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2015年08月の記事 (1/1)

セミヤドリガの繭と蛹

セミヤドリガの繭と蛹



先日羽化したセミヤドリガ↑。羽化のようすは【セミヤドリガの羽化/幼虫~繭~成虫】で記した。
そして残されたセミヤドリガの繭と抜け殻の蛹↓。




このときの羽化は昼過ぎに行われ、急きょ屋外に持ち出して自然光で撮影することができたが、セミヤドリガの羽化は未明から午前中に行なわれることが多いらしい。羽化に気づくことができても、それが陽が出ていない時間帯であったり、あるいは雨風などで屋外(自然光)で撮影できない可能性もあった。そうした状況に備えて実は室内撮影の準備もしていた。
現在使っているカメラ(OLYMPUS STYLUS TG-2 Tough)にはストロボが内蔵されているのだが、接写ではストロボ発光してキレイに撮れたためしがない(単に使い方が悪いのだろう)……なので、室内でもストロボを使わずに撮影できるよう、100円グッズを利用して簡易撮影セットを用意していた↓。




せっかくなので、この簡易撮影セットを使って、羽化後に残された繭を調べ、撮ってみることに──。


セミヤドリガの繭は綿毛におおわれていて形がよくわからない↑。そこで、綿毛の部分をピンセットでとり除いてみた↓。


毛を刈られたヒツジのようになったセミヤドリガの繭↑。綿毛をのぞいた部分はやや堅めで、しっかりしている。蛹(抜け殻)がのぞいている部分を確かめてみると、穴が開いているわけではなく、蛹は繭端のスリットにしっかり挟まれていた。
《繭に穴を開けて羽化する蛾》↓とは違うようだ。


イラガやギンシャチホコの繭には羽化後、きれいな穴が残されている↑。しかしセミヤドリガの繭にはこうした「穴」がみられず、蛹は「スリット」に挟まれた状態。「穴をあけて出てくる」のではなく「すきまを押し広げて出てくる」スタイルなのだろう。


繭をはがし、1円玉に乗せて撮影↓。


セミヤドリガの繭を見て思い浮かんだのがウスタビガ(蛾)の繭。ウスタビガの繭も出口がスリット状で、左右から押すと開口するガマグチ構造になっている。セミヤドリガの繭も同じような構造なのだろう。


ガマグチ構造を確かめるためにセミヤドリガの繭を左右から押してみた↓。


はたして蛹をしっかりはさんでいた「スリット」が開いた↑。この状態で開口部を下に向けると蛹(抜け殻)はなんなく抜け落ちた。


蛹がとれたあとのセミヤドリガ繭の開口部↑。ガマグチ構造が確認できる。
そして、とりだしたセミヤドリガの蛹(抜け殻)↓。






腹面からみた蛹と成虫の腹面からのショットを比べてみた↓。




触角や脚などが意外にはっきりしていて、チョウやガの蛹というより、甲虫類の蛹っぽい感じがしないでもなかった。
そしてあらためて、蛹をとり出した後のセミヤドリガの繭↓。


左右から加えた外力で、ガマグチ構造のスリットが開いている繭↑。
とりだした蛹(抜け殻)とのツーショット↓。


(ついでに)夏の昆虫

気づけば8月も終わりということで……撮ってはいたものの投稿する機会がなかった夏の昆虫から少し。


目の前に落ちてきたノコギリクワガタのオス↑。大きな個体は大顎の湾曲が美しい。これを見て昔のコルベットスティングレイ(スポーツカー)を連想するのは僕だけだろうか?
実はこのオスが落ちてくる直前に小型♂(大顎の湾曲は小さい)が落ちてきて、2匹つづけて落ちてきたノコギリクワガタにビックリ。よく見るとそばにメスも2匹落ちていた。


頭上の枝にで餌場あらそいでもあって落下してきたのだろうか?
近くに樹液が出ているクヌギがあったので、そこへ移すとすぐに根元の土に潜っていった。
僕が子どもだった頃はノコギリクワガタはカブトムシより頻繁に見られたものだが、今では少なくなり、カブトムシの方が見かける機会が多い。


樹液ポイントでカブトムシを見かけるのは昔と変わらないが、僕が子どもの頃にはいなかったアカボシゴマダラが今ではしっかり常連メンバーに加わっている。
カブトムシといえばオスの《いかついツノ》がトレードマークだが、小さな個体ではこのツノが貧弱なものもいる↓。


以前、カブトムシの《ツノのジレンマ》を指摘する説がニュースなどで報道されていたが、個人的には大いに懐疑的だ。カブトムシのツノの大きさ(≒体の大きさ)は、幼虫時代の栄養状態や育成環境によるところが大きそうな気がする。この場所では樹液が出ている木は多いものの、緑地管理が過剰(?)で落ち葉がすぐに撤去されてしまうため、カブトムシ幼虫の餌となる腐葉土が意外に少ない。それで、こうした小さなオスも出やすいのかもしれない。


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セミヤドリガの羽化/幼虫~繭~成虫

セミヤドリガ:幼虫~繭へ



先日、空中にぶら下がっていたセミヤドリガの幼虫↑(*)。セミに外部寄生するかわった蛾の幼虫だ。
《成虫期間が短いといわれるセミだが、セミヤドリガ幼虫に寄生されたセミは養分を奪われることで成熟速度が落ち、そのぶん活動満期(?)が後にずれ込むようなことがあれば……セミヤドリガ幼虫の寄生が結果的にセミを延命させることになり、それはセミヤドリガ幼虫にとっても成長期間を稼げるという意味で都合が良い──そんな仕組みでもあるのではないか?》
などという冗談めいた妄想的想像が展開したのも先日(*)記した通りだが、そんなこともあってにわかにこの虫への関心が高まった。
蛹化のためにセミから離脱したと思われるセミヤドリガ終齢幼虫にでくわしたことで、この機会に繭や成虫の姿も確かめてみたくなった。昆虫の飼育経験はあまり無いので長期間の管理となると不安だが、セミヤドリガは繭を作ると1週間程で羽化するらしい(Wikipedia等情報)という認識でいたので──そのくらいならなんとかなるだろう……そう考えて、先日発見した終齢(5齢)幼虫を持ち帰っていた↓。


小物容器に入れて持ち帰った幼虫は、容器内部を糸or綿毛だらけにし始めていた。セミを離脱した終齢(5齢)幼虫が、ほどなく繭作りを始めたのだろう。


この幼虫が繭づくりを始めた容器のフタ↑ごと、別の容器に収納。
3時間半後にみると、抜けた綿毛に包まれてモゴモゴ繭作りを進めているようだった。うごめく白いかたまりの隙間から幼虫の赤茶色の地肌がのぞく↓。


翌日には《白いかたまり》になり動きは無かった。どうやら綿毛にまみれて繭は完成したらしい↓。


「蛾の繭」というと、カイコやイラガ、ウスタビガ(ヤマカマス)、クスサン(スカシダワラ)など、芸術性を感じさせる造型を思い浮かべてしまうが……、


これらの繭に比べると、セミヤドリガの繭は周囲に抜けた綿毛の束が散乱し、散髪後の床屋の床のようだ。繭の表面にコーティングされた綿毛も方向性が不規則で、とっ散らかった感じがいなめない……なんともザツな作りに見えてしまう。もっとも、セミヤドリガ繭のいびつな形は「繭には見えない」(天敵に虫だと気づかれにくい)という点で生存には有利な気がしないでもないが……。
このセミヤドリガの繭は乾燥防止のために濡らしたティッシュとともに小型のタッパーに入れて保管。蒸れないようにタッパーのフタには孔が開けてある。


セミヤドリガ幼虫:ロウの綿毛の役割り!?



キープしたセミヤドリガの羽化を待つ間に、新たにみつけたセミヤドリガ幼虫@ミンミンゼミ。上のミンミンゼミは1匹、下のミンミンゼミは2匹の幼虫をつけていた。


セミヤドリガの幼虫は5齢(終齢)になると白い蝋状物質の綿毛で背面がおおわれるようになるのだとか。4齢までに比べるとかなり目立つ。終齢(5齢)幼虫は、なぜ白い綿毛を身にまとうようになるのだろう?。ちょっと考えると白い綿毛は目立つため、この幼虫をつけたセミは天敵に見つかりやすくなるだろうから(天敵から狙われやすくなればセミヤドリガも一蓮托生で)リスクが増えそうな気がするが……そんなリスクを凌駕する《必要性》があるのだろうか?
成長した5齢のセミヤドリガ幼虫を見ると、セミの翅と腹の間にはさまれて窮屈そうだ。蝉の翅脈のある翅をおしつけられ、あるいは蝉が飛翔するさい、この翅でたたかれたりこすられたしそうだが、小さかった4齢までと比べればセミの翅による圧力・摩擦・衝撃は(成長して窮屈になったぶん)増加しているはずだ。その摩擦や衝撃を緩和し、やわらかい体を守る役割りをしているのが《白い(蝋状物質による)綿毛のコーティング》なのではないか?──などと想像してみたが、ホントのところはわからない。
5齢(終齢)幼虫の白い綿毛は繭づくりのさいにコーティングに再利用されていたが、繭の輪郭を隠しカムフラージュする役割りもありそうな気がする。
持ちかえったセミヤドリガ幼虫が作った繭を見てそう感じたわけだが……自然の状態ではどう見えるかも確かめておきたい──という気になり、「蝉しぐれ」というより「セミ豪雨」というべきセミが大合唱する林を注意して歩いてみると、それらしきものが見つかった。


持ちかえったセミヤドリガ幼虫が作った繭を見ているから「それっぽい」と気づいくことができたが、ふつうなら目にしても繭には見えない。セミヤドリガの繭を探してみると……葉や木に付着した鳥の白いフンが目にとまり、これがいささかまぎらわしい……ということは、「不規則な形の白いモノ」は鳥糞擬態の効果があるのではないか?
そんなことを考えていると、ちょうど鳥糞にまぎれているかのような繭を発見↓。


白矢印が鳥のフン、黄矢印がセミヤドリガの繭。これ↑を見て、やはり鳥糞擬態の効果はありそうだと感じた。5齢幼虫の綿毛の白さは、目立つぶんリスクを増やしそうだが、繭では逆に隠蔽効果を高める役割りを果たしているといえそうだ。

セミヤドリガの羽化

さて、糸で降下してきたセミヤドリガ幼虫は持ちかえったその日に繭を作った。この繭が何日で羽化するのかについて、当初「1週間程度」(Wikipedia等情報)という認識でいたのだが、その後「約2週間」とする情報もあることを知り、はたして何日で羽化するのか気になっていた。
実際に羽化したのは、繭づくりを始めた日(糸で降下してきたセミヤドリガ幼虫を持ちかえった日)からちょうど14日後だった↓。


羽化は「未明~午前中が多い」とか「早朝」という情報を読んでいたので、昼過ぎに繭に変化がないことを確かめ「きょうも羽化はないか……」とあきらめかけていたのだが……。それでも油断せずに注意していると、白い繭の端に小さな黒っぽい点が出現!? 黒点はしみ出したタールのようにみるみる大きくなってくる──繭の中から(羽化のために)蛹がせり出して来たのだ。あわてて撮影の準備をした。


画面すみの数字は撮影時刻。画面右では蛹がだいぶ露出しているが↑、黒点が見えはじめてから1~2分ほどでここまでせり出してきた。








初めて見るセミヤドリガの成虫。1週間で見られると思っていたのが2週間待たされ──待ちわびていただけに、ちょっとした感慨があった。


触角が♂にありがちな「両櫛歯状」にも見えるが……セミヤドリガは♀が多く、単為生殖できるという。オスなのかメスなのかは、僕にはわからない。
この後セミヤドリガは容器の縁を歩こうとして落ち、ひっくり返ったので、まだ伸びきっていない翅が痛むことを心配し、とっさに指にとまらせた。


翅がのびてくると、(蛾なのに)チョウのように翅を立てた。これは羽化直後と思われる蛾がよく見せる行動のような気がする。


翅をとじた姿勢を10分あまり続けた後、翅を開いた通常の姿勢に戻った↓。


しばらくするとクリーム色の液を排泄した↓。


今回のセミヤドリガの羽化のようすを簡単にまとめると──。
・繭から蛹がせり出しはじめる…………おそらく12:48頃
・蛹の殻がやぶれて頭・胸背面がのぞく……………12:55
・触角が抜け、脚が抜ける……………………………12:56
・体全体が蛹殻から抜ける……………………………12:57
・翅がほぼ伸びきる……………………………………13:02
・開いていた翅を閉じる(立てる)……………………13:03
・閉じていた翅を開く…………………………………13:14
・クリーム色の糞をする………………………………13:24

セミヤドリガ成虫の頭部を腹側から撮影↓。


口吻が退化しているのがわかる。セミヤドリガは成虫になると餌をとらないらしい。
あらためて背面ショット↓。翅が光って見えない角度からみると地味な蛾だが、青っぽく光って見える角度から見ると美しい。




大きさは、直径2cmの1円玉と比べて、こんな感じ↓。




テングスケバ@桑

天狗の鼻の神通力!?テングスケバ



《天狗》の鼻を思わせる突起と《透けた翅》──で、【テングスケバ】。特徴を表したわかりやすい名前の昆虫。少し前に【テングスケバとデング熱】で紹介したばかりだが、お気に入りの虫なので、その後も目にとまると、つい撮ってしまう。


橙色系の地にあわい青緑色系という補色のストライプにトロピカルな(?)魅力を感じてしまう。脚や口吻は白地に黒のやはりストライプ柄でキメている。


頭の形がショウリョウバッタやオンブバッタに似ているので、透明なマントをはおったバッタっぽく見えなくもない。不用意に近づくとピン!と跳ねるところもバッタに似ている。




バッタのように後脚を深く曲げてとまっており、これを瞬間的に伸ばすことでジャンプ力を生んでいるのだろう。バッタは深く曲げた後脚の(人でいったら)膝にあたる部分が後方につき出ているが、テングスケバは前方に傾き、後脚が中脚と交差するような形になっている。


角度によっては「とんがり頭系バッタ」っぽく見えるが、テングスケバはバッタ目ではなくカメムシ目の昆虫。その証拠に口はカメムシのように針状になっている。この口吻を突き立てて植物の汁を吸っている。




「カメムシ目(半翅目)>ヨコバイ亜目(同翅亜目)>テングスケバ科」という情報もあるが、Wikipedia【ヨコバイ亜目】によると、「ヨコバイ亜目(同翅亜目)」の分類群名は古典的なもので「21世紀に入ってからは使用されなくなった」そうな。手元の図鑑では「カメムシ目・テングスケバ科」となっている。テングスケバ科はカメムシ目(半翅目)のハゴロモ上科(別称:ビワハゴロモ上科・ウンカ上科)というグループに入るらしい。


撮った画像を見ると、どれも偽瞳孔(擬瞳孔:複眼の中の黒い点)が「カメラ目線」で写っている。カマキリやバッタなどでも見られるが、偽瞳孔は瞳のような器官ではなく、複眼に集まった小さな眼(個眼)の奥まで見える角度でそのポイントが黒く見えるというもの。2つのカメラで別々の方向から同時に撮っても、それぞれ「カメラ目線」に写る。
こうしたルックスがお気に入りで、ついカメラをむけてしまうテングスケバだが、僕がこの虫を目にするのはもっぱらクワ──雑草に囲まれた若いクワの葉や茎にとまっていることが多い。


こうしてクワの茎や枝にとまって汁を吸っていると「とんがり頭(天狗の鼻)」があることによってボディラインが植物の一部に見えなくもない。《天狗の鼻》はダテではなく、植物に隠蔽擬態するための《神通力》を持っているのかもしれない。言ってみれば《天狗の隠れ蓑》効果!?


こちらはやや木化(?)したクワの枝↑。また、クワの葉の上にとまっていることもある↓。




クワで見かける他の虫たち(の一部)

テングスケバをみかけるクワでは、他にも色々な昆虫を目にする。テングスケバ(12~14mm)よりもぐっと小ぶり(約5mm)だが、頭~胸にかけてのシャープなストライプがテングスケバに似ている気がするミドリグンバイウンカ↓。


若いクワは汁を吸う昆虫には人気があるようで、ハゴロモなども常連。




アオバハゴロモはハゴロモ科とは別のアオバハゴロモ科に分類さされているようだ。上の画像は左が下向きにとまった成虫・右が上向きにとまった幼虫(よく見ると偽瞳孔のある眼と触角がわかる)。


クワではアリを見かけることもあるが、そんなアリに擬態したホソヘリカメムシ幼虫↑の姿もあった。
比較的大きなものでは、キボシカミキリ↓がよく見られる。


キボシカミキリはクワの葉の裏から葉脈をかじるので、このカミキリがいるところでは葉脈部分がスリット状の穴となった葉が目につく。このカミキリは去年・今年と1月にも見ており(1月にキボシカミキリ新年2種目天牛はキボシカミキリ)、意外に長く見られるカミキリだったりする。
また、最近このあたりでも増えてきた外来種のキマダラカメムシ(こちらではサクラに多いが、他の木でもみつかる)が、クワにも来ているようだ。


画像↑左はサクラの幹についたキマダラカメムシ成虫。右はクワの葉の上でキマダラカメムシ成虫をとらえたハラビロカマキリの幼虫。キマダラカメムシといえば、先日臭腺開口部を確認しようとしてカメムシ臭のするシミをつけられたが(【キマダラカメムシの臭腺開口部】)、その最臭兵器(?)もカマキリには通用しなかったのか……ハラビロカマキリは幼虫ながら、かなり豪快に獲物を食っていた。


クワの葉の裏にはキマダラカメムシのものと思われる卵が産みつけられていた。本来ならハッチ型の蓋がきれいに開いて孵化するところだが、あきらかに齧られて破られているものがあり、これは寄生蜂によるものだろう。


寄生蜂が食い破って出たと思われるカラの卵の隣に羽化が近いと思われる卵(白矢印)があったので翌日のぞいてみると穴が開けられていた。急速に勢力を拡大しているかに見えるキマダラカメムシだが、密度が高まれば寄生蜂を増やす格好の材料となり、急増が逆に抑制勢力を勢いづかせているのかもしれない。自然界のホメオスタシス(均衡維持)だろうか。
こうしたシーンを目にすると、ふだん人々が気にとめない道ばたのちっぽけなクワの若木にも色々な生命が集まり、様々なドラマが展開されているのを実感する。

セミヤドリガ幼虫

モコモコ綿毛のハリネズミ!?セミヤドリガ幼虫

蝉しぐれの公園を歩いていると目の前の空間に小さな白い物体が浮いていた。頭上の枝から糸を吐いて降下してきた蛾の幼虫だろうと思って、よけて通り過ぎかけて……「!」と足が止まった。思わず二度見するとセミヤドリガの幼虫だった。
この虫はセミに外部寄生する蛾の幼虫。先日、セミヤドリガ幼虫を腹につけているセミを撮って、ちょうどセミヤドリガについて考えていた時だった。
寄生していた蝉から離れて繭を作る場所を探しているところだったのだろう。セミヤドリガ幼虫をじっくり見たことはなかったので、グッドタイミング。
宙に浮かぶ不安定な状態だと撮りにくいので、てのひらに受けてみる。すると幼虫はロウの綿毛に覆われた背中をみせてダンゴムシのように丸まった。地肌が露出した腹を守る防御の姿勢なのだろうか?


ふと以前飼っていたミミナガハリネズミ(オオミミハリネズミ)が丸まった姿が脳裏に浮かんだ。《モコモコ綿毛の白いハリネズミ》に見えなくもない!?


まるまったセミヤドリガ幼虫と丸まったハリネズミは意外によく似ている!?




画面左が頭部。腹脚&尾脚の円状に並んだ爪(?)もなかなかユニークだ。
寄生するというと何だか恐ろしげなイメージがあるが、こうして見る限りセミヤドリガ幼虫は、なんだか可愛らしささえ感じられないでもない。
この虫に寄生されたセミは、それが原因で死んだり産卵ができなくなったりすることはないらしいが、そのあたりの《ホストに優しい寄生(?)》もちょっと不思議な気がする。

セミヤドリガ幼虫@アブラゼミ



これが先日みつけたセミヤドリガ幼虫をつけたアブラゼミ↑。これが「セミヤドリガの幼虫」だということはすぐ判ったが、この時点では実はあまりテンションは上がらなかった。
きれいな色合いやおもしろい形の昆虫などは、そのルックスだけでカメラを向けたくなるが、「セミヤドリガの幼虫」は今ひとつ見た目がパッとしない……。
ちなみにこれに近いハゴロモヤドリガというのがいて、似たような白いロウにまみれた幼虫がセミのミニチュアのようなハゴロモという虫にについていることは、けっこう前から知っていた。昔、カメレオンを飼っていたときに餌として採取していたハゴロモにしばしば見られたからだ。最初に見た時は、正体不明の不気味な繭に見えたものだが……後にそれがハゴロモヤドリガという蛾の幼虫であることを知った。その関連でセミヤドリガの存在も知ったのではないか……という気もするが、その時期や経緯は記憶があやふやだ。
セミヤドリガ幼虫もハコゴロモヤドリガ幼虫も、見た目の「おもしろさ」を感じなかった……それで、これまであまり気にとめてこなかった……。

ちなみにこれ↓がハゴロモの一種とハゴロモヤドリガ幼虫。


クワの茎にとまって汁を吸うベッコウハゴロモ成虫と、その腹にとまっているハゴロモヤドリガ幼虫。セミヤドリガ幼虫をそのまま小さくしたような感じで良く似ている。



先日、アブラゼミにとりついたセミヤドリガの幼虫に気づいた時も「いちおう撮っておくか」くらいの気持ちでカメラを向けていた。とりあえず何枚か撮ってその場を離れたのだが……この虫のことをあらためて考えてみたら……これが、とても謎めいていることに気がつき、にわかに興味がわいてきた。

まず、《蛾の幼虫なのにセミに寄生する》というのが考えてみれば不思議だ。
ふつう蛾やチョウ(鱗翅目)の幼虫といえば、葉などを食べる草食のイメージがある。
ハワイにはハエを捕らえて食べるシャクガの幼虫がいるというし、ボクトウガの幼虫が肉食だと知った時も驚いた。チョウの仲間ではオオゴマシジミの幼虫はアリを食うらしいし、ゴイシシジミ幼虫は植物につくアブラムシを食うというから、肉食鱗翅目(チョウ目)幼虫がいないわけではないけれど……セミに寄生するというのは、にわかに信じがたい感じがする。

例えば、ゴイシシジミ幼虫が植物につくアブラムシを食う──というのは「あり得そう」な気がする。本来植物を食っていた幼虫が、その植物につくアブラムシを誤食することはあり得るだろうし、そのまま(?)主食がシフトした……なんてことが起こっても、さほど不思議な感じはしない。

ところがセミへの寄生となると、ハードルが高い。植物食だった幼虫が、仮に「食植物とそこにとまったセミを間違える」ようなことがあったとしても……葉を食べていた口でセミの体液を吸うようなことができるものだろうか?
カメムシのように植物の汁を吸うような構造の口をもつ昆虫なら、その口を刺して他の虫の体液を吸うというようなコンバート(?)はできそうな気がする(実際に捕食性カメムシは存在する)が……葉を咀嚼していた幼虫が、他の虫の体液を吸うタイプにシフトするのは容易なことではないだろう。
そう考えると、蛾の幼虫がセミに寄生するなど不自然きわまりない。

いったい、どんなプロセスを経て、セミへの寄生が成立し得たのだろうか?

説明のつきそうなシナリオを考えてみると……この幼虫は元々「葉を食べる」→「植物をかじって汁を吸う」というような形態まで進化していたのではないか? その段階まで進化していたのであれば、その対象が「植物からセミへのシフト」はハードルが下げられる気がする。
本来、幼虫は植物を齧ってその汁を吸っていたのだが……例えば、親(蛾)が食植物でない木に卵を産んでしまうようなことがあって、ホストでない木に産みつけられた卵から孵った幼虫は餌にありつけず飢餓状態になる……そこへやってきたセミにとりついて齧ってみたら体液にありつくことができた……というシナリオ。いささか強引な気もするが、納得しうるつじつま合わせの解釈を探すとそんな可能性しか思い浮かばない。

とりあえず、仮に「セミへの寄生」が成立したとしよう。それでも謎はつきない。
セミヤドリガ幼虫は、いったいどのタイミングでセミに寄生するのだろう?
仮にセミの幼虫時代から寄生するのだとしたら、地中にいるホストにどうやってとりつくのか? また羽化するときに抜け殻と一緒に脱ぎ捨てられないのだろうか?──などの疑問がわく。
後に調べてみたら、セミヤドリガ幼虫はセミの幼虫ではなく成虫に寄生するそうだ。

そうなると、新たな疑問がわいてくる……セミの成虫といえば一般に「はかない命」というイメージで知られている。成虫になってからのセミの活動期間が短いのであれば、成虫に寄生したセミヤドリガはそのわずかな期間で《成虫になるまでに必要な養分》を摂取し急成長しなければならないことになる。セミヤドリガは羽化したあとは餌をとらないそうなので、成虫になってからの繁殖活動を支えるエネルギー源もセミに寄生している間に貯えておかなくてはならない。宿主のセミの方は何年もかけて幼虫時代をすごすのに、これに寄生するセミヤドリガ幼虫のタイムスケジュールはやけにタイトだ……。

短いセミの成虫期間に限って寄生し、必要な成長を遂げるというのは、セミへの対応(寄生)がそうとう効率的でなければ達成できないのではないだろうか?
セミヤドリガがどういう経緯でセミに寄生するようになったのかわからないが、寄生経験が無かった種類がいきなりセミに寄生して、この「超効率化」ができたとは想像しにくい。
そこで思い浮かんだのがハゴロモヤドリガの存在だ。ハゴロモヤドリガという「助走期間」があってセミへの飛躍(対応)が可能になったのではないか?

セミヤドリガを知った時は、そのミニチュア版としてハゴロモヤドリガをイメージし、ハゴロモヤドリガがセミヤドリガの派生種のような認識でいたのだが……歴史としてはハゴロモヤドリガの方が古く、これが基本だったのではないかと思い直した。
セミと違ってハゴロモは幼虫時代から成虫と同じような環境で育っている。これならば、これに寄生する種にとっては成虫限定でははなく、幼虫の時代から寄生できる。実際、ハゴロモヤドリガ幼虫はハゴロモの幼虫にもつくようだ。「セミの成虫期間」よりも長い「ハゴロモの生活期間」で寄生を成立させ、成長を効率化してきた種類の中から、セミの成虫(短期間)に対応できるセミヤドリガが誕生た──と考えると納得しうる気がしないでもない。

それにしても気になるのが、《「セミヤドリガがとりついたセミの寿命」が「セミヤドリガ幼虫の成長に充分な養分と時間」を満たす前に尽きてしまったらどうするのだろう?》──ということだ。とりついたセミが死んでしまえば、他のセミに引っ越すというのは難しかろう。
そうしたリスクを考えると、寿命がつきそうな個体にとりつくようなムダは避けたいところだ。とすれば、セミが羽化する時をねらって取り付くのが合理的だろう……きっとそうしているのだろうと想像した。
ところが、前記アブラゼミと同じ公園でみつけたミンミンゼミにとりついていたセミヤドリガ幼虫を目にして、その想像は崩壊した。

セミヤドリガ幼虫@ミンミンゼミ



これ↑がそのミンミンゼミ。かなり大きさの違うセミヤドリガ幼虫が複数混在していたのだ。成長段階に格差があるということは、幼虫たちがとりついた時期がバラバラだったということを意味している(とそのときは感じた)。こんな状況で「末っ子幼虫」までもが、きちんと成長をとげることができるのだろうか?


調べてみたら、セミの成虫は、野外では1ヶ月ほど生きるらしい。一方セミヤドリガの幼虫は2週間余りで1齢から5齢(終齢)まで育つそうで、だとすれば、少々遅れてとりついた幼虫も成長しきれる可能性はあるということになる。
ということで、セミヤドリガ幼虫がセミにとりつくタイミングについては《羽化直後》説を破棄し、《随時》なのだろうと1度は考え直したのだが……その後さらに疑問に思うことがあって《随時》説にも懐疑的になっていく……。
というのも──、
今回セミヤドリガ幼虫に寄生されたアブラゼミとミンミンゼミの2匹をみつけた公園では、とにかくわんさかセミが見られた。ところが、セミヤドリガ幼虫を付けている個体は他には見つからなかったのだ。セミヤドリガ幼虫が寄生する機会(確率)は、そう高くはないということだ。
そんな中で1匹のセミだけが集中的に何度も低い確率(寄生の機会)を引き当てたというのは考えにくい。

つまり、ミンミンゼミに複数のセミヤドリガ幼虫がついていたのは、「何度もくり返し寄生チャンスが訪れた」というより、「一度の機会に複数個体がとりついた」と考える方が自然だということだ。
セミヤドリガの卵が密集するような箇所があって、たまたまそこへやってきたセミに、複数の幼虫がとりつくことに成功した──と考えれば納得できる。

寄生幼虫の成長格差は、とりついた時期の差ではなく、とりついた後の成長速度の差ではないのか? 幼虫がくいついた部位によって養分供給量に差があるのかもしれない?──同じ時期にとりついた幼虫でも、良いポジションをキープしたものは成長が早く、そうでないものは遅いというようなことがあるのではなかろうか?
ミンミンゼミの画像を見ると左側には2匹の大きな幼虫がついており、右側にはそれより小さな幼虫が3匹見られる。養分を多くの幼虫が奪い合う側で、幼虫の成長に遅れが出ていると見ることもできる。
同じ時期に取り付きながら、そうしたことで生じる成長の格差があり、これを見て別々の時期にとりついたものだと判断(誤認?)してしまったのではないかと思い直した。

しかし、複数とりついたことでセミヤドリガ幼虫の成長に格差や遅れが生じるとすれば、セミの寿命の間に充分成長できるのか、ちょっと心配になる。
そこでふと──「セミヤドリガ幼虫が寄生したことでホストのセミが延命するなんてコトでもあれば都合が良くて面白いのだが……」などと思った。
冗談めいた発想だが……ちょっと頭の体操で、考えてみた。

セミは成虫になってからも木の汁を吸っている──これは「成虫になってからも必要な成長のための養分補給」なのではないだろうか? セミは羽化後、性成熟するのに日数が必要らしい。
長い幼虫生活を経て成虫になったセミにとって最も大事なことは繁殖活動だろう。この繁殖活動が完了することで寿命は閉じる──そういうプログラムになっているのだと思う。

つまり「成虫になってからも必要な成長のための養分補給」を充分行ない繁殖活動に充分な成長を遂げることが成長の終着点と考えれば……セミ(成虫)になってからの成長に必要な栄養分をセミヤドリガ幼虫の寄生によって横取りされれば、そのぶんセミ成虫の成長には遅れが出ることになる。寄生されていないセミよりも、性成熟等の準備が整うまでによけい時間がかかることになれば、結果的にセミヤドリガ幼虫の寄生によってセミの「成長の終着点」はズレ込み──すなわち延命されることになるのではないか!?

宿主であるセミの寿命が延びれば、そのぶん成長時間が稼げることになりセミヤドリガ幼虫にとっても都合がよい。
昆虫界に寄生は多い。宿主を食い尽して成長するのが合理的なような気がしていたので、宿主を殺さないセミヤドリガの寄生スタイルを不思議に感じていたが、もしかするとセミの延命によって自分たちの成長時間を稼ぐという、そんな戦略が成立しているからではないか……などと考えてみたりもした。

もちろんこれは例によって、根拠の無いド素人の妄想的想像。セミヤドリガ幼虫を見てあれこれ思い感じたことを記してみたしだい。
昆虫には見た目のキャッチで好奇心を覚えるものもいるが、それとはまた別に生態などで想像力を刺激するものがいる……ということで。


香りはどこから?青リンゴ亀虫

青リンゴの匂い!?~キバラヘリカメムシ~



《カメムシ》というと《悪臭》のイメージがあるが……意外にも《青リンゴの香り》がするとウワサされるキバラヘリカメムシ。その真相を確かめるべく捕まえて嗅いでみたのが4年前(*)。
「それ系のニオイがする」というのはその後も何度か確認しているが、その香りの出どころ──臭腺開口部を確かめたことはなかったので、今回あらためてキバラヘリカメムシに注目してみた。




その名の通り「黄色い腹」のヘリカメムシ。といいながら、腹が黄緑の成虫もいるようだ。
ちなみに、幼虫はこんな姿↓。




さらに卵はこんな↓。多めの卵があちこちの葉の裏に産みつけられていた。


これらの卵が孵って世代が進めば、密度が高まり、もっと撮りやすい場所にいる個体も増えそうな気がするが……今回はまだ個体数が少なめで、なかなか満足のいくショットが撮れなかった……。

黒のニーハイブーツも印象的なキバラヘリカメムシ

名前にもある《黄腹》も印象的だが、美白のスラリとのびた脚に黒い膝上丈ブーツ──を思わせるデザインも目をひく。
ちなみに、脚の根元は黒いもの・赤いもの・白いものがみられた。






羽化したての成虫は黒くなる部分が赤い↓(※【真・青リンゴの香り/キバラヘリカメムシ】より)。


脚の根元は他の部分より黒くなるのに時間がかかるとか、黒くなりにくいというようなことでもあるのだろうか?
このように脚の根元の色にはバラツキがあるようだが《美白の脚に黒いニーハイブーツ》のデザインは共通している──これだけクッキリ目立つデザインには何か理由があるのだろうか?
まず思い浮かぶのは、(天敵に対し)ボディラインを分断し、かく乱する効果があるのではないかということ。キバラヘリカメムシは葉の裏にいることも多いが、そうした逆光ポジションにいる個体、あるいは明るいところにいる個体では、脚の白い部分は抜けて見えたりする。




僕が虫さがしをするとき、触角や脚は重要な検索ポイントになる。昆虫食の鳥などが自然物の中から昆虫を見つけ出すときも「細い触角や脚が生えた物体」という検索イメージで判断していたとすれば、脚と体幹を分離してみせることで、あるていどかく乱効果があるのかもしれない。

隠蔽(目立ちたくない)or警告(目立ちたい)?

《美白の脚に黒いニーハイブーツ》のデザインに「ボディラインかく乱」の意味があるのだとしたら、これは《隠蔽効果》の範疇だろう。黒と黄色という《警告色》を配したキバラヘリカメムシが《隠蔽効果》!?──という気もしないではないが……実際に食植物の葉や実にとまっているところを見ると、意外に目立たない感じもする。
ということで以前、密度が高まった秋に撮った画像↓。




黒と黄色という基本配色だけを考えれば、これは目立つカラーリングだ。スズメバチやアシナガバチも採用している《警告色》──目立ってなんぼのモノということになる。カメムシの仲間は悪臭=忌避効果がある(と思われる)分泌液を装備しているのだから、「こいつは不味い=食えない」ことを印象づけるためには「目立つ」ことが重要だ。
しかしキバラヘリカメムシを見ると、背景の中では意外に目立たない……体色に黒と黄色(あるいは白)という明るさの格差を作ることで、クッキリ見える部分(背景との明暗格差が大きい部分)と背景に溶け込んで見える部分(背景との明暗格差が小さい部分)を作り、これらを分離認識させてボディラインを隠蔽する効果があるようにも感じられる。
ちょっと考えると体全体が葉(背景)に近い単色の方が隠蔽効果がありそうな気がするが……単色であれば背景との格差がわずかでもあればボデイラインはむしろバレやすい。背景との色調格差が多少あっても、それを上回る体色の格差があった方がボデイラインをかく乱する効果はあるのかも知れない。

そんなことを思いながら、それではキバラヘリカメムシは、隠蔽系なのか(「目立ちたくない」のか)・警告系なのか(「目立ちたい」のか)──などと考えてしまった。
カメムシというと悪臭の武器(?)をもつことから警告系の印象が強いが、隠蔽仕様と思われるものもいたりはする。


ツヤアオカメムシは緑の葉にまぎれていれば見つけにくい隠蔽系だろう。アカスジカメムシはどう考えても警告系だ。しかし警告レベルの高そうなアカスジカメムシのカメムシ臭は実際はさほどきつくはない。この後にも記すキマダラカメムシはサクラなどにとまっていると樹皮にまぎれて意外に目立たなかったりするのだが、隠蔽系を思わせながらカメムシ臭は強い。
警告系で悪臭が強く、隠蔽系では悪臭が弱い──というわけでもないようだ(天敵が食べようとした時にどれだけダメージを与えられるか正確なところは判らないが)。
昆虫のデザインやカラーリングにおける「隠蔽」や「警告」の効果がはたしてどれだけあるのか(ないのか?)は、人が考えるほど単純ではないのかも知れない。

青リンゴの香りはどこから放たれるのか?

さて、キバラヘリカメムシの放つ《青リンゴの香り》だが──これまで何度か試してみたのだが……どうもバラツキがあるようだ。
「青リンゴそのもの──というと褒め過ぎ(?)かもしれないが、確かにそれ系の感じはする」と感じることもあったが、ほとんど無臭のことがあったり、逆にニオイがキツめに感じたこともあった。
青リンゴっぽく感じた時は、つまんだ指に残るニオイはあまり持続しない。ニオイがキツく感じたときは指についたニオイの残留時間も長かった──分泌される臭腺液の量・嗅いだ時の希釈のぐあいによって「青リンゴ感」は左右されるのかもしれない。
一度大量放出すると分泌物が貯まるまでニオイが薄くなるとか、あるいは時期によって(?)濃度が変化する──というようなことでもあるのだろうか。
色々と疑問はつきないが、その香りを発する臭腺開口部を確認してみた。


この個体↑は腹が黄緑色ぽかった。


指でつまんで撮影していたところ擬死状態になったので、撮りやすいように置いて撮ってみた↓。




臭腺開口部の位置がわかると、葉にとまった個体でも(近づければ)なんとか確認画像が撮れそうだ……と思い撮ってみたのが↓。


この小さな孔から《青リンゴの香り》は放たれる。

キマダラカメムシの臭腺開口部ふたたび

カメムシ成虫が「胸の腹側からニオイを発する」ことは子どもの頃に読んだ本で知ってはいた。知識としては知っていたが、じっさいにどこから出すのか具体的に見たことはないまま、ずっと「そういうもの」だと思ってきた。
遅ればせながら、「ニオイを出す孔(臭腺開口部)」を実際に確認してみなければ……と思いたったのがつい最近。最初はカメムシをひっくり返して腹面真正面から胸の辺りを撮って《臭腺開口部》なるものを探してみたのだが……よくわからない(種類によっても、判りやすいものと判りにくいものがあるようだ)。


腹面の真正面からでは《臭腺開口部》が確認しづらいことがわかり、見やすい角度を模索して、それらしいものを確認することができるようになってきた。
初めは《臭腺開口部》がよくわからなかったので、やむなくカメムシをつかまえ、ひっくり返して探さざるを得なかったが、構造がわかると、食植物にとまっているカメムシでも《臭腺開口部》を撮れそうな気がしてくる。
ということで、先日(*)指先にカメムシ臭のする茶色いシミを作りながら撮影したキマダラカメムシでも再確認してみたしだい↓。






【追記】サクラの幹にとまっていたキマダラカメムシ幼虫の臭腺開口部も撮影したので追加してみる。幼虫の臭腺開口部は腹の背面にある↓。




キマダラカメムシの臭腺開口部

もはや普通種:キマダラカメムシ



僕が初めてキマダラカメムシを見たのは2011年(*)。九州方面で見られる外来種だという認識でいたので、東京ででくわしたことにビックリした(Wikipediaによると東京で確認されたのは2010年)。
狭山丘陵ではまだ一度も見たことがないものの、丘陵のすぐ周辺の市街地ではすっかり定着し、最も多くみられるカメムシの1つとなっている。


灰色の体に《黒いブタの鼻》のような模様がユニークな幼虫↑。
これが若齢幼虫時代は全く異なるデザインをしており、まるで別種のよう↓。


孵化した卵(ぬけがら)の周りにかたまっている初齢(1齢)幼虫↑。キマダラカメムシは卵を12個セットで産むようだ。産卵直後の卵は無地だが、孵化が近くなるとフタの近くに黒縁の三角模様が現れる。
その黒縁の三角模様がまだ出ていないキマダラカメムシの卵(と思われる)に寄生蜂らしきハチがきていた↓。


侵出してきたキマダラカメムシは新しい環境でいっきに密度を高めた感があるが、あらたな加入種の密度が高まれば、こうした天敵昆虫なども急増し、追いつく(?)ことになるのだろう──そうして抑制されて、やがて適度な数に落ち着くのではないかという気もする。

幼虫の臭腺開口部を見る:臭腺分泌液のもうひとつの役割り!?

見ようと思えばすぐに見られるカメムシなので、あまりカメラも向けなくなっていたのだが……思い立ってキマダラカメムシのニオイを発する孔──臭腺開口部(臭腺開孔部)を確かめてみることにした。
カメムシは、幼虫では背面に、成虫では腹面に臭腺開口部がある──ということで、まずは観察しやすそうな背面側にある幼虫から。


全体的には灰色の体で、腹の背面に一部だけ黒い《ブタ鼻もよう》があるキマダラカメムシ幼虫。臭腺開口部を撮るべくカメラを近づけると逃げ出してしまった。そこでやむなく捕まえて接写することに。ところがつまんで保定しようとしたところ、カメムシ臭がたちこめ、臭腺から分泌したと思われる液で幼虫の背中がたちまち濡れた。この液が油のように滑るため、もがく幼虫は指をすり抜け、落ちてしまった↓。


分泌液で濡れたことで《ブタ鼻もよう》意外の部分も黒っぽく見える↑。すべる幼虫を捕まえて、なんとか腹の背面にあるはずの臭腺開口部を探してみる。




ツルツルすべる幼虫に苦戦しながら感じたのだが……もしかすると、臭腺分泌液には天敵に対する化学的(ニオイや味による)忌避効果の他に物理的(摩擦係数を減らす)スリップ効果もあるのではないだろうか?
油のような分泌液で滑りをよくすることで鳥のクチバシからすり抜けやすくなれば、そのぶん生存率は高まりそうな気がする。
ちなみに、この幼虫1匹を撮影しただけで指先にはカメムシ臭をともなう茶色いシミが残された。近くの水道で洗ってみたが、ニオイもシミも消えなかった。


臭腺分泌液でスリッピーになり、ちょっとあわてた撮影になったので……気をとりなおして、臭腺分泌液放出前の──普通の状態の別幼虫をあらためて見てみる。




《黒いブタ鼻もよう》以外の灰色っぽく見えるところは、白い微毛(?)がはえていた。ふだんはこの微毛(?)が乾いているため光が乱反射して白く見えるのだろう。
次に捕まえてみると、やはりたちまち液を分泌した。




白かった微毛(?)は濡れると光を吸収し黒っぽくなるようだ。体をおおっている微毛(?)は、臭腺分泌液を拡散させ気化効率を高める役割りをしているのかもしれない。

成虫の《臭腺開口部》と《蒸発域》!?

幼虫の臭腺開口部を確認できたので、次に成虫の臭腺開口部を見ることに↓。


成虫もカメムシ臭をともなう分泌液を放出し、これがやはり滑りやすくて、つまんで保定がままならない。


ということで、ピンセットを使用。


カメムシ成虫の《臭腺開口部》の周辺には、分泌された液をすみやかに気化させる《蒸発域》というのがあるらしいので、そのあたりも注意して見る。




とりあえず該当部分をアップで撮って、撮影した画像を拡大してチェック。白矢印の孔がキマダラカメムシ成虫の《臭腺開口部》のようだ。そしてその周辺のしわ状の表面部分が《蒸発域》なのだろう。まだ湿った部分がより黒く写っている。
この角度からでは《臭腺開口部》がわかりづらいので、別の成虫をつかまえて再確認↓。




角度は悪くないのだが、まだ鮮明ではない……ということで、そのまま日向で撮りなおしてみる↓。






《臭腺開口部》のまわりには細かい溝やひだが密集している──これが《蒸発域》のようだ。臭腺開口から分泌された液は、この溝やひだを伝って拡散し、空気と接する面積をふやすことで気化効率を高める構造なのだろう。
左手でカメムシを持ち、右手でカメラを構えるというお手軽撮影では、これが限界……キマダラカメムシをつまんだ指先は茶色いシミだらけになっていた。


撮影後も何度か水で洗ってみたが、やはりニオイもシミも消えず……。

余談だが……余りの暑さに帰りがけにアイスを購入。帰宅後、右手でマウスを操作しながら左手に持ったアイスを食べたのだが……カメムシ風味を感じながら味わうこととなったのであった……。
ミダース王が触れたものは全て黄金になる──なんてハナシがあったが、僕が左手でつまんだものは、全てカメムシ風味に感じられるのであった……。
その後、風呂に入って頭を洗った後は、指先のカメムシ臭は消えたが、シミは薄まることなく残っている。

※【追記】ちなみに、キマダラカメムシの分泌液でついた指先の茶色いシミは4日後には消失した。


テングスケバとデング熱

葉上の小さな天狗・テングスケバ



7月末から若いクワの葉の上でテングスケバを見かけるようになった。その名のとおり、天狗の鼻を思わせる突起と透けた翅が特徴だ。この昆虫を初めて見たのが昨夏。予備知識はなく、偶然目にとまり「へぇ!? 日本にもこんな虫がいるのか!」と感心した。ユニークな姿にハマり、昨年はちょっとした《テングスケバ熱(ブーム)》だった。


オレンジがかった胸にあわいブルーという補色ストライプに、なんとなく熱帯っぽさを感じるのは僕だけだろうか?
とんがり頭部系のバッタの顔に体はヒシウンカ!?──透明なマントをまとったオシャレなバッタに見えなくもない。




顔は「とんがり頭部系バッタ」に似ているが、テングスケバはバッタ目ではなくカメムシ目。カメムシやセミのように植物の汁を吸うため、口の構造はバッタとはずいぶん違って針のようになっている。


ハゴロモが寄生蛾(ハゴロモヤドリガ)の幼虫にとりつかれているのはよく見るが、テングスケバもその対象のようだ↓。


この個体は2匹のハゴロモヤドリガ幼虫をつけていた。


白っぽいのが寄生蛾(ハゴロモヤドリガ)の幼虫。スケバハゴロモ、ベッコウハゴロモ、アミガサハゴロモ、アオバハゴロモ、オオヒシウンカなどにもつくらしい。チョウや蛾の仲間というと「植物食」のイメージがあるが、このように昆虫に寄生する蛾がいるというのは意外な感じがする。
ハゴロモヤドリガ幼虫はテングスケバなどにとりついて体液を吸ってようだが……テングスケバを撮っていたとき、実は僕も意外な虫にとりつかれ、食われていた……。
前腕にちみっと痛みを感じたので見ると、なんと、とんがり頭系バッタの幼虫が腕にとまって皮膚をかじっているではないか!?


偽瞳孔(擬瞳孔)がこっちを向いているように映るため、僕の反応をうかがいながら齧っているかのような、いたずらっぽい表情にも見える。
これはショウリョウバッタの幼虫だろうか?(※追記:skittoさんにご指摘いただきました→オンブバッタのようです) 植物食のバッタが、なんで僕を食っているのか?
クモに噛まれたピーター・パーカーはスパイダーマンになったが、バッタに噛まれた僕は仮面ライダーになれるのであろうか?

というのは冗談だが……ちなみにかじられた部分からは、わずかながら出血。その周辺は赤くなっていき、蚊に刺された痕のようになってしまった。
蚊刺症といえば……。

テングスケバ熱とデング熱

個人的には《テングスケバ熱(ブーム)》で盛り上がっていた昨年……世間では《デング熱》騒動に湧いていた。デング熱は蚊が媒介するウイルス感染症で、去年8月に日本では69年ぶりに国内感染が確認されて話題になった。東京の代々木公園で蚊に刺されて感染したと思われる患者が相次ぎ、園内で採取した蚊からデング熱ウイルスが確認されたことで、代々木公園は封鎖。蚊の駆除が行なわれた。しかし、封じ込めには失敗──感染地は新宿中央公園・上野公園・隅田公園・中目黒公園へと飛び火した。東京以外でも感染が確認され、最終的に感染者は160名にのぼったという。
そうしたことを受けてのことだろう──今年は狭山丘陵にも、こんな立て札がでていた。


蚊にご注意を!!
昨年は、デング熱の国内感染が確認されました。
感染症を防ぐために、蚊に刺されないことが重要です。
○長袖・長ズボンなどを着用し、肌を露出しないようにしましょう。
○裸足でのサンダル履きは避けましょう。
○必要に応じて虫よけ剤などを使用しましょう。


感染リスクを減らすために《蚊に刺されないことが重要》──ということで、刺されにくくするために肌を露出をひかえるよう、うったえているのだろう。しかし、夏に長袖&長ズボンスタイルでは熱中症のリスクが高まるのではないか?
狭山丘陵あたりだと《デング熱リスク》よりも《熱中症リスク》の方を警戒すべきではないかという気もするのだが……去年の《デング熱》騒動のインパクトがそれだけ大きく、警戒感が強まっているということなのかもしれない。

《蚊に刺されないことが重要》というのはその通りだろう。「ウイルスを保有する蚊に刺されないこと」は重要だ。と同時に「(ウイルスを保有する)感染者が蚊に刺されないこと」もまた重要なはずだ。「デング熱に感染したヒトから蚊へのウイルス供給を断つこと」が二次的な被害拡大を防ぐためには必要だからだ。
去年の報道を見るかぎり、後者の対応の遅れが感染拡大を許した一因だったのではないかと思われてならない。

当初、代々木公園で蚊に刺された人が相次いでデング熱を発症したとき──「ウイルスを保有する蚊に刺されないこと」だけではなく「(ウイルスを保有する)感染者が蚊に刺されないこと(媒介者である蚊にウイルスの供給をさせないこと)」を配慮した対応が必要だった気がする。
たまたま代々木公園を訪れた人が、そのわずかな滞在時間で感染していることを考えれば、代々木公園で生活している人たちが感染している確率はかなり高かったはずだ。こうした人たちを一時的にでも(ウイルスが消失する期間)、蚊のいないところで保護するような措置はとられていたのだろうか?
「ウイルスを保有する蚊に刺されないこと」を目的に公園は封鎖されたが、そのことで、代々木公園で暮らしていた感染の疑いがある人たちは別の公園へ移ることを余儀なくされたとしたら……。代々木公園で蚊に刺され感染していた人たちが、別の公園へ行き、そこで蚊に刺されれば、そこの蚊にウイルスを供給すること──新たな感染源を増やすことになるのは目に見えている。
感染地が代々木公園から、蚊の行動範囲を超えた別の公園に飛び火した理由は、蚊ではなく感染したヒトが移動したからだと考えるのが自然だ。

デング熱対策として、こうした立て札を立てるのも結構だが、去年のデング熱騒動について、きちんとした検証・反省はなされて、同じ轍を踏まない対策は充分に整っているのか……そのあたりが少し心配である。