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昆虫などの記事 (1/120)

ザ!鉄腕!DASH!!にシャチホコガ幼虫

01シャチホコガ幼虫TV
※これはフィギュア⬆イモコレ!2のシャチホコガ幼虫

怪獣ならぬ怪虫!?シャチホコガ幼虫がテレビ番組に!?
先日、テレビ番組を制作をしているという方からブログ経由で連絡があった。番組内でシャチホコガについて取り上げることになったそうで、僕のブログ記事(シャチホコガ幼虫の威嚇ギミック!?)に掲載しているシャチホコガ幼虫の画像を使用できないかというお話だった。
僕としては、拙ブログ記事が何かの役に立てれば本望なので、快諾。
シャチホコガを取り上げるという奇特な番組は、日本テレビの「ザ!鉄腕!DASH!!」──その中の「新宿DASH」という企画でのことらしい。放送予定日は9月6日(日)、19:00〜だそうだ。

僕は地デジ化を機にテレビから離脱しているので、現在のテレビ事情はさっぱりなのだが……検索してみると「ザ!鉄腕!DASH!!」は、日曜日19:00〜19:58放送のTOKIOが出演するバラエティ番組らしい。
どういう形で提供したシャチホコガ幼虫画像が使われるかわからないが……こんな奇妙な生き物がいることを多くの人に知ってもらえる機会が増えるのは喜ばしいことだ。
初めてこの虫を目にしたときは、「よくぞまぁ、こんなデザインが実現したものだ」とたまげたものだが……この衝撃は、とても独りの胸にとどめておけるものではない。「王様の耳はロバの耳!」と誰かに教えたくなるように、「この虫、すんげぇ〜ゾ!」と世間に知らしめたくなる。
ちなみに、このキモかっこいい幼虫を僕は「シャッチー」と呼んでいる。

チョウや蛾の幼虫──イモムシの中にはけっこう奇抜なものがいたりするのだが……おもしろい割に、あまり知られていないというのが、もどかしい。
そこでこの機会に、僕が見た中で、おもしろいと感じたイモムシを、さらに3つほどプチ紹介しておくことにする。

造形や空目模様、ギミックがユニークなイモムシたち

ウコンカギバ⬆葉上のドラゴン:ウコンカギバ幼虫より


ホソバシャチホコ⬆スーパーヒロイン模様の虫より



ウラギンシジミ⬆紫のピカチュウ!?ウラギンシジミ幼虫の線香花火より

昆虫は摩訶不思議でおもしろい。

※追記(2020.09.05):番組サイトの次回(9月6日)予告の【見どころ】によると、放送内容は、国分太一(TOKIO)、二宮和也(嵐)、岸優太(King & Prince)による「東京23区内でカブトムシ見つけられるか?」という恒例企画の虫探しらしい。



シャチホコガ幼虫の威嚇ギミック!?
擬態の達人コノハムシ〜TV番組
昆虫画像:ブログからテレビへ
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雌雄モザイク報道の「!?」

成虫になってから大きく育った!?
ノコギリクワガタの雌雄モザイクがニュースになっていた。

左はオス、右はメス 突然変異のクワガタ、宮崎県に出現

体の左右でオスとメスが分かれる現象(雌雄モザイク)は珍しいので、しばしば話題になる。カブトムシやクワガタではオスとメスの特徴の違いが顕著(性的二型)なので目立ちやすいのだろう──雌雄モザイクのニュースではよく見かける。
だから今回のニュースでも、雌雄モザイクのクワガタそのものについては特に目新しい感慨はなかったのだが……僕が驚いたのは記事の最後の部分である。


 学芸課の竹下隼人主査は「『雌雄モザイク』という突然変異。餌場の縄張り争いなどで不利なため、大きくなるまで育ったのは大変珍しい」と話している。

学芸課主査が「餌場の縄張り争いなどで不利なため、大きくなるまで育ったのは大変珍しい」と話しているというのは本当なのだろうか!?
餌場の縄張り争いは成虫になってからの話で、クワガタが成虫になってから大きくなることなどなかろうに……。

以前、雑木林で虫とりをしていた親子に出会い、コクワガタのオスを手にした父親に「まだ子どもですかね?」と尋ねられて驚いたことを思い出した。これが成長すればヒラタクワガタやオオクワガタのようになると勘違いしたらしい。バッタやカメムシのように成虫と幼虫が似たような姿の昆虫(不完全変態)もいるが、カブトムシやクワガタは完全変態で、子ども(幼虫)は全然違う形をしている。成虫の大きさには個体差があるが、これは成虫になってからの変化ではなく、幼虫時代の成育状態によるものだろう(遺伝的な要素もあるのかもしれないが)。成虫になってから成長することはない──僕はあたりまえのようにそう認識していたが、小さなクワガタ(成虫)が成長して大きくなると思っている人もいるのかと新鮮な(?)驚きを覚えたものである。

生き物のことをよく知らない素人であれば、そんな誤解もあるのかもしれない。しかし、博物館に努めるプロの学芸員が、メディアに対して、こんな解説をすることがあるのだろうか──という驚きが大きかった。
それにしても……おかしいと気づかない記者やデスクも、どうかという気がする。
あるいは記者による誤解があっての記事なのだろうか?


雌雄モザイクのニュースではカブトムシやクワガタが取り上げられることが多いが……さらに珍しいニホントビナナフシの雌雄モザイク@東京⬇


左右で♂と♀が別れた個体↑と、部位によって♂♀が交互に別れた個体↓。




ニホントビナナフシ東京でも両性生殖(2013年12月)
ニホントビナナフシの雌雄モザイク(2013年11月)
半♂半♀のトビナナフシ(2014年11月)
黄色いトビナナフシ(2013年11月)
珍しいナナフシのオスと過密!?(2013年11月)
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水滴で色が変わるシロテンハナムグリ

水滴部分で色が変化するシロテンハナムグリ

今日も、こっそり自然観察!❳さんのブログに興味深い記事【続・シロテンハナムグリの色彩!】が投稿されていた。
水滴をつけたシロテンハナムグリの水滴部分で体色が変化して見えるというもの。この現象について、僕の解釈をコメントしようと思ったのだが、文章では判りにくくなりそうなので、こちらで図を使って説明させていただくことにした。

まず、光沢昆虫では見る角度によって色合いが変化する。その例としてアオマダラタマムシを──、

07青斑玉虫A
08青斑玉虫B
※【メタリックな美麗昆虫10種】より⬆
見る角度によって色合いが変化する。深い角度(手前側)で赤みが強く、浅い角度(奥側)では緑色に見える。
これを踏まえて、今日も、こっそり自然観察!さんが撮影された画像(失礼ながらブログから拝借)をご覧いただくと──、
01水滴色彩@白点花潜
やはりシロテンハナムグリも手前側(深い角度)で赤みが強く、奥側(浅い角度)で緑っぽく見える。背中の水滴の部分で色が変化して見えるのは、水滴表面で光が屈折することで、見る角度(光が反射する角度)が変わるため──、
02水滴色彩変化図解
こういうこと⬆ではないか……というのが僕の解釈。

赤⇔緑に見える光沢昆虫といえば、最近よく見かけるマメコガネも前胸背の緑色が光の加減や見る角度で赤っぽく見えたりする。この前胸背の赤みが強い個体が増えてきた(?)ように感じるのは僕だけであろうか?




※【胸赤マメコガネ!?】より⬆


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ハリサシガメ観察雑感

幼虫が奇妙な擬装をするユニークな捕食性カメムシ・ハリサシガメ。生息場所での観察をまとめたものが先日投稿した【珍虫ハリサシガメの観察❲総集編❳】だった。❲総集編❳が思いのほか長くなってしまったためにカットした観察後記的な雑感をいちおうここで記しておくことにする。

この風変わりな昆虫は好奇心を刺激する。見ているうちにあれこれと疑問がわいてくる。擬装の意味はもとより、アリをどのように狩るのか/捕食後のアリをどのように背中に盛りつけるのか/脚が届かない高さまで異物を盛りつけた個体もいるが、どうやってデコレーションしたのか/脱皮や羽化はどのように行われるのか/そのさいデコレーション素材はどうするのか/卵はどんな形状をしているのか/いつ、どんな場所にいくつくらい産みつけるものなのか? etc.
確かめて記録しておきたいことは色々あったが、相手は生きた昆虫だ……近づくと逃げたり石垣の隙間に隠れてしまったりして、つぶさに観察・撮影することができないことも多かった。

そこで確認しやすい飼育下において観察することを検討したこともあったのだが……これは思い止まった。
飼育観察を躊躇したのは、無事に育てられるか自信が無かったからだ。僕は昆虫の飼育経験に乏しい。ハリサシガメについての飼育ノウハウは皆無である。希少な虫をいたずらに死なせてしまうリスクを恐れた。
また、飼育がうまくいったならうまくいったで、野外での観察時間が削られることになるだろうことも懸念した。

これは僕の個人的な感覚なのだが……観察のために飼育を始めたのであれば《観察する責任(義務)が生じる》という思いがある(観察対称を私有化し独占するのだから)。野外観察は任意だが、自分の意志で始めた飼育観察には義務が生じる──だから、後者(義務)が優先されねばならない──ひとたび対象を飼育下に置いたなら、その観察に時間を取られることになるだろう。特に脱皮の兆候などが現われたら、決定的瞬間を見逃さないように可能な限り見張り続けなくてはならない。かつてコノハムシを飼育していた時は、その兆候を察すると部屋の何カ所かに鏡を置いて、どこにいても、ふり向くことなく目を動かすだけで飼育容器が見えるようにして監視を続けていた。わざわざ飼育しているのに脱皮を見逃すというのは《失態》であり《義務違反》でもあるという強迫観念めいたプレッシャーもあって、睡眠時間も極力減らしていた。

気をもむことにはなるが、飼育観察で得られる情報は貴重だ。一方、気軽な(?)フィールド観察だからこそ気づくことができたという発見も決して少なくはない。飼育観察に手を出すことで、フィールド観察の時間が減るのはデメリットが大きい……そんな迷いもあった。

フィールドでハリサシガメを観察していると〝常連〟と思われる個体に出くわすことが少なくない。今後も観察できるかもしれない1匹を持ち帰れば、屋外で観察できる個体が1匹減る──フィールドにおける観察チャンスが減ることになるのではないかという不安もあった。
本来であれば生息場所で繁殖に参加できたかもしれない希少昆虫を、飼育ノウハウが無いのに持ち帰って、成果が得られぬまま〝失敗〟してしまうことになったら……と考えると、つい尻込みしてしまう……。

飼育観察には《わからないからこそ調べる価値がある》という意義もあるわけで、そこには《成功の保証》などない。試行錯誤を経て《わかってくる》こともあるわけだから、失敗のリスクを恐れて始める前からチャレンジを放棄するのも進歩が無い──そんな思いもあって、あれこれ悩んだ。

以前、手探りでヤニサシガメの幼虫を短期飼育したことがあったが(*)、これは普通種であり、1匹もち帰ったところで、問題があるとも思えない。何より脱皮後の《断マツヤニ》状況を確認したかったので飼育下に置く必要があった──そのために飼育に踏み切ったわけが……ハリサシガメの場合は生息環境での観察により大きな意味を感じていたこともあって、けっきょく飼育観察は見送ることにしたのだった。

そんなわけで、(死骸や脱皮殻・羽化殻などを持ち帰って調べることはあったが)生体の観察は全て生息現場で行ったのが【珍虫ハリサシガメの観察❲総集編❳】だった。これは、虫屋ではない僕の個人的な好奇心が動機の素人観察&考察(妄想?)で、学術的なフォーマットではない。

もし僕が虫屋だったら…
ハリサシガメの観察ポイントへ向かう途中、あるいは帰りに、ふと「もし、僕が虫屋だったら、どうするだろう?」などと漠然と考えたこともあった。

僕は虫屋ではないので、基本的には採集も飼育もせず、標本作りなどもしないで済ませてきたが……虫屋としてキチンと学術的意味のある観察記録を残すのであれば、当然標本作成はすることになるのだろう。希少な種類だからといって、オス・メス1匹ずつの採集で済むものでもないだろう。ハリサシガメは翅多型なので、色々な翅型があることを標本でも残す必要がありそうだ。翅の長さの発現比率や、オスとメスでの比較などを調べるためにはある程度の個体数を採集しなくてはならなくなるだろう。ハリサシガメの採集は(発生場所さえわかれば)難しくはないはずだ。比較的狭い範囲に集中しているので見つけやすい。だが、見つけやすいだけに、目につく個体を片っ端から採集していけば、そのポイントでの個体数が減り、個体群を存続するのに必要な数を割り込んでしまうことになりはしないか……ちょっと心配である。

僕はハリサシガメについて《飛ぶことができず、新天地への進出力(?)が弱いことが、生息ポイントの局所化につながっている。飛翔能力がないので狭い範囲にかたまっていることで繁殖の機会を確保している。成虫になれる個体は少なく、そのぶん(?)多くの卵を産むことで、個体群の生存率をキープしている》というようなイメージを描いている(素人予想)。
もしこれが当っているなら、多産によって個体群維持に必要な生存率を保っている1匹の親虫の担う役割りは大きい。繁殖のため密になって見つけやすい親虫を一網打尽に採集していけば、1人の採集者がそのポイントでの絶滅を招きうるのではないか……そんな可能性も考えてしまう。
ハリサシガメについての生態情報が少ないのは、虫屋が見つけても採集することでポイント絶滅が起こり、その場所での継続的な観察ができなくなってしまうからではないか……などという根拠のない想像も頭をよぎったりする。

ただ、ハリサシガメがこの先も生き続けられるかどうかについては、採集による影響よりも、環境が保全されるかどうかといった要素の方が大きく関わっているのかもしれない。
僕が見つけた雑木林のふちの石垣は古く、長年の風雨やアリの巣などによって積まれた石の間の土が大分流失して隙間だらけになっている。その環境がハリサシガメにとっては棲むのによい条件となっているのだろうが、この石垣がいつ補修されないとも限らない。あるいは雑木林ごと無くなることだって考えられないではない。希少な存在なら、生息が確認できるうちにその学術的証拠を残すべきだ……という考え方もあるだろう。一方、個体群絶滅に拍車をかける人為的行為はつつしむべきだという見方があってもおかしくない。
僕は虫屋ではなく個人の興味から観察しているだけだから採集して飼育したり標本にすることとなく、生息現場での観察にとどまっているが、虫屋だったら、どう判断するだろう……などと漠然と思ったりもしたものである。

とりあえず虫屋でない僕は学術的なデータを残さない代わりに(?)、つたない素人観察ではあるけれど、現場で知り得たハリサシガメ情報を公開しておくことにした。興味のある人の目にとまり、なにがしかの参考になることがあれば素人観察にも意味があるのではないか思っている。



珍虫ハリサシガメの観察❲総集編❳
コノハムシ〜卵から成虫まで〜脱皮羽化
ヤニサシガメぷち飼育中
ヤニサシガメのベタベタは分泌物なのか松ヤニなのか?
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珍虫ハリサシガメの観察❲総集編❳

2016年7月、雑木林のふちにある石垣で初めてハリサシガメをみつけ、こんな風変わりな昆虫がいるのかと驚いた。好奇心から調べてみると、局所的に生息するまれな種類らしく、その情報は少ない……。わからないなら自分で確かめてみようと、この場所でハリサシガメの活動を観察し続け、そのつど記事にしてきた。しかし、この場所では2019年に幼虫を2度(おそらく同じ個体)確認したのを最後に、2020年は1度も見ることができていない。そこで、とりあえずこれまでの観察をまとめて総集編を作成してしておくことにした(2016年と2017年にぷちまとめ記事を投稿しているが、今回は現時点での総まとめ)。

ハリサシガメの「ハ」──を背負った成虫

雑木林のふちにある石垣に現われた《「ハ」の字模様》の昆虫──珍虫ハリサシガメの成虫は、アリを狩って体液を吸う捕食性カメムシだった。

「ハリサシガメ」の「ハリ」は背中(小楯板)から突き出したトゲ状突起に由来してのものだろうか?

前胸の両側につきだした前胸背側角も勇ましい。

ハリサシガメは翅多型で、個体によって翅の長さに変異がある。


前胸背後葉の横に並ぶ紋模様にも個体差があって無紋のものもある。
成虫のオスとメスでは腹の形に違いが見られる。


成虫の体長は15mm前後。ハリサシガメ属は世界に100種以上いるらしいが、日本には1種のみが知られているとのこと(@『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』/全国農村教育協会)。


土粒をまといアリの死骸などで擬装する幼虫

土粒を全身にまとい、ガラクタで擬装するユニークなハリサシガメ幼虫(画面右を向いており、触角の付け根近くに眼がのぞいている)。初めてこの姿を見た時は、こんなことをするカメムシがいるのかと驚いた。手間をかけて擬装するのにはきっとそれなりの意味があるはずだ。ハリサシガメは成虫も幼虫もアリを狩る。多くの昆虫や小動物が避けたがるアリをあえてエサにしているという生態と無関係ではないだろう。詳しくは後述するが、ハリサシガメ幼虫の擬装は、(まともに闘うには)危険なアリに近づくためのものだと僕は考えている。
理由はともあれ、このユニークな習性のため、ハリサシガメ幼虫は個体ごとにデコレーション素材&レイアウトが異なり、それぞれのオリジナル・ファッション(?)が個性的に見える。








ハリサシガメ幼虫は自分が狩ったアリをデコレーションするが、それ以外の装飾コレクションは、アリの巣から廃棄されたものではないかと想像している。というのも、ハリサシガメ幼虫のデコ素材の中にはアリの繭(抜け殻)と思われる物がしばしば混じっているからだ。


ハリサシガメ幼虫の擬装の意味
僕の見たところ、ハリサシガメ幼虫の擬装は大きく2つに分けられる──《体全体を覆う(土粒の)コーティング》と《背中に盛りつける(異物の)デコレーション》である。デコレーションは更に《自力で狩ったアリの死骸》と《それ以外の拾い物》の2つに分けられる。それぞれの擬装の意味については次のように考えている。
①土粒による全身コーティング……ハリサシガメは幼虫時代からアリをエサにしているが、危険な昆虫であるアリに気づかれること無く近づくための擬装。ニオイで相手を認識するアリの触角タッチをブロックするための体表面隠し(対アリ用嗅覚的隠蔽工作)という意味合いである。また、アリ以外の捕食者にはボディラインの隠蔽擬装(視覚的隠蔽)の効果もありそうだ。
②自力で狩ったアリの死骸デコレーション……同巣のアリをニオイで確認するアリの警戒を解くためのアイテムとして利用。または偵察に来たアリの注意をハリサシガメ幼虫本体からデコったアリにそらす陽動効果もある(デコ素材に気をとられた偵察アリに不意打ちをかけてしとめる)。また、アリを背負っていることで捕食者から敬遠される効果もありそうだ。
③拾い物デコレーション……おそらくアリのゴミ捨場などで調達したもので、アリに「用済みのゴミ」と誤認させて警戒を解除させる擬装。
アリは生き物の死骸などを集める一方、食べ残しや仲間の死骸、ゴミ(繭殻など)を廃棄する。廃棄したガラクタを仲間がまた拾って来るようでは困るわけだから、不要になった廃棄物には何らかのスルー・サインが記されているのではないだろうか? であるなら、ハリサシガメ幼虫がこのスルー・サインのある廃棄物をデコっていれば、廃棄物とみなされスルーされる──そんな《隠れ蓑》的な効果があるように思われる。
ハリサシガメ幼虫のコーティング行動⬇。


土粒コーティングの隠蔽効果。土の上では存在に気づきにくい⬇。

土の上では、まとった土粒が幼虫のボディーラインを隠してしまう⬆。背負っているデコレーションがゴミのかたまりにしか見えず、昆虫食のハンターに対しては視覚的隠蔽効果がありそうだ。しかし擬装の核心はアリに対する《隠れ蓑(かくれみの)効果》だろう。
アリの行列のすぐそばで狩りをするハリサシガメ幼虫にアリは全く気づかない!?





もしアリに気づかれ、集団で反撃されたらハリサシガメ幼虫に勝ち目は無いだろう。アリに気づかれること無く近づき、不意打ちでしとめる。それを悟られること無く実行するのに擬装は大きな役割りをはたしていると思われる。
スルーのケースばかりではなく、アリがデコったアリを調べにくることもあるが、ハリサシガメ幼虫の存在には気がつかない。偵察アリはデコられた仲間に気をとられているところを不意打ちでしとめられてしまった⬇。





ハリサシガメが観察できる石垣ではヒガシニホントカゲもたくさん見られ、このどん欲な昆虫ハンターとハリサシガメ幼虫が接近したり、ときに接触することもあったが、ヒガシニホントカゲはまったく無反応だった。


ヒガシニホントカゲにはハリサシガメ幼虫が「獲物(昆虫)と認識されない(気づかない)」のか「食えないものと認識されている」のか……?
あるいは「アリを<食えない>」と忌避する本能があって、そのアリをまとっていることで、食えないものとして認識され、獲物から除外されているのかもしれない。

ハリサシガメの狩りとレガース
幼虫の重要な擬装アイテム(デコ素材)にもなるアリをハリサシガメは、どのように狩って、幼虫はどうやって背中に盛りつけるのか──。
ハリサシガメはターゲットが間合いに入ると素早くアリに襲いかかり、前脚と中脚の4本の脚を使って押さえ込み、鋭い口吻を突き立てる。するとアリはすぐに動けなくなってしまう。アリを押さえ込むときに使われる前脚と中脚の脛節(けいせつ:ヒトでいえば膝から足首にかけての部分)の内側にはレガース(すね当て)のようなものがついているのに気がついた。これはアリを抑えるさいに接触面積を増やしてグリップ力を高める《獲物の保定器官》──滑り止めのような効果を持っているのではないかと僕は見ている。アリをしとめる口吻の一撃を、素早く適切な部位に打ち込むには、しっかり獲物をおさえておく必要があるはずだ。
ハリサシガメ幼虫のレガース⬇。

羽化殻(終齢幼虫の抜け殻)のレガース⬇。


ハリサシガメ成虫のレガース⬇。


中脚と後脚のクローズアップは別成虫♂の死骸を撮ったもの。
同様の器官はアカシマサシガメでも確認している。
レガース付きの前脚と中脚は、アリを襲撃するときと、口吻を刺し直すときにアリをコントローするのに使われている。
捕えた獲物を石垣の隙間に運んで体液を吸うハリサシガメ成虫⬇。










捕えたアリの体液を吸うハリサシガメ幼虫⬇。




ハリサシガメの狩りとデコレーション
こうして狩ったアリの吸汁後の死骸をハリサシガメ幼虫は背中にデコレーションする。捕食には前脚と中脚(4本)が使われるが、背中に盛り着けるときに使われるのは(僕の観察では)決まって後脚である。
ちなみに昆虫学者で生態学の権威・岩田久二雄氏の著書『昆虫を見つめて五十年(II)』(朝日新聞社/1978年)にはハリサシガメの記載がある(ハリサシガメに出会ったのは1度きりで、初めて見た幼虫に驚き、持ち帰って飼育観察したことが記されている)。これによると、「捕食のさいに使われるのは《二本の前肢》」で、「(死骸を)背中に押し上げるのに使われたのも《前肢》」という観察が記されているが、これは間違いだと思う。
ハリサシガメ幼虫が狩ったアリをデコレーションするようす⬇。




体液を吸い終えたアリは腹の下をくぐって後脚にわたされ、背中に盛りつけられる。背中にデコるときに後脚を使うようすを尻の側(右斜め後方)から撮った画像↓。





背中のデコレーションに新素材(アリの死骸)を押し込んだあとも、後脚を使って荷を整えるような動作を繰り返す。
別の個体の食事〜デコレーション行動⬇。

捕らえたアリの体液を吸い終えると、アリの死骸は股をくぐって後脚に渡され、両後脚で腹端側から背中に押し込まれる↓。

可動範囲が広い後脚(青矢印)でアリをぐいぐい押し込もうとする……。


脱皮でデコ素材だけを引き継ぎ(後述)、まだ土粒コーティングが不完全な状態でアリを捕食していた幼虫⬇。

石垣の上で食事中のハリサシガメ幼虫。前脚と中脚でアリをおさえ口吻を刺して体液を吸っている。おそらく脱皮してあまり経っていない個体なのだろう──まだ新たな土粒コーティングがほどこされていない。背中には脱皮のさいに引き継いだデコレーションを羽織っているものの、側面は隠れておらず、幼虫の腹部(若い幼虫では腹が白い)がむき出しになっている。

体液を吸い終えたアリの死骸は、移行素材と腹部背面の隙間に押し込まれた。

新たに加えられるデコ素材は、後脚を使って腹の背面と既存デコ素材の間に押し込まれる。このくり返しで、脚が届かない高さまでコレクションが積み上げられることになる。

デコ・コレクションは脱皮のさいどうするのか?
ここで、ハリサシガメ幼虫の擬装解除した姿を紹介しておこう。
脱皮前と思われる幼虫の死骸をみつけたので異物を取り除いてみたものが⬇。

岩田久二雄・著『昆虫を見つめて五十年(II)』(朝日新聞社/1978年)には、《デコ素材の付着は「糊着」ではなく「ひっかかっているだけ」》という趣旨のことが記されているが、土粒を含め剥がした素材同士が「糊着」しており、「糊のようなもの(分泌物や排泄物?)で貼り付けられていた」ことがわかった。


腹部背面には極細の毛束が生えている。擬装素材を貼りつけるときに接着面積を広げて安定させるのに役立っているのかもしれない。
アリに対しての《隠れ蓑》ともいえる擬装を解除した素のハリサシガメ幼虫は、こんな姿をしているわけだが……この丸裸な状態でアリを狩るのは危険だろう。
ならば、脱皮をしたばかりの丸裸の幼虫は、狩りができないことになりはしないか?──そんな疑問が浮上した。
脱皮した新幼虫は狩りの前に新たな《隠れ蓑》を調達するのだろうか?
また、幼虫が脱皮や羽化(カメムシの仲間は不完全変態で、蛹を経ずに幼虫から成虫が羽化する)をするさいには、背中に貼り付けたデコ素材がジャマになりはしないだろうか?──という疑問もわいてくる……。
そのあたりの謎を説くカギの1つとなったのが、石垣の上に残されていたハリサシガメの脱皮殻だった。

なんと、背中に盛られていたはずのデコ素材が、ごっそり剥ぎ取られている。おそらく、脱皮した新幼虫が消えたデコ素材を引き継いでいったのだろう。この脱皮殻を見つけたときは、脱皮のさいにジャマになるデコ素材を外してから脱皮が行われ、脱皮を完了した後に新幼虫がこれを再利用するのではないかと考えた。
しかし、その後、脱皮のシーンを観察する機会があって、驚愕の〝技〟を目にすることとなる──。

石垣の隙間でみつけた脱皮直前の幼虫⬆。画像は90度回転させたもので、実際は鉛直面に頭を下にとまっている(画面左が下側)。これが、この後……⬇。

なんと、脱皮をしながら古い殻のデコ素材をひきつぐという信じられないような芸当を披露した。約30分後⬇。

脱皮する新しい体とデコ素材の間には古い殻があって隔てられていたはずなのに、デコ素材を引き継ばながら古い殻だけを脱いでいくというのは予想もできなかった。まるで、ズボンを脱ぐことなくズボン下だけを脱ぎ捨てるようなもの!?──これには大いに驚かされた。
この個体は無事に抜け殻を離脱したが、ときには引き継いだデコ素材にくっついて脱皮殻を背負ってしまうことも起きるようだ。

新幼虫が引き継いだデコ素材にくっついてきてしまった脱皮殻は、腹端側から巻き上げられるような形で逆立ち姿勢になりがち。
脱皮殻を嫌って分離した幼虫⬇。



脱皮殻を引き剥がすときにも(デコる時同様)後脚が使われる。


ハリサシガメ幼虫がアリとの接触で(ニオイで)バレないように体表面を土粒でおおい隠しているのだとすれば、自身の(ニオイのついた)抜け殻を擬装コレクションから外したがるのは理にかなった行動だといえる。

成虫は擬装しないので羽化殻にはデコ素材が残されている。石垣の上でみつけた羽化殻⬇。


頭部の土粒コーティングが浮き上がっているが《土粒同士がくっついたまま形をを保っている》のがわかる。擬装素材は岩田氏が記したように「ひっかかって、もつれあって巧くとまっている」のではなく、糊のようなもの(分泌物?)で糊着したものであることがわかる。
ところで……ハリサシガメは幼虫・成虫ともにアリをエサとしているわけだが、幼虫時代の秘技(擬装)を成虫になって棄てるのは、なぜだろう?
非力な幼虫時代にはアリのテリトリーで活動するには擬装は必要なアイテムだったのだろう。成虫になれば体格的にも機敏さもアリに対応できるようになること、そして何より成虫には繁殖活動という大きな役目が課せられている──すみやかに相手をみつけ交尾を成功させるための効率性などから擬装解除が成立しているのではないかと僕は想像している。

──というのが、これまでに僕が観察したハリサシガメについての総集編。いろいろ面白いこともわかったが、わからないこともまだまだ多い。
今回使用した画像は過去に投稿した記事に添付したものから抜粋した。少ない画像で的確に伝えたい部分を表現できれば良いのだが、被写体が動いたり隠れたりするので不明瞭な画像での冗漫な画像構成となってしまった感は否めない……。
最後に雑感も交えて総括するつもりでいたが、思いのほか長くなってしまったので割愛。とりあえず、今回はこんなところで──。


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ハリサシガメ羽化殻のレガース
パリコレならぬハリコレ〜ハリサシガメ幼虫:擬装の意味
ハ裏!?針!貼り?サシガメ
ハリサシガメ:前胸背の模様など
アリを襲うハリサシガメ/アリに襲われるハリサシガメ
翅多型のハリサシガメと前胸背紋
ハリサシガメ@『アリの巣の生きもの図鑑』他
ムシヅカサシガメとハリサシガメ
ハリサシガメ観察雑感
ハリサシガメ記事一覧

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