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2015年09月の記事 (1/1)

オオトビサシガメのバナナ臭

オオトビサシガメはバナナの香り!?



オオトビサシガメ(↑いずれも成虫)は大型の捕食性カメムシ。オスとメスでは腹のヘリ部分のはりだし方がずいぶん違う。腹の幅が♂では前胸より狭いが、♀では前胸よりも広い。
見た目はちょっと地味なオオトビサシガメだが、「バナナのような匂いがする」と知って、にわかに興味がわいてきた。
「カメムシ」というと《悪臭》のイメージがついてまわるが、《フルーツのかおり》というのは、なかなか意外性がある。
以前、「青リンゴのような匂いがする」という噂のあったカメムシのニオイを確かめたことがあった(*)が、「バナナ臭」についても確かめてみたくなる。
実はタガメの♂が求愛で「バナナ臭」を放つらしいことは知っていたが、僕がタガメに出会うことはないだろうから、確認する機会もないだろうとあきらめていた。しかしオオトビサシガメなら虫見コースで馴染みの虫だから(特に越冬シーズンによく見かける)、これは、ぜひ「バナナ臭」を確かめてみようと思った。


「オオトビサシガメのバナナ臭」情報を得てから最初に出会ったオオトビサシガメ↑。腹のフチが張り出したメスだった。


サシガメの仲間はむやみにつかむと刺すことがあり、これがとても痛いらしい。ということで、このために用意していたピンセットでつまんでニオイを嗅いでみたところ──。


この時は、期待していた「バナナ臭」も、カメムシ特有の悪臭も感じられなかった。メスはニオイを発しないのか、この個体が「たまたま」発しなかっただけなのか?
カメムシは同じ種類でもその時々で放つニオイの強さに差があるように感じる。成長時期(?)や臭腺が満タンかカラか──などの条件も関係しているのかもしれない。
期待はずれの不発にガッカリしたが……しばらく間が空いて、9月に入ってリベンジ(?)のチャンスが訪れた。


これは見つけた状況↑。横着をして右手にカメラを持ったまま、(利き腕でない)左手にピンセットを持って捕獲しようとしたのだが、するりとかわされ、擬木の隙間に逃げ込まれてしまった。「しくじった」と♀が逃げ込んだ隙間をのぞき込んだとき、ふと香ったのは──、
「……ばnぬぁ~な!」
一瞬ではあったが、バナナの匂いを感じた。
もう少しじっくり確認したかった……と取り逃がしたことを悔やんだが、ほどなく別の擬木でオオトビサシガメ♀を見つけることができた。そして今度は、ちゃんと右手にピンセットを持って捕獲してニオイを嗅いでみた。


この個体↑では、先に逃げられた♀が放ったバナナ臭よりもきついニオイを感じた。印象がちょっと違う。
「このニオイは何と例えたらいいだろう?」と嗅ぎながら考えているうちにニオイは遠ざかっていく……。
香るのは、臭腺から放たれた液が気化するわずかな間だけなのか……ニオイはあまり持続しないようだ。
「ニオイ」を写真のよう記録することができれば良いのだが……画像のように残し、伝えることができないのがもどかしい……。
すぐに拡散してしまうニオイをもう少しじっくりと確認できないものか……と考えて、カメムシをビニール袋に入れて「ニオイをこもらせて」嗅いでみる方法を思いついた。少々アヤシイ姿になってしまうが、やむをえまい……。次に見つけたオオトビサシガメの♂で試してみた↓。




このときは、シェイクしたビニール袋をひらいて最初に嗅いだ一瞬、かすかにバナナ臭が香った……気がした。しかしニオイは急速に薄まって、じっくり「確認」するには至らなかった。
そしてさらに別個体の♂↓。






ビニール袋にこもったニオイは、バナナ臭系ではあるけれど……もっと濃厚で甘ったるい感じがした。「イチゴミルク」ならぬ「バナナミルク」というイメージ!?……しかし、これが適切な表現かどうかは自信が無い……。
そしてさらに別の♂を見つけて──↓。






ここで、ようやくしっかりと「バナナ臭」(バナナのような匂い)を確認。
納得できるニオイを確かめることができてホッとした。
これで確認作業は終了してもよかったのだが、さらに1匹、オオトビサシガメ♂をみつけたので、ついでにこれも嗅いでみると──、




ということで、この個体↑は無臭だった。こうした例も含め、個体によってニオイの強さ・印象には差を感じた。これは分泌されるニオイ物質の希釈の度合いにもよるのだろう。かすかに香るくらいのときが「バナナの匂い」に似ている気がする。
とりあえず《オオトビサシガメが放つニオイは、「バナナ臭」(バナナのような匂い)》ということが確認できたことには満足。
そのニオイを発する臭腺開口部についても確認しておきたかったのだが……これはよくわからなかった。





ちなみに、《青リンゴ臭》を放つキバラヘリカメムシとその臭腺開口部↓




比較用に、《悪臭》を放つキマダラカメムシと、その臭腺開口部↓






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細胞分裂を思わせるチョウ!?

ジャノメの細胞分裂!?

前回ネタにしたヒメウラナミジャノメだが……「8」に見えた空目模様をながめていたら、なにやら、どこかで見たような……別のイメージが頭の中にわいてきた。


画像を見ると両端の模様は「○」で、その中に2つの点(核)が見える。中間の模様ではその核を中心に「○」が2つになって分離しかかっている(のが「8」に見えた)──これは「細胞分裂」のイメージではないか!?
「○」の中で核が2つになり、分離した核を中心に「○」が2つに増える──ヒメウラナミジャノメの紋の画像を「細胞分裂」を写したものだと言ったら、信じる人もいるのではあるまいか?


まるでジャノメチョウ類の「蛇の目模様」が「細胞分裂」で増えていく過程を描いているかのような──そんな錯覚をしてしまいそうだ。

細胞分裂で増殖中!?

「細胞分裂」といえば……鱗翅目(蝶・蛾の仲間)の交尾中ペアを目にすると、「あっ、細胞分裂(二分裂)で増殖している──おまえはゾウリムシか」なんてツッコミたく(ボケたく?)なってしまうのは僕だけであろうか?


細胞分裂で分離しかかった蛾に見えて仕方ない↑のは、クチバスズメかモモスズメ……僕には違いがよくわからないのだが……とりあえず、スズメガ(蛾)。2匹は鉛直上に並んでおり、画像の左側が天(上)になる。
(※トモックさんに、モモスズメと教えてただきました)
チョウの交尾も二分裂で分離中にみえてしまう↓。


空目と同じで、一度そう見えてしまうと、次から自動的に「細胞分裂(二分裂)で増殖している」ように見えてしまう……それで毎回「おまえはゾウリムシか」と心の中で突っ込んで(ボケて?)しまうのであった……。
(※トモックさんにご指摘いただき、ヒオドシチョウに訂正しました)

ということで2日続けてのジョークネタ→【冗区】書庫入りなのであった……。

チョウなのにハチ!?

チョウなのにハチ!?



……という、たあいもないネタのためにチョウを撮ってしまったしだい。
ホントは「兆」の模様をもつ蜂──「ハチなのにチョウ」とセットで載せたいところなのだが……そんな都合の良いチョウ模様の蜂はまだ見たことがない。
あ……チョウ綺麗な蜂なら、先日ムツバセイボウを見かけていたのでついでに↓。



冒頭の蝶はヒメウラナミジャノメ。模様が「8」に見える──という《空目ダジャレ》ネタなので【冗区】書庫に入れておく。
空目模様はおもしろいので、ついネタにしてしまいたくなるが……これと比べると「スーパーヒロイン&ひとつ目魔人」に見えるホソバシャチホコ幼虫はアッパレだと思ってしまう。

バンビ天牛!?カノコサビカミキリ

バンビ天牛!?カノコサビカミキリとの再会

先日のnoriさんのブログ記事【小枝ちゃん】を拝見し、カノコサビカミキリを見たくなった。このカミキリは10年程前──虫屋さんたちの狭山お散歩オフにおみそ参加させていただくようになった頃に、そのオフで初めて見た。当時はカミキリを含めまだ身近な昆虫の種類もほとんど知らず、「こんなに小さなカミキリがいるのか」と驚いたものだ。そのカノコサビカミキリ(カミキリ屋さんがカラスウリを叩いて落としたもの)2匹をもらってしばらく飼育したこともあった。1匹は40日ほどで死んでしまったが、もう1匹は12月下旬まで約5ヶ月間生存していた。
そんな思いで深いカミキリなのだが、考えてみたらここ数年は見ていない。このブログでもまだ取り上げたことがなかった気がする。
ということで、カノコサビカミキリがなつかしくなり、初めてこのカミキリを見た場所へ行ってみた……のだが……かつて木の側面に張り巡らされていたカラスウリ(カノコサビカミキリのホスト)が、からんでいた木ごと伐採されていて見るかげもなくなっていた……。
しかたなく、他にカラスウリがある場所を巡り、カノコサビカミキリを探すことにした。
いい感じに茂っているカラスウリはあちこちにあるものの、そうした場所ではカノコサビカミキリがとまっていそうな葉柄や蔓の部分は葉に覆われていてなかなか見えない。そうした死角をいちいち全部確かめて歩くのは大変だ。葉メクリストには向かないせっかちな性格なので……とりあえず見やすいところだけチェックして、見つからなければ別の場所へ──そんなことをくり返していたのだが……ついに再会の時はきた。


道路沿いのカラスウリに近づき、「こんな感じのところにいそう」と思われる部分をのぞき込んでみると──葉の柄にとまっているカノコサビカミキリが目にとまり、続いてツルを歩いているカノコサビカミキリが目に入った(画面左上の白矢印)。見つからないところでは念入りに探しても見つけられなかったのに、見つかる時には、あっけなく、しかもたて続けて見つかるとは……。
2匹のうち撮りやすそうな葉柄にとまっている方にターゲットを絞って撮ることに。見つけた時は触角をやや広げ葉柄を齧っていたようだが、カメラを近づけると警戒して触角を体にそわせるようにたたんで動きを止めた(楕円の画像)。
じっとしてくれてポージング的にはシャッターチャンスなのだが……葉かげのため暗くてなかなか鮮明な画像が撮れない。
そこで、カノコサビカミキリがとまった葉柄をとって明るいところへ移動して撮影↓。


細かいメッシュのような上翅に白い斑紋が印象的。和名の「カノコ」は「鹿の子(かのこ)」。シカの仔(バンビ)の白斑を思わせるもよう──ということなのだろう。
バンビ天牛こと(?)カノコサビカミキリは撮っているうちに触角を広げ、動き出した。




こうした姿↑はカミキリっぽく見える。派手ではないがシックで美しい。
一度動きだすと、せわしなく歩き回る。つまんでいるカラスウリの葉柄を行ったり来たり。


1円玉との大きさ比較ということで↓。


そんなわけで、ひさしぶりにカノコサビカミキリを確認することができた。
10年前初めて見た時は「小さい」という印象が強く、あれから老眼も進んで当時より見つけるのに苦労するだろうと覚悟していたのだが……発見場所では意外にあっけなく2匹みつけることができ、「思っていたより大きかった」という感じを受けた。カノコサビカミキリを見ていない間に、さらに小さな極小カミキリ(*)を見るようになり、虫目(昆虫サーチ能力)が鍛えられていたせいかもしれない。老眼が進んで凹むことが多いが、こういうことがあると、ちょっと自信が回復する(笑)。

【追記】翌日おなじ場所で撮った画像を追加↓




ちょっと見にくいところにいたが、こんなところにいるということで。カラスウリの葉柄の根元をかじっているカノコサビカミキリ。カノコサビカミキリの右上の葉柄に残されているキズは食痕だろう。カラスウリをチェックするさいに、葉柄にこんな食痕(緑の柄が所々白っぽく見える)が見つかれば、近くにカノコサビカミキリがひそんでいるかも?


スーパーヒロイン模様の虫

スーパー・ヒロイン風の模様!?──の空目虫

ときどき模様がハート型に見える動物が見つかり話題になることがある。意味の無い模様がたまたまある形に見える──それだけでも、ちょっとおもしろい。
昆虫でもハート型の模様をもつエサキモンキツノカメムシはよくブログに登場する。ふだん昆虫に無関心な人でも「ハートに見える空目(そらめ)もよう」には興味を呼び覚まされるようだ。
他にも模様が「顔」にみえたりする、いってみれば「空目(そらめ)昆虫」は少なからず存在する。
なかでもホソバシャチホコ幼虫の「空目模様」はふるっている↓。


長い髪をなびかせたスーパー・ヒロイン↑(シェイプアップした腹筋が割れている)と、ひとつ目魔人──に見えないだろうか?
単なる「ハート型」に比べれば、「スーパー・ヒロイン」や「ひとつ目魔人」はずいぶんコッている。人が描いたわけではないのに、これだけ複雑な形が「見える」模様はすごい。なにやらドラマチックな雰囲気さえただよってくるようだ。
「美少女仮面はひとつ目魔人に挑み、1度は呑み込まれてしまうが、腹を切り裂いて脱出し、魔人を倒した」──そんな伝説さえ想像してしまう。


こんな伝説を物語っているのはホソバシャチホコという蛾の幼虫。はじめて見た時は「《みどり色のベスト》がオシャレな幼虫」──という印象で注目した。




この《みどり色のベスト》は食樹の葉(コナラやクヌギなど)にとまっていると葉の緑に溶け込み、他の部分が葉のフチの《枯れ》のように見えて隠蔽効果がある。
意外な隠蔽効果に感心しつつ撮っているうちに、《みどり色のベスト》以外にも複雑にほどこされた模様が美しいことに気づいた。そしてさらにこの模様の中に「空目(そらめ)」が隠されていることを発見して「これはおもしろい!」と感心してしまったしだい。
成虫は地味な蛾なのでスルーしてしまうが幼虫は見るとつい撮ってしまう。これまでも何度かネタにしているが、個体によって模様には若干変化があり、描かれたキャラクタターの表情・印象にいくらか違いがあったりする。
以前に紹介した別個体の記事【謎の美少女仮面伝説!?@ホソバシャチホコ幼虫】↓


「たまたま、そう見える空目(そらめ)模様」としては秀逸だと思う──こんなホソバシャチホコ幼虫の模様自体も興味深いが、同時に「そう見えてしまうヒトの知覚」の側にも面白味を感じてしまう。
ちなみに、こうした【空目(そらめ)】といわれる現象──《雲の形が顔に見えたり、しみの形が動物や虫に見えたりと、不定形の対象物が違ったものに見える現象》を【パレイドリア効果】と呼ぶらしい。
昆虫を見ていると色々な疑問や発見があって脳みそが刺激されがちだが、その興味の内容は単に生態などの昆虫学的なテーマだけにとどまらない。


脱皮マジック

脱皮はマジック!? それでは最強マジシャンは?




最近、アカスジキンカメムシの羽化や脱皮を見る機会があったが(*)……抜け殻の中から抜け殻よりも大きな体が出てくるシーンは圧巻で、何度見ても驚くばかり。
「その大きな体がいったい、どこに収まっていたんだよ!?」「そこから出てきたというなら、もういっぺん、抜け殻に入ってみれ!」とツッコミたくなってしまう。
昔、薄いアタッシュケースから、大きなごつい電話機をとりだすというマジックがあったが──脱皮・羽化の驚き&不思議さはマジックといってもいいだろう。

じっさいに脱皮のシーンを見ていなければ、ステージアップした昆虫が、それより明らかに小さな抜け殻から出てきたとは、とうてい信じることができないだろう。見ていてもにわかには信じられないような光景だ。
以前も記したが、昆虫の脱皮に関しては小学3年生の頃に授業で教わったとき「昆虫は脱皮をくり返して大きくなる」という先生の説明が納得できなかった。「そんなコト(脱皮)をくりかえせば、マトリョーシカのように出て来るのはどんどん小さくならなきゃおかしい」──頭の中には入れ子細工の幼虫が思い描かれ「入れ物より大きな中身が出てくることなどあり得ない」と力強くいぶかしんだものだ。
しかし、実際にはそんな「あり得ない」と思われた光景が現実に存在する。
物理的に解釈すれば、脱皮後の体は、抜け殻のぶんだけ質量的には減少しているはずだが、体積は増加している──ということなのだろう。脱皮の際に膨れることで内圧を高め、抜け殻をやぶったり抜け殻から体を押し出す力に利用しているのかもしれない。
いずれにしても、カメムシの羽化や脱皮では、それまでの体(抜け殻)よりあきらかに大きな体が出現するのは間違いない。物理的な解釈はできても、見ればやっぱり不思議に感じる。

「脱皮」や「羽化」という言葉は誰でも知っている──知識としては「あたりまえ」のことだろう。しかし、実際にそのシーンを目の当たりにすれば、「あたりまえ」ではとても片付けられない神秘的な現象であることを再認識せざるを得ない。
自然が見せるマジック・ショー──昆虫の脱皮マジック、おそるべしっ!

さすが進化を極めた昆虫のやることは我々の想像を超えていると感心してしまいがちだが……しかし、我らが脊椎動物の中に昆虫をしのぐ、すごい脱皮マジックを披露できるものがいる。
爬虫類のヘビである。
ヘビはその存在自体、不思議に満ちている。脚がないのにスムーズに移動できるし木にだって登ることができる。口を開かずに舌を出し入れできるなんてのは、ジョークのようにさえ思えるし、《自分の頭や胴よりも大きな獲物を丸呑みにできる》──というのは、昆虫の脱皮で《抜け殻より大きな体が出てくる》というのとちょっと似た意外性がある。
ヘビの抜け殻は珍しいものではないから、ヘビが完璧な形を残して脱皮することは多くの人が知っているだろう。
《抜け殻を壊すことなく、中身だけがエスケープ》ということ自体、脱出マジックや密室トリックみたいで謎めいているが、このヘビの脱皮プロセスがまたなんともミステリアスなのだ。




ヘビの脱皮は鼻先から行なわれる。古い外皮がめくれ、抜け殻の口が上下に開くと中から本体の顔がのぞく。本体は抜け殻の口からそのまま這いだして脱皮が進行するわけだが、そのようすは「ストッキングを脱ぐように」と例えられる。抜け殻の口の中から本体がひきだされることで、抜け殻の頭部は裏返り、頸部以下は表裏が反転して脱がされていくことになる。
おもしろいのは、脱皮点を境界に、リニューアルしたヘビ(本体)と古いヘビ(抜け殻が)反対向きに伸びて行くように見えることだ。まるで見えない鏡面に写し出される鏡像のようでもある。脱皮後のツヤのある新しい姿がどんどんあらわになる反対側では、反転した古い(抜け殻の)頭部が脱皮前の自分の体を呑み込んでいくというシュールな光景が展開されていく……。
「自分を刷新することは、古い自分が自らを呑み込んでいくこと」というなんとも哲学的な(?)セレモニーのように見えなくもない。

また、カメムシではリニューアルした体より抜け殻が小さいことに驚かされたが、ヘビの場合は逆で、抜け殻の方が本体よりも長くなる。
ヘビは自分の頭や胴の太さよりも大きな獲物を丸呑みにできるが、ふだんウロコの間にたたまれている皮膚が伸びることで(獲物をのみこんで膨れた)胴の拡張に対応できる仕組みになっている。だから抜け殻が自分の体を呑み込むこともなんなくできるわけだが……脱皮のさいにはこのウロコの間の皮膚がのびて剥離するため、抜け殻は本体より長くなるのだ(抜け殻を見ると、ウロコの間の部分が拡がっているのがわかる※画像を追記)。


時々残されたヘビの抜け殻の長さを測って本体の全長だと考える人がいるが、実際の本体(全長)は抜け殻よりも短い──これもトリッキーというかマジック的な現象といえるかも知れない。

ヘビの脱皮は、わかりやすい姿勢・見やすい場所で行なわれるわけではないので、図のような《絵に描いたような光景》を目にする機会はなかなか無いかも知れないが……そうしたことも含めて神秘的なインパクトを感じる。

ということで、昆虫の脱皮マジックもスゴイが、ヘビの脱皮マジックだって勝るとも劣らない……などと、あれやこれやと脱皮マジックの優劣について想像をめぐらせていたときに、ふと思った。
それでは、これらをしのぐ最強の脱皮マジックがあるとしたら、いったい、どんなものだろう?

ヘビは消化器の入口──口から本体が吐き出されるかのように脱皮を行なうが……それなら、消化器の出口──肛門がひらいて本体が出て行くという脱皮をおこなう奇抜な生き物はいないだろうか?
たとえば、糞に擬態したアゲハの若齢幼虫が、尻から糞のような幼虫をひりだしたら、これはかなり衝撃的だろう。
排泄しようとキバッたら、本体が出てしまった……みたいな?
この場合、脱皮の主体はキバッて本体をひりだした抜け殻なのか、排出された本体なのか……まぎらわしいトリッキーな光景はマジック的といえよう。
ヘビとは逆に肛門からすっぽり脱皮する生き物がいたとしたら……これこそ最強なのではあるまいか!?
さすがに、そんな期待にこたえる奇特なヤツはいないだろうが……。


アカスジキンカメムシの抜け殻おとし



脱皮後の4齢幼虫と落とされた抜け殻



コブシの葉の上にアカスジキンカメムシの幼虫がいるが↑、1匹だけ色が薄い。これは脱皮を終えてまだあまり時間が経っていないからだろう。近くで脱皮をおこなったはずだが、付近の葉に抜け殻が残っていなければ、脱皮後の幼虫によって落とされた可能性が高い──そう考えて葉の裏をチェックするが抜け殻は見つからず、この葉の下(地面)を探すと、予想した通りに落とされていた↓。


3齢から4齢へと脱皮したようだ。葉の上には3齢と4齢の幼虫がいる↓。


この新4齢幼虫が脱皮を終えた正確な時刻はわからないが、この画像↑から45分後には、ここまで色がついていた↓。


そしてさらに20分後↓。


《抜け殻おとし》のシーンは目にしていないが、羽化後のカメムシ成虫が抜け殻を落とすように、幼虫も同じ行動をとっているようだ。ならば、幼虫の脱皮でも《抜け殻おとし》を観察できるはずだ。

アカスジキンカメムシの羽化】でも記したが、カメムシが《抜け殻おとし》をする理由は、おそらく「抜け殻があることで天敵に見つかりやすくなる危険」を排除するためではないかと素人想像している。
鳥などからは見えにくいだろう葉の裏に残った抜け殻をわざわざ落とすのだから、鳥などの視覚ハンター対策というより寄生蜂や寄生蠅対策なのかも知れない。羽化や脱皮の際に離型剤のような分泌物(?)が抜け殻の内側に残されていたとすると、そのニオイが寄生蜂や寄生蠅などをよぶことにもなりかねない。そうした危険を回避するためにカメムシたちは羽化や脱皮の後、抜け殻を自分らの生活圏(葉や枝・幹)の外へ廃棄するのではないか──そんな可能性を想像し《抜け殻おとし》の行動を確かめたいと思っていた。

アカスジキンカメムシの《脱皮》と《抜け殻おとし》



そして好都合なことに、脱皮中のアカスジキンカメムシをみつけることができた。2齢から3齢への脱皮のようだ。
ということで、少し前に同じ場所で撮った2齢幼虫集団↓。3齢幼虫が1匹混じっている(たぶん)。


赤いもよう部分は、脱皮したばかりの時は細かったものが成長とともに太く拡がる(そのぶん体も大きくなる)ような気がする。大きくなるとこの赤い部分が白くなるようだが、この部分は脱皮・羽化のあとの抜け殻では透明で、(暗色の装甲?部分が堅そうなのに対し)ビニールのようにしおれていたりする。脱皮(あるいは羽化)寸前の幼虫の赤(あるいは白)の模様は、新幼虫(あるいは新成虫)の色が透けて見えているということなのかもしれない。
そして今回みつけた幼虫の脱皮↓。画面隅の数字は撮影時刻。


左の画像↑で、古い殻の暗色部分の間にビニールのような透明部分があるのがわかる。


抜け殻から脚が抜け↑、触角がぬける↓。




抜け殻(入れ物)より大きな本体(中身)が出てくる脱皮マジック!?


ほとんど抜け出したように見えるが、まだ「気管」がつながっているらしい。


白い糸のように見えるのが古い(抜け殻の)気管↑。


脱皮を終えると↑、抜け殻に向き直って、頭突き攻撃を開始した↓。


カメラを警戒してか新幼虫は動きをとめたが、少しすると抜け殻の下にもぐりこみ、すくいあげるような行動にでた↓。


そこでまたしばらく動きを止めていたが、接写を中断して画像チェックをしているわずかなスキに抜け殻を投げ落としてしまった↓。


新幼虫はこのあと葉かげに隠れた。一方、落とされた抜け殻は↓。


脱皮前は赤かった部分──脱皮後は透明になった部分は縮れて、そのぶんしぼんでしまった感じもする。






暗色部分は形を残していて、意外に美しい。
とりあえず、アカスジキンカメムシの《抜け殻落とし》が確認できたので満足。


ヒトはどうして眠るのか?~ロボットの反乱&自意識の覚醒




●ヒトはどうして眠るのか?

《夢》は面白いのでしばしば考えるテーマだが(*)、その舞台となる《眠り》についても長いあいだ不思議に感じていた。
夢を見ない(記憶していない)人はいるらしいが、眠らない人はいない。ヒトだけに限らず動物たちもみな眠る。

「ヒト(や動物)は、どうして眠るのだろう?」──誰でも1度は考えたことがあるのではないか。
睡眠のために活動時間がとられるのは、もったいない──1日24時間を全て覚醒していられたら、どれだけ人生を有効に謳歌できるだろう──そんなことを夢想したことがある人は少なくないはずだ。

しかし、望まなくても《眠り》はやってくる。逃れるすべは無い。意志に反しておとずれる《眠気》は魔物に例えられ《睡魔》なんて呼ばれたりもする。
この《睡魔》に抗って強制的に《睡眠》を阻害し続けると、色々障害が発生するという。どうやらヒトを含めた動物にとって、《睡眠》は切っても切れないものらしい……。

それでは《覚醒》を強制終了させてまで発動する《睡眠》には、どんな役割り・必要性があるというのだろう?
心身の休息・自然治癒・記憶の再構築などが睡眠と関わっているという話は聞いた事があるが、これらはたまたま睡眠時に活性化するということなのではないのか? 積極的に《睡眠》を必要とする理由としては今ひとつ弱いような……腑に落ちない感があって納得できないでいた。

我々が自覚できる実質的な人生は《覚醒》側にある。それを浸食する《睡眠》の呪縛……こんなものが、いったいなぜ存在するのか、幼い頃から長い間、僕にとっては謎だった。
他に「《ヒト》とは何か?・自分の存在を自覚している《心》とは何か?」といったテーマについても物心つく頃から不思議に思い考え続けていたのだが……これらの一連のテーマについて自分なりの解釈ができるようになった頃に、ふと気がついた。

それまでずっと「《睡眠》の役割り・必要性」がどこにあるのかを考えていたが、本来は「《覚醒》の役割り・必要性」がどこにあるのかを考えるのがこのテーマの本質だったのではないか。

我々はヒトである前に生物である。生物全体を見回してみれば《覚醒》していない(?)ものも多い。原始的な生物や植物など、《覚醒》がなくてもりっぱに繁栄している。《覚醒》は生物の一部が進化の途上で獲得した機能だろう。生物活動全般からみれば一機能にすぎない。
そうした視点に立って《覚醒》の役割りについて考えれば、ことはシンプルに理解できそうな気がする。

動物は《覚醒》している間にエネルギー源の摂取や交配など生命活動に重要なことを効率的に行なう事ができる。つまり生命活動に有効な機能として《覚醒》を考えるとその必要性は解りやすい。ただし《覚醒》モードではエネルギー消費も激しい。生命活動に必要なぶん(時間)だけ《覚醒》していれば良いわけで、あとは《覚醒》モードはオフに──《睡眠》モード(省エネモード)でいた方が生物としては効率的だ。そう考えるのが理にかなっており、実際そうなっているのではないか?
負荷の高い《覚醒》モードを必要最小限に止めるのが理想型であるとすれば、これをオフにするスイッチ・《睡眠》モードがあるのは当然で、それがあって健康が維持される(強制的に眠りを阻害し続ければ故障しやすくなる)というのも理解できる。

こう悟ったとき、なんでこんな当たり前の事に気がつかなかったのだろうと不思議に感じたものだ。そして「あたりまえのことに気づかなかった」こと自体にも何やら意味があるのではないかと考えるようになった。



●《天動説》的視点

ヒト(や動物)の活動を生物活動として俯瞰してみれば《覚醒と睡眠》の意味もすんなり解釈できてしかるべきなのに、意外に思考が迷走したのは……思考作業をつかさどる《意識》を基点に《覚醒》側から《睡眠》を解釈しようとしたためではなかったのか? そのために正しい理解から遠ざかってしまった気がしないでもない。
そう考えたとき、これは我々がいる地球を基点に天空の星の動きを理解しようとして迷走した《天動説》の発想とよく似ている──と感じた。

宇宙全体からすれば、地球は数ある銀河のひとつ──銀河系のさらに外れに位置している。にもかかわらず、そこに棲む我々は自分たちが宇宙の中心だと思い込んでしまった……。
地球を宇宙の中心すえて星の動きを説明しようとすると(天動説)、ややこしいことになり正しい理解が得られない。自分たちが基軸であるという発想を離れ、《地動説》の視点に立つことで、初めて正しい理解が得られたわけだ……。
これが、《覚醒》側から《睡眠》の意味を求めても真理は得られず、《覚醒》を含めて俯瞰する視点に立つことで、初めてその意味が理解できた──ということと似ていると感じたのだ。

「銀河の外れに位置しながら自分たちが宇宙の中心だと思い込みがち」なことと、
「生命活動の一機能でありながら、《覚醒》を主体と認識しがち」なこと──よく似ているが、これは《覚醒》側でしか物事を認知・理解する事ができない我々の主観がおちいりやすい欠陥なのかも知れない。
今では《天動説》を信じる人はいないだろう。だれでも《地動説》を認識しているし、われわれの棲む地球が銀河の外れに位置していることも知っている。しかし、ヒトの《意識》はまだまだ自分を中心に物事を認知しようとする──《天動説》的なものに偏りがちなのかもしれない。
銀河の外れに存在しながら、ヒトの《意識》はいつも「宇宙の中心」にある。



●《ロボットの反乱》と《自意識の覚醒》

自己や周囲の状況を認識したり理解している我々の《自意識》は生命活動としての《覚醒》の中で生まれてきたものだろう。他の覚醒動物がどれだけ《自意識》といえるものを持っているのかは判らないが、《自意識》は、おそらく進化のかなり進んだ(末端の)段階でヒトという生物が獲得したシステム(機能)だったろう──これによって文化が格段に進歩したことは想像にがたくない。

「言葉」を発明し(あるいは「言葉」の誕生による言語フォーマット化が自意識の覚醒につながったのかもしれないという気もする)、「文字」を発明し──科学を発達させ、ヒトの活動は生物の中でも驚異的な発展をとげたのは《自意識》の獲得と決して無縁ではなかったはずだ。

ところで、テレビもすごい発明だと思うが、僕は幼少期に日本初の国産テレビアニメ『鉄腕アトム』も見て育った世代だ。アニメに登場するロボットを見ながら「人間が作り出した機械(ロボット)に心が芽生えることはあるのだろうか? もし人が作ったものが人とは違った価値観に目覚め、人間たちに対して反乱を起こしたら……」という漠然とした不安を抱いた記憶がある。「《ヒト》とは何か?・《心》とは何か?」と考えるようになったのは、その頃からだと思う。
「ヒトが生活を豊かにするために作り出したシステムがヒトにとって代わり世界を支配する(しようとする)」というテーマのSF作品はけっこうありそうな気がする。

「《ヒト》とは何か?・《心》とは何か?」と考え始めた子ども時代、「ロボットの反乱」という、ありもしないシチュエーションにわけもなく不安を抱いたわけだが……今にしてふり返ると、この不安には背景があったのではないか……という気がしないでもない。「ロボットの反乱」を危惧しながら、じつは我々のアイデンティティーは同様のルーツに立脚している──そんなジレンマを漠然と感じていたからではないか?

「人間が生み出した《ロボット》に心が目覚め、人間を支配するようになる」ことは、
「肉体(生物)の中に生まれた《覚醒》に自意識が芽生え、肉体をコントロールするようになった」
ことと似ている。つまり──、
《ロボットの反乱》と《自意識の覚醒》は同じ構図とみることができる。

ありもしないロボットのクーデターに不安を感じたのは、本来生物としての主体をもつ我々自身が《自意識》によるクーデターで、「《肉体(行動)》を《意識》の配下に治めるという下剋上(げこくじょう)をはたした」という《原罪》を内包しているからではないのか?
──そんな見方もできなくはない。

「ヒトはどうして眠るのか?」という、とんちんかんな(?)疑問を抱くこと自体、生物としての主体の中心から外れたところにある《自意識》ならではの天動説的発想なのではないか──そんな気がしないでもないのである。



*つれづれに夢の話
https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-227.html

*金縛り考
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アカスジキンカメムシの羽化

アカスジキンカメムシの羽化

このところ雨が多い。雨の止み間にアカスジキンカメムシが発生していたコブシを見に行ってみた。先日、成虫がぼちぼち発生していたので、うまくすれば羽化が見られるかも知れない。
ちなみに、これ↓が先日撮っていたアカスジキンカメムシ終齢幼虫。


コブシでは葉の裏に終齢幼虫がいくつか見られた。葉の裏にとまっているのは少し前まで降っていた雨をさけてのことなのか、それとも羽化のためなのか──よくわからない。
空は暗く、しかも終齢幼虫は葉の裏に止まっているのでさらに暗い位置にいるわけで……キレイに撮るのが難しそうな状況に不安を感じつつ、とりあえず羽化が始まったら撮るということに……。
位置的に撮影しやすそうなところにいるメイン候補を中心に、あちこち見ながら少し待ってみるが、終齢幼虫に変化は無い……。
一応、「羽化前」のショットとして2枚程撮って、一度その場を離れたのだが、15分程たって戻ってみると、羽化が始まっていた!


まだ羽化が始まっていないと思って、おざなりに撮っていた終齢幼虫↑。少し前まで降っていた雨で濡れている。現場では気づかなかったが、胸の背面に裂け目ができていた──このとき、すでに羽化は始まっていたのだ。
そして羽化に気づいて撮った画像↓。画面隅の数字は時刻。


抜け殻では、幼虫時代に白かった部分は透明になっている。


抜け殻よりも大きな成虫がでてくるのがマジックのようでなんとも不思議だ。










抜け殻に残っている白い糸くずのようなものは気管(の壁面)だろう。セミの抜け殻でもよく見かける。
抜け殻は成虫羽化後もこうしてしっかり残っていたが、このあと、羽化した成虫が抜け殻を落とす行動──《抜け殻おとし》(勝手に命名?)にでるのではないかと予想して見守ったのだが……成虫はなかなか動かない。




体幹部の色はまだほとんど出ていないが、触角や脚の色が濃くなってきたのが判る。
ちなみに、ただでさえ暗くなりがちな葉の裏の撮影は、こんなふうに↓行なった。


左手にレフ板がわりのアルミシートを持ち、右手に持ったカメラで撮影。
撮影中にパラつきだした雨がこのあと強くなってきたので、ここでやむなく撤退。この時点では羽化した成虫による《抜け殻おとし》は確認できなかった。

《抜け殻おとし》というのは便宜的に勝手につけてみた呼び名だが……以前、エサキモンキツノカメムシの羽化に遭遇したことがあり、そのさい羽化後の成虫が抜け殻を攻撃し、ついには落としてしまうという行動を観察したことがあった。
「成虫はなぜ抜け殻を落としたのだろう?」──その行動の意味について色々想像して次のように考えてみた(例によって素人の想像)。

羽化のさいに古い外皮と新しい外皮がすんなり分離できるように、その境い目には離型剤のような物質(脂?)が分泌されているのではないか?
その物質が抜け殻の内側に残っているとすれば、そのニオイで寄生蜂や寄生蠅を呼んでしまう危険があるのかもしれない……それで、羽化したカメムシはわざわざ抜け殻を落とし、災いのもとを排除するのではないか?
そんな可能性に思い至った……この行動が《抜け殻おとし》。

今年5月には、まだ体色が整っていないアカスジキンカメムシ新成虫がとまった葉の下に落とされた抜け殻を確認し、《抜け殻おとし》があったのではないかと考えた。この時は葉の裏に残された抜け殻もあったので、《抜け殻おとし》は必ず行なわれるわけでもないようだ……。
以前飼育していたコノハムシは、脱皮や羽化の後に抜け殻を食べていたが、食べずに残すこともあった。あれと同じようなことだろうか?

孵化後に卵殻を食べる幼虫や脱皮後に抜け殻を食べる昆虫は多い。自分を構成していた物質だから、素材として再利用するという意味合いもありそうだが、天敵を呼んでしまう手がかりの隠滅と言う意味合いもあるのではないか? カメムシだと植物の汁を吸う口の構造から抜け殻を食べるわけにはいかず、自分たちがいる葉や枝から遠ざけるために《抜け殻おとし》をするのではないか……

エサキモンキツノカメムシに続きアカスジキンカメムシでも《抜け殻おとし》を示唆する証拠が見つかったことから、今回のアカスジキンカメムシの羽化でも《抜け殻おとし》を確かめてみたいとひそかに期待していた。
しかしながら、雨で撮影の継続を断念──撤退した時点では《抜け殻おとし》は確認できなかった……のだが。

やっぱりあった新成虫の《抜け殻おとし》

一度ひきあげたものの、あの新成虫が《抜け殻おとし》をするのかしないのか、やはり気になる。そこで雨がふたたび止んだ2時間半後にふたたび現場に確認にでかけとてみると──。


撤退前の画像から2時間43分後、葉の裏から抜け殻は消えていた。「やっぱり、《抜け殻おとし》はあったのだ!」と葉の下を探すとすぐに抜け殻が見つかった。




回収した抜け殻↑。この画像ではわかりにくいが、幼虫時代に白かった部分が透明になっている。
そして、だいぶ色がついてきた新成虫↓。


カメラを向けていると、葉の裏から表へ移動した。


空は相変わらず暗く、ブレ&ボケがち……。
最終的にどんな色になるか──比較のために、同じコブシの葉の上にいた別個体の成虫画像↓を。


羽化マジック?

昆虫が脱皮をくり返して成長・羽化することは、知識としては誰でも知っている──「あたりまえ」のことだ。しかし実際に脱皮や羽化のシーンを見ると「スゴイことするなぁ……」と感心せずにはいられない。《知識》として「あたりまえ」だったことが、「不思議ですごい」ことであったと《実感》できる。本などの二次情報で得た《知識》は言ってみれば《地図》のようなもので、これに対し、一次体験(観察)は《風景》に例えることができるかもしれない。

今回も感じたが……小さな抜け殻から大きな成虫が出てくるようすは「見なければ信じられない」くらい不思議で面白い。
むかし「薄いアタッシュケースの中から、でかい据え置き用の公衆電話機を取り出す」というマジックがあったが──昆虫の脱皮や羽化を見ると、それを思い出してしまう。

余談だが……脱皮の不思議については、小学3年生の時だったと思うが……こんな思い出がある。授業中、先生の「昆虫は脱皮をくり返して大きくなる」という説明が納得できなかった。「脱いだ殻の中からでてくるのなら、殻より小さくなくてはおかしい」「脱皮をくり返せば、(マトリョーシカのように)どんどん小さくなるはずではないか?」と質問した覚えがある。今思い出すと笑ってしまうが、当時は真剣にそう考えていた。
そのとき先生がどう答えたのかは記憶にないが、あまり納得できず、その後、「脱皮したての時は、きっと抜け殻より小さくて、その後エサを食べて大きくなるのだろう」「幼虫のそれぞれのステージ(という言葉は知らなかったが)に《のびしろ》のようなものがあって、その限界まで大きくなると脱皮をするのだろう」と勝手に解釈した覚えがある。

実際には──(種類にもよるのかもしれないが)脱皮では「抜け殻より大きな体が出てくる(出ながら大きくなる)」──マトリョーシカでは考えられないことだ(笑)。
質量的には抜け殻のぶんだけ新成虫は終齢幼虫より小さくなっているはずだが、体積的には大きいくなっている──ということなのだろう。そう考えると不合理は無いが、やっぱり見た目は不思議に感じる。

今回、確認したかった《抜け殻おとし》だが、シーンそのものは見ることができなかった。しかし、それがあったと思われる状況証拠は得る事ができた。
「抜け殻を食べて隠滅することができないカメムシは、《抜け殻おとし》をする」──という素人予想も、にわかに現実味をおびてきた気がしないでもない!?
《抜け殻おとし》のシーンを記録することはできなかったが、とりあえず「マトリョーシカもビックリ!」な羽化マジック・シーンを撮る事ができたので、まあ、よしとしよう。

最後にオマケ↓


追記:《赤筋》があざやかな成虫

【アカスジキンカメムシ】──和名にも記されている成虫の特徴《赤筋》だが、個体によって濃さに差がある(あるいは羽化してからの時間も関係しているのだろうか?)。
後日(2015.9.12)、このコブシで赤い筋があざやかにでている成虫をみつけたのでその画素を追加↓








アカスジキンカメムシの臭腺開口部

アカスジキンカメムシはどこからニオイを放つのか



市内の公園でコブシにアカスジキンカメムシが発生していた。この画像↑には成虫(青円)1匹とアカスジキンカメムシ幼虫(黄円)が3匹写っている(よくみるとミナミトゲヘリカメムシの幼虫の姿もある)。


1枚目の画像と同じ個体↑。アカスジキンカメムシは何度もとりあげてきたが、成虫のニオイを発する孔──臭腺開口部(臭腺開孔部)はまだ確かめていなかったので、見てみることに。カメムシ成虫の臭腺開口部は腹面にある。




これまで気にかけたことがなかったが……あらためて腹面を見ると、金ピカに輝く部分があって意外にキレイ。ピンセットではさんで撮影してみたが、宙をかく脚がジャマして上手く撮れていなかった……ということで、指でつまんで再挑戦……。




胸にある溝の内側から臭腺で作られた液を分泌するのだろう。撮影中にはカメムシ臭が漂い、指にもニオイはついたが、さほど強いものではなかった。指につけられたニオイも比較的短い時間で消失した。
成虫の臭腺開口部を確認したので、幼虫の臭腺開口部も見てみる↓。


コブシの実を吸うアカスジキンカメムシ幼虫↑。カメムシの幼虫は背面に臭腺開口部がある。
同じ木にはステージの違う幼虫↓と成虫が混在していた。



アカスジキンカメムシと同じコブシで発生していたミナミトゲヘリカメムシ↓。


名前にもあるが、肩(前胸ふち)の《トゲ》が目立つ。


アカスジキンカメムシよりも個体数はずっと多かった。じつは8月下旬にこの木で若齢幼虫が大量に発生しているのに気がついていたのだが、その時はキバラヘリカメムシだと誤認していた。ミナミトゲヘリカメムシの若齢幼虫は、キバラヘリカメムシと、ちょっと似ている(キバラヘリカメムシは幼虫時代から脚に白い部分=ニーハイブーツもようがある)。


キマダラカメムシの臭腺開口部



同公園内ではキマダラカメムシ(*)↑も多い。アカスジキンカメムシとの比較でキマダラカメムシの臭腺開口部もあらためて撮ってみることに。


成虫は腹面↑に、幼虫は背面に↓臭腺開口部がある。


アカスジキンカメムシに比べ、キマダラカメムシのニオイは強い(経験上)。ということで、今回は触れずに撮影した。
キマダラカメムシは公園内の多くの木で見られるが、サクラに多い。大型でキレイなカメムシだが、サクラの幹についていると意外に目立たなかったりする↓。


この界隈でキマダラカメムシを初めて見たのは2011年だったが、今では最も多く見られるカメムシとなっている(※丘陵地帯ではまだ見たことがない)。