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2015年05月の記事 (1/2)

アリを護衛に雇うカイガラムシ

蟻をガードマンに雇うオオワラジカイガラムシ

邦画『七人の侍』(*)は無力な農民が侍を雇って野武士から守ってもらう話だ。飯を食わせることで侍たちに村にとどまってもらい、村をおびやかす野武士を撃退してもらう──よくできた面白いアイディアだが、同じようなことをしている虫がいる。
シラカシの幹にとまったオオワラジカイガラムシが甘い分泌物でアリの用心棒を雇っていた。














オオワラジカイガラムシは日本最大のカイガラムシ(体長:10~15mm)だそうで樹木について篩管(しかん)液(糖が多く含まれる)を吸う。アリの取り巻きを従えていることが多い。
上画像の個体はシラカシの幹についていた。同じ幹の少し離れたところにいた同じサイズの別個体↓。


こちら↑にはなぜかアリがついていなかった(活動停止状態?)。
また別の木(やはりシラカシ)にやや小さめの個体がいて、多くのアリに取り巻かれていた↓。




アリはオオワラジカイガラムシをとりまき、ときおり排出される甘露(糖液のしずく)を競い合うように飲んでいる。しかし甘露は呑み込んだアリ個人(個体)の胃袋には入らず、素嚢(そのう)と呼ばれる器官にたくわえられ、後に仲間たちに分配されるらしい。ミツバチでは働き蜂が集めた蜜は(自分の消化器官には入らず)蜜胃という器官に貯蔵され、仲間の間で吐き戻し分配されることで初めて自分の胃袋(消化器官)に入るようなしくみがあるそうだが、このアリたちにも同じような仕組みがあって「家業の報酬(甘露)」を個人(個体)が横領できないようになっているのだろう。

甘露を回収するアリは触角でタップするようにオオワラジカイガラムシに触れ続けていた。あるいはこの刺激に甘露の排出をうながす効果があるのだろうか。オオワラジカイガラムシにとってアリのボディタッチは「催促のプレッシャー」なのか、排出をスムーズ化する「快適なマッサージ」なのかはわからないが……断続的に甘露を排出してアリの求めに応じていた。

この甘露を回収するだけなら、こんなに多くのアリが待機している必要はないような気もする。集団でプレッシャー(マッサージ?)をかけた方が甘露の出がよくなるのだろうか?
「甘露回収」だけにしては大掛かりな人員(蟻員)配置をしくのは、「大事な《甘露の供給源》を天敵や他の巣のアリに奪われないため」かもしれない。
多くのアリがガードしていれば、それだけ捕食性の昆虫やクモが近づきにくくなる──という効果はありそうな気がする。

ちなみに、オオワラジカイガラムシの天敵の1つにベニヘリテントウがいる↓。


この画像↑ではベニヘリテントウ成虫がオオワラジカイガラムシの幼虫を食べている(口元からオオワラジカイガラムシ幼虫の頭と黒い触角がのぞいている)。ベニヘリテントウは幼虫もオオワラジカイガラムシを食うのだが、その姿がオオワラジカイガラムシ幼虫や成虫♀によく似ている。


白い矢印が(2つとも)ベニヘリテントウの幼虫↑。右の画像は、撮影している時はオオワラジカイガラムシのペアだとばかり思っていた。しかし画像を確認しているときにオスの頭部が食われているのに気づき、ようやくオオワラジカイガラムシ♀だと思っていたのがベニヘリテントウ幼虫だったと判ったしだい。捕食ターゲットに似ているということは、ひょっとすると、アリの用心棒を欺いてエサに近づくため、あるいはオオワラジカイガラムシ♀と勘違いして近づいたオオワラジカイガラムシ♂を捕食するための偽装工作(擬態)なのかもしれない。
オオワラジカイガラムシ成虫は♂と♀ではずいぶん姿が違う↓。



ベニヘリテントウ以外にもオオワラジカイガラムシを狙う捕食性の虫たちは少なからず存在するだろう。しかしアリがガードしていれば、そのぶんオオワラジカイガラムシを狙うのは難しくなるはずだ。アリは実は虫たちに恐れられがちな存在だ──「虎の威を借る」ではないが、アリに擬態した虫も意外に多い(※【蟻えないほど似てる虫!?】)。
アリの存在がオオワラジカイガラムシの「身の安全」に寄与しているのだとすれば、《無力なオオワラジカイガラムシが、甘露でアリを雇い、用心棒(ガードマン)にしている》といえなくもない──これは黒澤明監督の名作『七人の侍』の秀逸アイディアと同じ構図といえる。

ちょっと脱腺するが、今まで見た映画の中で最高傑作を1つ上げるとしたら?──僕なら最有力候補としてまず思い浮かぶのが『七人の侍』だ。基本設定は冒頭で述べた通り──《無力な農民が侍を雇って野武士から守ってもらう》という、うまいアイディアに立脚している。ちなみに、このアイディアは全くのフィクションというわけではなく、実際に《農民が侍に飯と宿を提供し、その代わりにガードマンのようなことをしてもらった》というようなことがあったらしい。そんな資料をみつけたことが『七人の侍』のヒントなったそうだ。

そんな傑作映画『七人の侍』の秀逸アイディアを虫たちが誰に教わるともなく採用していたのかと考えると感心せずにはいられない。
互いの利害が一致した、いわゆる《共生関係》が成立していたのだとすると、それ自体、驚きと感嘆に値するが……それではどうして、そんな関係が成立し得たのか……そんな疑問に関心はシフトしてしまう。
ヒトの世界でならば(『七人の侍』では)、農民と侍は言葉が通じるから話し合いで合意ができる。しかし、カイガラムシとアリでは言葉が通じるとは思えないし、それ以前に言葉や言葉で交渉すべく思考があるのか……という気もする。
ならば、いったいどうやって「うまくできた仕組み」ができあがったのだろう?

オオワラジカイガラムシはカメムシ目(半翅目)の昆虫で、セミやカメムシと同じグループになる。基本的には針のような口吻を植物に刺して汁を吸う。吸った汁のうち必要な成分を吸収し、余剰成分はどんどん排出する。同じカメムシ目(半翅目)のヨコバイがとまった茎の下には排出した液でしみができていることがあるが、あれを見ると「甘露」も本質はこれなのではないかという気がする。
カイガラムシが分泌する甘露も、基本的には余剰成分──排泄物のようなものだろう。最初からアリを雇うために精製されたものではなかったはずだ。
カイガラムシが吸っている植物の篩管液には糖が多く、余剰分の糖と水分を糖液として排泄したものが甘露だという。オオワラジカイガラムシが捨てていた余剰成分(甘露)が、たまたまアリにとってはお宝だった──それでこれをリサイクルするシステムが生まれたのだろう。自然は無駄のない美しい仕組みを良しとする──そんな気がしないでもない。

カイガラムシとアリも初めから共生関係にあったわけではないはずだ。まだこの関係が結ばれていなかった頃から、どのようにこのシステムが成立したのか、想像してみると……。
エサを求めて歩き回っていたアリがオオワラジカイガラムシと出会う。オオワラジカイガラムシを「エサ」あるいは「敵」と認識すればアリの攻撃対象となる。アリはみつけたカイガラムシを触角でさわりながら調べ始めるだろう。アリは昆虫たちに恐れられる存在だ──そんなアリにぺたぺたと触りまくられれば、カイガラムシだってビビリおもらしくらいするだろう。ぷりっと甘露を排泄しても不思議はない(子どもの頃セミとりをしていて、あわてふためくセミにおしっこをかけらけた経験を持つ者は少なくないだろう。あれと同じ?)。
オオワラジカイガラムシが排出した甘露にはアリの好む糖が多く含まれているわけだから、当然、アリの関心はカイガラムシ本体から排出された甘露に移るはずだ。結果的に甘露を差し出すことでオオワラジカイガラムシ本体は攻撃をまぬがれる……いわば、ビビリおもらしによる《意図しない陽動作戦》が、オオワラジカイガラムシを救った形となり──こうしたことがくり返されて、「アリによる刺激(触角タッチ)」を受けると「甘露排出」が促されるというスタイルが定着していったのではないか。そしてアリがオオワラジカイガラムシのまわりに常駐するようになったことでオオワラジカイガラムシは天敵の捕食性昆虫やクモなどから守られ、《対価(甘露)を支払ってアリをガードマンに雇う》という共生関係の構図を獲得していったのではないか……そんな想像ができなくもない。

もっとも、こうした《共生関係》という構図はヒトの脳がつくりだした概念(解釈)であって、じっさいにシステムとして機能しているのかどうかは、「アリのガードマン(?)つき」と「アリなし」のオオワラジカイガラムシの生存率を比較してみないと確かめられないのだろうが……。
実際に《共生関係》としてどれだけ機能しているのかは確かめたことがないから判らないが……オオワラジカイガラムシとアリたちを見ていて、そんな脳内シミュレーションが展開したしだい。例によって昆虫を見ていると想像力が刺激される──ということで。

ヒーロー!?Not緋色?世界最大級オオモンキカスミカメ

カメムシ目(半翅目)つながりってコトで、2週間程前に撮って保留になっていたカメムシ・ネタを賞味期限切れになる前に出しておくことに。


同日みつけた別個体↓。何度か見ており珍しいカメムシという印象はなかった。


このカメムシは昨年も5月に撮っていた。カメムシも種類が多く、よくわからないものが多い。僕は虫屋ではないので「(個人的に)おもしろいと感じるか否か」という観点で虫見をしている。昆虫学的な興味とはまた別な尺度。興味を覚えた虫は撮って調べたりするが、そうでないものは(調べるのが面倒なので)スルーすることも多い。
実はこのカメムシも、ちょっとビミョ~なところだった。パッと見、漠然とカスミカメムシの仲間っぽい感じはしたのだが、そのわりには大きい。まあまあキレイだし……空目ネタに使えるかな?──くらいの気持ちで撮影したような気がする。なんどか見かけた記憶があるがスルーしていたこともあった。


このカメムシが何者か──ネットで検索した画像と見比べると、ヒイロオオモンキカスミカメというのが最も似ている気がするのだが……これは分布的にないらしい(赤みが強いヒイロオオモンキカスミカメの分布は四国・九州)。よく似た別種でもっと暗い色のオオモンキカスミカメというのが本州には生息しているということで、(色合い的には違和感があるものの?)オオモンキカスミカメの色彩変異だろうというのが、同じ狭山丘陵で同じ種類と思われるカメムシを撮ったブロガーさんたちの判断のようだ。このオオモンキカスミカメ(体長15mm)は世界最大級のカスミカメムシなのだとか。

狭山丘陵に定着(?)していると思われるこのカメムシ──分布情報からすればオオモンキカスミカメなのかも知れない。ただ、オオモンキカスミカメの画像を見ると、もっと黒っぽい……。そして山地(高地)性を示唆するような情報もあるようなので……もしかすると低地でみつかる赤みが強いものは、九州・四国でみつかる南方系の(?)ヒイロオオモンキカスミカメが北上したものではないか?──という可能性も想像してしまう。
関東で《以前は見られなかった南方系の昆虫》は増えている。ナガサキアゲハやツマグロヒョウモン、ラミーカミキリもそうだし、カメムシでいえばキマダラカメムシ(※)やヨコヅナサシガメなどがある。
そうした例を考えると、ヒイロオオモンキカスミカメが北上し(?)関東低地で見つかってもおかしくはないような気がする。オオモンキカスミカメとの見分け方を僕は知らないので正確なことはわからないが……いずれにしても世界最大級のカスミカメムシらしい。

近年北上してきたキマダラカメムシ&ラミーカミキリ

ということで、北上組で最近東京でも見られるようになったキマダラカメムシの最新画像を↓。








僕が初めてキマダラカメムシを見たのは2011年(*)。南方系カメムシだという認識があったので東京で目にした時はビックリした。Wikipedia情報によれば東京で確認されたのは2010年だそうだ。
まだ狭山丘陵の緑地では1度も見たことがないが、1~2km離れた市街地の桜並木や公園では、すでに普通に見られるようになっている。
このキマダラカメムシが発生していた桜並木のそばにムクゲがあったのでのぞいてみたら、やはり北上組のラミーカミキリがいたので、これもついでに↓。


僕がマイフィールドで初めてラミーカミキリを確認したのは2012年だった(*)。以後いくつかのポイントで発見。このカミキリも定着したようだ。ちなみに今回みつけた場所では初めての確認。ラミーカミキリは市街地でも丘陵地帯でも見られるようになっている。


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アカシジミ・ウラナミアカシジミ・テングチョウ(絶滅種!?)がいっぱい

クリの花は大にぎわい

季節のうつろいは早い。みかける昆虫たちの顔ぶれがめまぐるしく変わっていく。アカシジミ(成虫)を見かけるようになったな……と思ったらウラナミアカシジミがあらわれ、あったという間に見かける頻度が逆転した。テングチョウも新成虫と思われるものが急増している。また、ミズイロオナガシジミも出ていた。まだ5月だが、今年は昆虫の発生の時期が少し早いのかもしれない。
早めに咲いていたクリの木があったので、のぞいてみると訪花性昆虫で賑わっていた。特にアカシジミ・ウラナミアカシジミ・テングチョウが多かった。












このクリの木は見やすい所に張り出した枝があり、この2~3メートルの範囲にある花にアカシジミとウラナミアカシジミを9匹確認。また同じくらいの数のテングチョウの姿もあった。他の枝にもたくさん来ており、このクリの木は大繁盛していた。別の場所で確認したミズイロオナガシジミの画像も上げておく。


テングチョウは東京で絶滅したのか!?

テングチョウに関しては、こうした花以外のところでも複数の個体を目にするようになった。水たまりのそばを通りかかったら数十匹のテングチョウがいっせいに舞い上がり、驚いたりもした。そのようすも撮ろうと思ったが……数十匹を1ショットでおさえようと画面を広くとると……1匹1匹が小さくなってわかりにくくなってしまう。飛んでる個体は不明瞭になるし、降りて翅をたたんでしまうと地面に溶け込んでさらにわかりにくくなってしまうので撮影はあきらめた。
今回撮影したクリの木も、数十匹のテングチョウの群れを見た場所も埼玉県側だが、東京都にほど近い。東京都側でもアカシジミ・ウラナミアカシジミ・そしてことにテングチョウは多く見かけている。
ところがWikipediaの【テングチョウ】の項目をみると《東京都で絶滅》と記されており、これにはビックリした。それでは僕が目にしたテングチョウっぽいものはいったい!? あれはテングチョウの亡霊だったのだろうか?
Wikipediaは比較的信頼できる情報源だと思って引用しがちだが、たまにビックリするようなことが記されていることがある。

僕はふだんあまりチョウは撮らないのだが(すぐ飛ぶので撮れる気がせず最初からあきらめがち)、今回はクリの花にわんさかいたので撮ってみたしだい。
もちろんチョウの他にも訪花性昆虫はたくさんいた。ハナムグリやカメムシの他、カミキリではツマグロハナカミキリ・ホタルカミキリ・シラケトラカミキリ・キマダラカミキリ(キマダラミヤマカミキリ)などがいた。


クリの花に来ていたキマダラカミキリ(キマダラミヤマカミキリ)──同じ個体を追って撮ったのだが、例によって(*)光の加減で上翅の模様が変化して見える。右画像では特に左右で模様が違っているようにさえ見える。
*【キマダラカミキリの左右非対称に見えがちな模様?

というわけで、季節の移ろいは早く、ネタ候補用に撮っておいた昆虫画像がどんどん古くなって保留のまま賞味期限切れになりがちだ……。
というわけで、ついでに、このままだと時効になりそうなものの中から……強引にゾウムシ・ネタをちょこっと付録で……。
なんでゾウムシかといえば……テングチョウ→天狗→鼻が長い→象→ゾウムシってことで。

コフキゾウムシもなかなかキレイ

ゾウムシというとイメージするのは「口吻がゾウの鼻のように長い」ちょっと地味めの甲虫ではないだろうか? たとえばこんな感じ?↓


中にはちょっと色合いがキレイなものもいる↓


ゾウの鼻よりも細長い口吻をもつゾウムシも↓


逆に「このどこが《ゾウ》なんだ?」というような口吻が短いものも↓。


という強引な流れで引っ張り出した【コフキゾウムシ】──クズの葉についているのをよく見かける、小さくてめずらしくもない種類だ。


この虫は意外にキレイだなぁ……というのは以前から感じていた。とくに緑がかった個体が美しい。これもカツオゾウムシのように地肌(?)は黒いのだが、淡緑色の鱗毛におおわれている(はげると黒くなる)らしい。
ということで、スーパーマクロで撮ってみた。




改めて美しさを実感できた。

白い虹の幻想!?日暈を映すカミキリ

カミキリ撮影中に遭遇した不思議な光景

先日、クワの粗朶(切り取った枝)で地味なカミキリをみつけた。


大きさ比較をしようと1円硬貨を近づけると、触角をたたみ静止状態に↓。


マルモンサビカミキリ(体長:6~9mm)だろうか……比較的新しい枝にとまっていると目にとまりやすいが、古い枝にとまっていると見つけるのが難しい。


《古い枝に止まった地味なカミキリ》を別角度で↓。




昆虫撮影では、接写するために不用意に近づくとカメラで影を作ってしまうことがある。そのため、光がどの角度でさしているのか太陽の位置を確認することはよくある──その通常の動作で空をあおぐと……なにやら幻想的な光景が頭上に広がっていた。


上下が反転した白い虹!?


SF映画に出てきそうな光の輪が……!?!


これは「日暈(ひがさ・にちうん)」と呼ばれる大気光学現象だそうで、太陽が薄い雲にかかることで起こるとされる。虹のようにも見えることから「白虹(はっこう・しろにじ)」とも呼ばれるとか。
科学現象であっても幻想的な光景であることに変わりはない。何か不思議なことが起こりそうな予感がしないでもない!?
しばし目を奪われていたが、「しまった、撮影中のカミキリ見失ってはイカン」と我に返って、あわててカミキリのとまった枝を探すと──、
なんと不思議なことに古びていた枝がいつのまにか若返り、とまっていた地味なカミキリも小綺麗に変身していた!?


しかも、リニューアルしたカミキリの上翅先端には白虹の丸い輪がきっちり浮き上がっているではないか!?


これは白虹がもたらした日暈幻想なのか!?
……というのは、もちろんジョーク。同じ場所で見られたマルモンサビカミキリとは別のカミキリ──ニイジマチビカミキリだった。


ニイジマチビカミキリは小さいながら(体長:3.5~5mm)模様がキレイなので好きなカミキリだ。《白虹》模様も魅力だが、その上の模様も美しい。キアイを入れれば《天使の翼》にも見えてくる!?
こうした美しいデザインは撮影意欲をそそるが、同じような枯れ枝で見つかる他の地味な極小カミキリに比べると、本種はよく動きまわり撮りにくい印象がある。今回みつけたマルモンサビカミキリは数匹いたが、撮影で近づいたさい《危険を感じると触角をたたみじっと動かなくなる》傾向を感じた。そういった意味では撮りやすい。それに対し、カメラを近づけるとせわしなく動きだしがちなニイジマチビカミキリ(撮りにくい)とはずいぶん違う(本個体はたまたま撮れたが、動き出して撮れないことが多い)。この行動の違いは《体色&模様の地味さ・派手さ》とも関係があるのだろう。地味な──隠蔽擬態の効果がありそうな体色&模様であれば、外敵が近づいた時にじっとしている方が(気づかれにくく)生存率が高まるだろう。あたふた動き回る性格(?)よりじっとして危険をやり過ごす性分の個体が多く子孫を残し、その性分が受け継がれてスタンダードになった──と考えると合点がいく。
マルモンサビカミキリのように進化の過程でカムフラージュ効果のある体色&模様を獲得するというのは理屈としてはわかりやすい。それでは同じ環境にいながらニイジマチビカミキリのように美しいカラーリングを獲得したということにはどんな理由(合理性)があるのだろう? 目立つデザインは天敵に狙われやすくなるというリスクがあるが、仲間を見つけやすいという意味では繁殖率を高めるメリットもあるのかもしれない。あるいは、アリやハチなど敬遠されがちな昆虫に誤認させる警告効果があるのだろうか?
そんな目で見ると、ニイジマチビカミキリの上翅の下半分は「丸いアリの尻(腹)」を思わせるデザインに見えなくもない。上半分にある明るい部分は蜂が翅をたたんだ時のVラインに見えなくもない。
こうした解釈が単なるこじつけなのか妥当かどうかはわからないが……隠蔽効果の低い目立つ昆虫はじっとしているよりもせかせか逃げ回った方が生存率が高まるから、そんな性分なのかもしれない。
《幻想的な日暈》の下で、マルモンサビカミキリとニイジマチビカミキリを見ながら漠然とそんなことを考えた……。

季節のうつろいは早い。今年は昆虫の発生が若干早いのだろうか?
このところアカシジミを何度か目にしていたが、日暈を見た日には今シーズン初のウラナミアカシジミを目にしている。


また、ついこないだ「蛹が増えたなぁ」と思っていたキアシドクガも次々に羽化をしていて、食樹のミズキのまわりを優雅に群れ飛ぶ姿も見られ始めた。この純白の蛾の乱舞も、ちょっと《幻想的な光景》に見える。


キアシドクガといえば、その蛹(抜け殻)が極小ツタンカーメンっぽいということで、以前、人気漫画『とりぱん』にとりあげられたことがあって(たぶんキアシドクガと思われる)、毎年この時期になるとそれを思い出す(【極小ツタンカーメンの季節!?】)。これもちょっと《幻想的なエピソード》といえるかもしれない。

というわけで、今回は(ちょっと強引に?)《幻想ネタ》でまとめてみたしだい。

金ピカ昆虫&虹色ハムシふたたび

2つ前の記事でジンガサハムシやアカガネサルハムシなどのメタリックな輝きを放つ昆虫を紹介したが、実物の金ピカ感・美しさがいまひとつ写せていなかった……。「実物そのものの美しさを再現するのは無理にしても、もう少しなんとかならなかったものか」──金属光沢をもつ虫を撮ると、いつもそんな思いが残る。それで、また見つけると撮ってしまう。ということで──、

金ピカ葉虫:ジンガサハムシ&背紋GX:セモンジンガサハムシ



前回より金ピカ度の高いジンガサハムシをみつけたので撮ってみた。ゴールドの輝きが美しい(やはり実物の金ピカ感には及ばないのだが……)。この画像↑は金タイプ。ジンガサハムシには金タイプと黒タイプがいる↓。




黒タイプも前胸に金色の部分があり、これが上翅の黒い部分との対比でキリッとしまった感じになって、金タイプとはまた違った美しさがある。


ジンガサハムシの魅力は「金ピカ」だけでなく「ガラスのような透明感」にもある。葉の裏にとまっているところを葉の裏側から見ると、その「透明感」がよくわかる。


逆光ぎみで撮ると「透明感」はきれいに写るが、「金ピカ感」がわからない。光があたったときのきらめきを撮るには順光あるいは斜光でないと……とジンガサハムシがとまった葉を裏返してみたりするのだが……。






ジンガサハムシの食草はヒルガオ。葉の裏にかくれていることが多いが、食痕(葉にあいた丸い穴)を手がかりに、周辺の葉の裏側をチェックすると見つけやすい。

そして、このあたりで見られる、ジンガサハムシの名前がついた、もう1つの金ピカハムシもさがしてみた。




背紋GX(ゴールデンX)は僕が勝手につけた愛称──のセモンジンガサハムシ。ジンガサハムシが体長7~9mmなのに対し、セモンジンガサハムシは体長5.5~6.5mmと小さく、金色部分の割合も少ないのだが、「黒地に金」の光があたたったときの輝きは美しい。


「陣笠(じんがさ)」に見えなくもない↑。透明なシールドとゴールドの輝きもジンガサハムシと共通する。そのセモンジンガサハムシのペア↓。







ジンガサハムシもセモンジンガサハムシもゴールドの輝きが美しい。しかし、この「金ピカ」には何か意味があるのだろうか? 普段は葉の裏に隠れているのだから、金ピカである必要はないような気もする。明るい所に出たときに輝くことで鳥などの捕食者をよせつけない効果でもあるのだろうか?(田んぼで鳥除けのキラキラ・テープを見かけるが、あれと同じ?) もし金ピカの方が捕食圧が少なくなるという効果があるのなら、ジンガサハムシは金タイプだけが残りそうなものだが……黒タイプもちゃんと存在しているのだから、どちらが有利ということでもないのかもしれない。謎めいた輝き……と言えなくもない。
「金ピカ」である理由(意味)はわからないが、「透明」な部分を備えていることについては理由が想像できる。円形のユニークなドーム型(陣笠型)の形状は葉に張りついたときに隙間をなくし、アリなどの天敵をシャットアウトするシールドの役割りをしているのだろう。外敵が迫り、触角や脚を収納してシールド・モードになったとき、シールドが透明でなければ外のようす(外敵が去ったか、そこにとどまっているのか)が判らない。外のようすをうかがうために触角をのぞかせたり、シールドを上げると、待ち受けていた天敵に触角を齧られたり隙間をこじ開けられるなどということにもなりかねないだろう。シールドに透明な部分があることで、防御体勢を維持したまま外のようすをうかがうことができる──そんな意味(利点)があるのだろうと僕は考えている。

虹色の輝き:アカガネサルハムシ



ジンガサハムシの発生場所近くでアカガネサルハムシも見つけたので、これもリベンジ撮影。ヤマトタマムシのような虹色の金属光沢が美しい。


上翅は赤っぽいのだが、光の加減で金~緑~青~紫のようにも輝いて見える。

アカスジキンカメムシ



和名に「金」の入ったアカスジキンカメムシもついでに(前の記事でも紹介しているが)。これもキレイな昆虫。別個体↓。




最近のカミキリから

今回ジンガサハムシを撮影した場所の道を隔てた向かい側にスイカズラが咲いていた。見ると葉には独特の食痕が残されている。




ということで、シラハタリンゴカミキリをここでも確認。3つ前の記事とは別の場所。
GW以降、色々なカミキリが出てきているが……僕が好きなニイジマチビカミキリもでていた。


ニイジマチビカミキリは体長3.5~5mmの小さなカミキリだが模様がキレイなのでお気に入り。去年は何度も撮ってしまった→【極小カミキリ/ニイジマチビカミキリとケシカミキリ】。この記事に一緒に紹介していたケシカミキリも同じ枝(クワの枯れた枝)にいた↓。




ニイジマチビカミキリも小さなカミキリだが、ケシカミキリはさらに小さく体長2.3~4.2mm。見つけた時は上の画像のように触角をたたんで枯れ枝に静止していた。老眼が進み(凹むこと多し)、撮影するとき(モニターを見るとき)には老眼鏡をかけているが、虫を探す時は裸眼──枝にとまったケシカミキリをパッと見でみつけることができて、ちょっと自信を回復した……。


ルリカミキリとアカスジキンカメムシ

瑠璃色に輝くプチカミキリ

ブログ友さんがルリカミキリをアップされていたので、僕も近所の発生ポイントへ確かめに行ってみた。体長1cmほどのこの可愛らしいカミキリは市街地のカナメモチの植込みで5月後半頃から見かける。最初のポイントであっさり1匹目がみつかり、発生が確認できた。


このカミキリもシラハタリンゴカミキリと同じように葉の裏にとまって葉脈を齧る。葉の裏にとまっているルリカミキリと食痕のコラボショット(?)は難なく撮ることができたが……アップの画像を撮るには、この個体の位置は高すぎる。ということで、撮りやすいところにいるルリカミキリを探すことに。計3カ所をまわって、それぞれルリカミキリの発生を確認できたものの、すぐ落ちたり飛んだりするのでなかなか希望のショットをとらせてもらえなかった……。以下は撮れた画像から。




カミキリでは触角の付け根が複眼を抉っているものが多いが、ルリカミキリでは完全に分断してしまって4つ眼になっている。


何匹か撮るが……カナメモチの葉の裏にとまっているので逆光となり、和名にもなっている「瑠璃」色の輝きがなかなかとらえられない……。やむなく指にとまらせて撮影↓。




オレンジ色の体に瑠璃色に輝く上翅が美しい。指先から飛んで近くの葉にとまったところ↓。


アカスジキンカメムシの新成虫・終齢幼虫・羽化抜け殻

ルリカミキリ確認にでかけるさいに、もう1種気にとめていた昆虫がいる。アカスジキンカメムシだ。去年ルリカミキリを確認に出かけた場所の1つでアカスジキンカメムシの新成虫を何匹も見ていたので、今年も見られるはずだと考え、うまくすれば羽化のシーンに遭遇するかもしれないなどという期待もひそかに抱いていた。アカスジキンカメムシもキレイな昆虫で、しかも成虫・幼虫ともに人面・仮面に見える空目虫だったりするので、個人的にはポイントが高い。


そして予想どおり、今年も同じポイントでアカスジキンカメムシをみることができた。この場所で主目的のルリカミキリよりも先に見つかったアカスジキンカメムシ1匹目↓。


和名の「赤筋」が比較的キレイに出ている個体。実はこの時期見られるアカスジキンカメムシ成虫はこの赤い筋が薄い個体が多いように感じている。
アカスジキンカメムシの成虫を見かけるのはこの時期が多いが、それは越冬幼虫が成虫に羽化する時期で、羽化は比較的低い位置で(も?)行なわれるため、新成虫が目につく機会が増えるからだろうと解釈している。時期を過ぎると成虫は食樹の高い所へ移動して目にする機会が少なくなっていくのではないか。
「羽化の時期」に目につきやすくなる新成虫だが、羽化後もようの色がハッキリ定着するまでいくらか時間がかかり、そのため赤い部分が薄めの個体を目にすることが多いのではないか……そんな風に考えていたりする。
周囲を探すと予想していた赤みが薄い個体が次々に見つかった。






新成虫と思われるアカスジキンカメムシはいずれも葉の上にいた。


さらに葉の裏に終齢幼虫もみつかり、羽化が始まらないかと期待したが僕がいる間には動きがなかった(カメムシの仲間は蛹を経ずに成虫になる)。




成虫は葉の上(表)に出ているが、羽化は葉の裏側で行なわれるのかもしれない。ということで葉の裏にも注意をしてみると、羽化した後の抜け殻が見つかった。




その後、羽化して間もないと思われる体色が極端に薄い成虫を発見。


この新成虫がとまっている葉の裏に抜け殻があるのではないか……と予想してのぞいてみたが、残念ながら見つからなかった。
この新成虫を撮ってその場を去りかけたとき……ふと、以前エサキモンキツノカメムシの羽化を観察した時のことを思い出した(*)。
羽化したエサキモンキツノカメムシ成虫は抜け殻を落とすという奇妙な行動をとっていたのだ。その意味について、《抜け殻には寄生蜂などに狙われるニオイがついているからではないか?》という可能性を想像していた。羽化する際には古い殻から新しい体をスムーズに引き抜くために離型剤あるいは潤滑油のような脂?が分泌されているのではないか?──その成分のニオイを察知してやっくる寄生蜂などがいてもおかしくないような気がする。だとすると、羽化した新成虫はなるべく早く脱皮殻から離れるか脱皮殻を遠ざける必要がある……それで(羽化してまだ飛べないため?)脱皮殻を落とすのではないかと考えたわけだ。
もし、この仮説がアカスジキンカメムシにも当てはまるとしたら、羽化直後の個体は(葉の裏で羽化したのち)抜け殻を落としているかもしれない──そう気づいて、1度は離れかけた新成虫のところに戻り、その枝(葉)の下をのぞきこんでみると、落ち葉の上に真新しい抜け殻が見つかった。


落ちていた抜け殻をてのひらに乗せて撮ってみた↓。




この抜け殻は、羽化直後の成虫のものだろう。羽化直後に落ちていたということは、自然に落ちたというより落とされた可能性が高い。《カメムシは羽化すると抜け殻を落とす》というような習性があるのかもしれない──そんなことを改めて思った。この日は《葉の裏に残っている抜け殻》も見つけているので、必ず抜け殻を落とすというわけでもないようだが……今後カメムシの羽化に出会った時には注目してみたいと思った。
最後に、この日見た赤い筋がキレイに出ていた個体↓。




金・銀・銅…なメタリック昆虫

昆虫の中にはメタリックな輝きを放つ美麗種が少なからず存在する。ヤマトタマムシは有名だが、一般的にはあまり知られていない美麗種も多い。タマムシに匹敵するような美麗種でありながら……そして身近にいる普通種でありながら意外と気づかれずに(?)スルーされがちな金属光沢をはなつ昆虫たちを最近撮った中から……。

【金】黄金の輝き&ガラスの透明感…ジンガサハムシ



食草のヒルガオの葉の裏にとまっていることが多いためか、わりと気づかれにくい昆虫。たまに陽の当たるところに出ていると金色に輝いて、とても美しい。
光を反射する金色の体に、光を通す透明な部分──対極の構造を同時に備えているのが興味深い。また円形の体型もユニークで「UFO」を連想する人もいるようだ。この体型は触角や脚を収納し葉の裏にぴたりと張りつくと(隙間をなくし)アリなどの攻撃をシャットアウトできる──そんな構造なのだろう。円形シールドが透明なのは、シールドに隠れたさいに内側から外の(外敵の)ようすを見ることができるようにだと想像している。それでシールド・モードを解除する頃合いを見計らっているのではないか。ゴールドX:セモンジンガサハムシと共通する構造だ。


これ↑は背中(上翅中央)も金色のタイプ。他に背中(上翅中央)が黒っぽくなるタイプもいる↓。


前胸背面は金色に輝いているが、背中(上翅中央)が黒っぽいタイプ↑。色タイプの違いはオス・メスの違いではない。近似種のスキバジンガサハムシでは、黒は金に対して優性遺伝なのだとか。


ヒルガオの裏にいたジンガサハムシのペア。この状態でオスが何度も翅を瞬間的に広げていた。広げた瞬間は撮れなかったが、直後の下翅を回収しているようす↓。


ヒルガオの葉の裏には卵のう(卵鞘:卵が入ったカプセル)も見られた。


【銀】シルバーの模様・オオギンスジハマキ



初めてこの蛾──オオギンスジハマキ(オオギンスジアカハマキ)を見た時は、銀色のもように驚いた。蛾や蝶の仲間で「金色」や「銀色」があるとは想像していなかった。しかしその後、蛾には「金」「銀」「透明」などあることを知り、蛾のバリエーションの広さに感心した。他にも蛾の素材を並べたかったのだが……最近撮ったのはコレだけだった……。
オレンジ色に銀色のライン──単体で見ると目立つデザインだが、葉に止まっていると、景色の中では「茶色く変色した葉の一部」っぽく見えて意外に目立たない気もする。

【銅(あかがね)】虹色の輝き・アカガネサルハムシ







以前【虹色ハムシと呼びたいアカガネサルハムシ】でも紹介したが、ヤマトタマムシのような金属光沢を持つ美しい昆虫。光の加減や見る角度で色合いが変化する。配色的には緑系が基調のヤマトタマムシよりも赤系が目立つ(世界で最も美しいクワガタとされる)ニジイロクワガタに似ている気がする。とても美しい昆虫なのだが……(冒頭のジンガサハムシもそうだが)輝きが強いので、なかなかその金属光沢感を画像に納めるのが難しい……。「実際はもっとキレイ」ということを念頭に、キアイを入れて脳内補正してご覧あれ!








シラハタリンゴカミキリとスイカズラ開花

タキシード姿のキョンシー!?ラミーカミキリ現る

タキシード姿のキョンシーか!? パンダカミキリか? はたまた礼服を着たガチャピンか!?!──前に記事の最後でちょろっと触れたが、今年もラミーカミキリの出現を確認できた。




ラミーカミキリは、幕末から明治にかけて侵入したとみられている外来種だそうで、少し前までは見たことがない昆虫だった(東京で生息が確認されたのは20世紀末だとか)。僕が初めてこのカミキリを目にしたのは2005年、奥多摩だった。東京の自宅近くで発生しているのを確認したのが2012年。つい最近のことだ。自然が減り、虫も減ったというが、僕が子どもの頃には見られなかった昆虫は増えている。ラミーカミキリもその1つだ。
これまで何度かネタにし、去年も【ラミーカミキリ&シラハタリンゴカミキリ】で紹介しているので、今回はサラッと流す。
ラミーカミキリが出現したとなると……そろそろかと思うのが、シラハタリンゴカミキリだ。

スイカズラの開花とシラハタリンゴカミキリ

こどもの頃、夏に雑木林で樹液の発酵したニオイを嗅ぐとカブトムシを連想したものだが……同じように、この時期スイカズラの甘い香りを嗅ぐとシラハタリンゴカミキリが頭に浮かぶ──シラハタリンゴカミキリはスイカズラの花が咲く頃に出現するカミキリだ。
そして今年もスイカズラが咲き始めた。
去年は自宅近く(東京都)でラミーカミキリの出現を確認してまもなくシラハタリンゴカミキリの出現(狭山丘陵埼玉県側)を確認している。今年も先日、ラミーカミキリを確認したので、シラハタリンゴカミキリもそろそろ現れるのではないか──と予想し、去年初個体を見つけた場所へ行ってみた。
去年の記事では雪をかぶった富士山の画像を上げていたので、今年も富士山のようすを↓


去年より6日早いが、狭山湖ごしに見える富士山は去年より雪融けが進んでいる(昨年は大雪があったので雪融けも遅かったのだろう)。
目的地のスイカズラは咲き始めたばかり。多くがつぼみだが、ちらほら咲いている花もある──といったところ。1年ぶりの甘い香りがほんのりただよう。


シラハタリンゴカミキリはスイカズラの葉の裏にとまって葉脈をかじる。なので発生していくらか経つとこの独特の食痕が目立つようになり、これをたよりにシラハタリンゴカミキリがいるかいないか見当をつけることができる。しかし発生直後はまだ食痕が少ないので見つけにくい。葉の裏をざっとのぞいて見たが、シラハタリンゴカミキリの姿を見つけることはできなかった。
まだわずかに早かったかと思い、早々にあきらめて周辺の状況をチェックしながら散策。
すると、別の場所でシラハタリンゴカミキリらしき飛翔体を2匹目撃──正体を確かめるべく後を追うが見失ってしまった。だが、その近くで開花がいくらか進んだスイカズラを見つけた。


シラハタリンゴカミキリ発生の期待が再び高まる。問題のスイカズラをじっくり見ていくと……。


これは確実に出現している!──と確信したが、この葉の裏にはいなかった。他に食痕がある葉はないかと探していると──、


葉の中央に作成中(?)の食痕が目に入り、ほぼ同時に、その葉の裏からのぞいている触角に気がついた。


ということで、今シーズン初のシラハタリンゴカミキリの確認ショットはおさえた。あとはちゃんとした画像を撮っておきたいところ。撮りづらい位置にいたので慎重にカメラを近づけるが……シラハタリンゴカミキリは動き出してしまった。
去年はシラハタリンゴカミキリを見つけた後、なかなか撮らせてもらえずに苦労した。「見つけても、撮らせてもらうまでが大変」──そんな記憶がよみがえる。例によって飛び去ってしまうのだろうな……と思ったとおり何度か飛翔したものの、すぐ近くの葉に降りたりカメラのストラップにとまったりし、結果としてこの個体は思いのほか良いモデルとなった。そんなわけで、以下の画像はすべてこの1匹──同じ個体。












カミキリ界のゼフィルス?

年に1度、スイカズラが咲くころ、ほんの一時期現れては消えて行くシラハタリンゴカミキリ。《シーズン限定のはかない命》という点では、チョウの「ゼフィルス」や「スプリング・エフェメラル」などと、ちょっとイメージが重なるような気がしないでもない。
それにしても、スイカズラの開花とそれにリンクしたかのように出現するシラハタリンゴカミキリ──このみごとなタイミングの合致は不思議な気がする。
シラハタリンゴカミキリはスイカズラ(東北地方ではヒョウタンボクらしい)に集まるが、その花に来るわけではない。花粉や蜜ではなく葉脈を食べる。ならば、花が咲く時期に正確に出現時期をあわせる必要などないはずだ。開花と少しずれたところで、後食すべく葉にありつくことばできるだろうに……。
なのに僕の少ない観察経験からすると、開花にちょうど合わせて出てくるように感じられる。もしかして、スイカズラの開花で放たれる甘い香りがシラハタリンゴカミキリの「出動(羽脱)スイッチ」になっているのではないか──そんな気もしないではない。

あるいは……と、幻想的なイメージが広がる。
スイカズラが放つ甘い香り──実はこれこそがシラハタリンゴカミキリの正体なのではないか?
シラハタリンゴカミキリは《芳香の化身》!? もしくはスイカズラが放つ甘い香りが生み出す《幻覚》……だから開花とともに現れ、花が終わってその香りが消えると、その姿も見えなくなる……。
スイカズラの開花とともに現れ、花が終わる頃にこつ然と姿を消すシラハタリンゴカミキリ……スイカズラの香りに包まれてシラハタリンゴカミキリの姿を探していると、ついそんな妄想をしてしまうのであった。

スコーピオンフライのギミック

スコーピオンフライ/ハサミ(把握器)のギミック

サソリ(Scorpion)のように尾(?)を巻き上げた姿からScorpionfly(英名)と呼ばれるシリアゲムシ。腹端にハサミムシのようなハサミ(把握器)を持つのはオスの特徴で、このハサミはオス同士の喧嘩やメスとの交尾の際に使われる。
ヤマトシリアゲは、よく目にするシリアゲムシだ。5月~6月に出現する成虫は黒っぽいが、7月~9月に出現する成虫は黄褐色になる。


ということで、ヤマトシリアゲの春型♂。この昆虫を初めて見たときは、《サソリとハサミムシのギミックをあわせもったフシギな虫》という印象を受けた。生き物の多様性を感じさせる独自の生態ギミックは好奇心を刺激する。
《毒針をかざしてかまえるサソリの尾》はカッコイイ。《クワガタの大顎を思わせるハサミムシのハサミ》もユニークで魅力的だ。その2つが合体したかのようなギミックを装備した昆虫がいるとは……ちょっとした驚きがあった。
シリアゲムシの英名が「Scorpionfly」というのも合点がいく。ちなみに、本家サソリ(Scorpion)はこんな感じ↓(以前飼育していたダイオウサソリ)。


本家サソリの場合は巻き上げた尾の先についているのは毒針だが……シリアゲムシ♂が装備しているのは可動式のハサミ。よりメカニカルな感じがしてカッコ良いではないか。
実はシリアゲムシの存在を知る以前、こんな宇宙生物を想像して描いていたことがあった↓。


カッコ良いデザインをと考えて《サソリの尾》の先端に《ハサミムシのハサミ》をもたせることを思いついたわけだが……まさかこんなギミックを持つ昆虫が実際に存在していようとは……。
この想像上の宇宙昆虫にも本家サソリにも翅は無い──これに対して、ヤマトシリアゲは翅を標準装備しており飛翔能力まで備えているという「てんこ盛り」の設定なのだからスゴイ! あっぱれ、スコーピオンフライ(Scorpionfly)!
いかつさではダイオウサソリの迫力におよばないが、生態ギミックの凝りようではヤマトシリアゲ♂の方が勝っている。次の2枚の画像──違いに気づかれるだろうか?




違いは腹端のハサミ(把握器)の部分。シリアゲムシ♂最大の魅力(?)であるところのハサミからアンテナのようなもの見え隠れしている。まるで腹端に大顎をもつもう1つの頭があって、その触角が動いているかのようだ。




いったいこれは何をしているところなのだろうか? オスの交尾器はフェロモン放出にも関係しているらしいが……このY時型カバー(?)の開閉運動はフェロモン放出と関係あるのだろうか?


ハサミから立ち上がる「Y字器官」が何なのか知りたくて検索してみると「下付器」と記されているサイトがあった。この姿勢ではハサミ(把握器)の「上」側になるが、腹端を巻き上げているので、「上」が腹面にあたり「下付器」なのだろう。反対側(画面「下」側)にも可動式のフタのような(?)パーツがあるのだが、これは逆に背面にあたるので(だろう)「上付器」と記されていた。
ただ、この器官がどういう役割りを果たしているのかはわからなかった。
何だかよくわからないけれど……とりあえずメカニカルなところはカッコ良い!
このようすを見ていると、巻き上げていた腹が伸びて……




排泄行動もメカニカルでカッコ良い!
ちなみにメス↓──腹端にハサミはない。




画像ではわかりにくいが、メスの腹端には小さな「Y」字型の器官がある。

ヤマトシリアゲの《婚姻贈呈》

見た目もフシギなシリアゲムシだが、《婚姻贈呈》という生態的にもユニークな特徴を持っている。オスがメスにエサをプレゼントをし、メスがそれを食べている間に交尾をするというもの。交尾の際にかならず《婚姻贈呈》が行なわれるというわけではないというが……この習性もおもしろい。
オスが狩った獲物をメスにプレゼントして交尾をするという習性はオドリバエなどにもあるというが、シリアゲムシは積極的にハンティングする昆虫ではなく、死骸や糞などをエサとしているようだ。
擬木の上には鳥のフンや蛾の幼虫などの死骸がある(サシガメやオサムシなどが擬木遭難して登ってくる昆虫を捕食するので、その残骸も多い)。こうした鳥糞や虫の死骸のそばにヤマトシリアゲ♂が陣取っているのをよく見かける。ヤマトシリアゲの《婚姻贈呈》は、オスがみつけたエサのそばに縄張りをはってメスが来るのを待ち、メスが食餌している間に交尾を行なう──というスタイルのようだ。

蛾の幼虫の死骸の周りにたむろするオスたち。一番手前のオスが獲物に近づく他のオスたちを追い払う行動が見られた。





食餌中の♀と交尾する♂(右)。♀が食べているのは鳥の糞のようだ。




別のペア↓。




今回撮った画像ではちょっとわかりづらいので、以前紹介した夏型(秋型)のヤマトシリアゲ(*)の画像を再掲載↓。




7月~9月に出現する成虫は体色からベッコウシリアゲと呼ばれたりもするらしい(以前は別種と考えられていたとか)。

クモの巣にとらわれたヤマトシリアゲがいる……と思ってよく見たら、




毛虫の死骸で食餌をしているところだった。カメラを近づけると口吻を獲物から離してしまったが、このシルエットは何やらカッコイイ──小さなドラゴンに見えなくもない。こんな姿を見ると「Dragonfly」でも良かったような気がするが……それは既に「トンボ」で使われているか……それで「Scorpionfly」になったのだろうか?

ヤマトシリアゲは珍しい昆虫ではないし、世間一般的には(?)どちらかといえば影が薄い虫──という感じがしなくもない。
しかし、よく見るとなかなかどうしてカッコイイ! もっと人気があっても良いのではあるまいか?──そう思うのは僕だけであろうか?
頑張れ、ヤマトシリアゲ! 負けるな、シリアゲムシ!!

おまけ:今年もラミーカミキリが出現



2012年に初めて発生を確認した近所のポイントで、きょう今シーズン初のラミーカミキリが発生しているのを確認。画像は♀だが、♂♀ともに複数みられた。お気に入りの昆虫の1つなので、記録を兼ねて記しておくしだい。


ヨコヤマトラカミキリ@ミズキ

なかなか撮らせてくれないヨコヤマトラカミキリ

ヨコヤマトラカミキリはデジカメをTG2に換えてからちゃんと撮っていなかったので、今シーズンは撮影せねば……そう思っていたのだが、出現し始めた4月下旬には完品が撮れなかった(*)。その続編──!?
ヨコヤマトラカミキリもミズキが咲く頃、花に来ることは知っていたので、そんなシーンが見られることをひそかに期待していたGW。今年は4月末にミズキの開花ラッシュで、トウキョウトラカミキリの訪花シーンは見られたものの(*)、ヨコヤマトラカミキリはなかなか確認できずにいた……。
こどもの日にはガードレールの反射板上にいるのを見つけてカメラを向けるも……動き回ってなかなか撮らせてくれない。落ち葉にすくって撮影を試みるが……OKショットをゲットする前にロスト……飛び去られてしまった。


満開になった花は散り始めると意外に早い……GW明けにはミズキも終盤といった状況になっていたが……中には遅く咲き始めた木もあって、そこには色々な訪花性昆虫が集まっていた。




遅めに開花したミズキを間近で見ることができる欄干から、カミキリの姿を探す。小さなそれらしき飛行物体がチラッと視界をかすめ──1度は見失ったものの、ふと目を落とした花の上をそれは歩いていた↓。


ヨコヤマトラカミキリが花に来ているのを実際に見るのは初めてだったので、とりあえず証拠写真を──とカメラを向けるが、2枚撮ったところであっさり飛び去られてしまった……。画像をチェックしてみると1枚目はピントがあっておらずNG。2枚目が上の画像だった。
なんとか、撮れてはいるものの……小さすぎる(これでもトリミングしている)。
もっと、ちゃんと寄った画像を撮っておかねば……ということで、ようやく撮れたのがコレ↓。


この個体も例によってガードレールのポストの上に止まっていた。そしてやはりカメラを近づけると、せわしなく歩き回って撮りづらいことこの上ない。そしてまたも飛び去るのか──と思わせたのだが、飛ばずに落下。地面をはい回って葉の上に登ってきたので、チャンスとばかりにシャッターを切ったのであった。


こうして画像だけみると「カミキリ」だが、せわしなく動き回る姿は「アリ」の動きを思わせる。周辺で見られるムネアカオオアリと配色が似ているのは偶然の一致だろうか? ヨコヤマトラカミキリにアリのような腰のくびれは無いが、上翅の模様によって黒い部分がアリの丸みのある腹のように分離して見えなくもない。擬態としての効果がどのていどあるのか(あるのか無いのか)わからないが、ヒトが知らずに見たらアリと誤認することはありそうな気がする。

というわけで、とりあえずTG2でヨコヤマトラカミキリ完品の寄り画像を撮ることは、いちおうかなったので、ぷちまとめをしておくじだい。
このあとOKショットが撮れたら追加していく……かもしれない。

ちなみに、今シーズンであったヨコヤマトラカミキリは今のところ5匹(僕はスイーピングもビーティングもしないから、全てルッキング)。ミズキの花で見た1匹をのぞいた4匹は、ガードレールの反射板の上かガードレールのポストの上にいた。とまった構造物づたいに這って一番高い位置に落ち着いた……ということなのだろう。

【追記】ヨコヤマトラカミキリ:模様は微毛

その後、擬木の上で衰弱していたヨコヤマトラカミキリをみつけたので、その画像を追加。


活動を終えて寿命がつきようとしているのか……動きが緩慢なので、動き回っている時はなかなか撮れない上翅のクローズアップを──。






そして1円玉を並べて大きさの比較画像も撮ってみた↓。




豆粒ほどのお地蔵さん!?アカシマサシガメ

マメつぶサイズのお地蔵さん!?アカシマサシガメ



5月に入って初めて撮った昆虫がコレ↑アカシマサシガメ(4月にも何度かみている)。もう何度もネタにしているが、見つけるとついカメラを向けたくなってしまう。1度見えてしまうと次からは自動的に見えてしまう《赤ら顔の豆粒サイズのお地蔵さん》──「赤い豆」と言えば「あずき」(「赤粒木<あかつぶき>」→「アズキ」になったという説もあるそうな)ということで、名付けて《あずき地蔵》(←あくまでも個人的愛称)。


よく見ると伏見がちな目には長いまつげがあるように見えなくもない。目の周囲を暗い色でぼかすスモーキーアイメイクまでほどこしていて、なかなかオシャレなプチ地蔵だ。
この個体はみつけたとき、ワイヤーフェンスにとまっていた。アカシマサシガメは、もっぱらヤスデを捕食するというが、擬木の上や葉の上にとまっているのをみかけることもあるし、よく飛ぶ。完全な地上性ではなくあるていど立体的な活動範囲をもっているのかもしれない。


腹端が丸いのでこれ↑はオスっぽい。腹端が平らなのでこっち↓はメスか。


背中・中央の赤い模様(お地蔵さんの手に見える部分)は個体によって大きさ・形に変化がある。また同じ個体でも光の反射具合でお地蔵さんの「口」の見え方が変わったりもする。


ということで、冒頭と同じ個体の《あずき地蔵》が(光の反射で)にやりと笑ったように見えるショット↓。


虫見にも色々な楽しみ方があるのだろうが、人気種や珍品を追い求めるのではなく、身近にいて普段あまり気にもかけられないような普通種の中に面白味を発見するのも醍醐味ではないかとひそかに思っていたりする。

コンプリ空目虫なかま

キアイを入れれば「顔」や「仮面」に見える空目虫は少なくない。その中でも「顔」だけでなく「体全体」が空目できるコンプリート空目虫は(個人的に)ポイントが高い。《あずき地蔵》のアカシマサシガメはその筆頭だが、もう少しすると現れる《タキシード姿のキョンシー》ことラミーカミキリもお気に入りなので、その姿を再掲載↓。


※【ラミーカミキリ/オスとメスの違い】より

そして、昆虫ではないが、キアイを入れれば、そんな姿に見えるビジョオニグモ↓


※【ヒゲづらの王様!?人面蜘蛛】より