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2017年07月の記事 (1/1)

エゴヒゲナガゾウムシ白雲木育ちは大きい!?

ハクウンボク育ちのエゴヒゲナガゾウムシは大型化!?



エゴノキをホストとするエゴヒゲナガゾウムシ──が、ハクウンボクの果実にも産卵していることを前回記した。


定番のエゴノキの実に産卵する♀↑と、より大きなハクウンボクの実に産卵孔をあける♀↓


前回の記事に対し、虫屋さんから《一頭当たりの餌の量は実のサイズに比例→よりでかいハクウンボクで育った方が[よりでかくなれる]のでは》というようなコメントをいただいた。
もっともなハナシで、調べてみると、こんなサイトがみつかった↓。
エゴヒゲナガゾウムシの生活史
これによると、エゴノキの種子あたり幼虫1個体のみ成長が可能で、《体の大きさは種子の大きさによって制限されている》とのこと。《幼虫は種子の内容を全て摂食して成長し、種子の中で幼虫越冬する。翌年の初夏に蛹化し羽化して、種子に脱出口を開け出現する》そうだ。

《体の大きさは種子の大きさによって制限されている》のであれば、エゴノキよりも大きなハクウンボクの種子で育ったエゴヒゲナガゾウムシは、より大きくなれるはず──それを確かめるために、エゴノキとハクウンボクそれぞれの木の下に落ちている種子の中から脱出孔のあるものを拾って、その大きさを比較してみることにした。


例によって直径20mmの一円硬貨との比較。とりあえず見つかった種子を比べてみると↑(上段3つがエゴノキの種子/下段3つがハクウンボクの種子)──小さな種子の脱出孔は小さく、大きな種子の脱出孔は大きい傾向がありそうだ。大きなハクウンボクの種子の方が脱出孔も大きい。脱出孔が大きいということは羽化した成虫も大きいということだろう。


大きな種子で育った大きなオスは《離眼距離》も大きいだろうしオス同士の争いで有利なはず。大きなメスはより多くの卵を産めるだろう(先のサイトでは《生涯で17個産み得る》と記されている)。
エゴノキに比べればハクウンボクは少ないし、大きな果実に産卵孔をあけるのはメスとって大変かもしれないが……ハクウンボクで育った個体はエゴノキで育った個体よりも大型化しやすく、そのぶん優位といえそうだ。
ハクウンボクは房状に咲く花がみごとで、連なる果実のボリュームや大きな葉も立派──エゴノキよりもゴーチャスな印象を受ける。そこで育つエゴヒゲナガゾウムシも裕福なのかもしれない。多数派のエゴノキ育ちを庶民とするなら、小数派のハクウンボク育ちは物資豊富な富裕層──そんな感じがしないでもない……。

※【追記】ハクウンボクとエゴノキの果実が落ちていたのでエゴヒゲナガゾウムシの産卵痕があるものを比較してみた。




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エゴヒゲナガゾウムシ@ハクウンボクでも

エゴヒゲナガゾウムシ@エゴノキ

エゴノキの枝にぶさ下がる丸い果実。よくを見ると孔があいたものがあちらこちらに──これはエゴヒゲナガゾウムシ(ウシヅラヒゲナガゾウムシ)の産卵痕。探すとすぐに作業中のエゴヒゲナガゾウムシが見つかった。






エゴヒゲナガゾウムシはメスもオスも平たい顔をしており、ちょっと変わっている。オスはさらにユニークで、左右の眼が顔から飛び出して離れている。


エゴヒゲナガゾウムシのメスはこんな顔↑だが、オスはこんな顔↓。


オスの眼の位置はメスとは違うスペシャル仕様!? オスはエゴノキの果実で産卵行動をとるメスを見守っていることが多いが、ライバルのオスが近づかないようにスタンバっているのだろう。オスの眼の位置が高く離れているのは丸い果実の陰から近づくライバルをいち早く見つけられる監視台仕様なのではないか──という気もする(個人的想像)。
また、メスをめぐってオス同士が顔を突き合わせて争うことがあるが、このとき眼の離れぐあい──《離眼距離》を競い合っているようにも見える。オス同士が体の大きさ(強さ)をアピールし合って勝負を決することは動物界にはよくあることだ。実際に闘って怪我をしたり体力を消耗するよりは、「大きさ勝負」で勝敗を決した方が手っ取り早くリスクも少なくてすむのかもしれない。
エゴヒゲナガゾウムシ♂の場合は、顔をつき合わせ、眼の離れ具合を比べて互いの大きさ(強さ)を判断している──顔が平たいのも顔を密着させて《離眼距離》を比べやすくするための構造だと考えれば合点がいく。

こんなオスに見守られて(監視されて?)メスはエゴノキの果実を齧り、産卵のための孔をあける。孔は種子まで達し、卵は種子の中に産みつけられる。やがて果実の表面が剥がれ、種子は落下。エゴヒゲナガゾウムシの幼虫は種子の内部を食べて育つ──ということらしい。


なんちゃってエゴノキ!?ハクウンボクでも産卵

ところで、エゴノキの近くにエゴノキの果実に似た実をつける木があった。丸い果実はエゴノキよりもやや大きめで、つき方も違っている(房状に連なっている)。葉の形や大きさも違うのでエゴノキではないことは植物にウトい僕でもすぐわかる。が、この「なんちゃってエゴノキ」の果実にもエゴヒゲナガゾウムシの産卵痕と思われるものがついていた。
エゴヒゲナガゾウムシのホストはその名のとおりエゴノキ──だけだと思っていたので、意外に感じた。探して見ると産卵孔をあけているエゴヒゲナガゾウムシ♀の姿が確認できた。




高い位置で撮りづらかったのだが……とりあえず証拠画像↑。帰宅後調べてみると「なんちゃってエゴノキ」は「ハクウンボク(白雲木)」というらしい。エゴノキと同じエゴノキ科エゴノキ属の植物だとわかった。どうりで果実が似ているわけだ。エゴノキとハクウンボクの木の下に落ちていた種子を拾って大きさを比較してみた↓。


果実と同様、種子も形や色はエゴノキに似ているが、ハクウンボクの方が大きい。ハクウンボクの種子には脱出孔があけられているものがあったが、これがエゴヒゲナガゾウムシのものであったとすれば、ハクウンボクでもちゃんと育つということだろう。
エゴヒゲナガゾウムシにエゴノキ以外のホストがあるとは知らなかった。

ハリサシガメ:成虫&幼虫

7月下旬から成虫が見られるようになった石垣上のハリサシガメ。






まだ成虫は少なく幼虫の方が多い。晴れた日・暑い日には焼けた石垣は閑散としているが、雨上がりや曇って気温が低めの日には見ることができる。




アリの通り道のそばで狩りをしていたハリサシガメ幼虫↓。


小さなアリを捕らえ、アリの列から少し離れて食事をしているところ。例によって行き交うアリはハリサシガメ幼虫に気づかぬように無反応。


アリやハリサシガメが見られるコンディションではヒガシニホントカゲの活動もさかん。ゴキブリを捕らえたヒガシニホントカゲ↓。




逃亡ヘビ事件

身近でもあった逃亡ヘビ事件

動植物園で行方不明になっていたカーペットニシキヘビがみつかったというニュースがあった↓。

<東山動植物園>逃亡のニシキヘビ、成長して戻る
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170726-00000081-mai-soci

行方が判らないでいる間にヘビは自力でエサを捕り、成長した姿で見つかったという。
この記事を読んで、昔、友人が飼っていたアオダイショウの逃亡事件を思い出した。
僕が小学6年生だったとき、クラスメイトが若いアオダイショウを捕まえてきて飼育を始めた。当初「なかなかエサを食わない」と心配していたが、思いのほか元気(?)で脱走。けんめいに捜索したものの見つけることができず、あきらめていたところ、後日、近所の家で発見されたという吉報(?)がもたらされた。喜び勇んで(?)引き取りに行ったというのだが……逃亡アオダイショウが発見された状態というのがまことにドラマチックだった。

その家ではカナリアを飼っており、その鳥カゴの中で問題のアオダイショウは発見された。鳥カゴの格子の隙間から入り込み、カナリアを捕食していた。ヘビは獲物を丸呑みにするので、当然食後は腹が太くなる。鳥カゴに入り込むことはできたアオダイショウだったが、カナリアを呑み込んでしまうと膨れた腹が格子につかえて出られなくなった……そんな状態がカナリアの飼い主によって発見されたという。
僕はそのクラスメイトに顛末を聞いただけで、現場は見ていないのだが……想像するとスゴイ状況だ。

カナリアの飼い主がいつものように鳥カゴをのぞきこむと……そこにいたのは愛しいカナリアではなく腹の膨れたヘビだった!?──そのときの衝撃はいかほどのものだったか?
失ったペットが見つかったということで引き取りに行ったら、その家のペットを食っちゃっていたというのも、かなり気まずい状況だ。
ペットを失った飼い主とペットを取り戻した飼い主──悲しみや怒り・喜びや申し訳なさが渦巻く両者の間で、どのように逃亡アオダイショウの引き渡しが行なわれたのか……その場の空気を想像するといたたまれなくなる。

逃亡ヘビが無事に(?)見つかる──この記事を読んで、むかし級友から聞いた「アオダイショウ逃亡事件」を久しぶりに思い出したのであった。


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ハートカメムシとブロークンハート亀虫!?

♥カメムシことエサキモンキツノカメムシ

ハート模様のニシキゴイの話題がニュースになっていた。《ハート模様のコイを見つければ恋愛成就につながるというジンクス》うんぬんかんぬん……。
ハート模様には人気があって、ハート模様のある生き物は、しばしば話題になりがちだ。とかく嫌われがちなカメムシでさえ──ハート模様を持ったエサキモンキツノカメムシは注目されやすく、好感も持たれやすいらしい。ブログなどにもちょくちょく登場している。
そんなエサキモンキツノカメムシの新成虫を、このところよく見かける。


背中の♥型の紋がトレードマークのエサキモンキツノカメムシ成虫。《ハート模様の昆(婚)虫を見つければ恋愛成就につながるというジンクス》──なんてハナシがあってもよさそうな気がしないでもない?
ただ、この紋には個体差があって「きれいな♥」はそう多くない。
♥紋の上部切れ込みちょっと浅めの個体↓。


切れ込みがほとんどなくてハート模様というより丸みをおびた逆三角形──(エサキのつかないただの)モンキツノカメムシとまぎらわしい紋の個体↓。


逆に切れ込みが激しく、♥紋が2つに裂けた──ブロークンなハート模様の個体もいたりする↓。


別個体のブロークンハート模様↓。


《ハート模様を見つければ恋愛成就につながる》というジンクスがありなら……《ブロークンハート模様を見つけると破局につながる》なんてジンクスも成立するのであろうか……。

エサキモンキツノカメムシ成虫の臭腺開口部(開孔部)



♥紋で注目されがちなエサキモンキツノカメムシ。昆虫でありながら卵や孵化した幼虫を守るという♥紋にふさわしいアッパレな習性も好感が持たれやすい理由かもしれない。
ただ、カメムシなのでいわゆるカメムシ臭を放つ。このニオイを放つ孔──臭腺開口部(開孔部)は、幼虫では腹の背面にあり、成虫になると胸の腹面側に移動する。


もう少しアップで──、


成虫の臭腺開口部(開孔部)は中脚のつけ根と後脚のつけ根の間──後胸の腹面に位置している(1対)。

緑の体に赤いハサミ:ハサミツノカメムシ成虫♂



エサキモンキツノカメムシの近くにいたハサミツノカメムシ。


みずみずしい緑色と赤い側角(前胸両側に突き出した赤い突起)&ハサミのような腹端の突起が鮮やか。


腹端に《ハサミ》があるのは成虫♂だけ。♀にはない。目立つ特徴だが何のためのものなのか(僕には)よくわからない。ネット上には交尾の際に♀をはさむ(逃がさないようにつかむ)ために使われるというような情報もあるが……僕が見た限り、つかんでいるとは思えず……そもそもこの《ハサミ》は運動器官ではないのではないかという気がしている(*)。

ハートフルな亀虫エサキモンキツノカメムシ ※卵&幼虫を守る♥カメムシ
ハート亀虫羽化 見守るキリスト!? ※エサキモンキツノカメムシの抜け殻落とし2012年
エサキモンキツノカメムシの抜け殻落とし他 ※抜け殻落とし&モンキツノカメムシとの相違点
ツノなしツノカメムシ!? ※ツノのないエサキモンキツノカメムシ
モンキツノカメムシとエサキモンキツノカメムシ他 
ハート紋のモンキツノカメムシ&… ※モンキとエサキモンキの相違点
レッドV:ヒメハサミツノカメムシ ※ハサミツノカメムシのペア他
ツノカメムシの異種ペア

ベールを脱いだハリサシガメ

今シーズン初のハリサシガメ成虫



土粒やゴミ、アリや昆虫の残骸などをまとって体を覆い隠していたハリサシガメの幼虫だったが──成虫ではその秘密のベール(?)を脱いで全身をあらわに。本日、今シーズン初の成虫を確認。


「ハリサシガメ」の「ハ」を逆さにしたような模様がトレードマーク。


幼虫時代は隠し続けていた体を惜しげもなく披露──1年ぶりに目にした美しく凛々しい姿。


背中(小楯板)から突き出したツノのような突起や前胸背の複雑な立体模様、両側の突起(前胸背側角)などもコッていて味わいがある。逆「ハ」模様のある翅は個体によって大きさにかなりのバラツキがある(翅多型)。


きょう見ることができたハリサシガメ成虫はこの1匹だけだったが、とりあえず羽化が始まっていることを確認できた。
この石垣でハリサシガメの幼虫を確認できたのは5月末だった。それから7月の第1週くらいまで観察ができたが、その後、石垣から姿を消して全く見なくなっていた。ハリサシガメだけではなく、ヒガシニホントカゲも姿を消し、アリの活動も少なくなっていたので、暑さのため(陽があたる石垣は温度が上がるため)、活動時間を変えたか、ふきんの涼しい場所に移動していたのかもしれない。しかし、去年初めてハリサシガメ成虫&幼虫を見たのは7月下旬──今年もそろそろ成虫が出現しているのではないかとは思っていた。今日は曇って気温も低めだったので、あるいは出ているのではないかと期待して見に行ってみたしだい。
1年ぶりに目にしたハリサシガメ成虫の姿に、なんだか懐かしいものを感じてしまった。
しばらく見なかった幼虫の姿も1匹確認↓。


石垣にはヒガシニホントカゲの姿もいくつか見られた↓。


ヒガシニホントカゲがたくさん見られるような気象の日にはハリサシガメも見ることができるだろう。


寓話的ヤスマツトビナナフシのオス

ヤスマツトビナナフシのメス



葉の上にトビナナフシがとまっていた。狭山丘陵で見かけるトビナナフシはニホントビナナフシのメスが多い。見慣れたニホントビナナフシ♀に比べ、なんだかちょっと間が抜けた感じ? そう思ってよく見ると……眼の後ろからのびるラインがない──ヤスマツトビナナフシ♀だった。ヤスマツトビナナフシは単為生殖をする昆虫で、オスはまだ見つかっていないらしい。「もしも、未知のオスと遭遇したら……誰も見たことがないヤスマツトビナナフシ♂だと同定できるのだろうか?」──そんなコトをぼんやり考えながら炎天下を歩いていると、例によって(◎)暑さで溶けだした脳味噌にヤスマツトビナナフシのオスをめぐって妄想的イメージが展開した……(後述)。
ちなみに、狭山丘陵でよく見られるニホントビナナフシ♀はこんな姿↓。


日本には3種類のトビナナフシ(ニホントビナナフシ・ヤスマツトビナナフシ・シラキトビナナフシ)がいるが、オスが見つかっているのはニホントビナナフシだけだという(トビナナフシ亜科ではなくヒゲナナフシ亜科にタイワントビナナフシというのがいるが、この種ではオスはごく稀)。
オスが見つかっているニホントビナナフシでは、オスはメスよりもぐっと小さく、翅や前脚が長い──まるで別種のように見える↓。


『ナナフシのすべて』(岡田正哉・著/トンボ出版/1999年)によると、ニホントビナナフシは屋久島以南では両性生殖・九州以北では主に単為生殖すると考えられているそうな。Wikipedia情報では《本州の個体は単為生殖を行う》とのこと。
だから、いないと思っていた東京で初めてニホントビナナフシのオスを見たときは驚いた。さらに12月の東京で交尾しているのを確認した時には仰天した↓。


温暖な地域ではオスが出現し両性生殖し、北上するとメスだけの単為生殖となる──とみられていたニホントビナナフシのが、どうして冬の東京でペアになっていたのか……。
ニホントビナナフシには驚かされることが多い。オスとメスのパーツが混在する雌雄モザイク個体を見つけた時もビックリした。


この個体↑は頭部だけ見るとメスだが、体はほぼ右半身がオスで左半身がメスの特徴を持っていた。オスはメスよりも小ぶりだが、前胸はオスである右で短くなるためか右側に湾曲している。翅や前脚はオスである右側の方が長かった。
翌年みつけた雌雄モザイク個体では、もう少し複雑にオスとメスのパーツが混在していた↓。


また、ニホントビナナフシ♀は緑色だとばかり思っていたが、黄色い個体もいくつか見たことがあり、「へぇ!?」と思ったことがある。


『ナナフシのすべて』(岡田正哉・著/トンボ出版/1999年)には《ヤスマツトビナナフシ、ニホントビナナフシ、シラキトビナナフシのメスはどれも緑色で、体の形もたがいによく似ています》と記されているが、遺伝的な欠陥など(?)で青の色素が作れないと黄色になるのだろうか? イエロー個体はずいぶん印象が変わって見える。
トビナナフシの仲間も、なんだか不思議な昆虫だ……ということで、(どうでもいい)ヤスマツトビナナフシ♂妄想!?

寓話風妄想:ヤスマツトビナナフシのオス

あるところにたいそう昆虫好きの王様がいました。昆虫を収集するのが王様にとっての最大の関心事。きれいな昆虫・珍しい昆虫はもちろんのこと、地味で小さな昆虫でも集めずにはいられません。お城には専用の標本展示室がありましたが、それも手狭になってきて拡張することに。それにともなって、国中に生息しているありとあらゆる種類の昆虫のオスとメスをコンプリートしようと王様は心に決めました。

昆虫に詳しい学者・採集屋を城に集め、王様は命令しました。
「新たな標本展示室ができるまでに、国内に生存する全ての昆虫のオスとメスを採集するように! 目的を果たすことができれば皆に褒美をやろう。珍しい虫・綺麗な虫・おもしろい虫を見つけてきた者にはさらにボーナスを弾む。しかし、もし1種類でもオス・メスが揃わなかったら、ムチ打ちの刑に処す」
というわけで、分類学者によって昆虫リストが作成され、採集屋にノルマが振り分けられました。
虫屋のAも招集をかけられた1人。当初、「好きな昆虫採集をしてお金がもらえるなんてラッキー」と喜んでいましたが、ノルマのリストを受け取って青ざめました。ヤスマツトビナナフシが入っていたからです。この昆虫は単為生殖をする種類で、これまでオスは1匹も見つかっていません。「オスを見つけるなんて、無理に決まっている!」
しかし新たな標本展示室ができるまでに見つけなければムチ打ちが待っています。Aは途方に暮れました。じっさいにノルマ・リストが次々にクリアされていく中で、ヤスマツトビナナフシのオスだけは見つからず……不安なまま、期限は近づいてくるのでした。
そして迎えた期限の日──。
王様の前に立ったAは布にくるんだ標本箱を抱えていました。
「王様、とても珍しい昆虫を採集することができました。これまで1匹も見つかっていなかったヤスマツトビナナフシのオス──珍品です」
「ほう!」王様は目を輝かせました。
「希少というだけではありません。じつに変わった特徴を持っており、使いようによっては役に立つ昆虫かと」
「ほほう!? かわった特徴とな?」王様は身を乗り出しました。「どんな特徴じゃ?」
「メスは普通に誰にも見えるのですが……オスは《愚か者には見えない》という、とてもユニークな特徴を持っているのです。これまでオスが見つからなかったのも、これに関係しているのかもしれません」
「《愚か者には見えない》とな?」
「はい。物事の本質、真の姿は賢い者には見えるのに、愚か者には見えない──そんなことは多々あります。ヤスマツトビナナフシ♂は、そんな賢い者の目にのみ見えるつりくのようです」
「ううむ、それは変わっておるな。で、役に立つというのは?」
「《愚か者には見えない》ヤスマツトビナナフシ♂は、いってみれば、賢さをはかる物差し。標本展示室において家来の反応をうかがうのです。『見えない』という愚か者をクビにしていけば、賢い者ばかりが残り、家来の質を高められるでしょう」
「なるほど! 名案だな。今まで、虫を何かの役に立てることなど考えもしなかった」王様の声も期待にはずみます。「その虫をここへ」
Aは抱えてきた標本箱の覆いをとって王様の前へ進み出ました。
さしだされた標本箱をのぞき込んで王様は息をのみました。王様には標本箱がカラに──《愚か者には見えない》という世にも不思議なヤスマツトビナナフシ♂の姿が見えなかったのです。
「いかがです。すばらしいでしょう?」王様の絶句を感激と誤解したのかAは満足そうに笑みをうかべています。なんと応えたものか戸惑った王様は、わきから真剣な顔で標本箱をのぞき込んでいる大臣に気がつきました。
「どうだね、大臣?」王様は所感を大臣にふりました。大臣にも、実は何も見えていなかったのですが……しかし、「見えません」などと応えてしまったら……愚か者の烙印を押されてクビにされてしまいます──それを恐れた大臣は「た、たしかに見事ですなぁ」とごまかして王様の顔色をうかがいました。大臣が「見えた」のに、王様が「見えない」と言ってしまったら、「王様は大臣よりも愚か者だ」ということになってしまいます。家来の間にそんな噂が広まってしまうことを王様は恐れました。「うむ。すばらしい。これほどの昆虫は、そうはいまい」王様はカラの標本箱を受け取り、大げさに喜ぶふりを続け、大臣や家来もそれに合わせて「見える」ふりをしました。こうしてAはムチ打ちをまぬがれ、褒美を得て帰ることができましたとさ。

     *     *     *     *     *

『裸の王様』の《バカには見えない服》──からの連想。ありもしない(存在しない)服が見えているフリをしてしまう王様や大臣なら、そこにいない(存在しない)虫が見えるとノッてしまうのではないかという発想。そのために起こるエピソードも思い浮かんだりしたのだが……長くなるので割愛。おもしろいオチでキメられればよかったのだが……今回それはなし。暑さで溶けかけた脳味噌にわいたイメージということで。



ヒメエグリバのトリックアート

まるで枯葉!完成度の高い擬態



緑色の葉の中に1枚だけ枯れて縮れた葉がひっかかっているように見える……。


枯れてカールした葉に見えたのは──↓。


ヒメエグリバは枯れた葉に擬態した蛾。周囲の葉が緑だったので目につき、知っていたからヒメエグリバだと判ったが……これが枯葉にまぎれていたら気づかなかったろう。枯葉チックな色や模様には個体差があるが、この個体は単に色合いが枯葉っぽいというだけではなく、こげ茶色の(暗い色の)部分が《枯れてカールした葉のくぼみにできた影》のように見える。これはもはや、平面上に実在しない立体構造を描き出すトリックアート──この個体はヒメエグリバの中でも擬態の完成度が高い部類といえそうだ。


ヒメエグリバを背面から見ると──くぼんで影なったように見えた部分が焦茶色の模様であることが判る。
接写をしているとヒメエグリバが体を起こした。


横から見るとやはり焦茶色の部分がくぼんで影になっているように見える。さすがに立ち上がって脚があらわになると蛾だとわかる──と思ったのが伝わったわけではないだろうが……ヒメエグリバは前脚を隠すポーズに転じた↓。


なるほど、前脚を隠した方が(昆虫であることがバレにくく)枯葉っぽい感じがする。徹底した擬態っぷりに感心するばかり。
ヒメエグリバ成虫はブドウ・モモ・カンキツ・ナシなどの果実を吸汁するらしいが、幼虫時代の食植物はアオツヅラフジ。ちなみに幼虫はこんな姿↓。




奇妙なセモンジンガサハムシの蛹



サクラの葉の上に、なんともユニークな造型デザインのイキモノが!?
……ということで、セモンジンガサハムシ。

黄金のX紋がトレードマークのセモンジンガサハムシ成虫



セモンジンガサハムシといえば、まず思い浮かぶのが《背中にきらめく金のX紋》↑──成虫の姿だろう。サクラ(食植物の1つ)の葉の裏側にとまっているのをよく見かける。


葉の裏にいることが多い成虫だが、葉の表に出ていると日光を反射して金ピカ感が増す。


触角をのぞかせているときはよく動き、飛んだり落ちたりして、なかなかじっくり撮らせてくれない。
撮ろうとして葉をつまんだら、てのひらに落ちてきたセモンジンガサハムシ成虫↓。


触角を透明シールドの内側に収納して警戒するセモンジンガサハムシ成虫。光を反射する金・光を吸収する黒・光を通す透明な部分のとりあわせが美しい。


ユニークな円形のボディーラインは、脚や触角を収納して葉にピッタリはりつくための構造だろう。岩に貼り付くアワビのように葉に密着することでアリなどの外敵をシャットアウトするシールド効果がありそうだ。ふちが透明なのは防壁内から外の様子をうかがうためかもしれない。


トレードマークの《金のX紋》だが、羽化して間もない新成虫には金色の輝きはない↓。


この新成虫は、透明シールドの一部がめくれていた。


金色があるとないとではずいぶん印象が変わる。


金色が発色するまで(羽化してから)20日ほどかかるらしい。《金のX紋》が出ていない新成虫がみられるということは、羽化が最近行なわれているということだろう。探せばユニークな蛹が見つかるかもしれない?

風変わりな抜け殻と幼虫



──ということで、桜の葉の上にセモンジンガサハムシの蛹を発見!──と思いきや、抜け殻だった。


背中に幼虫時代の抜け殻や糞とおぼしきものをを背負っているが、腹端に前回の脱皮殻、その先に前々回の脱皮殻とつながっているようだ。脱皮のたびに尾の先端に節(脱皮殻)を増やしていくガラガラヘビを連想してしまった。


ミが入った(羽化前の)蛹はないか周囲を探すと、幼虫が見つかった。


パッと見、どちらが頭か判らないが、腹端からつながる脱皮殻の並びから察するにこの画像↑では右が頭。体側に並ぶ白い点は気門(呼吸ための孔)だろう。
探すと別の場所でも、桜の葉の表面にとまった幼虫を確認できた↓。


この画像↑では画面左側が頭。さらに探してみたが、この日は蛹を見つけることはできなかった。

なんともユニークなセモンジンガサハムシの蛹

幼虫がいたのだから、蛹を見るチャンスはあるだろう──そう思って、1匹目の幼虫を見つけた場所に3日後、でかけてみると↓。


幼虫を確認した枝でセモンジンガサハムシの蛹を発見! 3日前の幼虫が蛹になったものかもしれない。


それにしてもユニークな造型デザインには見入ってしまう。この角ばった装飾だらけの複雑きわまりない輪郭の蛹から滑らかな円形の成虫が羽化するのがまた不思議だ。


蛹を見ると頭部をおおう前胸の透明シールドの部分はもうだいぶ出来上がっている。中胸から腹にかけても透けたヒレのようなものが連なっている。幼虫時代、体側に突き出していたトゲドケ突起が展開して透明なヒレになっているように見える。この透明なヒレがさらに展開してつながると成虫の上翅から張り出した透明シールドになるのだろうか。


セモンジンガサハムシは成虫自体も小さい(5.5~6.5mm)ので蛹も小さい。


セモンジンガサハムシは成虫の美しさにも魅力があり、蛹の摩訶不思議な造型にも魅かれるものがある。そして、この蛹からあの成虫が誕生する(羽化する)というのが、また興味深い。
糞にまみれ過去(脱皮殻)を背負い棘だらけで角を立てまくっていた姿から、一転して、角のとれた丸く美しい姿へと変身をとげる(解脱?)──セモンジンガサハムシを例えに使った説法があっても良さそうな気さえしてしまう。

【追記】セモンジンガサハムシ蛹の背中

その後、同セモンジンガサハムシ蛹をのぞいてみると、背負っていた抜け殻(&糞)がズレていたので、改めて撮影した画像を追加。




捕食したアリをデコるハリサシガメ幼虫

捕食したアリを後脚でデコるハリサシガメ幼虫



土粒をまとって体をおおい隠し、狩ったアリの死骸などを背負うユニークな捕食性カメムシ──ハリサシガメの幼虫。5月末に確認したときには小さかった幼虫もだいぶ大きくなってきた(まだ小さな個体も混在)。当初は幼虫が背負っていたアリは小さいものが多く、大きめのアリのパーツは、おそらくアリの巣から廃棄された残骸(体のごく一部)だった。それがこのところ、大きめのアリの全身骨格をデコレーションした幼虫が見られるようになってきた。これは大きめのサイズのアリも捕食できるほどに成長したということなのだろう。
しかし大きくなったということは、(全身を完全偽装しているとはいっても)それだけ目立ちやすくなったともいえる。同じ石垣で昆虫を狩る姿がしばしば見られるヒガシニホントカゲにバレやしないか心配になったりもするが……。


こんな感じ↑でハリサシガメ幼虫とヒガシニホントカゲのニアミスはしょっちゅう。ところがトカゲはハリサシガメ幼虫に全く無反応。気がつかないのか、エサ(昆虫)として認識していないのか──いずれにしてもハリサシガメ幼虫を完全スルー。


石垣の隙間でみつけたハリサシガメを観察していた時も──↓。


ヒガシニホントカゲ♂がフレームイン↑。わかりにくいが画面右奥で、ハリサシガメ幼虫が大きめのアリをかかえ食事中。ズームアップすると↓。


土粒コーティングの隠蔽効果で輪郭がわかりにくいが……右を向いたハリサシガメ幼虫が前脚でアリをかかえ、その腹に口吻を刺している。
じつはこのハリサシガメ幼虫を見つけた時は、背中のデコレーションが貧相なので脱皮後の抜け殻かと思ってしまった(幼虫は脱皮すると抜け殻からデコレーション素材を剥ぎ取って再利用するので、抜け殻にデコ素材は残らない)。抜け殻と誤認して回収すべく細い棒でかき出そうとしたところ動いたので生きた幼虫だと気づいた。体のかげにかくれていたアリがのぞいて食事中だったことを知った。幼虫は1度アリから離れてしまったのだが、見守っていると食事を再開──そこへヒガシニホントカゲ♂がフレームインしてきたというしだい。トガゲはハリサシガメ幼虫に気づくことなくエサ探しに(?)出かけて行った。


食事中のハリサシガメ幼虫がいたのは、こんなところ↑──石垣の隙間の奥で、やや暗い。撮影アングルは限られ、接写しようと近づくとカメラが石垣の隙間にフタをする形となり日光がさえぎられてますます暗くなってしまう……撮影条件はイマイチだったのだが、この個体に注目。捕らえたアリが大きかったので、食後のデコレーション行動が確認しやすいのではないかと考えたためだ。
ハリサシガメ幼虫が捕食したアリをデコるようすは、これまで何度か目にしているが、いずれも獲物は小さなアリばかりだった。アリが小さいとどこにデコられたのか確認しにくい。しかし、このサイズのアリなら見失うことはない──ということで、この大きめのアリがデコられる様子を観察することにした。


ハリサシガメは針のような口吻を刺して獲物の体液を吸う。おそらく消化酵素のようなものを注入して溶かしながら吸っているのだろうが……時々前脚と中脚で獲物を動かし口吻を刺す位置を変えながら食事を続ける。


小さなアリを捕食していたケースに比べると食事にかける時間がずいぶん長く感じられた。この個体は見つけたときすでに食事中だったわけだが、観察を始めてから、食事を終えデコレーション行動に移るまでに要した「デコ待ち」時間は2時間20分ほど。ようやく食事を終えると、アリの死骸を腹の下へくぐらせた。


この姿勢↑で後脚をしきりに動かす動作が見られた。新素材(捕食後のアリ)を貼り付ける準備なのだろうか? 背中(腹の背面)に貼り付けるスペースを作っているのか、あるいはアリに粘着性のある分泌物でも塗り付けているのか……そのあたりは確認できず。腹の下に置かれたアリはまもなく後脚でつかまれて腹端から背中へずりあげるように抱えられた。




これまで見てきたデコレーション行動から察するに……新素材は旧素材の上に盛りつけられるのではなく、腹端側から旧素材と腹部背面の間に押し込まれる形になるようだ。


新素材のアリを後脚でおぶるように抱え、旧素材を押し上げるような動作がくり返された。うまく接着せずに傾いたり落ちたりするシーンもあったが、後脚を使って押しつける行動をくり返す。途中、周囲の土粒をかき集めるような動作も見られたが、これは接着するアリを安定させるために隙間を埋める(アリが傾かないように可動スペースに詰める)ための処理だったのかもしれない。
デコったアリを後脚で調整するような仕草もくり返されたが、接着ぐあいを確かめたり、安定するまでの仮押さえ(?)の意味もあったのかもしれない。


デコった後も後脚でアリを押さえる仕草をくり返すハリサシガメ幼虫↑。ということで、とりあえず今回は新素材がどの位置にデコられるのかは確認できた。
輪郭がわかりづらい背景での画像が続いたので、石垣の上に出ていた別個体↓。


この個体は、小さなアリを捕らえていた。獲物が小さいと、土粒にまみれた脚の陰にかくれてしまい、わかりづらい……。この石垣では大きさの違うアリが何種類も見られるが、若齢幼虫~成虫それぞれの餌として対応する大きさのアリがいる環境というのもハリサシガメが生息できる条件の1つなのかもしれない。

ハリサシガメ幼虫の抜け殻



石垣のすきまに脱皮(羽化ではない)後の抜け殻が残されていた。例によって抜け殻の触角はもろくて、撮影のため回収すると、やはり折れてしまった↓。




抜け殻の背中には、デコられていたはずの素材がない──脱皮後の幼虫が《荷移し行動》で持ち去ったのだろう。腹部背面の土粒がないところにアリの死骸等のデコレーション素材が貼り付けられていたと思われる。


土粒が付着しているのは分泌物による接着効果によるものではないかという気がするのだが……接着物質の分泌がどのような形で行なわれるのかはよくわからない。
全身からしみ出すように分泌されるのか、口から吐き戻されるのか、腹端から排泄されるのか、あるいは臭腺から分泌される液に粘着力があるのか……。まだまだ謎の多い色々気になる昆虫だ……。


隠れ構造色の蛾

隠れ構造色オオナミモンマダラハマキのオーロラショット



コブシの下の植込みや下草でみられるオオナミモンマダラハマキ(蛾)。よく見ると模様はきれいなのだが、なにぶん小さい……大きさはハエトリグモくらい。(動きもハエトリグモっぽいのだが*)じっとしていると枯れた植物片が葉の上に乗っているようにも見える。あまり注目されることがなさそうな蛾だが、実は光の加減で(干渉によって)メタリックにきらめく構造色の持ち主。構造色というとヤマトタマムシが有名だが、チョウの中にも構造色をもつものがいて、いずれも美しさから人気が高い。華やかなチョウにくらべれば一見地味でスルーされがちな小さな蛾が、じつは構造色を隠し持っていた!? オオナミモンマダラハマキをフラッシュ撮影すると、角度によってメタリックな輝きを放つ──というネタは先日紹介したばかり(*)なのだが、いると、やはり撮ってしまう……。


葉の上にいた同個体を角度を変えてフラッシュ撮影すると──、


頭の後ろの銀色の縦縞模様が金~緑~青に煌めく。翅の色合いにも変化が見える。


左右対称の翅がこの画像↑では、右翅は水色・左翅は金色がかって見える。
逆側から撮ると↓。


逆に右翅が金色・左翅は水色がかって見える──デジカメに内蔵されたフラッシュ光の入射・反射角度の違いで、奥の翅が水色がかって輝くようだ。


フラッシュ撮影では翅の裏側もカラフルに写る。


玉虫色に変化する輝きはネオンサインのようでもある。熱帯魚にネオンテトラというのがいるが、長い名前が覚えづらいオオナミモンマダラハマキは「ネオンハマキ」と呼びたくなる。


オオナミモンマダラハマキの構造色による輝きは斜め後ろから撮ると際立つ。


カーテンのような翅が玉虫色に変化するさまは、オーロラを連想させる。「オーロラマダラハマキ」なんて愛称もいいかも知れない。