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2017年03月の記事 (1/1)

なんちゃって冬尺蛾メスコバネマルハキバガ

フユシャクに似てフユシャクにあらず:メスコバネマルハキバガ





フユシャク(年に1度、冬に成虫が出現するシャクガ科の蛾でメスは翅が退化し飛ぶことができないという特徴をもつものの総称)の終盤グループと重なる時期(3~4月)に見かける蛾・メスコバネマルハキバガ。フユシャク同様、メスの翅は退化しているので初めて目にした時はてっきりフユシャク♀だと思った。しかしシャクガ科ではない(メスコバネマルハキバガ科)のでフユシャクとは呼ばないらしい。フユシャクモドキとでも呼びたいところだが、この呼び名はハイイロフユハマキという別の蛾の旧名なのでまぎらわしい──ということで、個人的には「なんちゃってフユシャク」と呼んでいたりする。


メスは翅が退化して小さい(それで雌小翅──?)というフユシャクチックな特徴をもつメスコバネマルハキバガ♀に対してメスコバネマルハキバガの♂は↓。


フユシャク♂とは雰囲気が違っている感じもするが……やはり普通の蛾に見える。
以前撮ったメスコバネマルハキバガのペア・ショットを再掲載↓。


※↑【なんちゃってフユシャク?】より
例によって1円硬貨との大きさ比較↓。


やはりフユシャクチックなヒメシロモンドクガ秋型

《昆虫なのに冬に(成虫が)出現し、蛾なのに♀は翅が退化し飛ぶことができない》──そんなフユシャクの存在を知った時は意外に感じ、こうした生存戦略もあるのかと感心したが、シャクガ科以外でも同じような特徴を持つ蛾がいるというのは興味深い。
フユシャクとの関連でメスコバネマルハキバガを考えるとき、やはり思い浮かぶのがヒメシロモンドクガ(*)という蛾だ。この蛾は(フユシャクと違って)年に2~3回発生するそうだが、秋に羽化する♀はフユシャクのように翅が退化する。夏型は普通の蛾と変わりないのに秋型だけ《フユシャク化》するのが面白い。気温が低くなることと♀の翅が退化することに関係があることを示唆しているようにも思われ、昆虫の面白さや不思議さを感じさせるものの1つだと思う。




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民話風なぜ話:マツトビゾウムシとヤニサシガメ~ウバタマムシ

マツトビゾウムシと松の新芽

また牙付きマツトビゾウムシでもいないかと思って松の枝先を探していて気がついたのだが……松の新芽って、なんだかマツトビゾウムシに感じが似ている。


これ↑は、その松の新芽と先日撮った牙(脱落性牙状大顎付属突起)付きのマツトビゾウムシの比較。まるっこい体にかすれた茶色の模様の感じがよく似ていると感じた。
ちなみに牙の取れた(通常の)マツトビゾウムシはこんな感じ↓(昨年撮影)。


ということは……マツトビゾウムシは松の新芽に擬態しているのではあるまいか? そん予想を裏付けるようなシーン──うまい具合に新芽にとまったマツトビゾウムシが見られないだろうかと探してみたのだが見つからず……。天敵の目を欺くように松の新芽に溶け込んでしまっているために見つからないのだろうか?
マツトビゾウムシを見つけることはできなかったが、代わりにヤニサシガメが数匹見られた。


ヤニサシガメは幼虫で越冬する。越冬前に撮っていた松葉の上の幼虫↓。


ヤニサシガメもやはり松につくが、これは捕食性カメムシ。マツトビゾウムシ新成虫が現われる頃に活動を始め、マツトビゾウムシを捕食する姿も確認している↓。


マツトビゾウムシを探していた松でヤニサシガメを見つけ、ふと民話風なぜ話が(例によって?)脳内展開した……。

民話風なぜ話:ヤニサシガメはどうして捕食性になったのか

松の木にはよくヤニサシガメというカメムシがついています。カメムシの多くは針のような口で植物の汁を吸います。特定の種類の植物に集まるものも少なくありません。それでは松につくヤニサシガメは松の汁を吸っているのでしょうか? いいえ、ヤニサシガメのエサは他の虫など──他の虫などを捕えて針のような口を刺して体液を吸うのです。エサが虫であるなら、どうして松にいつくのでしょう?
じつはヤニサシガメも少し前まで、松について松の汁を吸っていたのです。松にはマツトビゾウムシという昆虫も生活していました。成虫が松の新葉を食べます。マツトビゾウムシの成虫が現れる3~4月頃には松の新芽ができます。この松の新芽はマツトビゾウムシにそっくり──いえ、マツトビゾウムシが新芽にそっくりなのでしょう。新芽にとまったマツトビゾウムシはちょっと見分けがつきません。マツトビゾウムシも自分の擬態術には自信を持っていて「松の新芽にとまってさえいれば、天敵の鳥やトカゲも気づくまい」と油断して、松の新芽にとまったまま居眠りをはじめました。
そこへ、ヤニサシガメがやってきました。この時まだ松の汁を餌にしていたヤニサシガメはてっきり松の新芽のつもりで、眠っていたマツトビゾウムシに針のような口を刺してしまいます。マツトビゾウムシは刺されて飛び起きましたが、ヤニサシガメに注入された消化酵素でたちまちダウン。ヤニサシガメも松の新芽だとばかり思っていたのが昆虫だと知ってあわてましたが……「なんだ、いつも吸っている松の汁よりも、ずっとおいしいぞ!」と意外な発見にビックリ。それ以来、ヤニサシガメはエサを松の汁から昆虫の体液に切り替えて、捕食性カメムシとなったのです。


もちろんこれはジョークで、ふと浮かんだ作り話。着想のきっかけは「松の新芽がマツトビゾウムシ成虫に似ている」と感じたことだが……果たして本当にこれが《擬態》といえるのか──マツトビゾウムシが実際にこの新芽につくのかは未確認。あくまで思いつきから展開した想像ということで。

ヤニサシガメが捕食性なのに松でよく見つかるというのはホントの話。ちょっと不思議な気もするが、これにはマツヤニとの特別な関係が取りざたされている。ヤニサシガメは体表面がベタベタしているのだが、これはマツヤニを塗りつけたものだという説(?)があって、昨年確かめるためにプチ飼育してみたが、謎は深まるばかりで真相はよくわからなかった(*)。
Ohrwurmさんに教えていただいたのだが、「ヤニサシガメの孵化には松脂が必要で、メスには松脂を溜め込む器官があって腹部末端から松脂を吸い込む」という驚くべき観察があったそうだ↓。

第56回日本応用動物昆虫学会大会2日目(2012年3月28日):自然観察者の日常

過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し? 完璧な擬態の落とし穴!?

マツトビゾウムシが松の新芽に擬態しているのかどうかはさておいて……昆虫の中には擬態に優れたものが少なくない。そういう虫を見ていると、植物への擬態が完璧すぎて、「昆虫食のハンターを欺くことはできるだろうけど……逆に植物食の生き物に植物だと誤認されて食われてしまうなんてことは起きないのだろうか?」などと心配になってしまうことがある。
ジョークのような発想だが、じっさい、木の葉への擬態で有名なコノハムシも葉のような翅を仲間にかじられてしまうことがある。コノハムシは視覚的に葉に擬態しているが、おそらく体臭も食べた葉に似ているのではないかと思う(化学擬態?)。体が葉と同じニオイであればアリなどに気づかれにくいという利点がありそうだが……仲間のコノハムシにはエサの葉としばしば誤認されてしまう(※【コノハムシの誤食】)。


※↑【コノハムシ漫画】より

松の枝先には大物も…ウバタマムシ



松ウォッチをしていていると、枝先に大物(?)ウバタマムシ(体長24~40mm)の姿も見つかった↑。立体木目模様風の隆起模様とシブい色合いが魅力のウバタマムシ成虫はマツ類の葉や樹皮を食べるそうだ。


クモがコミミズクを捕食!?~エナガの恩返し

クモがコミミズクを捕食!?

少し前に《オオジョロウグモがシジュウカラを食った》ことがニュースになっていたが……ならば、《ハエトリグモがコミミズクを捕食》ってのはどうであろうか?


というわけで、ハエトリグモの仲間が捕えたコミミズクは鳥ではなく昆虫の方(植物の汁を吸うセミやカメムシの仲間)。




「コミミズク」で検索すると鳥類のコミミズクがずら~っと画面を占拠し、昆虫のコミミズクは影が薄い? 同じ標準和名にわずらわしさを感じることも少なからず。
ちなみに漢字表記では、鳥のコミミズクは「小木菟」、昆虫のコミミズクは「小耳蝉」。

クモの巣にかかった小鳥・エナガの恩返し?

ところで、僕も鳥がクモの巣にかかるのを見たことがある。もう10年ほど前になるだろうか……目の前で(といっても数メートル先)で、ジョロウグモの巣に小鳥がつっこみそのまま引っかかって宙づり状態になってしまった。「こんなことが、あるものだろうか?」とビックリ。残念ながらその日はカメラを持参しておらず証拠写真が残せなかったことが悔やまれる。当時は野鳥の知識は皆無で(今でも疎いが)クモの巣にとらわれた鳥の種類はわからず(後から考えるとエナガだった気もする)、まだ飛ぶのが下手な幼鳥なのだろうと考えた。そのまま放っておくのも可哀想だし、クモだってこんな獲物は持て余すに違いない……そう思って巣を壊して小鳥を救出。小さな体にからんたゴムボンドのような糸を剥がしてやると、小鳥は礼を言うどころか恐ろしいものから逃れるようにアッという間に飛び去ってしまった。「なんだ、ちゃんと飛べるんじゃないか」とあきれて見送るばかり。「助けてやったのに、そういう態度にでるか……」掌にはお礼代わりの糞がしっかりと残されていた。

《オオジョロウグモがシジュウカラを食った》というニュースを読んで、あの時、もし僕が救出していなかったら、あのエナガ(?)もジョロウグモに食われていたのだろうか……と思わないでもない。だとすればエナガの恩返しがあっても良さそうな気もするが、まだ来ない。いや……もしかると、「獲物を奪われたジョロウグモの呪い」をブロックするという「恩返し」がすでになされているのかも!?……そういうコトにしておくことにしよう。

3月中旬のフユシャク&トカゲ

まだまだ頑張る!?3月中旬のフユシャク

前の記事に記したように牙付きマツトビゾウムシも現れ、(画像はないが)ヤニサシガメの幼虫も動き出した。花や昆虫も春ものにシフトしてきた感じもするが……冬の風物詩・フユシャク(冬尺蛾)もまだ頑張っている。ということで、3月中旬に見たものから……。


このヒロバフユエダシャク♀は前々回の記事【ヒロバフユエダシャク♀の前翅・後翅を確認】で前翅&後翅を確かめた個体。後日まだ同じサクラにいたので再度撮影。ベージュがかった体色に黒い模様があり、サクラの幹に溶け込んで見える。角度を変えて──↓。


ヒロバフユエダシャクもフユシャクなので♀は翅が退化して飛ぶことはできないが、その退化した翅をビシッと広げている姿が凛々しくてお気に入り。なので、いるとつい撮ってしまう。




ネット上には《一見すると逆に見えるが、後向きの長い翅が前翅》《短いほうが後翅》という情報が散在しているが、翅の位置関係を見ると実際はその逆。


どうして前後の翅が逆転した誤認情報──《後向きの長い翅が前翅》という話がでてきたのか不思議だが、想像するに……同じフユシャクの仲間でイチモジフユナミシャク♀では、前翅を斜め後ろ向きにのばし、その前翅の前縁よりも後翅が前方に出ていることがよくある。前翅と後翅が交差し前後関係が逆転した形だが……ヒロバフユエダシャク♀の「斜め後方にのびた《後翅》」の感じと「イチモジフユナミシャク♀の斜め後ろにのびた《前翅》」は、ちょっと感じが似ている。それでヒロバフユエダシャク♀でも前後の翅が逆転していると誤認されたのではないか?
実際のイチモジフユナミシャク♀とヒロバフユエダシャク♀の翅の位置関係は↓。


こうして見比べてみると、ヒロバフユエダシャク♀の後翅が(イチモジフユナミシャク♀のように)前翅だと誤認されてしまうことも起こりえそうな気がする。翅の付け根の位置を見れば前翅と後翅を間違うことはないと思うのだが……。
やはりサクラの幹にとまっていたヒロバフユエダシャク♀別個体↓。


この個体↑は白っぽい地色なので、この背景ではちょっと目立つ──例によって「卒」の文字に(この個体は「率」の文字にも)見える。この♀も3月上旬に確認していた個体。3月中旬に入って目につくヒロバフユエダシャク♀は、発生してから時間が経過したものが多いような気がする。もうヒロバフユエダシャクの時期も終盤なのかもしれない。
こちら↓は左後翅が縮れている、やや疲れた感じにも見える♀↓。


擬木ではシロトゲエダシャク♀の姿が↓。


いくらか腹が凹んでいるので産卵途上なのだろう。


名前に「フユ」は入っていないが、シロトゲエダシャクもフユシャク。♂は普通の蛾↓。


フユシャクでは1月下旬から目にするようになったシロフフユウダシャク♀が、まだチラホラみられる。が、だいぶ少なくなった印象。




ヒガシニホントカゲも出ていた

フユシャクを確認した足で昨夏みつけたトカゲ密度が高い石垣へ行ってみると、すでに出ており、日光浴中のものや活動しているものなど10匹ほど確認。フユシャクも頑張っているが、やはりもう春だと実感した。


冬眠から覚めて春眠? まだ眠そう。


トカゲの多くは紫外線を浴びることで骨を作る過程で必要な(カルシウムの吸収に不可欠な)ビタミンDを合成しているので日光浴は欠かせない。




牙付きマツトビゾウムシ

牙つきバージョンのマツトビゾウムシ新成虫



草食のゾウムシにするどい鉤のような牙!?──なんともミスマッチな感じがするが……通常みかけるマツトビゾウムシには、こんな《牙》はついていない。この《牙》は新成虫が《蛹室から地上へ出る土掘りに役だつ》器官だそうで、地上に出てくるとほどなく脱落してしまうらしい。
つまりこの奇妙な《牙つきバージョン》のマツトビゾウムシが見られるのは、新成虫初期のわずかな間のみ──そういった意味ではちょっとレア感(?)がないでもない。


擬木の上にいたマツトビゾウムシ新成虫《牙つきバージョン》。近くには松の木がある(画面左に写っているのが松/マツトビゾウムシ成虫は松の新葉を食べる)。


《牙つきバージョン》のマツトビゾウムシは、これまで何度が遭遇しているが、動き回ったり飛び去ったりで、その特徴を思うように撮れずにいた。今回は(これまでに比べれば)いくらかマシなショットを撮ることができた。






大顎の一部である脱落性牙状付属突起↑。《蛹室から地上へ出る土掘りに役だつ》というが、この形状は土掘り向きではないような気もする……蛹室を壊すさいに威力を発揮するのだろうか? それにしても大顎を閉じた状態で交差する牙は使い勝手が悪そうな気もするが……。一方、羽化したのち松の新葉を食べるさいには、むしろジャマになりそうなので、早々に脱落させるというのは判らないではない。
いったいどうしてこんな形の牙が形成されることになったのか、この牙がどう使われるのか、不思議でならない。謎めいた《牙》は妄想力を刺激するが、まだそれらしい解釈に到達できずにいる。
ところで、今回この《牙つきバージョン》個体を見つける直前、すでに《牙》が脱落したマツトビゾウムシを目にしていた↓。


擬木のすきまに隠れた《通常(牙なし)バージョン》のマツトビゾウムシ↑。《牙》がないと印象が変わる。目元パッチリのカピバラ系な感じがしないでもない? この個体は《牙》がないことを確認して、あっさりと撮影終了。この後、《牙つきバージョン》を見つけてテンションが上がったのだった……。


今回は《牙》がよくわかるような画像を記録したかったのだが、カメラを近づけると、(過去そうだったように)マツトビゾウムシは擬木の上を歩き回り始め、モデルはイヤだと抵抗……。


1度は翅を広げたので、(また)飛び去ってしまうかとあきらめかけたが……飛翔筋がまだ充分温まっていなかったためか、離陸できず翅をたたんだ。ゾウムシの短吻類は後翅が退化した種が多いそうだが、マツトビゾウムシは飛ぶことができる。






せわしなく動き続けるので、実はしばらくてこずっていたのだが、やがて擬木支柱の縁で静止モードに入り、ようやく上に挙げたシーンを撮ることができたのであった。
この時期にマツトビゾウムシを見かけると、つい《牙つきバージョン》かどうかを確かめてしまう。


ヒロバフユエダシャク♀の前翅・後翅を確認

ヒロバフユエダシャク♀の前翅(小)・後翅(大)を確かめてみた

ヒロバフユエダシャク♀の翅について《後向きの長い翅が前翅》《長いほうが前翅で、短いほうが後翅》という説(?)がネット上にあるというのは前の記事【ヒロバフユエダシャクのペア/♀の前翅はどっち?】で触れた通り。中には《一見すると逆に見えるので紛らわしい》といった説明がつけられていたり、当初は《やや長めの後翅》と記していたのを《前翅》とわざわざ訂正している記事もある。
初めてその説(?)を知った時は驚いた。背面ショットを見る限り、(僕には)「短い(小さい)方が前翅で、長い(大きい)方が後翅」としか思えないからだが……《長い前翅が短い後翅の下を通って後方に伸びている》という認識でいる人もいるようだ。背面ショットでは短い翅のつけ根はわかるが長い翅のつけ根は見えない。そこで、両方の翅のつけ根の位置関係がどうなっているかを確認してみようと思い立った。いずれにしても、前方(頭部の方)からはえた翅が前翅ということになるはずだ。
ということで、ヒロバフユエダシャク♀探し。曇天ではなかったが(というより晴れていたが)、前回みつけたサクラの同じ位置にさっそくヒロバフユエダシャク♀(同個体)が見つかった。


ふつうに見れば、小さい(短い)翅が前翅で、大きい(長い)翅が後翅だろう。


木の幹に伏せるように静止しているヒロバフユエダシャク♀↑。翅のつけ根が見えるように体を起こしてもらう↓。


翅のつけ根をのぞき込もうとするのだが……。


上体を浮かせたところを横からのぞきこもうとするが……なかなか思うようなアングルが得られない。そのうち♀はコロッと落下。見失ってしまった。
しばらく探したが見つからないので、あきらめて別の個体を探す。そしてほどなく別のサクラで2匹目のヒロバフユエダシャク♀を発見↓。


この個体は前翅の先端がアメリカンカール(猫)の耳のように反り返っていた。よくある特徴(?)なのか、アメリカンカール風の個体は何度か見たことのある。


背面から普通に見れば、やはり小さな(短い)翅が前翅で、後方に伸びた大きな(長い)翅が後翅にしか見えない……。


この大きな(長い)翅の根元がどこにあるのか──小さな(短い)翅よりも前方から生えているのであれば、《後向きの長い翅が前翅》説も信憑性をおびてくる。
翅のつけ根の位置を確認すべく、そっと刺激して幹から体を浮かしてもらう……。


幹にとまっている状態ではうまくのぞき込めないので、手に乗せてアングルを模索。


ようやく翅のつけ根が見えるショットをゲット。鮮明ではないが小さな(短い)翅のつけ根の下(後ろ)に大きな(長い)翅のつけ根が見える。


「前翅」「後翅」の厳密な定義は知らないが、これを見る限り「小さな(短い)翅が前翅」「大きな(長い)翅が後翅」といっていいだろう。
とりあえず確認ショットが撮れたのでヒロバフユエダシャク♀をもとの幹に戻す。




少し移動して静止モードに入ると、サクラの樹皮にみごとに溶け込んだ。
引き上げる途中、1匹目を落とした桜をのぞいてみると、根元付近に行方不明になっていたヒロバフユエダシャク♀が戻っていた。せっかくなので、これも落ち葉にとまらせて翅の付け根を撮ってみた。




このアングルから見ると一目瞭然。


翅のつけ根を見ても、小さな(短い)翅の方が前(頭の方)にある──小さな(短い)翅が前翅であることを確認できた。


ヒロバフユエダシャクのペア/♀の前翅はどっち?

曇天のヒロバフユエダシャクのペア

先日、曇天のサクラッチ(桜ウォッチ)をしていると、古木の幹にヒロバフユエダシャク♂の姿が目に入った。撮るには高い位置だったのでスルーしようかとも思ったが……とりあえず遠目から1枚。「翅のかげに♀もいたりして?」なんて思いながら画像を拡大してみると──いた!


本来は日没後早い時間帯に交尾が行なわれるらしいが、このときは日中ながら曇りで暗かったせいか(夕暮れと間違えて?)、ペアになっていた。ヒロバフユエダシャクのペアを見たのは初めてだったので、ちょっと無理して(?)ぷち木登りをし体を支えながらプルプル状態で撮ってみたのが↓。


撮影体勢が悪かったのでイマイチな画像になってしまったが……こうして見るとオスとメスの翅の格差がよくわかる。

ヒロバフユエダシャク♀の前翅はどっち?



やはりサクラの幹にとまっていたヒロバフユエダシャク♀の単独ショット。この画像↑では前翅と後翅が同じ大きさ・形で、ズレて並んでいるようにも見えるが……これは後翅の黒い筋が前翅外縁の延長アウトラインに見えるため。実際は前翅は小さく、その後縁は後翅の前縁あたりまでしかない。


ヒロバフユエダシャク♀は退化した4枚の翅を展翅したように広げた姿勢が特徴的だが、この翅についてネット上には《後向きの長い翅が前翅》《長いほうが前翅で、短いほうが後翅》というような記述が複数見られる。しかし素人目にはどう見ても「短い方が前翅で、長い方が後翅」としか思えない。


小さい方の翅が前にあり、大きい翅の上にある。普通に見ればこれが前翅だろう。
ヒロバフユエダシャク♀はフユシャクの中では大きめ。直径2cmの1円玉と比べると、こんな感じ↓。


サクラの幹にとまっていた別のヒロバフユエダシャク♀↓。




前翅が小さく、後翅が大きいのがわかる。


先日【《卒》的ヒロバフユエダシャク♀】で撮影した個体と思われる♀が、数日前と同じサクラの幹にとまっていた↓。


少し位置を変えてとまっていた白っぽいヒロバフユエダシャク♀。


先日は幹上に《卒》の字が浮き上がって見えたが、体色と同じような白っぽい部分にとまっていると輪郭が背景に溶け込んで識別しにくい。脚の白黒模様もアウトラインをかく乱し隠蔽する効果があるのだろう。

※【追記】ヒロバフユエダシャク♀の前翅・後翅の位置関係を再確認↓




※↑【ヒロバフユエダシャク♀の前翅・後翅を確認】より

どんでん寓話『川渡り』

虫見をしていると脳味噌が刺激されて色々な疑問や解釈、はては妄想めいた着想が湧いてくることがある。時には見ているものと何の関わりも無く、前後に考えていた事と何の脈絡もないイメージが突然ポッと浮かんでくるなんてことも……。そんな思いつきのひとつを寓話風に記してみる。


川渡り

川べりでひとり老婆がとほうにくれてた。向こう岸に行きたいのだが、橋が無い──老朽化した橋は数日前に落ちて流されてしまっていたのだ。川は深さが大人の腿程度だが、流れが速い。ひとたび足をすくわれたら、体勢を立て直すことは難しい──そのまま流され溺れてしまうだろう。年寄りが歩いて渡れる川ではなかった。
そこへ2人の若者──太郎と次郎の兄弟ががやってきた。
「ややっ! なんとしたことか。橋がないではないか!?」
彼らも川を渡るため、橋が落ちたことを知らずにやってきたのだった。
「私も向こう岸に行ねばならないので困っていたんです」と老婆。
「これは、川の中を歩いて渡るしか無いな」
太郎の言葉を聞いて老婆はため息をついた。「私にゃ、とても無理だわ……」
そんな老婆を気の毒に思い、次郎は優しく声をかけた。
「お婆さんは僕らが運んであげますよ」
それを聞いて太郎が眉をしかめた。
「まて次郎、おまえ何を考えているんだ。川は深くはないが流れが速い。俺たちだけでも渡るのは大変だぞ。お荷物をかかえていく余裕などない」
「お年寄りですよ。お荷物というほど重そうには見えませんよ」
「私ゃ、40kgほどです……」老婆が申し訳なさそうに口をはさむ。次郎は口調を和らげて太郎に頼んだ。「残して行くなんて、可哀想じゃないですか」
「可哀想なのはわかるが、俺たちが助けなきゃならない義理はない。他人の事を心配するより、自分のことを心配しろ」
ちなみに太郎と次郎の体格はほぼ同じ。弟の次郎の方が背はわずかに高かったが兄の太郎の方ががっしりしており、体重は2人ともに70kgだった。兄の方が体力は勝っていたのだが、その太郎は老婆を助ける気などまったくないらしい。
「わかったよ。兄さんには頼まない、お婆さんは僕がおぶって行く」
そうして太郎は1人で、次郎は老婆をおぶって川を渡り始めた。が、川の中程まできたところで、太郎は流され、川を渡りきることができたのは次郎と老婆だけだった。

実は川を流れる水の圧力は思いのほか強く、体重100kgの大人でも押し流す力があったのだ。体重70kgの太郎は足がすくわれ、40kgの老婆をおぶって110kgになった次郎は川の流れに耐えることができた──つまり、次郎はおぶった老婆が重し代わりとなって流されずに済んだのだった。

【教訓】自分の事だけを案じる者は救われず、他者をも案ずる者が救われる。

──なんて寓話はどうだろう?
ということを踏まえて、



川渡り ver.2

川べりでひとり老婆がとほうにくれてた。向こう岸に行きたいのだが、橋が無い──(以下同文略)
そこへ2人の若者──一郎と二郎の兄弟ががやってきた。2人は体格も同じ。体重もともに70kgだった。
「お婆さん、心配いりませんよ。僕らが向こう岸まで運んであげますから」
親切な兄弟、一郎と二郎は両脇から老婆を抱えて川を渡り始めた。
老婆の体重は40kg。70kgの一郎と二郎はそれぞれ20kg(老婆の体重の半分)ずつを負担する形となり計90kg──体重100kgの大人でも押し流す川の流れに耐えきれず、3人とも流されてしまいましたとさ。

【教訓】…………。(ときには親切心がアダになることも……)

というブラックユーモア的着想。
語られるエピソードから道徳的な解釈(教訓)を引き出しまとめるのが寓話のスタイルだが、そのエピソードから導き出された教訓をフィードバックして、もう1度そのエピソードをリプレイしてみたら……という着想。


●【冗区(ジョーク)】~メニュー~

《卒》的ヒロバフユエダシャク♀

春近し 桜の幹にも 《卒》の文字…なヒロバフユエダシャク♀



3月というと《卒業式》のシーズンだが、この時期に見られるヒロバフユエダシャク♀は、とまった姿が《卒》の字っぽい!?


ヒロバフユエダシャク♀は退化した小さな4枚の翅を展翅したように広げてとまるのが特徴だが、この姿勢が僕には極太文字の《卒》の輪郭っぽく見えて仕方がない(*)。このフォルムを脳味噌に登録しておくことで、視界に入れば瞬時に反応できるようになった。
翌日も同じ幹(のちょっと違う位置)にとまっていたヒロバフユエダシャク♀同個体↓。


この個体は前翅がアメリカンカール(猫)の耳のように若干カールしている。


とまった姿勢も凛々しいし、同じ時期に見られるシロフフユエダシャクに比べると大きめなので存在感がある。


この個体がとまっていた幹の高い位置にもヒロバフユエダシャク♀の姿が……↓。


こちらは腹の背面が黒っぽい。こうなると《卒》には見えず、《六》の文字っぽく見えることになったりする。
フユシャク(冬尺蛾)の中ではやや大きめで、フォルムも特徴的なので、そういった意味では気づきやすいとも言えるが……個体によって体色には変化があって、同じ色合いの背景にとまっていると意外に目立たなかったりもする。わかりやすい背景だったので気づくことができたが、前回の記事で投稿した♀は暗めの色合いだった↓。


常連のシロフフユエダシャク♀



ちょっと判りにくいが、擬木支柱の側面(鉛直面)にとまっていたシロフフユエダシャク♀。


ちょっと頭を起こしている姿。
やはり擬木支柱の上面(水平面)にとまっていた別のシロフフユエダシャク♀↓。


ヒロバフユエダシャク♀に比べると小さい。
同じような位置にとまっていたシロフフユエダシャクの♂は、こんな姿↓。




シロトゲエダシャクなど

今シーズン初のシロトゲエダシャク♀



オスの姿は2月下旬から目にしていたのだが、メスのシロトゲエダシャクはこれが今季初。標準和名に「フユ」は入っていないがフユシャク(冬尺蛾)のひとつ。メスは翅が退化して飛ぶことはできない。昨シーズンはトギレフユエダシャク♀とともに2月下旬に確認している。


卵をかかえた腹がはちきれんばかりに膨れた新鮮なシロトゲエダシャク♀。


以前初めて腹がパンパンに膨れたフユシャク♀を見たとき、「腹の節にそって緑色の《模様》が入っている!?」と思った。緑色の部分は体表面を覆う鱗粉(もしくは鱗毛)で描かれた模様ではなく、膨満した腹の節が伸びきったことで鱗粉(もしくは鱗毛)コートのすきまからのぞいている下地──スボンとシャツの間から豊満な腹がはみ出した感じに似ているので、僕は個人的に「ハミ腹」「はみ腹状態」などと呼んでいる。


フユシャクのメスはどれも翅が退化して飛ぶことはできないが、その翅の大きさは種類によって様々。シロトゲエダシャク♀の翅は、かなり小さめ。翅は小さめだが、体は(フユシャクの中では)大きめ。


飛翔能力があるシロトゲエダシャク♂↓。同じ種類なのに♂と♀では容姿がまるっきり違っているのもフユシャクの特徴。


曇天に出会うヒロバフユエダシャク



曇天だから日中も出ているかもしれない……と思っていたら、こんなところにとまっていたヒロバフユエダシャク♀。


ヒロバフユエダシャク♀といえば、前翅・後翅をビシッと広げた姿が魅力だが……擬木の上で、ちょっと残念な感じの♀がいた。




フユシャクのメスはそもそも飛べないので翅がきちんと伸びていなくても困ることはないのだろうが……。
オスのヒロバフユエダシャクは、やはり一見、普通の蛾↓。


やはりサクラの古木にとまっていたヒロバフユエダシャク♂↓。幹は少し前に上がった雨で濡れている。


余談だが……このヒロバフユエダシャク♂がとまっていた幹にはセミの抜け殻がついていたので。


セミというと夏のイメージが強く、抜け殻もその時期の物だと思っていたが、フユシャク探しでサクラッチ(桜ウォッチ)をするようになって、セミの抜け殻は冬になってもけっこう残っているものだと認識をあたらめた。

シロフフユエダシャクなど





シロフフユエダシャクは相変わらずよく見かける。
翅が消失したフユシャク亜科のフユシャク♀↓は擬木支柱の鉛直面にとまっていた。