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2012年12月の記事 (1/1)

寒椿とセミの抜け殻~冬と夏のコラボ!?

今年最後のスクープ画像!?

2012年は季節実感がなんだかおかしな年だった気がする。
ということで、今年最後──12月31日に撮った画像は──。


なんと寒椿の花で羽化したセミ!?──というのはイタズラ(仕込んだ画像)で、実は過去に見た写真の再現画像。
以前こんな画像──ツバキだったかサザンカだったか──冬に開花した花に蝉の抜け殻がついている画像をネット上で見たことがあった。投稿者はその光景を見て「冬に(開花した花にとまって)羽化したセミがいる!」と大いに驚いたらしい。
状況からすると「誰かがセミの抜け殻を花に乗せたのだろう」──そう考えるのが自然だが、その投稿者は「夏に発生したセミの抜け殻が冬まで残っているわけがない」と思い込んでいたため、人為的なイタズラの可能性には思い至らなかったようだ。
しかし、実のところ年を越しても残ってる蝉の抜け殻は珍しくない。だから、そんな抜け殻をみつけた人がイタズラで冬咲いた花に置いてみたとしてもおかしくはない。そして実際に人為的にこんな画像は撮れる──ということを示すために「再現画像」をつくってみたしだい。



ところで、セミの抜け殻を「さなぎ」だと思っている人は意外なことに少なくないようだ。セミは不完全変態の昆虫なのでサナギを経ずに幼虫から成虫へ脱皮(羽化)する。
なのに「さなぎ」だと誤認されるのは、普通の(?)幼虫の脱皮と違い、脱いだ後も抜け殻の形がしっかり保たれたまま残る──この感じが蛹っぽいイメージで認識されるからかもしれない。


今の時期に気がつくセミの抜け殻

このあたりでは12月の後半になるとフユシャクのひとつ──イチモジフユナミシャクが見られるようになる。この♀は苔むした桜の幹をさがすとよくみつかるので、この時期には桜の幹を注意して見て歩くようになる。すると、それまで気づかなかったセミの抜け殻が目に入るようになり、冬になって「意外にセミの抜け殻は残っているものだな」と再認識することになるわけである。



※今回は仕込みネタなので[昆虫など]書庫(カテゴリー)ではなく[冗区]書庫でアップ

追記:フユシャク探しで見つかるフユシャクでないもの

2013.1.6にアップした【フユシャク探し】の記事の最後に入れるつもりでいたのだが……画像が多くなりすぎたので、こちらに追記することにした。





イチモジフユナミシャク探しで桜の幹をみていくといろんなものがみつかる。ウバタマムシは冬にも日当りの良い場所にで見かけることがある。ヤマトタマムシのメスだと誤解される事があるようだが別の種類。ヤマトタマムシを見かけるのは夏だが、ウバタマムシは1年中見かける気がする。
イチモジフユナミシャク探しを始めて、セミの抜け殻は珍しい物ではなくなったが……これ↓にはちょっと驚いた。




1月にセミ!? さすがに死んでいることはすぐ判ったが──それにしてもこの時期に見るとビックリする。
屋内ならいざしらず、現場は思い切り屋外の桜並木。いつからそこにあるのか……雨風にさらされ、よくぞ落ちずに残ったものである。
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ニホントビナナフシのオス@東京

九州以北では珍しい?ニホントビナナフシのオス

ニホントビナナフシのオスと思われる個体を先日初めて見た。残念なことに翅がちぢていた(羽化不全?)が……ニホントビナナフシ♂が東京(北多摩地区埼玉県寄り)で見つかること事体が珍しいことかもしれないと考え、いちおう記録としてアップしておくことにした。






ネットで調べてみたところ、神奈川県では少数ながらオスが出現する地域があるらしい。東京では2009年10月に多摩動物公園園内で1匹みつかったことが東京ズーネットのニュースになっていた。
動物園ファンのサイト TokyoZooNet
https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=&link_num=12813

今年やたら多いニホントビナナフシのメス

一方この周辺では、トビナナフシのメスはよく見られる。『ナナフシのすべて』(岡田正哉・著/トンボ出版/1999年)によれば、ニホントビナナフシは《九州以北ではおもに単為生殖、屋久島以南では両性生殖をすると思われます》とのこと。


12月に入ってから雑木林ぞいの遊歩道の手すりに100匹以上目にする日もあった(上記の♂1匹をのぞいて全て♀)。12月はトビナナフシが活発に活動する時期ではないだろう。落葉とともに落ちてきた個体が手すりにのぼって目につくようになったのだと思われる。




カマキリでも前翅が縮れた個体を見たが、直翅系昆虫で翅が伸びないトラブルは起こりやすいのだろうか? 通常は羽化直後に翅はのびる。


10月中旬、雑木林ぞいの擬木の手すりの上にいたニホントビナナフシ♀。よく見ると近くに産み落とされた卵があった。通常、卵は1つずつ地上へ産み落とされる。植物のタネのように見えるところやハッチのライン(自切線)など、近縁のコノハムシの卵によく似ている。




成虫をよく見かける10月下旬、ニホントビナナフシの若齢幼虫が出ていた。若齢幼虫が食べることができる若葉は少なく、やがて餌となる葉は落葉するのに、この時期にふ化して生き延びられるのだろうか?


生き残れるのかどうかとは別に、ふ化時期にはばらつきがあって、結果生き残れたものが世代をつないでいく──ということなのかもしれない。

※【追記】1年後に見つけたニホントビナナフシ♂と確認した交尾@東京

ちょっと意外なツーショット

夜間は氷点下という日が続いてニホントビナナフシ♀の死骸も増えたが、意外なことに動き回っている個体も少なくない。
フユシャクを撮っているとニホントビナナフシ♀がフレームインしてくることも……。
冬に出現する蛾と本来南方系のナナフシ類がいっしょに活動しているというのが、なんだか不思議な気がする。




ということで、ついでに最近見られるようになったフユシャクの一部。







フユシャクの婚礼ダンス

今年もフユシャク(冬尺蛾)が見られるようになった。フユシャクは冬に出現する蛾のグループ(*)。昆虫なのにわざわざ冬に成虫が出現して繁殖活動するという生態もユニークだが、メスは翅が退化し、オスとは全く違う容姿であることも興味深い。
翅が退化したメスは飛ぶことができないから、性誘因物質(性フェロモン)を放出してオス(は翅を持ち飛ぶことができる)が訪れるのを待つ。


クロスジフユエダシャクは早い時期に現れる昼行性のフユシャク。今年は11月の終わりから見かけるようになった。
1年前、クロスジフユエダシャク♂たちが死んだ♀のまわりで【婚礼ダンス】を舞うのを観察できた(*)が、機会があったら【婚礼ダンス】を経て交尾に至ることを確認してみたいと思っていた。
そして、その機会は今シーズン、意外にあっさり訪れた。

蛾の【婚礼ダンス】は鳥の【求愛ダンス】にあらず

ここでいう【婚礼ダンス】とは「カイコガの婚礼ダンス」にみられる行動のこと。家畜化されたカイコガは羽化しても(成虫になっても)飛ぶことができない。にもかかわらずカイコガ♂は♀の匂い(性フェロモン)を感じると翅をふるわせてダンスを踊る(これが「婚礼ダンス」と呼ばれる)──そして行き会った♀と交尾をする。
【婚礼ダンス】というと鳥のオスがメスの気をひくために踊る【求愛ダンス】を連想するが、蛾のオスが踊る【婚礼ダンス】は「メスの気をひくための行動」ではなく「メスの位置を探るための行動」だと考えられる。

オスとメス 触角の違い

蛾は♀が性誘因物質(性フェロモン)を放出する種類が多く(チョウでは♂が多い)、♂の触角が立派な(発達した)ものが多い。
フユシャクも飛べない♀が性フェロモンを放出し、♂がその匂いをたよりに♀を探しあてなくてはならないので♂の触角の方が複雑な構造をしている。


♀の触角はシンプルな糸状だが、♂の触角は細かい毛が密集してクシかブラシのようにも見える。
♂の触角は【空気中にただようニオイ物質(性フェロモン)をより多くキャッチするため】に【空気に接する表面積を増やす】形へと進化してきたのだろう。
しかし、【空気中にただようニオイ物質をより多くキャッチするため】には別の方法も考えられる。【触角に接する空気の量を増やす】ことである。
たとえば──触角の表面積は同じでも、そのうしろに電気掃除機の吸入口をかまえて空気を吸い込めば、触角を通過する空気の量は格段に増える。そのぶんキャッチできるニオイ物質も増えるはずである。

蛾にはモーターはついてないが、翅をはばたかせることによって空気の流れを作ることはできる。とまった状態で羽ばたき、空気を後方(あるいは左右方向でもかまわないが)に押し出せば、そこへ前方の空気が流れ込み、そのさいニオイ物質を含む空気が触角を通過することになる。
羽ばたきながら体の向きを変えることによって(感知されるニオイの強弱によって)どの方角からニオイがやってくるのかも判るはずだ。






触角の表面積を広げるような(?)進化をとげてきたのだから、翅を使って「触角に接する空気の量を増やす」ことくらいしても不思議ではないだろう。むしろその程度の活用はあって自然な気がする。

じっさい、カイコガでは♂が【婚礼ダンス】の羽ばたき運動によって♀を探し出すことが確認されている。
センサーである触角に異常はなくても、翅を固定させた♂や翅を切除した♂(つまり婚礼ダンスを封印した♂)は♀をみつけることができなくなるという。カイコガ♂が【婚礼ダンス】を舞うのは、単に興奮しての行動ではなく、♀の位置をけんめいに探り当てようとする捜索運動だったのだ。
(※平凡社『アニマ』1980年12月号/【カイコガの婚礼ダンス なぜ踊るのか】<文・小原嘉明/写真・松香宏隆>に詳しく検証されている)

1年前に複数のクロスジフユエダシャク♂が轢死した♀のまわりで【婚礼ダンス】と思われる行動をとっている場面に遭遇し、【婚礼ダンス】がカイコの専売特許ではないことを知った。


(*フユシャク:翅が退化した♀/翅でニオイを嗅ぐ♂より)

蛾がペアになるシーンを観察したことはないが、多くの種類が【婚礼ダンス】によって相手をみつけているのではないか……と考えるようになった。

クロスジフユエダシャクの婚礼ダンス

ということで、クロスジフユエダシャクが【婚礼ダンス】を経て実際に交尾に至ることを観察し確かめてみたいと思っていたわけである。
フユシャクの時期がまたやってきた──そこでクロスジフユエダシャク♂があちこちで舞う雑木林を訪れてみた。

落ち葉がつもった地上付近を低く、クロスジフユエダシャク♂が飛んでいた。その飛び方はランダムで♀の匂いを探してさまよっているように見える。
ときどき枯れ葉に降りる♂もいるが、降りて動きを止めたときは♀が見つけられなかったときのようだ。

実は以前、♀を探す♂を追って♀に行き着けないか試してみたことがある。地上に降りた♂をみつけるとそのたびに周辺を探してみたが収穫は得られなかった。
そこで今回は、ただ地上に降りただけの♂はスルー。【婚礼ダンス】のみに注目することにした。
落ち葉の上をランダムに飛ぶ♂たちをみていると、ほとんどが休息に入ってしまう時間があったかと思うと、あるときいっせいに舞い始めることもあり、おそらく風によって運ばれる♀の匂いがスイッチになってのことだろうと想像した。

さまようように飛んでいた♂が、狭いエリアで舞ったり降りたりを繰り返しはじめると♀の匂いを嗅ぎ付けた可能性が高い。降りて羽ばたきながら歩きまわる【婚礼ダンス】を始めると♀は近い──そう推理して、該当する行動をとった♂を追うと、♂は翅をふるわせながら落ち葉の下に潜り込んで行った。




「そんなところに♀がいるのか?」と半信半疑で落ち葉をめくり覗き込んでみると……あっさりペアになっているのが見つかった。
実は僕のイメージでは──♀は落ち葉の上にでて性フェロモンを放出しているのだろうと想像していた。ニオイ物質を効率よく飛ばし、♂に見つけてもらうにはその方が自然だと考えていたのだ。表面積の大きい♂でさえ落ち葉の上でじっとしていると見つけるのは難しい。翅が退化した小さな♀なら葉の上に出ていてもじっとしていれば天敵にみつかる危険は少ないだろう……そんなふうに思っていたので、♀が落ち葉の奥にかくれており、それを♂が見つけ出すとは意外だった。
しかし「落ち葉の下に隠れている♀を♂がみつける」パターンは特別なことではないらしい。このあとに【婚礼ダンス】をたよりに見つかった♀もやはり同じような状況だった。










さらに別の個体でも──、




【追記1例】






これまでクロスジフユエダシャクの♀については、手すりなどの人工物にとまっているケース(見つけやすい状況)ばかりしか見てこなかったので、ナチュラルな状態を見てみたいと思っていた。
落ち葉の下に隠れているのが普通なら、なかなか見つけられなかったわけである。よくそんなところにいる♀を♂は見つけ出すものだとクロスジフユエダシャク♂の【婚礼ダンス】に改めて感心した。
冬、補食昆虫や寄生昆虫など天敵が少ない時期を選んでの繁殖──そう思っていたが、《(昼行性のクロスジフユエダシャクが)無防備で目立ちがちな交尾を隠れて行う》のが基本だとすると、これは鳥などの目をのがれるため身につけた習性なのだろう。冬でも鳥の補食圧はそれなりに掛かっている──ということを示唆する行動のようにも思われた(それでフユシャクの多くは夜活動するのかもしれない)。
鳥であれヒトであれ、落ち葉の下に隠れたフユシャクを見つけだすのは難しい。しかし、♂の【婚礼ダンス】に注目すれば、効率的に♀をみつけられることもわかって、スッキリした。