ方が悪いこともあるのだろうが)。
そんなハリサシガメについて記載された本がある──という情報をSNSで交流のある虫屋さんに教えていただいた。
『昆虫を見つめて五十年(II)』(岩田久二雄・著/朝日新聞社・刊/1978年)という本で、蔵書検索してみると近くの図書館にあることがわかった。さっそく借りてきて該当部分を読んでみたのだが……興味深い内容ながら、僕の認識とは違うところがある。ということで、本書の記載内容との僕の観察&解釈の相違点について記してみたい。

岩田久二雄氏の観察とは異なる!?ハリサシガメの生態

シリーズ第2巻にあたる本書の「吸血カメムシの生活」という章の中にハリサシガメは出てくる。著者の岩田久二雄氏は著名な昆虫学者だが、その「昆虫を見つめて五十年」の歴史の中でハリサシガメに出会ったのはただ1度だけだそうだ。初めて見た幼虫(若虫)に驚き、持ち帰って飼育観察したことが記されている。岩田氏は幼虫が擬装するという特徴もさることながら、「一瞬で獲物(アリ)をしとめた狩りの手腕」の方に関心を持ったらしい。ハリサシガメについての語り出しは次のようにものだった。

ハエトリグモが自分に匹敵するか、またはより強力な獲物を倒す時に、その急所すなわち頸部を攻撃し、ムシヒキアブが同様にそこに唾液を注入するように、吸血カメムシもそこを選ぶことがある。私がそれを如実に知ったのは、一九二九年の八月であった。(『昆虫を見つめて五十年(II)』P.94)

初めてハリサシガメ幼虫にであい、その狩りを目にしたときの驚きを岩田氏はこう記している↓。

その日私は裸の緩斜面の路上の、クロヤマアリの往来するところで、ふと小さいごみ屑の塊りが、異様にうごめくのに気がついた。しゃがんでみると、ごみの塊りの下に六本の細い肢が出ていた。とっさに私はそれが、何かの昆虫の擬装であると勘づいた。みるみるうちにそのごみ玉が一匹のクロヤマアリに、突如として襲いかかるにおよんで大いに驚いた。まさしくそれはアリの略奪者だったのだ。
 ハリサシガメの若虫は、二本の前肢で押さえこむとともに、口吻をヤマアリの細い頸部に背面から差しこんでいた。刺されたとたんにアリの行動は停止した。この寸劇に感動した私は、それ以上の観察をゆっくりと家で行うことにして、その小さな怪物を管瓶におさめて帰った。(同P.95~P.96)


岩田氏は飼育下で観察したアリが狩られる様子についても《すぐに押えこまれ、正確に頸筋に鋭い口吻を打ちこまれた(同P.96)》と記している。
僕もハリサシガメの狩りは何度も目にし、捕われたアリがすぐに動かなくなるのは知っていた。頸部を刺しているシーンも見たことがある……しかし、特に土粒まみれのハリサシガメ幼虫の場合、擬装で太くなった脚の陰になってどこを刺しているのか確認できないことも多い。いつもピンポイントで頸部を狙っているのか……そのあたりは僕にはわからなかった。
最初の一撃かどうかを別にすれば、ハリサシガメが口吻を刺すのは頸部に限ったことではない。体液を吸っている間に何度か口吻を刺しなおすが、そこが頸であるときもあれば、腹であることもある。


狩りについての記述──《ハリサシガメの若虫は、二本の前肢で押さえこむとともに、口吻をヤマアリの細い頸部に背面から差しこんでいた。》という部分で、「僕の観察とは違う……」と感じたのは《二本の前肢で押さえこむ》という箇所だ。僕の観察では、ハリサシガメは幼虫も成虫もアリを狩るさいには「2本の前肢(前脚)」ではなく「前脚と中脚の4本の脚」を駆使して獲物を押さえていた。ハリサシガメの前脚と中脚の内側には脛当て(レガース)のような器官があるのだが、これもアリを押さえるときの滑り止めのような役割りをはたしているのではないかと僕は考えている。アリを急襲するときはすばやく前脚と中脚の4本の脚で抱え込むようにして口吻を刺す──そのため獲物は足の陰にかくれてどの部分が刺されているのか確認できないことが多いわけだが……アリが動かなくなるとハリサシガメは押さえていた脚をはなし、口吻だけでアリぶらさげて移動することもある。食事中に口吻を抜き、獲物の向きを変えて刺しなおし食事を続行する姿もよく見られ、この際にも前脚と中脚が使われる。






前脚と中脚を使って獲物を押さえるのは成虫も同じ。


エサとなるアリについては──岩田氏は持ち帰ったハリサシガメ幼虫のに色々な昆虫を与えてみたという。

アブラムシ、テントウムシの幼虫、ショウジョウバエから、小さいクモの若虫など、すべて拒否された。それがあまり近くまでくると身をひいた。またアリのうちでも体の大きいクロオオアリや、体は小さいが硬く鎧われたトビイロシワアリや、岩乗な鎧に棘まで用意したトゲアリなどは、同じように嗜好の選択からもれた。
 結局ハリサシガメの若虫が素直に餌としてうけつけたのは、足の速いクロヤマアリとトビイロケアリの二種であって、これらは体の大きさはちがっているが、外皮がかなり軟らかい点で共通していた。(同P.96)


岩田氏の観察では《嗜好の選択からもれた》とされるクロオオアリだが、僕はハリサシガメの幼虫・成虫、両方でクロオオアリを捕食したケースを確認している。




僕にはアリの種類がよくわからないが、少なくとも4~5種類のアリは捕食対象になっているようだ。一方、アリ以外のものを捕食しているのは僕も見たことがない。

ハリサシガメ幼虫の特徴であるデコレーション行動については、岩田氏はこう記している↓。

吸血をおわるとサシガメは不器用なかっこうをしながら、前肢でその吸殻を自分の背中に押しあげた。それはしっかりと糊着されるわけではなく、ただ乗せられるだけであるが、何分忙しげに走りまわれるたちの虫ではないので、それらの無様な積荷が崩れおちるおそれもない。(同P.96)

ここでも「僕の観察と違う」と感じた。まず、捕食後のアリ(吸殻)を背中に盛りつけるさいに使われるのは「前肢(前脚)」ではなくきまって「後脚」だ──というのが僕のこれまでの観察。食事が終わると、前脚と中脚で抱えられたアリの死骸は股の間をくぐって後脚に渡され、両後脚によって腹端側から背中にデコられる。すでに盛られた素材と腹の背面の間に押し込まれるようだ。






また、デコレーションについて《しっかりと糊着されるわけではなく、ただ乗せられるだけ》というのも腑に落ちない。ただ乗せただけなら鉛直面を上り下りすれば落ちてしまうだろう。どうして簡単に落ちないのかについて、岩田氏は次のように記している。

後になっていよいよ最後の脱皮を終えて成虫になり、その吸殻の山をくっつけた抜け殻が、すっぽりぬぎすてられた時に、初めて明らかになったのだが、いちばん下層の吸殻はカメムシの背中の棘にひっかかっていて、上層のものは下層のものの付属肢と、もつれあって巧くとまっているのであった。(同P.96)

デコ素材の付着は「糊着」ではなく「ひっかかっているだけ」という解釈だ……。
僕も羽化後残された抜け殻とデコ素材を調べてみたことがある。抜け殻の背中に貼りついた素材をピンセットとブラシを使って剥がしてみた。


岩田氏はくっついていたアリの部分だけを見て付属肢が《もつれあって》いたと判断したのかもしれないが、ハリサシガメの抜け殻に貼り付いているのはアリだけではない。もつれるような部分の無い土粒やゴミ(おそらくアリの巣から廃棄されたと思われる虫の残骸など)もくっつきあっていた。これらは抜け殻の背から剥がされたあとも素材同士がくっついたまま塊になっていた。ということは単に「ひっかかっていた」のではなく、「糊のようなもので貼り付けられていた」と考えるのが自然な気がする。
抜け殻の背中に貼り付いたゴミや土粒を落とすのは意外に大変で、ピンセットとブラシではこれが限界だった↓。


岩田氏が記した「下層の吸殻がひっかかっていた背中の棘」についてはよくわからない。腹の背面には節ごとに1対の模様が並んでいて、この縁から毛の束のようなものが生えていた。これがデコ素材とからみ粘着力を高めるようなことはあるのかもしれない? 毛の生えた部位は、普通の(?)カメムシ幼虫でいえば、臭腺開口部(開孔部)がある部分──ハリサシガメ幼虫の場合はデコ素材で覆われているので、いわゆるカメムシ臭(悪臭)を放って忌避効果を期待することはできないだろう。あるいはハリサシガメの場合はここから分泌される臭腺液にあたるものが粘着性を持っていて、これによって土粒やデコ素材が貼り付いているのではないか?──乾くと粘性をもつ浸透力の高い分泌液が体全体に広がるようなことがあれば、体全体に土粒が付着しうる……体中がベタベタしていたのでは都合が悪いので、土粒を貼り付けてベタベタを封印するようになり、その延長でデコレーションをするようになった……という筋書きも思い浮かんだりしたが、この想像はいささか飛躍が過ぎるかもしれない。
しかし、土粒やデコ素材はなんらかの方法で貼り付いているのではないかと(現時点では)僕は思っている。
その後、濡らした筆を使って再び土粒を取り除こうとしたが、完全に落とすことはできなかった↓。


昨年見つけたハリサシガメの羽化後の抜け殻はこの↑他にもう1つある。それはそのまま保管(放置)していたのだが、その「もう1つの抜け殻」を石垣の上でみつけたときの画像↓。


土粒やデコ素材がひっかかったりもつれあったりして塊になっているようには見えない。思い立って13ヶ月以上ぶりにとりだしてみると、ほぼ同じ形をとどめていた↓。


触角は折れてしまっているが、これは回収時に折れてしまったもの。昨年、回収したときに撮影した画像↓。


この時すでに触角は折れている。よく見ると、頭部の土粒コーティングが浮き上がっている。羽化後も崩れることなく形をとどめているのは糊のようなもので固められているからではないかという気がする。
もっとも僕も「糊着」説に確信を持っているわけではない。糊にあたる粘着物質がどこから分泌されるのか、どのタイミングでどのようにデコ素材に塗布されるのか(されないのか)はよくわからない。他にも判らないことは色々あってハリサシガメは(も)僕にとって謎の昆虫だ。

ところで岩田氏が観察したカメムシは、故江崎梯三教授によってハリサシガメ(アカンタスピス・キンクティクルス)と同定され、標本は抜け殻とともに九州大学で保存されているとか(1978年発行の本書によれば)。
ハリサシガメについての記述の最後の部分は、こうまとめられている↓。

この虫の習性の特色は、その若虫の示す擬装行動にもあるだろうが、私にはやはりその偏食性と攻撃法がいっそう興味がある。(同P.96~P.97)

岩田久二雄氏の本でハリサシガメを知った人は少なくないはず。読者の頭の中ではこの幼虫が狩りの際に2本の前脚で獲物を押さえこむ姿がイメージされているだろう。その狩りの対象となるのはアリの中でも限られる……しかし、岩田氏が餌の対象外と判断したクロオオアリも、僕が見たところ捕食しているし、岩田氏が考えるほどの《偏食性》ではないのかもしれない。
幼虫の擬装行動については、前脚を使ってアリの死骸をデコレーションし、それは糊着ではなくからみついているだけ──という理解で岩田ファンはこの昆虫を認識しているに違いない。
専門家の名著の記載内容と素人のブログ記事では、その信頼性には雲泥の差があるのはわかっているが、こんな素人観察&素人解釈もあるということで、僕が感じた相違点を記してみたしだい。


ハリサシガメぷちまとめ2

昨年7月下旬、初めて出会った珍虫ハリサシガメ。今年は5月末に幼虫を確認してから、注目してきた。謎はまだまだ多いけれど、わかってきたこと・気がついたコトなどを改めて少しまとめておくことにした。昨年の【ハリサシガメぷちまとめ】につづいくパート2ということで。

ユニークで個性豊かな?ハリサシガメ幼虫



雑木林のふちにあたる石垣で見られるハリサシガメ。この昆虫の最もユニークなところは、幼虫が異物をまとって全身を覆い隠していることだろう。土粒を体中にコーティングし、アリの死骸やゴミをデコレーションしている。背中に盛りつけられるデコ(レーション)素材は色々。捕食したアリも背負うが、アリが巣から廃棄したと思われる虫の残骸やアリの繭(抜け殻)・死骸なども利用しているようだ。


デコ素材の中には奇抜な(?)コレクションも見受けられるが、念入りな土粒コーティング&異物デコレーションを行うのはカムフラージュのためだろう。ハリサシガメは捕食性カメムシで餌となるのはもっぱらアリ。獲物を得るにはアリの行動圏内に入らなくてはならない。万一、アリに気づかれ集団で反撃されたらかなわない。狩りのさいもアリに悟られずに近づく(待ち伏せする)ことが重要だ。アリはあまり視力が良くないという。触れてニオイで相手を確認するアリに対し、ハリサシガメ幼虫は体の表面を土粒でおおい隠し、アリが廃棄したゴミを身にまとうことでアリを欺いている(ように見える)。チェックに来るアリがいても、自分たちが捨てた用済みのゴミと判ればスルー。デコられたアリの死骸に興味を示すこともあるが、本体のハリサシガメ幼虫には気がつかない──コーティング&デコレーションはアリに対する《隠れ蓑(かくれみの)》なのかもしれない。アリの行列のそばで狩りをするハリサシガメ幼虫を観察したことがあったが、アリはすぐそばで仲間が捕食されているというのにまったくの無反応──ハリサシガメ幼虫の存在に気づきもしないようだった。
また、ハリサシガメ幼虫のボディラインを隠し撹乱するこのコーティング&デコレーションは、視覚にたよって狩りをする昆虫ハンターに対してもカムフラージュの効果があるに違いない。ハリサシガメが見られる石垣では、昆虫ハンター・ヒガシニホントカゲの姿も多く、両者のニアミスはしょっちゅう。接触するシーンを見かけることもあるが、ヒガシニホントカゲは(も)ハリサシガメ幼虫には全く関心を示さない。


同種の昆虫はどれも同じように見えるものだが、ハリサシガメ幼虫に関しては、デコ素材やそのレイアウトがそれぞれ違っているので1匹1匹に個性を感じる。デコ・コレクションを鑑賞するのも楽しい。

デコ素材は後脚で盛る

異物を背中に盛るというユニークな特徴を持つハリサシガメ幼虫だが、どのようにデコっているのだろう? 中には脚が届かないほど高く積み上げられたデコレーションを背負っている個体もいる。デコ素材が貼り付くしくみについては、まだよくわからずにいるが、盛りつけ行動は今年何度か目にする機会があった。捕食後のアリを後脚を使って、すでにデコられた素材と腹の背面の間に押し込むようすは、こんな──↓。


捕らえたアリの体液を吸い終えると、アリの死骸は股をくぐって後脚に渡され、両後脚で腹端側から背中に押し込まれる↓。


可動範囲が広い後脚(青矢印)でアリをぐいぐい押し込もうとする……。


こうして背中にたくさんの異物を盛りつけるハリサシガメ幼虫だが……脱皮のとき、背中のデコ素材はどうするのだろう?──というのが、咋シーズン解明できなかった謎の1つだった。昨年は羽化後の抜け殻を見ることができたが、抜け殻にはデコ素材が残されていたので驚いた↓。


ハリサシガメは成虫になるとコーティング&デコレーションをしない。だから抜け殻にデコ素材が残されているのはわかるが……背中を割って成虫が出てくる際にデコ素材はジャマにならないのだろうか?
そして考えたのが、「羽化」ではなく「脱皮」の場合。またコーティング&デコレーションをしなければならない幼虫の場合は、どうするのだろう? 脱皮前のデコ素材は古い表皮の──抜け殻となる部分の外側に貼り付いている。脱皮したばかりの新幼虫は当然「丸裸」のはずだ。コーティング&デコレーションの再開を始めるのはいつからなのだろう?
もしデコ素材で使われるのが「捕食した獲物だけ」だったとすると、脱皮直後はデコレーションなしで狩りをしなければならなくなる。狩りに必要な《隠れ蓑》ともいえる(?)隠蔽装備なしに「丸裸」で狩りをするというのは考えにくい。おそらく……脱皮をすると、体が固まった時点でアリのゴミ捨場に行ってデコ素材を調達するのではないか──そんな想像をしていた。ところが、実際は……。

デコ素材は再利用~驚きの脱皮



石垣の上に残されていたハリサシガメ幼虫の(羽化ではなく)脱皮の抜け殻↑。頭部背面から背中にかけて新幼虫が抜け出した裂け目が残されている。今年はいくつかこうした抜け殻を見ることができた。「!」と思ったのは、背負われていたはずのデコ素材がきれいに剥ぎ取られていることだ。ハリサシガメ幼虫は脱皮した後、抜け殻から、デコ素材を引きはがして再利用しているらしい。
考えてみれば《デコ素材の再利用》は合理的だ。その《荷移し》はどのように行なわれるのだろう? 背中が割れて脱皮する際にデコ素材はジャマになるだろうから、脱皮前に剥がしておいて、脱皮後に拾うのだろうか?
実際に脱皮のようすを見て確かめてみたいものだと思っていたところ、そのチャンスがおとずれた。


石垣の隙間でみつけた脱皮前の幼虫↑。実際は鉛直面で頭を下にとまっていた(画面左が下側)。これが、この後……↓。


予想もしていなかった《デコ素材をまといながらの脱皮》──そのため脱皮が始まったことにに気づくのが遅れてしまった。脱皮前の幼虫/脱皮後は抜け殻の脚の位置(矢印)は変わっていない。
この約30分後↓、体の色が濃くなりつつあるハリサシガメ幼虫。


脱皮前、デコ素材と新幼虫の背中の間には古い表皮(抜け殻)があって、これによって隔てられていたはずだ。なのに抜け殻を脱ぎ捨てるとデコ素材は、ちゃんと新幼虫の背中に移っている!?──何ともフシギな光景に見えた。テーブルクロスを敷いた食卓の上に食器や花瓶を並べ、一瞬でテーブロクロスだけを引き抜き、食器や花瓶を食卓の上に残す──そんな「テーブルクロス引き抜き」芸を連想してしまった。
この後の展開と思われるシーンは、時を前後して石垣の上で目撃していた↓(別個体)。


抜け殻がデコ素材にくっついてきてしまったようだ。テーブロクロスが引き抜ききれなかった形!?


このときの抜け殻は完全離脱した時点で両触角が折れていた──それだけ離脱に手こずったケースだったのだろう。まるで《抜け殻と新幼虫の間でデコ素材の奪い合いをしている》かのようで、これも何ともフシギな光景だった。
抜け殻もついでにデコってしまえば良さそうなものだが、苦労してまで切り離すのには理由があるのだろう。ハリサシガメ幼虫がアリとの接触で(ニオイで)バレないように体表面を土粒でおおい隠しているのだとすれば、自身の(ニオイのついた)抜け殻をデコらずに排除するのは理にかなっている。

凛々しい成虫は翅多型



体を覆い隠していた幼虫時代から一転!? ハリサシガメの成虫は凛々しく見える。濃淡のある黒い背中に逆「ハ」模様が美しい。前胸背の両側に突き出した突起(側角)や小楯板から突き出した厳めしい突起にも魅力を感じる。


ルックスが精悍になっただけでなく、動きも成虫は幼虫のときより俊敏になっている。これは《隠れ蓑》を捨て、獲物や天敵から見つかりやすくなったことを考えると当然なのかもしれない。なぜ成虫になって《隠れ蓑》を捨てたのかという疑問が湧くが……繁殖という重要な役割りを担う成虫では伴侶を見つけるさいに《隠れ蓑》はかえって障害になるのかもしれない。また、昆虫の成虫は飛翔能力を持つものが多いが、翅を開閉するときコーティング&デコレーションはジャマになるのではないか──という可能性についても当初は考えた。しかしこれまで僕はハリサシガメが飛翔したり飛ぼうとするところを見たことがない。ハリサシガメは飛ぶことができないのではないか……と(今のところ)思っている。
トレードマークの逆「ハ」模様がある翅だが、個体によって翅の大きさ(長さ)にはかなり格差がある(翅多型)。少なくとも短翅型の個体には飛翔力はなさそうだ。今年これまでに見られた成虫の中から↓。




短翅型と長翅型の2極に分化するのではなく、その中間型も存在している。同じ時期に同じ場所で発生しているのに、これだけ違うというのもフシギな気がする。前胸背の側角の間にある紋にも個体差がある。

前脚&中脚のレガースは保定用!?



ハリサシガメを観察していて気がついた、前脚と中脚の脛節(けいせつ)内側にある《脛(すね)当て》(レガース)のようなもの。これは成虫だけでなく幼虫にもある。ハリサシガメは成虫も幼虫もアリを捕食するが、狩りの際には前脚と中脚を使って獲物を押さえる。そのさいに小さなアリでもしっかり保定できるよう、ラバーのような(?)《脛当て》部分でグリップ力を高めているのではないかという気がする。


『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』(石川忠・高井幹夫・安永智秀/全国農村教育協会)には、クビアカサシガメ亜科(ハリサシガメ属が含まれる)の項目に特徴の1つとして「海綿窩が前・中脚脛節に存在する」と記されている。用途についての記述は無いが……《海綿窩》というのが、この《脛当て》のことなのだろうか。

成虫♂♀は腹の形が違う

最後にハリサシガメ成虫を見ていて気づいたオスとメスの腹の形の違い。




前回の記事で記したばかりなので、詳細は省くが、ハリサシガメこの体勢で交尾している姿をよく見る。オスの腹の湾曲は、この体勢でメスの腹の膨らみに対応した形のように見える。

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ハリサシガメの腹

オスとメスで形が違うハリサシガメの腹



暑い盛りには石垣では見かけることが少なくなっていたハリサシガメだが、涼しくなって戻ってきつつあるような。オスは長翅型・メスは短翅型であることが多いようだが、個体によって中間的なものもいたりする。ハリサシガメの成虫はオスとメスで腹の形に違いがあるようだ。


オスの腹は側方から見ると中央がくぼむ形で湾曲している。


オスの腹端は(メスにくらべ)膨らんでボリュームがある。


石垣すきまから出てきた短翅型のハリサシガメ成虫♀↓。




オスの腹がゆるい凹状なのに対してメスの腹は凸状。腹面を船底にしたボートのような形をしている。


メスの腹端はすぼまっていて、オスのようなボリュームはない。


中間型の翅をもったメス↓。


別の短翅型♀↓。やはり腹はボート型。


メスの腹の形は他のサシガメ・カメムシなどと比べて特に変わった感じはしないが、オスの腹の形はちょっとユニークな気がする。
8月下旬に拾ったハリサシガメ成虫♂の死骸で、オスの腹を再確認↓。




オスの腹が湾曲しているわけ?

ハリサシガメ♂の腹が湾曲しているのは、交尾の姿勢と関係あるのかもしれない。ハリサシガメの交尾はオスがメスを側面から抱えるようにして行なわれる。そのさい、メスの膨らんだ腹に沿うような形になっているようにも見える。


横になって背中をみせている長翅型の個体がオス↑。その向こうに伏臥(ふくが)姿勢のメスがいる。
別のハリサシガメ・ペア↓。


メスの膨らんだ腹を回り込むようにして腹端を接合するにはオスの腹は凹んでいた方が都合は良いはずだ。同ペアを角度を変えて──↓。


オスの腹の湾曲がメスの腹の膨らみに対応しているようにも見える。
ところで、このメスには翅が無い!?──一見、無翅型に見えるが、両翅は根元付近で欠けている(羽化後の欠損)。腹の縁にも外傷があって、草刈り機で傷つけられたのではないかと思っているのだが──このメスは何度か見たことがあった。


このメスを初めて見たのは8月中旬。8月下旬には交尾しているところを確認(【ハリサシガメのレガース】)。その後、石垣で単独でいるところも見ている。つまり少なくともこれが2度目の交尾ということになる。ハリサシガメ♀は交尾を繰り返し行なう(ことがある)ということがわかった。
ハリサシガメを見かける頻度を「成虫単独:交尾中」で考えてみると他のサシガメやカメムシなどと比べると、交尾中の頻度が高いように感じる。オスとメスが比較的狭いエリアに集中しているということもあるのだろうが、交尾している時間が長いことで、そのシーンを目にする機会も多いのではないかと思っている。
石垣で確認したペアが翌日も同じ場所で交尾していたこともあった。これも交尾が長時間続いていたのかもしれない。
ハリサシガメが他のサシガメよりも交尾時間長かったり交尾頻度が多かったりするのであれば、オスの腹の湾曲は交尾体勢を維持しやすいように適応した形──といえそうな気がする。
よく見かけるカメムシの交尾はオスとメスが反対方向を向いていることが多いが、それではサシガメの仲間ではどうなのか……と過去に撮った画像を確認してみた。オオトビサシガメ・ヤニサシガメ・シマサシガメはハリサシガメ同様、オスがメスの側面から抱きつくような体勢で交尾が行なわれるようだ。


オオトビサシガメ・ヤニサシガメ・シマサシガメなどではオスがメスの背中に(オンブバッタのように)乗っているところは時々目にしていた。しかしその体勢では交接はなくオスが他のオスからメスをガードするメイトガード的なものなのかもしれない。交尾そのものを見る機会はハリサシガメに比べて格段に少ない。オオトビサシガメやヤニサシガメの交尾を見ると↑、いささか不安定な体勢のようにも見える──この姿勢では長く続かず、それで安定するメイトガード・ポジションがとられるのではないかという気がしないでもない。こうしたサシガメ類のちょっとしんどそうな(?)交尾体勢を長く続けるにはハリサシガメ♂の腹の湾曲は適した形ではないかと思えてくる。
ハリサシガメ・ペアと1円玉↓(大きさ比較)。


少なくなったハリサシガメ幼虫



このところ目にする機会が減っていた幼虫。9月に入ってから見たのは(今のところ)この1匹だけ。




松葉を食べるウバタマムシ他

松の枝先で食事するウバタマムシ

先日、エノキの葉の上でウバタマムシの美麗個体を見かけたが、ウバタマムシの成虫が後食するのはマツ類の葉や樹皮らしい(幼虫はマツの枯木に穿孔するそうな)。ということで、本家の(?)ホストであるマツをのぞいてみると──、


マツの枝先に、松葉に隠れるようにウバタマムシがとまっていた。しかしこれでは何だかわからないので、もう少し撮りやすい角度を得るために枝をつかんで引き寄せたところ、ウバタマムシは動き始めて、球果(まつかさ)に移動──。


球果から、さらに枝をつかんだ僕の手に移動してきたので、全身ショットを。


他にはいないかと探してみると、近くの枝先に別個体が↓。


同じマツの別の枝先にもウバタマムシの姿があった↓。


こちらの枝先↓では、ウバタマムシがマツの葉をかじっていた。


ウバタマムシが松葉を食うシーンを見たのは初めて。
角度を変えて、松葉をかじるようす↓。


ヤマトタマムシがエノキの葉を食べるのは見たことがあったが……同じような体格のウバタマムシが細い松の葉にとまって食す姿が、これまでなんとなくイメージできずにいた。このシーンを見て「こんなふうにして食べるのか」と納得。

脱皮後のヤニサシガメ幼虫



マツといえば、ヤニサシガメ。ウバタマムシがいたマツで、まだ小さなヤニサシガメ幼虫も見ることができた。体の色はすでに黒くなっていたが(脱皮直後は淡い色をしている)近くに抜け殻があったので、脱皮してさほど経っていない個体だろう。




フトハサミツノカメムシ♀の歯状突起



サクラの幹には緑色が鮮やかなフトハサミツノカメムシのメスがとまっていた。ハサミツノカメムシの仲間は、オスには腹端に1対の突起があって、その形で種類を判別できるが、メスにはこの特徴的な突起がないのでまぎらわしかったりする。『日本原色カメムシ図鑑』(安永智秀ほか/全国農村教育協会/1993年)によると──フトハサミツノカメムシは《前胸背の後側縁に顕著な歯状突起があるので、雌でも近似種との識別は容易である》とのこと。撮った画像を拡大すると、それらしきものが確認できる。


もう少しこの《歯状突起》をアップで撮っておきたがったのだが……カメラを近づけると、このフトハサミカメムシ♀は飛び去ってしまった。
ちなみに、過去に撮影した──良く似たヒメハサミツノカメムシ♀↓。


ヒメハサミツノカメムシ♀↑の前胸背の後側縁に《歯状突起》はない。
ついでにハサミツノカメムシ♀↓。


ハサミツノカメムシ♀↑にも《歯状突起》はないのがわかる。
ちなみに、フトハサミツノカメムシのオスは腹端に太く短いハサミ(?)がある──これは咋年11月に撮ったもの↓。越冬前後の個体なので、黄葉したかのような色をしている。


『日本原色カメムシ図鑑』ではフトハサミツノカメムシについて《ツノカメムシ類のなかでは非常に少ない種である》と記されているが、時々みかける。

アカスジキンカメムシ5齢@ゴンズイ



先日、脱皮後の抜け殻落としを確認したアカスジキンカメムシがいたゴンズイにて。白い模様(成長すると広がる)部分が狭いのでまだ若い終齢(5齢)幼虫。





脱皮後の抜け殻落とし@アカスジキンカメムシ

アカスジキンカメムシ:脱皮後の《抜け殻落とし》



アカスジキンカメムシ幼虫が集まっていたゴンズイの葉──8月末に見た時には5齢(終齢)幼虫1匹と4齢幼虫が4匹とまっていたが、今回のぞくと5齢幼虫ばかり3匹になっていた。他のメンバーは……と周囲を見ると、隣の葉の裏に──↓、


脱皮直後のアカスジキンカメムシ5齢(終齢)幼虫と抜け殻があった。


この状況は、(個人的に注目している)《抜け殻落とし》が行なわれる前──これからそのシーンが展開されることが期待できる。
《抜け殻落とし》は、僕が勝手につけた呼び名で、脱皮後の幼虫や羽化後の成虫が抜け殻を落とす行動のこと。2012年にエサキモンキツノカメムシの羽化で初めて目にし、驚き、不思議に感じたものの、当時はその意味するところは想像できなかった。その後アカスジキンカメムシの羽化や脱皮でも《抜け殻落とし》を確認し、今は《自分や仲間が生活しているエリアから抜け殻を排除することで、寄生蜂・寄生蠅などの天敵に察知されるリスクを減らしたり、(抜け殻を残しておけば大挙してやってくる?)アリを避ける効果があるのではないか》と考えている──が、確証はない。
そんなカメムシの《抜け殻落とし》を観察するにはうってつけの状況──ということで、このアカスジキンカメムシ新5齢幼虫(と抜け殻)に注目した。
今年は5月に羽化後のアカスジキンカメムシの《抜け殻落とし》を確認しながらマトモな画像が撮れなかったので、この機会にちゃんと押さえておきたいしいう思いもあった──のだが……。
実は今回も《抜け殻落とし》は目の前で確認できたものの、例によってあっという間の出来事で、またしても撮り逃してしまった。
なので、《抜け殻落とし》が行なわれる2分弱前に撮っておいたシーンと、《抜け殻落とし》直後のピンぼけシーンを……画面の隅の数字は撮影時刻(時:分:秒)。


今回も《抜け殻落とし》は、何の予兆なく、あっという間だった。
《抜け殻落とし》をはたしたこの新5齢幼虫の体色の変化は、こんな──↓。


しばらくすると向きを変えた。


《抜け殻落とし》から1時間程すると黒い部分がだいぶ濃くなってきて、なじみのある模様がハッキリしてきた。


今回は(も)《抜け殻落とし》のシーンが撮れなかったので、以前撮った画像から、その行動がわかるものを──↓。


※↑【アカスジキンカメムシの抜け殻おとし】で観察した個体。

カマキリの抜け殻



抜け殻つながりで(?)、8月末に撮っていた、葉の上に残されていたカマキリの抜け殻。カマキリなら(肉食なのだから)脱皮したあと、抜け殻を食ったらよさそう(効率的)な気もするが……抜け殻はしばしば目にする。よく見るとこの抜け殻↑にはアリが1匹きていた。
こちらの抜け殻↓にはすでにアリが数匹きていた。


葉の上に残されたカマキリの抜け殻にアリが来るということは……カメムシの抜け殻も葉の裏に放置しておけば、それを見つけたアリが仲間を呼び大挙してカメムシの生活圏に押し掛けてくるかもしれない。そう考えると、アリ対策的な意味でも《抜け殻落とし》はカメムシにとって意味があるように思えてくる。


穴を掘るヒガシニホントカゲ

穴を掘って地中の幼虫をゲット!



地面に穴を掘っているヒガシニホントカゲがいた。意外に深くもぐっている。エサ探しで落ち葉の下にもぐり込む姿はよく目にするが、穴を掘っているのを見るのは初めて。この光景を見て頭に浮かんだのが「産卵するために穴を掘っているのだろうか?」という可能性。カメレオンなど穴を掘って産卵するトカゲがいることは知っていたが……ヒガシニホントカゲも穴を掘って産むことがあるのだろうか?


穴を掘っていたヒガシニホントカゲが顔をのぞかせた。ちょうど近くに別のヒガシニホントカゲが近づきつつあったのだが、穴掘りをしていた方がそれを見つけ、追いまわす場面が展開。追い返して戻ってきたヒガシニホントカゲは同じ場所で穴掘りを続行。そして間もなく地中から幼虫をくわえて出てきた──穴掘りは地中の獲物を捕まえるために行なっていたのだ。ヒガシニホントカゲは発掘した獲物をくわえて(安全な)石垣の隙間へ移動。


ヒガシニホントカゲは発掘した幼虫は、地中で草の根を食うコガネムシ類の幼虫だった。
※【訂正】ヒガシニホントカゲが掘り出した幼虫はハナムグリ亜科のもので腐植土など(枯れ葉、朽ち木なども)を食べているそうです)
これまでこの石垣周辺ではミミズやコガネムシ類の幼虫をくわえたヒガシニホントカゲの姿をしばしば目にしてきた。ミミズはまだ地表でみつかることもあるが、地中にいるはずのコガネムシ類の幼虫はどこで見つけてくるのだろうと不思議に思っていた。
その謎がこれで解けた──《ヒガシニホントカゲは穴を掘って獲物を捕まえることがある》。
しかし、いったいどうやって地下のコガネムシ類幼虫の存在に気づいたのだろう? 幼虫の糞やそれが分解したときのニオイでも察知しているのだろうか? それとも幼虫が地下で草の根を齧る振動でも察知しているのだろうか?
帰宅後、調べてみると、ニホントカゲの穴掘り行動は珍しいことではないらしい。飼育下でも穴掘り行動をするようだが……餌がいなくても穴を掘るということは、必ずしも獲物の気配を察知して掘るわけではないのだろう。穴掘りは餌探しの行動の一環なのかもしれない。
さて、石垣のすきまに移動したヒガシニホントカゲだが……獲物はけっこうデカい。呑み込みにくいようで、何度もくわえなおしていた。


幼虫は太くて呑み込めないのではないか……と心配になったが、頭から呑み込み始めると、そのまま一気に丸呑みしてしまった。


コガネムシ類の幼虫をのみ終えようとしているヒガシニホントカゲ。


長いミミズも丸呑みするヒガシニホントカゲ



こちらでは、ヒガシニホントカゲがミミズを捕らえていた。画面隅の数字は撮影時刻(時:分:秒)。














長いミミズを2分半ほどで完食。噛み切ったりせずに丸呑みだった。

ひからびたミミズ(?)も獲物のうち!?



ひからびたミミズらしきものをくわえてハイテンションのヒガシニホントカゲ。先月も同じような光景を目にして驚いた(*)。ヒガシニホントカゲやニホンカナヘビが食すのは生きた獲物というイメージがあったからだ。すっかりひからびてしまった干物にまで手を出すとは意外だった。このヒガシニホントカゲは干物を何度もくわえ直し、ふりまわしていた。欠けて短くなった部分を食べていたようだが、獲物をくわえたまま草陰に姿を消したので完食できたのかどうかは分からなかった。


ヒガシニホントカゲのハンティングの対象範囲は意外に広そう!?