FC2ブログ

昆虫などの記事 (1/117)

ハリサシガメ@『アリの巣の生きもの図鑑』他

01針刺亀成虫A2再
02針刺亀成虫A3再
ベールを脱いだハリサシガメより⬆
2016年の夏、知らずに出会ってたちまち興味を引かれた珍虫ハリサシガメ。成虫は背中の特徴的な模様がハリサシガメの「ハ」に見えなくもない。幼虫は土粒をまとい、狩ったアリの死骸などを戦利品コレクションのように背中にデコレーションするという奇妙な習性を持っている。
03針刺亀幼虫01再
04針刺亀幼虫B1再
ハリサシガメぷちまとめハリサシガメ幼虫の装飾行動より⬆

ハリサシガメ@『アリの巣の生きもの図鑑』
なんとも風変わりなカメムシなので興味を持って観察しているのだが、おもしろい昆虫なのにその割に情報が少ない。『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』にはちょろっと触れられている程度。『昆虫を見つめて五十年(II)』(岩田久二雄・著/朝日新聞社・刊/1978年)という本に紹介されているというので読んでみたが、僕の観察とは違い、「間違っている」と思われる箇所もいくつかあった(本とは違う!?ハリサシガメ)。
『アリの巣の生きもの図鑑』(丸山宗利・小松 貴・工藤誠也・島田 拓・木野村恭一/東海大学出版会/2013年2月)という本にもハリサシガメが紹介されているらしいと知って、気になってはいたのだが……蔵書検索して置いてある図書館に借りに行ってみた。
生活史の一部をアリに依存する生物を好蟻性生物というのだそうだが、その好蟻性生物を紹介した立派な本だった。図鑑といいながら生態写真も豊富で、「よくこんなシーンを撮ったものだなぁ」と驚きを通り越してあきれてしまうほど。ユニークな生態についても記されているので、ハリサシガメについても何か僕が知らない新情報が記されていないか期待したのだが……、
目的のハリサシガメについての記述はP.125の下半分に短い文と成虫の写真が2枚掲載されているだけであった。


分布:本州,四国,九州;朝鮮,中国.寄主:さまざまなアリ.体長:14-16mm程度.翅の特徴的な模様により,日本産の他のサシガメより区別できる.本属の種はアリを専門に捕食し,幼虫時代には捕食したアリを背中に背負う習性をもつ.特定のアリとの関わりはなく,成長段階に応じて好むアリの大きさが変わる.稀な種.(丸山)

「成長段階に応じて好むアリの大きさが変わる」と記されているが、成虫や大きな幼虫が小さなアリを捕食しているのも見たことがあるので、成長によって(体の大きさによって)狩りの対象となりうるアリの上限サイズが広がるということなのではないかと僕は考えている。

ハリサシガメは昼行性!?夜行性!?
というわけでわけで、『アリの巣の生きもの図鑑』という本からはハリサシガメについての目新しい情報は得られなかったのだが、インターネットの方でハリサシガメついて記した興味深い記事を見つけた。

ふしあな日記 私的UNA ハリサシガメ

この方はハリサシガメを夜行性だと考えているというので驚いた。僕の観察はすべて日中(昼前後)で、その間アリを捕食したり、食事後のアリをデコったり、交尾をしたり脱皮するものも確認していたので(脱皮を観察できたのは1回のみ)、僕はハリサシガメは昼行性だとばかり思っていた。しかし、夜に観察に出かけたことはない(活動していないことを確かめたわけではない)し、エサとなるアリは夜も活動しているというから、ハリサシガメも夜に活動していたとしてもおかしくはないのかもしれない。

昼行性のヒガシニホントカゲとの2ショット↓。

05針刺亀幼虫トカゲ1再
06針刺亀幼虫トカゲ2再
ハリサシガメの捕食〜擬装行動より⬆

ハリサシガメぷちまとめ2
好蟻性昆虫〜好虫性人間?『アリの巣をめぐる冒険』
昆虫など〜メニュー〜
スポンサーサイト



新成虫vs羽化殻@アカスジキンカメムシ

1月にカメラが壊れてから撮影はしていないが、虫見はぼちぼち続けている。以前は美麗昆虫や面白いシーンに出会うと「なんとか記録せねば」とカメラごしに虫を見ることが多かったが、最近はその負担がないので気が楽だ。「カメラがあれば撮るのになぁ!」と残念に思うシーンもないではないが、記録撮影の負担から解放された感がなくもない。
とはいえ、観察のようすをブログにまとめるにあたっては、その状況を文章だけで説明するのはやっかいだ。現場を見ていない第三者(閲覧者)にはわかりにくいに違いない。公開している場でわかりづらい記事を投稿することには躊躇が働く……。

今年もアカスジキンカメムシの羽化シーズンを迎え、「見られる時に見ておかねば」と《抜け殻落とし(羽化殻落とし)》を観察している。これまでは記録画像を撮影するため接写距離に近づかなくてはならず、それがカメムシを警戒させ行動に影響(羽化殻落としを止めたりなかなか始めなかったり)を与えていたのではないかと気になっていた。しかし今シーズンはカメラが無いので、カメムシをおどかさないように少し離れたところからの観察をしてみた。離れて観察していれば羽化後早いタイミングで羽化殻落としを見られるのではないかと予想していたのだが……個体によって抜け殻落としを始めるタイミングはバラバラだった。
そんな今シーズンの観察も少し記録を残しておきたい。といっても画像ナシではイメージが伝えにくいので、過去の記事からの抜粋画像を交えて紹介していくことにする。

アカスジキンカメムシの羽化〜羽化殻落とし
01赤筋金亀虫成幼R1
まずは、アカスジキンカメムシというのは、こんな昆虫⬆だということで。カメムシは不完全変態なので蛹にはならず、終齢幼虫の背中をやぶって成虫が出現する。アカスジキンカメムシの羽化前後の行動は、これまでの観察からすると──、

①終齢幼虫は葉の裏で頭を下にしてとまり、
②前胸の背面が割れて羽化が始まる。
③殻から離脱した新成虫は羽化殻と向き合う形で対峙(頭を上にしてとまる)。
④羽化殻を頭で押して葉から落とす。
⑤葉の表側に移動してまったり(体色の定着&体が固まるのを待っている?)。


というのがデフォルトのようだ。過去の記事(複数)からの抜粋画像で紹介するとこんな感じ⬇。
02赤筋金亀虫羽化AR1
03赤筋金亀虫羽化AR2
04赤筋金亀虫羽化AR3
05赤筋金亀虫羽化AR5
06赤筋金亀虫羽化AR6
07赤筋金亀虫羽化AR8
08赤筋金亀虫羽化AR11
09赤筋金亀虫羽化後aR
10抜殻落シーンR1
11抜殻落し前後R
12赤筋金亀虫羽化R5
13抜殻落シーンRR
14赤筋金亀虫羽化殻落FR
《抜け殻落とし(羽化殻落とし・脱皮殻落とし)》の意味については【カメムシの奇行!?抜け殻落としプチまとめ】に考察をまとめているのでここでは割愛。
今シーズンは、羽化直前の終齢幼虫をみつけ、羽化〜羽化殻落としまでを観察しようと注目した──のだが……。

10:14(時:分) トウカエデわきのツツジの葉の裏で頭を下にとまっている終齢幼虫を見つけた(2019.05.16@東京)。
10:25 腹をあおるような動きを始め、少し間をあけて断続的に繰り返すことから羽化が近いと判断して、これを観察することにする。
10:29 脚を踏み直す(移動したり向きを変える気配はない/足場の確認?)。
10:50 黒い上半身(前胸背と頭部)の間に白い隙間(裂け目)が入り羽化が始まる。
10:56 前胸背の裂け目から白っぽい前胸が盛り上がってくる。
10:58〜11:00 前胸がほぼ脱出。
11:02 体の大半が脱出し腹端を羽化殻に残して逆さ吊り状態になる。
11:03 脚を殻から引き抜く。
11:12 新成虫が葉につかまる。
11:21 ほぼ離脱(腹端が羽化殻と接している状態)
11:22 スポンと羽化殻から腹端が離れる(気管が抜けた?)。
11:23 向きを変え羽化殻と向き合う(新成虫が頭を上にしてとまる)。
12:03 羽化殻との距離を詰める。
12:43 羽化殻を頭で押す《抜け殻(羽化殻)落とし行動》に出る。
12:44 頭で押して浮き上がった抜け殻の下にもぐり込み、葉の縁まで押して行くが、抜け殻は落下せず、宙に浮き上がった状態になる。
クモのしおり糸等に引っかかったのだろうかと確かめに近づくと、新成虫の体か葉の裏に羽化殻の爪がひっかかっているもよう。
のぞき込んだこともあってか新成虫は抜け殻をかついだまましばらく動きを止める。
12:51 少し動くが状況は変わらず
13:30 新成虫が葉の表へ移動/羽化殻は葉の裏に残される。
新成虫が葉の表側に移動したので葉の裏に残された羽化殻を回収したが、もしかすると羽化殻落としをしに戻る可能性もあったかもしれない。

4〜5mほど離れて展開を見守っていたが、この個体は殻から離脱したあと、40分後に羽化殻との距離を詰め、抜け殻落とし行動にでたのは更に40分経ってからだった。この個体の観察に2時間半ほどかけたわけだが、《抜け殻(羽化殻)落とし行動》は確認できたものの《抜け殻(羽化殻)落とし》は未遂に終わった。

新成虫が羽化殻と泣き別れになる羽化別れ!?
アカスジキンカメムシの新成虫がとまっている葉の直下には《羽化殻落とし》によるものと思われる羽化殻が落ちていることが多いが、葉の裏に抜け殻が残されていることもある。今回の観察のように未遂で終わるケースもあるのかもしれないが、羽化のさいに新成虫が羽化殻と離れてしまう泣き別れならぬ《羽化別れ(と勝手に命名)》もその原因の1つかもしれない。

今シーズンの観察では、羽化中の新成虫が羽化殻と泣き別れになるケースも確認できた。図にするとこんな感じ⬇。
15羽化別れ図解510
こうした羽化別れの状況でも、下の葉に移動した新成虫が羽化殻落としをするために上の葉に戻ることもあるようだ。以前の記録から⬇。
16赤筋金亀虫羽化殻落E再
今シーズン観察した《抜け殻落とし》確認例など「同じ葉の裏でみつけたアカスジキンカメムシの新成虫と羽化殻」の4つのケース⬇。
17羽化殻落A図
18羽化殻落B図
19羽化殻落C図
20羽化殻落D図
過去の観察例では羽化殻落としがあっというまに完了してうまく撮れないことが多かったが、今シーズンは意外に、新成虫がてこずるシーンが多かった。
羽化後(新成虫が古い殻から離脱後)、羽化殻落としを始めるタイミングも、バラツキがあるようだ。
アカスジキンカメムシの観察をしていて、新成虫が落としたとおぼしき直下の羽化殻をアリが運びんで行くシーンも見ることができた。葉の裏にとどまっているアカスジキンカメムシの羽化殻をアリが運び去るシーンは以前にも記録しているが、羽化殻は「アリが嗅ぎつけてやってくるターゲット(獲物)」と成りうることが改めて確認できた。天敵のターゲットとなる羽化殻を生活圏から排除する《羽化殻落とし》の意味を示唆するシーンともいえるだろう。

カメムシの奇行!?抜け殻落としプチまとめ
アカスジキンカメムシぷち実験で輝き復活
アカスジキンカメムシの臭腺開口部
アカスジキンカメムシ幼虫の臭腺開口部

昆虫など〜メニュー〜

フチグロトゲエダシャクを見た…

今日、鉄道柵にとまっていた蛾がいたので、のぞきこんでみてビックリ! フチグロトゲエダシャクのオスだった。フユシャクの中でも最後にでてくる昼行性の種類で、僕は狭山丘陵の東京側でこれまでに2度だけ見たことがある。

発生環境は河川敷らしいが、過去に見た2回はたしかに貯水池の近くだった。
今回見つけたオスは貯水池からは、ずいぶん離れている。近くで思い当たる水辺と言えば……一級河川があるが、直線距離で500mほどある。これまで確認したことはないし、発生しているという情報も知らないが、この一級河川周辺に未知の(?)発生ポイントがあるのだろうか?
500mほどなら、飛翔能力を有するオスだから飛んでこられない距離でもないのかもしれないが……(飛翔能力のない)メスがいるとは思えない、こんなところまで飛んでくるものだろうか?
これは証拠写真を撮っておきたいところだが……カメラが壊れたあと、まだ調達していないので、画像はナシ。

ちなみに今日は他に、ヒロバフユエダシャク(♂&♀)・シロトゲエダシャク(♀)・シロフフユエダシャク(♂&♀)も見ているが、画像はない……。



昆虫など〜メニュー〜

カメムシの奇行!?抜け殻落としプチまとめ



羽化や脱皮をしたカメムシが自分の抜け殻を落とす──この行動を僕は《抜け殻落とし》(もしくは《羽化殻落とし》・《脱皮殻落とし》)と呼んでいる。冒頭の画像↑は2018年5月に撮影した羽化後のアカスジキンカメムシ。新成虫が《抜け殻(羽化殻)を落とし》をした瞬間──ではなく、落とした抜け殻がクモのしおり糸にひっかかって宙に浮いているシーン。カメムシの《抜け殻落とし》については、これまで幾度も記事にしてきたが、ここで少しまとめておくことにした。

カメムシの《抜け殻落とし》とその意味

自分の抜け殻を攻撃して落とす──初めて目にした時は奇異に感じて、この行動にはどんな意味があるのだろうとあれこれ想像をめぐらせた。
抜け殻には、その虫が存在することを示す痕跡(例えば──羽化や脱皮のさいに分泌される離型剤のようなもの?)が残っていて、そのニオイが寄生蜂や寄生蠅、アリなどを呼び寄せてしまうことがあるのではないか? だとすれば抜け殻がカメムシの近くにあると、自分や仲間が天敵に見つかる危険が高まる……そこで、これを回避すべく生活圏の外に(災いの元となる)抜け殻を落とすのではないだろうか──今は、そのように考えている。
イモムシなどでは孵化後に卵殻を食べたり、脱皮後に脱皮殻を食べるものがいるが、これも1つには「天敵の指標となる抜け殻を隠滅する」という意味があるのではないかと思う。カメムシは口の構造上、抜け殻を食べて隠滅することができないので、生活圏の外に落とすことで処理しているのではないだろうか。
セミやチョウ・蛾などは羽化殻を残すが、羽化後その場から離れてしまうので抜け殻を残しておいても問題がないのだろう。セミは羽化する時に地中から出てきて木に登るし、チョウ・蛾は蛹になる前に食草を離れて移動するものがいる──こうした行動で「天敵の指標となる抜け殻を仲間から遠ざける」ことをしていると考えることもできそうな気がする(あるいは、ハチやハエに寄生されていた場合にも仲間から離れたところで蛹になることで、羽化した寄生蜂や寄生蠅を仲間から遠ざける効果があるのかもしれない)。
素人の考えたことで、この解釈が当っているのかどうかはわからない。しかし、カメムシが《抜け殻落とし》をするシーンは何度も目撃している。

エサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし



成虫は背中のハート・マークが目をひくエサキモンキツノカメムシ。僕が初めて《抜け殻落とし》を目にしたのは、2012年10月──擬木で羽化する、このエサキモンキツノカメムシ↓を観察している時だった。


①擬木支柱で羽化するエサキモンキツノカメムシ。②羽化殻から離脱すると頭を上にし羽化殻と向き合う。③頭突きをするように羽化殻を攻撃し始め、ついに落としてしまった。羽化殻への攻撃が始まったのは新成虫が羽化殻から離脱して9分後のことだった。このときのことを記した記事→【ハート亀虫羽化 見守るキリスト!?】)。
2015年11月に、やはり擬木で羽化していたエサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし↓。


①擬木支柱にとまった羽化後の新成虫と羽化殻。②羽化殻に頭からぶつかっていく新成虫。③羽化殻を落とす。このときは離脱後20分余り経ってからの羽化殻落としだった(※詳細記事→【エサキモンキツノカメムシの抜け殻落とし他】)。

アカスジキンカメムシの羽化殻落とし&脱皮殻落とし



《抜け殻落とし》はアカスジキンカメムシで観察することが多かった。といっても必ず行うわけではなく、葉の裏に抜け殻だけが残されていることもある(地面に落とされている抜け殻の方が多い)。また羽化中や羽化直後の新成虫を見つけて羽化殻シーンを撮影しようと近づくと、(警戒して)固まったままなかなか始まらなかったり、アクシデントで他の昆虫と接触して羽化殻を残して逃去る新成虫もいた。近くで待機していると《抜け殻落とし》が始まらないし、離れていると《抜け殻落とし》が始まっときに接写が間にあわず、画像での記録は失敗が多かったが……とりあえず記録ということで……。


2018年5月に撮影したもの↑。ムクゲのやや高い位置にとまっていたのできれいに撮れなかったが……①葉の裏で羽化中のアカスジキンカメムシ。②離脱した新成虫が向きを変える。③羽化殻と頭をつき合わせるような形。この時点で羽化殻の脚は葉から外れかけていた。④しばらくじっとしていた新成虫が動き出す。⑤頭で羽化殻を押しながら前進。⑥前進して寄り切るように羽化殻を落とす(この直後に羽化殻は落下)。⑦羽化殻落としを終えたアカスジキンカメムシ新成虫。※【羽化殻落とし@アカスジキンカメムシ】より↑。
《羽化殻落とし》を目の前で確認しながら、肝心のシーンが激しくピンポケになってしまった例……↓。


2017年5月に撮影↑。羽化中のアカスジキンカメムシが古い殻から離脱して2時間ほど経ってからの《羽化殻落とし》だった(※詳細→【アカスジキンカメムシ:羽化~抜け殻落とし】)。《羽化殻落とし》を接写しようと近くで待機していると、警戒して(だろう)なかなか始めてくれない。待たされることが多かった。


2017年5月に撮影↑。①を撮影した後、少し離れたところから監視を続けて《羽化殻落とし》を待っていた。②《羽化殻落とし》の瞬間──フレーミングもピントも間に合わず、角度も悪くてこんな画像しか撮れなかった(①から50分が経過していた)。③羽化殻を落とした後の新成虫(※詳細→【アカスジキンカメムシ羽化後《抜け殻落とし》確認】)。



2018年5月に撮影↑。①新成虫は孵化殻から少し離れたところに移動していて体色もだいぶ濃くなってきている(時間も経過している)。もう《羽化殻落とし》はしないのだろうか……とあきらめかけていると、した──が、その瞬間は撮り逃し、その直後の画像が→②羽化殻落とし直後の画像(1秒前にはフレーム内に羽化殻があった)。目の前で《羽化殻落とし》を確認していながら、またしてもその瞬間は撮り逃してしまった(※詳細→【羽化殻落とし@アカスジキンカメムシ】)。



2018年5月に撮影↑。これは《羽化殻落とし》のシーンを確認していない。葉の裏で羽化殻と対峙している羽化直後の新成虫(左画像)。2時間40分後に見に行くと、新成虫はすでに葉の表に移動しており、葉の裏の羽化殻はなくなっていた(右画像)。新成虫は、おそらく《羽化殻落とし》をしたあとに葉の表に移動したのだろう(※詳細→【アカスジキンカメムシの羽化他】)。
アカスジキンカメムシの《抜け殻落とし》は幼虫の脱皮でも確認している(《脱皮殻落とし》)。


2015年9月に撮影↑。①コブシの葉で脱皮中のアカスジキンカメムシ幼虫。②触角や脚が抜けていく。③最後に腹端が抜けて新幼虫が抜け殻から離脱。よくこのサイズの体が小さな抜け殻に収まっていたものだといつも感心する。④向きを変えて抜け殻と対峙。⑤抜け殻に頭突き攻撃。⑥抜け殻の下にもぐることで抜け殻の前脚を葉から引き剥がす。カメラを近づけたためこの姿勢で触角を倒し、静止してしまった。この2分20秒後の画像が→⑦接写するカメラを離していたわずかのスキに脱皮殻は落とされてしまった(※詳細→【アカスジキンカメムシの抜け殻おとし】)。
こちら↓は2015年10月に撮影した《脱皮殻落とし》。


①擬木の支柱で脱皮殻落としを開始したアカスジキンカメムシ幼虫。葉の裏ではすんなり落ちる抜け殻が、擬木では徘徊する蛾の幼虫やクモが残した糸がひっかかってなかなか落ちない。②頭突きをし抜け殻を押し上げる新幼虫。③なかなか落ちない脱皮殻を持ち上げ、このあとようやく落としたのだが……。④擬木に残されていたしおり糸(?)にひっかかった脱皮殻は宙吊りになっていた。⑤脱皮殻がまだあることに気がついた新幼虫は……⑥わざわざ支柱をおりていき脱皮殻を落とそうと頭突きをする。⑦脱皮殻は再び落ちかけて途中で宙吊りに──この後、風にあおられて、ようやく落下した(※詳細→【カメムシの抜け殻落とし行動】)。
宙吊りになった脱皮殻に追い打ちをかけにいく行動に《抜け殻落とし》に対する執着のようなものを感じた。
《抜け殻落とし》への執着は羽化でも感じるケースがあった。


2017年5月に撮影↑。ふつう羽化後の新成虫は羽化殻と同じ葉にいるものだが、上下の葉に分かれてしまった羽化殻と新成虫。①では羽化殻と新成虫がとまった葉は離れているが、羽化は羽化殻のある上の葉で行われたはず。そのときは上の葉(羽化殻がある葉)は終齢幼虫の重みで下がり、下の葉(新成虫とまっている葉)は(新成虫の体重がかかっていないため)もっと上がっていて上の葉と接していたのだろう。羽化の過程で新成虫が、接していた下の葉につかまり、そのまま体重がかかってこの状態(上下の葉が離れる形)になったものと思われる。この状態で下の葉に移ってしまった新成虫が羽化殻を落とすために、わざわざ上の葉まで戻るのかどうか──興味があったのでしばらく近くにスタンバって観察していたが、警戒してかなかなか動かず。少しその場を離れ、22分後に戻ってみると→②新成虫はすでに上の葉に移動しており、羽化殻は落とされた後だった。羽化殻はこの枝の下でみつかったので、風で落ちたわけではなく(風に飛ばされたのであれば直下には落ちない)、新成虫がわざわざ上の葉に移動している事からも《羽化殻落とし》が行われたことは、まず間違いない(※詳細→【アカスジキンカメムシ新成虫《抜け殻落とし》のケース】)。
羽化や脱皮をしたあとのカメムシが労力を要して行う《抜け殻落とし》には、やはりそれなりの意味があるのだろうとあらためて感じた。
僕が想像した《抜け殻落とし》の意味の一端を裏付けるようなシーンもあった。


2018年5月に撮影↑(※詳細→【アカスジキンカメムシの羽化他】)。葉の裏で羽化していたアカスジキンカメムシの羽化殻落としを接写すべく、ずっと近くでスタンバっていたが、(警戒して?)なかなか羽化殻落としは始まらない……。そのうちアリがやってきてしまい、アカスジキンカメムシ成虫は羽化殻を残して別の枝へ移動していってしまった。羽化殻はアリによって運び去られた↓。


これで、羽化殻を放置すればアリが来ることは確認できた。アリがくるのだから、寄生蜂や寄生蠅など、他の天敵が嗅ぎ付けてくることも充分ありそうだ。こうした天敵を生活圏に誘引しないように抜け殻を落とすというのは理にかなっているように思われる。もちろんカメムシが「効果を考えて」こうした行動をとっているわけではいだろうが……進化の中で、何らかのきっかけによって抜け殻を落とす行動が生まれ、それを行う個体の生存率が高かったことから、その子孫にこの行動が受け継がれ定着していったのではないか?

ツヤアオカメムシ・チャバネアオカメムシの《羽化殻落とし》



エサキモンキツノカメムシやアカスジキンカメムシの他には、ツヤアオカメムシとチャバネアオカメムシで《羽化殻落とし》を確認している。



2015年11月に擬木で撮影したツヤアオカメムシの羽化殻落とし↑(※詳細→【モンキツノカメムシとエサキモンキツノカメムシ他】)。



2018年9月にケヤキの幹上で行われていたチャバネアオカメムシの羽化殻落とし↑(※詳細→【チャバネアオカメムシの羽化殻落とし】)。

謎めいたカメムシの《抜け殻落とし》

何の予備知識も無くカメムシの《抜け殻落とし》を目にした当初は理解しがたい光景のように思われた。つい今しがたまで自分の体の一部だったものを攻撃する!?──自分の体から離れたとたん、《自己》だったものが《非自己》と認識されてしまうのだろうか? それにしても、エサキモンキツノカメムシは母虫が卵~若齢幼虫集団を守ることで知られているし、アカスジキンカメムシも葉の裏に数匹が体をよせあって集まっていたりする──仲間と協調できる昆虫が、どうして少し前には自分の体だった抜け殻を攻撃するのか、とても不思議だった。
最初に記した通り、今では「天敵に嗅ぎつけられる危険を避けるため」に《抜け殻落とし》をするのだろうと僕は考えている。長い進化の中で、抜け殻を放置するものの中から落とすものが現れ、その一群の生存率が高かったことで《抜け殻落とし》の習性が自然選択されたのだろうという解釈なのだが……それでは、最初の《抜け殻落とし》はどのようにして起こったのだろう? カメムシが「天敵を避けるため」と意識して始めたわけではないだろうから、きっと何か別の行動システムの副産的な(あるいはエラー?)発現がきっかけになってのことではないかという気がするが、そのあたりのことはまだ想像がつかずにいる。
僕の解釈がどの程度当っているのか、まるっきり的外れなのかはわからないが……いずれにしても脳味噌を刺激し続けるカメムシの《抜け殻落とし》は、気になる《謎めいた生態》の1つである。

※追記:風変わりなハリサシガメの脱皮殻剥ぎ

ちょっと(かなり?)変わったカメムシ──ハリサシガメの《抜け殻落とし》に相当すると思われる行動について追記。ハリサシガメは捕食性カメムシでエサはもっぱらアリという変わり種。しかも幼虫は捕食後のアリの死骸を背中にデコレーションして擬装するという風変わりな習性を持っている。背中にデコるのは狩ったアリばかりでなく、おそらくアリのゴミ捨場から拾ってきたのではないかと思われる虫の残骸等も混じっていたりする。さらにハリサシガメは脱皮も奇想天外で、古い殻を破って出現する新幼虫は脱皮殻が背負っていたデコレーション素材をそのまま引き継ぎ、背負いながらでてくる↓(*)。




画像を90度回転しているが、実際は石垣の鉛直面に頭を下にして脱皮している↑(画面左が下)。この脱皮のさいに、引き継いだデコレーション素材とともに、これにくっついていた自分の脱皮殻もいっしょに背負ってしまうことが起きる。
自分の脱皮殻を背負って擬装する昆虫(セモンジンガサハムシなど)もいるのだし、ハリサシガメ幼虫は他の昆虫の残骸をわざわざデコレーションしているのだから、自分の抜け殻だってデコっても良さそうな気がするが……ハリサシガメ幼虫は自分の脱皮殻だけは嫌って、引き剥がそうとする。先に紹介したカメムシの《抜け殻落とし》が、基本的には頭を使って──頭突きで押し出すように行われていたのに対し、ハリサシガメ幼虫の、いわば《脱皮殻剥ぎ》は後脚を使って行われるようだ。




別の脱皮後と思われるハリサシガメ幼虫↓。


ダンゴムシかワラジムシの殻(白く見える物)を背負っているが、その後ろに脱皮殻も付着している(腹の背面がデコ素材にくっついている)。この30分後、すでに脱皮殻は引き剥がされていた↓。


アリの死骸やアリが廃棄したと思われる虫の残骸などは積極的にデコるのに、自分の抜け殻はデコレーションから排除しようとするのが興味深いところ。擬装がアリの嗅覚を欺くためのものだとしたら、自分の(ニオイがついた)脱皮殻を排除するのは理にかなっている。

★ハリサシガメ記事一覧

冬尺蛾の他人の関係

フユシャクの『他人の関係』

フユシャクの時期になると脳内再生される曲がある。
カメラが壊れているので過去の画像から──。





(※【振袖フユシャク【卒】を探せ~トギレフユエダシャク♀】より↑)


(※【ヒロバフユエダシャクのツーショットより↑)
フユシャク(冬尺蛾)ウォッチをしていると、オスとメスがすぐ近くにとまっていることがある。おそらく交尾後のペアなのだろう。フユシャクはオスとメスで、まるっきり姿が異なっているということもあるのだろうが……互いに別々の方を向き、他人のようによそよそしく見える。そんな姿を見ると思い起こされるのが金井克子の歌う『他人の関係』──。距離を置いてとまるフユシャクの映像に、「バンバンババンバン」というスキャットがBGMのように脳内再生されるのである。




ツーコーラスの歌い出し──「愛した後 おたがい 他人の二人 あなたはあなた そして 私はわたし」というフレーズが、この状況に、妙に合っている気がするのは僕だけであろうか?

調べてみると金井克子の『他人の関係』は1973年──46年も前の曲。僕はこの歌が好きだったわけでもなく、金井克子のファンでもないのだが、虫見をするようになり、フユシャクを見るようになって、突然この歌が脳内再生されるようになった。昭和のヒット曲はけっこう耳に残るものなのかもしれない!?

※金井克子 他人の関係→https://www.youtube.com/watch?v=sVoZOmbu7Iw