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2010年06月の記事 (1/1)

コノハムシ:脚の再生

コノハムシの脚はとれやすい。孵化や脱皮のときにとれてしまうこともあるし、ちょっとしたはずみで落ちてしまうこともある。
 


 
コノハムシが脚を再生することは予備知識として持っていたが、どのような経過をたどるのかについては知らなかった。

・再生脚は、とれた脚の付け根部分から、じょじょに再生していき、最後に爪先(脚の先端部)が再生するのか。
・逆に最初に爪先(脚の先端部)が生えて、付け根へ向かって再生が進むのか。
・あるいは最初に爪先(脚の先端部)が生えた後、先端部と付け根部分、双方から再生が進むのか。
・それとも、小さな脚が生えてきて、それがじょじょに成長していくのか。

コノハムシ飼育を始めた頃、再生途上と思われる「小さな脚」を持つコノハムシの画像をみつけた。それで、再生の過程は《小さな脚が生え、それがじょじょに成長していく》ものだとばかり思っていた。
ところが、実際に飼育していたコノハムシの脚の再生を観察して驚いた。小さな脚は《じょじょに成長していく》のではなく、《脱皮のたびに急激に大きくなる》のである。

左後脚の再生(個体A)














2齢では左後脚が根本から無かったコノハムシだが、3齢になったとたんに小さな脚が出現。4齢になると本来のサイズにだいぶ近い所まで一気に再生が進んだ。ちゃんと機能しているので、注意してみないと再生脚だと気がつかないまでになっている。

右前脚の再生(個体B~紋なし~)













右前脚の再生(個体C~うすい紋~)












小さな脚は脱皮とともに急に大きくなる

これがコノハムシの再生脚の成長過程だ。再生脚は日々少しずつ成長していくのではなく、脱皮とともに急に大きくなる。同じ昆虫でもコオロギの場合は、再生脚は時間とともに少しずつ成長していくようである。
発生進化工学研究室(野地研究室)にコオロギ3齢幼虫の脚の再生過程の写真が掲載されている(3日後・5日後・10日後・13日後・15日後・18日後と徐々に成長しているのが判る)。
コノハムシの場合、体の大きさも脱皮で急に変化するのに驚かされたが、再生脚も脱皮とともに、いきなり大きくなるのでビックリする。





コノハムシ~卵から成虫まで~ ※タイ産コノハムシ まとめ編
コノハムシ漫画
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コノハムシの飼育容器

コノハムシ2~4齢の飼育プラケ

食草(シラカシ・アラカシなどの葉)を生けた容器を入れたプラケで飼育している。



エサの葉は天井や壁に接するようにレイアウト。若齢幼虫は高い所を目指してよく歩くので葉から離れて戻れなくなってしまうことがある。離脱してしまい壁や天井を徘徊することになっても葉が接していれば戻ることができる。

4代目は予想以上の数が孵化し少し過密気味。
中には孵化や脱皮のとき、あるいはちょっとしたことで脚が取れてしまった個体もいる。しかし、コノハムシは脚を再生することができる。

コノハムシ~卵から成虫まで~ ※タイ産コノハムシ まとめ編
コノハムシ漫画

〔雑〕コノハムシ由来のグァバ茶!?

グァバの葉がコノハムシの餌になるということは知っていたが、人用の【グァバ茶】なるものがあると知ったのは、つい最近のことだ。
近所のダイエーでさがしてみると、こんな商品がみつかった。




蕃爽麗茶(ばんそうれいちゃ)の「蕃(ばん)」はグァバの和名「バンジロウ」「蕃石榴(バンザクロ)」からきているのだろう(と勝手に想像)。

こんなグァバで育てたコノハムシの糞はグァバ茶のような良い香りがするそうである。
ウチではコノハムシをシラカシ・アラカシなどの葉で飼育しているのでグァバの香りは未体験なのだが……それでも葉の香りがするコノハムシの顆粒状の糞を見て「茶葉みたいだな……」などと飼育当初から感じていた。




そこでつい想像してしまうのがコノハムシ由来のグァバ茶。
グァバで育てたコノハムシの糞をティー・バッグにし、お湯を注げばインスタント・グァバ茶──そんな風に糞を利用することはできないだろうか……。

じつは初代を飼っていた頃から、プラケの底にたまった糞を捨てるたびに、「もし、コノハムシがお茶の葉を食うものなら、その糞は高級茶になるのではないか?」などと半ば本気で(?)想像(妄想)していた。
お茶の製造過程では、摘んだ葉を揉むことで組織を壊し内容物を混ぜて酸化醗酵を進めて行く行程がある。これは機械や人の手で行うより、昆虫が咀嚼した方が分解・醗酵が速やかに進みそうな気がする。

「シラカシやアラカシが原料では、お茶にはなるまい……」と思いながらも、糞をちょっと集めてみたこともあった(それが上の画像)。
しかし、最近、コノハムシが食うグァバがお茶になると知って、にわかにこの構想(妄想?)が再浮上!?

バカバカしいと笑うなかれ。
実際に【虫糞茶】というのは、あったりするのである。
コノハムシ由来ではないが、蛾の幼虫の糞を使ったお茶である(チャノキ以外の原料が使われるそうだが)。
Wikipedia【虫糞茶】によると──、
「濃い赤茶色の茶で、糞の異臭はなく、香り高く、蜂蜜の甘みを含んでいる、葉が幼虫によって分解されるため、必須アミノ酸、とりわけリジンを多く含み、うま味も増えている。いわゆる善玉菌が多く含まれ、健胃作用、整腸作用、止瀉作用、止血作用もあるといわれる」(Wikipedia より)

また世の中には【コピ・ルアク】なんて例もある。【虫糞茶】を知らない人でも【コピ・ルアク】あるいは【ルアック・コーヒー】と呼ばれる高級コーヒーがあることを知っている人は少なくないだろう。
都内某高級ホテルでは1杯4,500円もするこのコーヒー──もとはといえばジャコウネコの糞から採取した未消化のコーヒー豆だ。ジャコウネコが食ったコーヒーの実が腸内で醗酵する事で芳醇な味わいが加わると言われているのだとか……。ちなみに「コピ」は「コーヒー」、「ルアク」は「ジャコウネコ」の意味だそうだ。

【虫糞茶】や【コピ・ルアク】があるのだから、コノハムシ由来の【グァバ茶】だって、あってもおかしくはないだろう。
コノハムシの糞を入れたティー・バッグが、いずれ登場する日が来るのではあるまいか?
商品名を付けるとしたら……【コピ・ルアク】に対抗して【グァバ・コノハ】!?
シラカシやアラカシなどドングリの葉とグァバの葉の両方を食ったコノハムシから得られたものなら【ドン・グァバ茶】なんてのはどうだろう?(「こょっこりひょうたん島」世代のネタ)
……などと、半分ジョークで考えてしまうのである(半分は本気なのか!?)。

コノハムシ~卵から成虫まで~ ※タイ産コノハムシ まとめ編
コノハムシ漫画

疑問:ヤマカガシが《相手の目を狙って毒液を飛ばす》説

先日ネットで【ヤマカガシ】の項目を検索していて驚いたことがある。
ヤマカガシは口の奥(デュベルノア腺)と頸部背面(頸腺)に毒腺を持っている事が知られているが、頸線毒について「相手の目を狙って毒液を飛ばす」というような記述があちこちで見られたからだ。
ウィキペディア(ヤマカガシ-Wikipedia)でも、

《頸部にも奥歯とは別種の毒を出す頸腺と呼ばれる毒腺があり、危険が迫ると相手の目を狙って毒液を飛ばす。》

という記述がある。

これは本当なのだろうか? にわかには信じられない。
僕はヤマカガシを何度も捕まえたことがあり、手に頸腺毒が付着したこともあったが、この黄色っぽい液は「分泌」という印象だった。
ちなみに頸腺毒はヤマカガシが餌としているヒキガエル由来のものだそうだ。僕はヤマカガシが毒のあるヒキガエルを食べるところを何度か見ており「毒があるのによく平気で食うな」と思っていたが、ヤマカガシはヒキガエルの毒を自らの防衛用に再利用していたわけだ。
京都大学理学研究科・理学部 研究紹介(184号)

保育社の『原色日本両生爬虫類図鑑』によると──、
《頸部の皮内に由来のよくわからない腺があって、そこを圧迫されると内容の黄色い液が鱗の間から射出するのである。》
改訂版学研の図鑑『爬虫・両生類』(昭和62年2月26日新改訂版1刷)にはヤマカガシの体の作りが解剖図つきで見開きで紹介されており──、
《くびからせなかにかけて、いくつかのけいせんというふくろ(毒せんの一種)をもっている。しかし、この毒せんの出口はなく、何のためにあるのかよくわかっていない》
小学館の学習百科図鑑36『両生・はちゅう類』には
《頸腺の毒液は、黄色く、にがい。頭部を押すと出るので、敵にかまれたときに役立つのであろう。》
と記されている。

踏んだり叩いたり、噛みつくなど、外力を加えれば頸腺毒が勢い良く飛び出すことはあるかもしれない(※東京医科歯科大学の研究グループによるとヤマカガシの頸部をたたいた場合、毒液が1m以上飛散することがあるそうだ)。しかし、「相手の目を狙って飛ばす」などという芸当は構造上あり得ないのではないだろうか?

ちなみに相手の目を狙って毒を飛ばすヘビがいることは僕も知っている。リンカルス・クロクビコブラなどが有名だが、彼らはノズルに相当する毒牙(毒を注入する牙の開口部が前方に向いている)を持っており、それで2~3メートル先の相手の目に毒を吹き付けることができるわけだ。毒が目に入ると激しく痛み、失明する事もあるという。
昔、テレビでムツゴロウさんがこのコブラに毒を吹きかけられた映像を見たことがある。メガネをしていたために大事には至らなかったのだが、「相手の目を狙って毒を飛ばす」精度に驚き、強く印象に残っている。

それをヤマカガシが頸腺毒でやるとは、(個人的には)とうてい思えない。
納得できずにさらに調べてみると、眼科からの頸腺毒被害報告があるということがわかった。

鈴木玲之(1960):「やまががし」による眼障害、臨床眼科、14:1384-1387。
によると当時国内で報告のあった13例は、いずれも、捕らえたヤマカガシの頸部をいじっていたり、打殺しようとして頸部をたたいたり、あるいは、剥皮しようとして被害にあっていたそうだ。

CiNii論文ー自ら経験したヤマカガシ頸腺毒による眼障害】では研究者がピンセットでヤマカガシの頸部をつかんで圧迫したことによって被害を受けた例が報告されている。

蛇研裏話 毒蛇咬症】では、《病院から電話があり、眼科からだということでたぶんヤマカガシでも叩いて頸腺毒が眼に入ったのだろうと思ったら、やはりそうでした。》《昨年は農家の人が鎌で切りつけて頸腺毒が目に入っています。》という記述がある。

ヤマカガシが自らの意志(?)で相手の目を狙い撃ちしたというわけではなく、人が外力を加えた事で飛び散った液が目に入った──というのが真相なのではないか?
しかし、こうした眼科からの頸腺毒被害報告が続出していることから、《危険が迫ると相手の目を狙って毒液を飛ばす》という誤解が生まれ、その情報がWikipediaを介して広まっているのではないか……というのは僕の素人推理なのだが。

ヤマカガシは本来、人間の側から手をださなければ全く無害なヘビといっていいだろう。ヘタにちょっかいを出すことでよけいな被害例を増やしている感じがしないでもない。

また、ヤマカガシといえば、デュベルノア腺の危険性(深く噛まれれば危険/死亡例もある)をことさらに強調し視聴者の不安を煽る報道をしばしば目にする(ちょっかいを出さなければ人が噛まれるような事はまず無いはずなのだが)。
へんに不安を煽れば「そんな恐ろしいヘビなら見つけ次第殺してしまえ!」と考える者も少なからず出てくるだろう。
その結果、放っておけば無害なヤマカガシを駆除しようとして叩いたり踏みつけたり切りつけたりすることで頸腺毒を浴びる危険をわざわざ増やしている──といったこともあるのではないのだろうか?
不安を煽ってキャッチを高めようとする報道のあり方に関しても疑問を感じる。
毒の危険性を強調するだけではなく、被害に合わないためにはどうすれば良いか──ちょっかいを出さなければ無害であるということをキチンと伝える事が大切なのではないかと思う。



画像は先日撮ったヤマカガシ。大きめの個体で、コブラのように頸部を平たく広げる威嚇ポーズもみせたが、残念ながらそのシーンは撮りそこねた。
この威嚇ボーズも頸腺毒を強調・印象づける警告サインなのだろう。