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昆虫などの記事 (1/118)

今季初フユシャク確認

今シーズン初のフユシャク(冬尺蛾)を確認
雪をかぶった富士山が見える狭山丘陵では、さほど落葉は進んでいない。葉をすっかり落とした木もあるが、まだ緑色の葉をつけたコナラやカエデもある。そんな中、今シーズンも初フユシャクを確認。今シーズン初のフユシャクはクロスジフユエダシャクだった。
今回の画像はないが……こんな蛾だということで昨年の画像から⬇。

01黒筋冬枝尺ペアA
02黒筋冬枝尺ベアB

今シーズン初のクロスジフユエダシャク:オス&メス&婚礼ダンス
昨日(11/29)、雑木林の縁で低く飛ぶクロスジフユエダシャクのオスを確認──これが今シーズン初のフユシャク(冬尺蛾)だった。とまりそうでとまらずに飛び続けるクロスジフユエダシャク♂──メスを探しているが見つからないときの飛び方だ。
おそらくオスはメスより早めに羽化しているのではないかと思うのだが、メスがいなければ飛ぶのを止めて待機状態に入る──まだ、とまっているオスが多いので(枯葉にまぎれて見つけにくいために)目にとまる個体が少ないのだろう。この日目にしたオスはこの1匹だけだった。
メスが現われれば飛翔するオスが目につくようになるはず──そう思って今日(11/30)、前日オスを確認した場所に行ってみると、10匹前後のオスが飛んでいた。そのうち数匹は比較的狭い範囲に集中しており、婚礼ダンス(はばたき歩行)をしているものもいる。メスが近くにいる──そう思って近づくと、低い植込みの枝にとまっているクロスジフユエダシャクのメスが目に入った。今シーズン初のフユシャク♀である。ふつうは落葉の葉の裏に隠れてオスを(フェロモンで)呼び寄せるのだが、まだ落葉が少ないせいもあってか、このメスはヒト(僕)の目にとまりやすい枝にとまっていた──そのおかげで、僕は婚礼ダンスでニオイをたぐって♀を探り当てるクロスジフユエダシャクのオスたちより早くメスを見つけることができた。ほどなく婚礼ダンスするオスの1匹がメスに到達し交尾が成立。今シーズン初の婚礼ダンス&ペアとなった。

この時期になると、期間限定のクロスジフユエダシャクの婚礼ダンスによるペアリングは見ておかないと……という気になるが、婚礼ダンスはいつでも簡単に見られるものでもない。オスは飛べども婚礼ダンスがなかなか始まらない……ということも少なくない。一方、たまたま通りかかった時に婚礼ダンスが始まることもある──昆虫観察は運任せのようなところがある。
それが、今シーズンは初フユシャク♀を確認したとたん、ほぼ待機時間0でに初婚礼ダンスによるペア成立を観察できたというラッキーな出だしとなった。夏休みの宿題が初日に片付いてしまったみたいな感じ?


まるで別種なフユシャクの♂と♀〜冬尺蛾記事一覧

フユシャクの婚礼ダンス
クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか
意外な翅の役割り!?クロスジフユエダシャク
昆虫など〜メニュー〜
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エサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし&亀虫臭

エサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし
先日、擬木で羽化中のエサキモンキツノカメムシを見つけた。羽化後の《抜け殻落とし》(羽化殻落とし)が観察できるチャンスと思い、(おどかさないように)3〜4mほど離れたところから、しばしウォッチング。そのもようを記しておく。カメラはなかったので今回の画像は無いが、エサキモンキツノカメムシがどんな昆虫で、どのような形で羽化をするのか──イメージが描けるように、過去の画像をあげておく。
01江崎紋黄角亀虫成虫A
02江崎紋黄角亀虫羽化14

羽化殻落とし(羽化後の抜け殻落とし)とカメムシ臭
今回(2019年11月15日@東京)観察した羽化殻落とし(羽化後の抜け殻落とし)行動は以下の通り。

【10:46】遊歩道の擬木で羽化中のエサキモンキツノカメムシを見つける。新成虫の体はほとんど露出し、腹端が抜け殻の中に残りぶら下がっている状態。見つけたときは脚はまだ見えず(抜けきっていないようだった)。

【11:05】新成虫は腹端で抜け殻にぶら下がり脚も6本とも抜けて擬木につかまる(上記羽化画像と同じ状態)。

【11:08】腹端を外し完全に抜け殻から離脱。頭部を上に向ける(まだ羽化殻とは向き合っていない)。

【11:20】新成虫が羽化殻の真下で羽化殻と向き合う(抜け殻落としは頭突きするように行われる)。

【11:28】新成虫は下から頭で羽化殻を押し始める(抜け殻落とし行動)。しかし、すぐわきを自転車が通りぬけ、動きを止める。

【11:30】新成虫が羽化殻(抜け殻)落とし行動を再開。羽化殻は落ちかけるも……すぐ下にひっかかって宙吊り状態となる(羽化殻は上向きになる)。

03羽化殻落とし図解E1
擬木にはクモのしおり糸や蛾の幼虫が徘徊して残した糸が残っており、意外に抜け殻がひっかかりやすい。

【11:31】3〜4m離れて観察していたのだが、突然、カメムシ臭を感じる。以前、エサキモンキツノカメムシやモンキツノカメムシに触れた時に発せられたニオイと同じ。近づいて確認してみると、やはり観察中の新成虫のものだった。カメムシの抜け殻落とし(脱皮殻落とし&羽化殻落とし)はこれまで何度か見てきたが、観察中にカメムシ臭を感じたのは初めてだった。

その後、1時間の間に何度か新成虫は抜け殻の横で向きを変えるが、動き始めると人や自転車の往来があって停止ということを繰り返す。

【12:31】新成虫が動きだし、2度目の羽化殻落とし行動。しかし羽化殻は数cmほど落ちたところでまたひっかかってしまう(羽化殻は下向きになる)。新成虫は落としたと認識したのか(?)上の方を向く。

04羽化殻落とし図解E2
【12:32】新成虫が真上を向く。
【12:37】羽化殻の方を向く(引っかかっていることとに気づいたか?)。
【12:38】新成虫は斜め上を向く。

【12:43】新成虫が羽化殻を向いて横向きになる。3度目の羽化殻落とし行動にでるかと思いきや、羽化殻から離れて擬木支柱を登っていく。なかなか落ちない羽化殻に負けて(?)自分が移動したのか?

【12:46】擬木支柱を登る。
【12:47】擬木支柱の上まで登りつめると──、
【12:48】支柱を下り始める。羽化殻から離れようと上へ移動を始めたが、それ以上進めないので、より遠くへ移動できる方向を模索?

【12:50】羽化殻の横を降りて下の横棒(平桁)を進む。
【12:53】羽化殻から160cmほど離れた場所で上を向いて静止。

05新成虫移動図解E3

──ということで、今回の観察では、羽化後のエサキモンキツノカメムシ新成虫は2度、羽化殻落とし行動を見せ、そのつと羽化殻は落ちかけるが、クモもしくはガの幼虫が残したと思われる糸にひっかかって宙吊りでとまってしまう。すると落ちない羽化殻を嫌ってか、新成虫は自分が移動して羽化殻から160cmほど離れた場所で静止(翌日おなじ場所にいた/体色はほとんと整っていた)。
羽化殻が落ちていれば、新成虫は移動せずにその場にとどまって体色が整うのを待ったのではないかと思う。
今回、興味深かったのは、1度目の羽化殻落としに失敗し、新成虫と羽化殻が並んでしまったときに、カメムシ臭が発せられたことだ。3〜4m離れたところにいた僕にもハッキリわかる強さ(濃度)だった。過去にエサキモンキツノカメムシやモンキツノカメムシに触れた時、何度か嗅いだニオイだが、敵に襲われるなど《身の危険を感じたとき》と同様の反応であったとすると、新成虫は、少し前まで自分の体だった羽化殻を《敵》もしくは《身の危険》と認識するのだろうか? そのために《攻撃(羽化殻落とし)》をしかけて追い出そうとしたり、それができないと自らが《逃亡》をはかる──という行動にでたのだろうか?
(一部の?)カメムシが抜け殻落としをするようになった原因行動(?)と何か関係があるのかもしれない……。



カメムシの奇行!?抜け殻落としプチまとめ ※抜け殻落とし&その意味

ハートフルな亀虫エサキモンキツノカメムシ
ハート亀虫羽化 見守るキリスト!? ※初めての抜け殻落とし
笑顔とハート(愛)のエサキモンキツノカメムシ
ツノカメムシの異種ペア
モンキツノカメムシとエサキモンキツノカメムシ他
エサキモンキツノカメムシの抜け殻落とし他 ※羽化殻落とし
ハート紋のモンキツノカメムシ&… ※紋型では見分けられない
ハートカメムシとブロークンハート亀虫!? ※ハート紋も色々
昆虫など〜メニュー〜
《チャンネルF+》〜抜粋メニュー〜

まるで別種なフユシャクの♂と♀〜冬尺蛾記事一覧

まるで別種!? フユシャクのオスとメス
先日読んだ『不思議だらけ カブトムシ図鑑』(小島渉・著/彩図社)には《カブトムシほどオスとメスの区別が容易な昆虫は他にいないだろう(P.74)》という一節がある。しかし「オスとメスの違いっぷり(性的二型)」ということでいえば、フユシャク(冬尺蛾)は、カブトムシの上をいっている。カブトムシはオスの特徴であるツノをのぞけば、オスとメスは体つきも色合いも似ていて「同じ種類」もしくは「同じ仲間」っぽさを感じさせる。ところがフユシャクでは、オスは何の変哲もない普通のガなのだが……メスが変わっていて同じ種類どころかガにさえ見えないものも多い。カブトムシはオスのツノが発達しているが、フユシャクではメスの翅が退化している。そのため容姿がオスとメスでは、かけ離れたものになっているのだ。体色や模様がオスとメスで違う種類もいる。
今年もそろそろフユシャク(の成虫)が現れる時期。これまで狭山丘陵周辺で撮ったフユシャク画像から、オスとメスの「違いっぷり」をまとめてみた。

01黒筋冬枝尺♂♀F
02茶翅冬枝尺♂♀F
03一文字冬波尺♂♀F
04黒帯冬波尺♂♀F
05広翅冬枝尺♂♀F
06白斑冬枝尺♂♀F
07霜降棘枝尺♂♀F
08白棘枝尺♂♀F
09漣冬波尺♂♀F
10途切冬枝尺♂♀F
11縁黒棘枝尺♂♀F
12薄翅冬尺♂♀F
13黒点冬尺♂♀F
フユシャク(冬尺蛾)というのは、年に1度、冬に成虫が出現し、メスの翅が退化した特徴を持つシャクガ科の蛾の総称。フユシャク亜科・エダシャク亜科・ナミシャク亜科にまたがっている。オスかメスかは一見して容易に判断できるのに種類は識別するのが難しいものも少なからず──種の違いよりも雌雄の違いの方が、はるかにかけ離れているのがおもしろい。カブトムシは「ツノが進化した(特徴を持った)オス」に関心が向きがちだが、フユシャクでは「翅が退化した(特徴を持った)メス」の方にに関心が向いてしまう……。
オスとメスの違いっぷり(メスの容姿のユニークさ)もさることながら、僕が初めてこの虫を知ったときに驚いたのは、《昆虫なのに(わざわざ)冬に活動(繁殖)する》という生態や《ガなのにメスは(翅が退化しているため)飛ぶことができない》という意外性だった。


フユシャクの風変わりな生態
オスとのかけ離れた容姿を生み出している《メスは翅が退化して飛ぶことができない》ことと、《昆虫なのに冬に繁殖活動する》という二大ユニークな生態は、きっと無関係ではないだろう。昆虫は外温性(変温)動物なのだから、本来なら気温の低い冬は活動に向かないはずだ。実際、多くの昆虫は活動を休止した状態で冬越しをしている。それなのにどうしてわざわざそんな時期に活動するのだろう? おそらく、捕食者である他の外温性(変温)動物(昆虫・爬虫類・両生類)が活動していない「天敵不在の時期」だからだろう──当初はそんな生存戦略なのだろうという解釈で納得していた。そう考えると、天敵がいなければ「飛んで逃げる」必要も無い。メスは翅や飛ぶための筋肉にあてていた資源を卵の生産に回すことができる。繁殖のためにオスとメスの出会いは必要だが、オスに飛翔能力を残しておけばメス探しはできるから何とかなる。寒い冬に卵を抱えた身重のメスが飛ぶより、身軽なオスが飛ぶ方が容易いだろうから、繁殖相手をさがす役割り(飛翔担当)はオス──というのは納得できる。メスは飛翔能力を放棄し卵の生産性を上げることに専念し、繁殖相手を探して飛ぶのはオスにまかせるという役割り分担をしてことで、オスとメスの違いっぷり(性的二型)が顕著化したのだろう……フユシャクを知った当初は、そんなふうに想像していた。

冬でも存在する天敵
しかし、フユシャクを見ているうちに《天敵がいない冬に活動する》という解釈に疑問がわいてきた。フユシャクの多くは夜行性だが、もし天敵がいないのであれば、気温が高い日中に活動する種類がもっと多くても良さそうなものだ。また、オスとメスで翅の有無による体型の違いがあるのはわかるが……体色や模様に違いがあるのことの意味は何だろう?
オスは翅が落葉にとけこむ「隠蔽擬態」仕様に見える種類も多い。翅が退化したメスにはボディラインをかく乱するような模様(オスにはない)があったり、とまっている幹や樹皮上の地位類に溶け込むような色(オスとは違う)のものもいる……これは天敵の目をあざむくための進化なのではないか──つまり冬にも天敵が存在することをあらわしているのではないかと思うようになった。
実際、フユシャクの成虫がアリに襲撃されたりクモに食われたりしているのを見たこともある。冬とはいえ、捕食者が全くいなくなるわけではなく、天敵は存在しているようだ。

14黒筋冬枝尺蟻襲撃
15冬尺亜科♀クモ捕食
フユシャクの卵塊を物色する寄生蜂らしき虫を見たこともある。フユシャクの中には産卵した卵塊に腹端の毛を塗りつけてコーティングする種類もいるが、これは防霜(?)効果や物理的な保護などのほかに寄生蜂対策や(鳥などに対する)隠蔽効果としての役割りもはたしているのではないかと思えてくる。
また、フユシャクの中では小数派の昼行性であるクロスジフユエダシャクは、メスが落葉の下などに隠れていてオスをフェロモンで呼び込む。天敵がいなければ目立つところに出ていた方がオスに見つけてもらいやすそうなものたが(その方が繁殖に有利)……わざわざ隠れているのは、天敵がいるからではないか? 鳥類は冬場でも活動しているが、彼らにとってみればフユシャクはこの時期の数少ない食料源のひとつなのかもしれない。鳥による捕食圧があるために昼行性のクロスジフユエダシャクはメスが葉の下に隠れ、フユシャクも昼行性の種類が少ないのではないか……と考えるようになった。

昼行性のクロスジフユエダシャクはメスが落葉の下などに隠れているのに対し、オスはメスを探して落葉が積もった雑木林の林床を舞い飛ぶ。そのためオスばかりが目立つが、オスは落葉の上に降りると周囲に溶け込んで隠蔽能力が高い。これも鳥に狙われる機会が多いことで隠蔽擬態の精度を高めてきたのではなかろうか。とはいっても日中舞い飛ぶオスの方が被捕食リスクは高そうだ。しかし、それも理にかなった役割り分担なのだろう。種の存続にはメスの産む卵の数が多い方が良いわけだろうが、メスが捕食されれば、そのぶん卵の数は減ってしまう。オスならば少々食われても、他のオスがカバーすれば卵の生産量を確保できる。
クロスジフユエダシャクの繁殖行動(オスの婚礼ダンスによるメスの確保)を観察していると、落ち葉の下隠れたメスが発したフェロモンに反応し、あっという間にオスたちが集まってくる。この様子を見ているとオスが多少、捕食間引きされても繁殖にはさして影響がなさそうな気もする。

16黒筋冬枝尺♂4舞
17黒筋冬枝尺PRB2
メスでは種の存続のためにも自分の遺伝子を残すためにも卵を無事に産むことが最優先されるはずだ。オスが自分の遺伝子を多く残すためには多くのメスと交尾をする必要があるので、リスクをおってでもメス探しの役割りを担うというのは理にかなっているように思われる。
フユシャクをみていると、いろいろなことを想像する。


フユシャク(冬尺蛾)記事一覧
冬の間(晩秋〜初春)にかけて(成虫が)見られるフユシャクだが、種類によって発生時期にはズレがあって、それぞれの旬の時期は短かったりする。見られるうちに見ておかねばとそのつど記事にしてきたが、記事の数が増えて、何をどこに書いたか自分でもよくわからなくなってきている。
ということで、とりあえずフユシャク関連記事のタイトル一覧を作ってみることにした。


フユシャク:翅が退化した♀/翅でニオイを嗅ぐ♂
空目フユシャク
なんちゃってフユシャク?
ゼフィルス的フユシャク!?
ヒメシロモンドクガの冬尺化!?
フユシャクの婚礼ダンス
フユシャク探し
フユシャクの口
ユキヒョウ的フユシャク
フユシャク♀34匹/日
フユシャクの交尾・産卵・卵
雪豹フユシャクふたたび+産卵&卵
シロトゲエダシャク
トギレフユエダシャク&なんちゃってフユシャク:メスコバネマルハキバガ
この冬みられた冬尺蛾
どんより曇りはフユシャク日和
12月下旬のフユシャクなど
2013年末のフユシャク
フユシャクの産卵とその後
フユシャクの産卵 before & after
フユシャクの卵塊:1年経ってとけた謎
フユシャクの産卵:列状卵塊ほか
フユシャクの天敵!?
冬尺蛾とオオムラサキ若齢幼虫!?
クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか
フユシャクも出てきた11月下旬
婚礼ダンスでフユシャク・ペア探し
ウバタマムシとフユシャク♀2種
12月前半までの昆虫
冬の蛾と冬のカミキリ
スクラッチならぬサクラッチでフユシャク♀を当てよう!?
フユシャクとマエムキダマシ
水色のフユシャク・イチモジフユナミシャク♀
桜ッチは不作〜謎のフユシャク!?
謎のフユシャク♀?Part2
セーブル冬尺!?
シロフフユエダシャクとクロテンフユシャク
雪と冬尺蛾/シロフフユエダシャク♀理想の翅型!?
2月のカミキリ〜ヒロバフユエダシャク♀
フユシャクと冬のハンター
ヒロバフユエダシャク・シロトゲエダシャク他
振袖フユシャク?〜可変翼蛾
晩冬の冬尺蛾トギレフユエダシャク
冬尺蛾シロトゲエダシャク〜非冬尺オカモトトゲエダシャク&偽冬尺?
初フユシャク2015他
フユシャク婚礼ダンスで♀探し
クロスジフユエダシャクの♂♀比
フユシャク3種:退化した翅
あわいブルーの冬尺蛾
2015年末のフユシャク
元日の昆虫2016
一部黒化?イチモジフユナミシャク♀他
フユシャクのペア他
雪と冬尺蛾
クロテンフユシャクのペア他
シロフフユエダシャク・ペア他
2月のウバタマムシ&冬尺蛾
ヒロバフユエダシャクとシロフフユエダシャク
振袖チックなヒロバフユエダシャク♀他
振袖フユシャク【卒】を探せ〜トギレフユエダシャク♀
腹黒いヒロバフユエダシャク
プレフユシャク〜初フユシャク
意外な翅の役割り!?クロスジフユエダシャク
冬尺蛾と極小カミキリ他
婚礼ダンスでペア成立
フユシャク3種〜12月中旬の昆虫
チャバネフユエダシャクのペア
空色の羽の妖精!?
桜でイチモジフユナミシャク
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正月のフユシャク2017
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クロオビフユナミシャク♀@桜ほか
シロフフユエダシャクも出てきた
フユシャクがとまりがちな所
民話風フユシャクなぜ話
蛹の時は大きい!?フユシャク♀の翅
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曇天のヒロバフユエダシャク♀
シモフリトゲエダシャク♀の毛皮感!?
シロトゲエダシャクなど
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ヒロバフユエダシャクのペア/♀の前翅はどっち?
ヒロバフユエダシャク♀の前翅・後翅を確認
3月中旬のフユシャク&トカゲ
なんちゃって冬尺蛾メスコバネマルハキバガ
クロスジフユエダシャク:冬尺蛾の不思議
婚礼ダンスでペア成立:クロスジフユエダシャク
クロオビフユナミシャク♂♀卵他
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クロオビフユナミシャクとチャバネフユエダシャク
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イチモジフユナミシャク♀は地衣類擬態!?
年末のフユシャク♀2017
フユシャクの産卵&コーティング
フユシャクの卵塊
シモフリトゲエダシャク・シロフフユエダシャク
シモフリトゲエダシャクのペア他
ヒロバフユエダシャクのツーショット
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シロフフユエダシャクのペア〜産卵前後
シモフリトゲエダシャク♀@桜
フユがつかない冬尺蛾
シモフリトゲエダシャクペア&ヒロバフユエダシャク
てんしのヒロバ他
片牙ゾウムシ&シロトゲエダシャク
フチグロトゲエダシャクの産卵他
冬の蝶!?クロスジフユエダシャク
クロスジフユエダシャクのペア集
クロスジフユエダシャク:婚礼ダンスに異変!?
翅の大きさが違う冬尺蛾3種
クロオビフユナミシャク♀色々
フユシャク♀5種
クロオビフユナミシャク♀きらめく鱗粉
クロバネフユシャクのペア他
ギボッチ&桜っちで冬尺蛾
イチモジフユナミシャク♀色々
サザナミフユナミシャクの愛称!?他
イチモジフユナミシャク美麗♀
水色の翅の天使!?イチモジフユナミシャク♀
イチモジフユナミシャク・ペア〜特大♀
昼間のオスは?イチモジフユナミシャク
イチモジフユナミシャクのキューティクル
冬尺蛾の他人の関係
フチグロトゲエダシャクを見た…
今季初フユシャク確認 ※2019NOV
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《カブトムシの角は矛盾だった》のか?

01カブトムシ♂角長
02カブトムシ♂角短
僕は虫屋ではないが、子どもの頃にはふつうに虫捕りをして遊んだ。中でもカブトムシは──特にツノがあるオスがお気に入りだった(*)。大きくて・かっこよくて・強い──昆虫の王者。ツノは王冠のようでもあり伝家の宝刀でもある。カブトムシの特徴にして最大の魅力と言えば、このユニークなツノだろう。このツノに関して、以前、【カブトムシの角は矛盾だった】というニュースが話題になったことがあった。

カブトムシの雄の角は、雄同士の闘争では長い方がよく、天敵から食われるのを避けるには短い方がよい、という深刻なジレンマを抱え込んでいることを、東京大学総合文化研究科の小島渉(こじま わたる)学振特別研究員らが見つけた。

──というものだ。カブトムシのオスがツノを使って闘うことは子どもでも知っている。樹液がにじむ幹上で場所とり合戦をくりひろげ、ツノで相手をぶん投げるカブトムシ♂の勇姿は虫とりをした少年なら目にしたことがあるだろう。しかし、この必勝アイテム──ツノの長さが天敵に対して不利に働くといったことがあるのだろうか? 問題の記事は上の文のあとに、こう続く──。

東京大学大学院農学生命科学研究科の石川幸男(いしかわ ゆきお)教授と、神戸大学大学院農学研究科の杉浦真治(すぎうら しんじ)准教授、森林総合研究所の槙原寛(まきはら ひろし)さん、高梨琢磨(たかなし たくま)主任研究員との共同研究で、日本動物学会英文誌3月号に発表した。

複数の専門家がアカデミックなメディアに発表した研究らしい……ならば信憑性は高いはずだ(後に知ったが、この研究は、Zoological Science Award 2015 を受賞している)。記事ではこの研究を次のようにまとめている。

長い角をもつ雄は、雌やえさの獲得などの雄同士の闘争で力の強さをあらわす目印として知られている。その一方で、天敵に対して目立ちすぎるため、食べられやすくなって不利になる。角の長さを追求すれば、天敵に食べられやすいという矛盾があったといえる。

カブトムシの天敵として挙げられていたのはハシブトガラスとタヌキで、これは納得できる。日中、樹液ポイントの近くで腹の無い(食われた)カブトムシやクワガタがもがいている姿はちょくちょく目にするし、そばにはカラスがいて獲物をくわえていることもある。狭山丘陵ではタヌキの姿もみかけるので、きっとタヌキのエサにもなっているのだろうと僕も考えていた。
03カラス&タヌキ
記事によれば、カブトムシの最大の天敵はタヌキで、カブトムシが活発に活動する深夜の時間帯にカブトムシが集まる樹液ポイントをおとずれ、カブトムシを捕食していたという。タヌキが食うのもやはり腹で、食い残された残骸を調べたところ、メスよりもオスが、ツノの短いオスよりも長いオスが選択的に食べられていることがわかったというのだ。どうして選択的なのかといえば──トラップ(バナナの発酵液で誘引)を使って採集したカブトムシの性比やオスのツノの長さ(これが捕食される前の標準比率・標準値だと考えたようだ)に比べて、捕食されたカブトムシではオスの割合が多く、ツノの長いオスが多かったから──という理屈だ。ツノが長い方が目立ち天敵に見つかりやすくなるために結果として選択的に食われやすくなるという【解釈】で解説をしている。トラップで捕獲したグループのオスのツノの長さの平均値と捕食されたオスのツノの長さの平均値を具体的に記したデータもこの記事には載っている。
04甲虫角論図から
どうして、そんな【解釈】になるのか──カブトムシの活動が盛んな深夜にタヌキが食ったカブトムシに「ツノが長い個体が多かった」というのは、あたりまえのことだろうに……この記事を読んだとき僕はそう感じた。
カブトムシは夜行性だ。活発に活動する時間帯には限られた樹液スポットにカブトムシが集中する。強い個体が餌場を占拠し弱い個体を排除する。体が小さい(角が短い)オスやメスも、大きく強いオスが過密になる時間帯ははじきだされがちだ。その結果、樹液ポイントには大きく力が強いオスが残る。体の大きなオスはツノも長くて立派な傾向がある。タヌキが選択的にツノの長い個体を見つけて食ったというより、その時間帯に餌場を占拠している個体を食えば、当然そういう結果(体が大きく角が長い個体の占める割合が多くなる)になるのではないか……。
カブトムシを捕りに雑木林めぐりをした子どもの頃を振り返ると……同じ樹液ポイントでも、昼間はメスの割合が多く、体が小さく角の貧相なオス(夜間の活動時間帯には縄張り争いに破れてエサにありつけなかったケンカの弱い個体)がしばしば見られた。それに対し、夜中はオスの割合が増え、大きくて角も立派なオスが多かった。こうしたことは、カブトムシを捕りに行ったことがある者なら経験的に知っているのではなかろうか?

夜中にエサ探しをするタヌキにしてみても……彼らは視覚よりも嗅覚に頼っているはずだ。もともと眼がさほど良いわけではないタヌキにとって、暗がりの中でのわずか──平均3.1mmのツノの長さの差が、カブトムシの発見率に影響を及ぼすとは考えにくい。

余談だが、僕が以前飼っていたフェレット(イタチ科)は散歩中によく虫や小動物を見つけた。夏にはカブトムシもその対象だった。死角にいるカブトムシに気がついたり土に潜って見えない状態のカブトムシを掘り出すなど、視覚より嗅覚に頼ってカブトムシを見つけていた。タヌキの場合も似たようなものではないかと思う。

05FerretカブトA
06FerretカブトB
尾が短いためか仔狸と間違えられることがあったグランジ(僕が飼っていたフェレット)だが……散歩中に嗅覚でガム(路上に銀紙に包んで捨てられていた)に気づく動画を載せておく。視覚ではなく、嗅覚によって獲物(?/拾い食いは厳禁)を見つけていることがわかる。

イヌ科のタヌキも同じように嗅覚によってカブトムシを見つけていたはずだ。タヌキがカブトムシを食いにくる深夜……暗がりでの視覚情報──ツノのわずかな長さの違いなど、タヌキにとってはほとんど意味をなさないのではなかろうか。
ツノの長さなどに関係なく、タヌキは樹液ポイントに集まっているカブトムシを食べただけ。《ツノのジレンマ》など、なかったのではないか?
報道記事を読んだとき、僕はそう感じたし、そう考えるのが自然だと思ったものだが……この研究に参加した人たちは、誰もそのことに気づかなかったのだろうか?
専門的に研究をしている詳しいはずの人たちが揃いも揃って、どうして《ツノが長いと捕食リスクが増える》という解釈に飛びついたのか僕には不思議だった。

《カブトムシの魅力的なツノにはジレンマがあった》──という着眼は、確かにロジックとしては面白い。面白かったからこそ、一般のニュースにも取り上げられ、話題になったのだろう。NHKのニュースでも《ツノのジレンマ》が断定的に報じられたし、Wikipedia【カブトムシ】にも、この研究記事をもとに《角は長いほどオス同士の闘争の際に有利になる反面、タヌキやハシブトガラスといった天敵に捕食されるのを避けるには短い方が有利であることが研究で明らかになっている》と記載されている。

当時の報道記事を読む限り《ツノのジレンマ》がこの研究の核心である。それに対して僕のような疑問(角が長いから天敵に見つかりやすいわけではない)は当然予想されるものという気もするが……あるいは、一般の報道記事には触れられていない、想定疑問を払拭するデータが、オリジナル論文(?)には記されていたのだろうか?

もし《ツノのジレンマ》というキャッチの良いロジックがなければ、この研究は意味が薄れ、一般ウケするニュースネタにはならなかったろう。
狩りが視覚的に行われる日中のハシブトガラスの捕食圧についていえば、ツノの長い「大きなオス」が見つかりやすいという可能性はあるかもしれない。しかしそうだとしても、「目立ちやすさ」として天敵の指標となっているのは「ツノの長さ」というより「体の大きさ」だろう。「ツノの長さ」に結びつけようとするのは、ウケ狙いのこじつけのように感じてしまう。


《角のジレンマ》はどこへ行った!?
《ツノのジレンマ》の報道記事が出たのは2014年3月で、当時も関係記事を探しながら疑問に感じたことをブログに記しているのだが、今回、あらためてとりあげたのは、先日、同じ研究だと思われる、こんな記事を見つけたからだ。

公益社団法人日本動物学会>トピックス
強いオスは狙われる?:カブトムシにおける性およびサイズ依存的な捕食圧

内容からすると同じ研究のようだが、驚いた事に、この記事には肝心の《角のジレンマ》が出てこない!? 
捕食された残骸の比較データで示されているのも、2014年に読んだ報道記事では「角の長さ」だったものが「前胸幅」になっていた。
トラップで採集したカブトムシと捕食されたカブトムシの比較についての解説(解釈)も、以前の報道記事とはだいぶニュアンスが違っていた。《角のジレンマ》はなりをひそめ、捕食された個体にツノの長いオスが多かったのは《大きいオスが餌場を占拠するため》という可能性にも言及していた。


このことから、メスよりもオスのほうが、小さいオスよりも大きいオスのほうが食べられやすいといえます。なぜ体が大きいオスが食べられやすいのかははっきりしませんが、長い角や大きな体が捕食者に目立ちやすい可能性があります。あるいは大きいオスほど樹液に長時間留まるため、捕食を受ける機会が多いのかもしれません。大きく角の長いオスに対する高い捕食圧は性淘汰圧と拮抗的にはたらくことで、オスの性的な形質の進化に影響を及ぼす可能性があります。

以前読んだ報道記事では、捕食されたカブトムシの特徴に偏りがあることについて《長い角ほど目立つので天敵に食われやすくなるから》とされていたが、今回みつけた記事では《なぜ体が大きいオスが食べられやすいのかははっきりしませんが》と、かなりトーンダウン(?)している。《天敵に目立ちやすい》とされた《長い角》は《長い角や大きな体》と微妙な表現に変わり(?)、「サイズの差に起因した目立ちやすさが捕食圧に関係している」という解釈については「可能性」にとどめられている……これでは、いったい何か言いたいのか、研究の趣旨がよくわからない。
「ツノの長さ(もしくは体のサイズ)」が指標となって天敵による捕食圧が変わるのであれば、その天敵によって選択された「生き残るのに有利な特徴」が遺伝的に反映する可能性はあるかもしれないが……タヌキは深夜に訪れた樹液ポイントに集まったカブトムシを食べているだけで、角の長さや体の大きさによる選択をしているとは思えない。
また、カブトムシ♂の角の長さや体の大きさの決定には、遺伝的要因だけでなく栄養状態などの成育環境による影響も大きいはずだ。結果として餌場を占拠しがちな「角が長く体の大きなオス」に、より多くの捕食圧がかかりがちだったとして、だからどうなるのか……そのあたりが示されておらず、尻切れトンボというか……漠然感が否めない。

ちなみにこの研究は、《日本人にとって親しみ深いカブトムシの角の進化機構を理解する上での貴重な基盤情報》として、日本動物学会の2015年度論文賞を受賞している。当初の報道のように《角のジレンマ》を確かめた研究であれば《カブトムシの角の進化機構》云々は理解できるが、現在ネット上に公開されている日本動物学会のトピックス記事を読む限り、《角のジレンマ》は影をひそめ、核心があやふやという気がしてならない。

現在公開されている【強いオスは狙われる?:カブトムシにおける性およびサイズ依存的な捕食圧】は、《角のジレンマ》説として発表した後、このロジック部分をとり下げ、修正を加えたものなのだろうか? それとも、発表当初から内容は変わっていないのだろうか? 発表当初からこの形だったとすると、それでは、サイエンスポータル他で報じられていた《角のジレンマ》のロジックは何だったのだろう? 報道する側がウケを狙って《角のジレンマ》という脚色を加えたのだろうか? しかし、具体的な角の長さを記したデータもあるのだし、それをわざわざ捏造したとも思えない……。久しぶりにこのテーマについての記事を読んで、釈然としないものを感じている。

いずれにしても、今もWikipediaやサイエンスポータルなどで《ツノのジレンマ》は「確かめられた事実」として記されているので、このわかりやすくておもしろいロジックは定着していくのかもしれない……。



昆虫の何に魅かれるのか? ※子どもの頃にカブトムシをどう感じたか
カブトムシ《ツノのジレンマ》!?
『不思議だらけ カブトムシ図鑑』と《角のジレンマ》 ※角矛盾研究者の著書の矛盾
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アメンボを嗅いでみた:飴の匂いは本当なのか?

アメンボの語源は《雨ん坊》ではなく《飴棒》!?
前回の【アメンボの語源・由来に疑問】では、アメンボの語源を《飴》由来だとする説への疑問を記した。僕は子どもの頃からアメンボは《雨ん坊》からきた名前だとばかり思い込んでいたのだが、意外なことに語源は《雨》ではなく《飴》由来だとされている。ネット上には「アメンボ(が放つ臭腺分泌物)のニオイが飴に似ていることでこの名がついた」という内容の記事があふれており、書籍にもそうした指摘があることを確認できる。
01アメンボ起源本
しかし僕にはどうも《飴》由来説が納得できずにいる……その理由を【アメンボの語源・由来に疑問】で記したわけだが、その時点で僕はまだ問題のアメンボのニオイを嗅いだことが無かった。「《飴のようなニオイ》などしようがしまいが、それが語源だとは考えにくい」と判断したからだ。その考えに変わりはないが、いちおう多くの人が《飴》由来説の根拠(?)にあげている「飴のようなニオイ」とされるものが、いかなるものか──実際にアメンボを嗅いで確かめてみることにした。今回は、その報告を兼ねた続編記事ということになる。

まず、世間にあふれている、アメンボの「アメ」は「飴」のことだという語源・由来説について、あらためてどんなものか……目についた情報をいくつか挙げてみると──、


【アメンボの語源・由来】アメンボの「アメ」は「雨」ではなく「飴」の意味で、「ボ」は「坊」の意味、「ん」は助詞の「の」が転じたもので、「飴の坊(飴ん坊)」が語源となる。アメンボは、体の中央にある臭腺から飴のような甘い臭気を発するため、この名がつけられた。漢字でも「水黽」「水馬」のほか、「飴坊」と書かれることもある。「雨ん坊」や「雨坊」を語源とする説は、雨が降った水溜りでよく見かけるためと考えられるが、この説は民間語源である。江戸時代の江戸では「跳馬(チョウマ)」と呼び、畿内では「水澄(ミズスマシ)」と呼んでいた。(語源由来辞典)

僕が思い込んでいた《雨ん坊》由来だとする解釈は民間語源──科学的根拠のない、誤った語源解釈ということになっている。

「アメンボ」の名称は、体が飴(あめ)のような臭(にお)いがすることに由来する。(日本大百科全書<ニッポニカ>)

水あめのようなにおいがあるのでこの名がある。(百科事典マイペディア)


ヤマケイポケットガイド⑱水辺の昆虫(今森光彦/山と溪谷社/2000年)の【アメンボ】の項目には──、

アメンボの出すにおいは飴のように甘く、体つきは棒のようということから、飴棒(あめんぼ)とよばれる。(『水辺の昆虫』P.168)

──と記されている。2004年に出版された子ども向けの絵本ならぬ写真本『ドキドキいっぱい!虫のくらし写真館⑭アメンボ』(監修:高家博成<東京都多摩動物公園昆虫園>/写真:海野和男/文:大木邦彦/ポプラ社)は上の画像で紹介した通り──ヤマケイの『水辺の昆虫』を踏襲したのか、次のようなコラムがある。

アメンボは、ぼうのようなからだつきで、あめのようなにおいがするために、「あめんぼ」(あめのぼうといういみ)とよばれるのだといわれています。このにおいは、後ろあしのつけねのすこし上にあるあなからだされます。においはアメンボのしゅるいごとにちがっていて、てきからみをまもるためや、なかまをあつめるためにつかわれると、いわれています。(P.13)

アメンボを「飴(の)棒」とする文章の終わりは「──とよばれるのだといわれています」と、真偽の断定をさけた表現になっている。このコラムには《アメンボはあめのにおいがする?》と疑問符つきのリードがつけられていた。著者は名前の由来となった「飴のようなにおい」を実際に確かめることができなかったために、こんな回りくどい書き方になったのではないだろうか?

僕が目にしたアメンボの語源・由来に関する記事はどれも似たようなもので、「アメンボは飴のようなニオイがする」「そういわれている」というだけで、どうしてそれが「アメンボ」の語源・由来になるのか、納得できる説明・根拠をまだ見つけられずにいる。
アメンボが飴のようなニオイを発するとしても、また体が棒状であるからといって、それをもって《飴棒》が語源だと断定することはできない。雨上がりの水たまりにこの虫を見たことがある人や、僕のように水面に広がる波紋から雨とアメンボを関連づけて認識している人は多いはずで、そこから《雨ん坊》と呼ばれるようになった可能性は高い。一方、アメンボのニオイを嗅いだことがある人などごくわずかだろう。「ニオイが飴に似ている」という特徴から名付けられたというのはかなり無理を感じる。特徴から名前をつけるのであれば、水面という特殊な環境に暮らしているという誰もが知っているユニークな生態が優先されるのが当然で、これをさしおいてマイナーなニオイが命名に採用されたとは考えにくい。
やはりアメンボは「雨との関連」から《雨ん坊》と呼ばれるようになり、それが転じて《アメンボ》になったと考えるのが自然な解釈だろう。臭腺のニオイを飴に例えて《飴棒》とするのは、「アメンボ」の名にかけて後から考えた辻褄合わせ・語呂合わせ的な解釈だとみるのが妥当な気がする。

それとも、僕が知らない《飴》由来の確かな証拠がどこかにあるのだろうか? もし納得しうる根拠があるのであれば、《飴》由来説が拡散するときに(信頼性を担保するために)示されていてもよさそうなものだが……。
ネット上には「《飴》由来説記事」が氾濫しているが、読んでみると根拠が不明確で、「──といわれている」というような伝聞次元の説明に終始しているものが多い。《飴》由来説の核心となるアメンボのニオイを実際に確かめたことがない人がこうした情報を拡散している印象が強い。


アメンボを嗅いでみた:《飴のニオイ》は本当なのか?
──ということで、先日アメンボを捕まえて実際にニオイを嗅いでみた報告である。僕はこれまで、キバラヘリカメムシの青リンゴ臭オオトビサシガメのバナナ臭は確認したことがあるが、はたしてアメンボのニオイやいかに!?

川縁の流れがゆるやかな水面にアメンボの集団をみつけ、捕虫網で捕獲した5匹のニオイを確認してみた。
1匹目を嗅いだときは「よくわからないな……」といった印象。ニオイが全くしないわけではなく、あるといえばあるのだが……これが川のニオイなのか虫のニオイなのか判別しかねる程度のものだった。捕えたアメンボはビニール袋に入れて洗濯バサミで入口を塞いだ(密閉状態にしておいて、あとで嗅ぐため)。そして、2匹目め3匹目めと捕えてニオイを嗅いでいるうちに「臭腺のニオイというのはこれかな」と感じるものがわかってきた。確認した追加個体は同じビニール袋に入れて密閉状態にする。
網で捕獲したアメンボは、そのつど素手でつまんてニオイを嗅いだ。ネット上にはアメンボを素手で扱うと刺すことがあるという情報もあったが、今回刺されることは無かった。5匹を捕獲しそのつどニオイを確認してビニール袋に入れた後、つまんだ指先を嗅いでみると、「臭腺のニオイというのはこれかな」と感じたニオイが残っている。これを「飴のニオイ」と言うには、かなり無理があると言うのが率直な感想だ。といっても、アメンボがそう呼ばれるようになった頃の飴のニオイがどんなものかわからないので、正確には比較のしようがない。
このニオイが何に似ているかと言えば……最初に頭に浮かんだのがペットショップだった。エキゾチックアニマルを扱うペットショップに漂っていた匂いに似ている。具体的な物でいうと、(かつて飼っていたグリーイグアナに与えていた)「九官鳥用の固形飼料をお湯でふやかしたもの」に似たニオイだと感じた。もちろん、いずれも「飴」を連想させるものではない。
アメンボをつまんだ指に残されたニオイを嗅いだ後、5匹のアメンボを入れて密閉状態にしていたビニール袋の口をあけて中のニオイを嗅いでみた。やはり「九官鳥用の固形飼料をお湯でふやかしたもの」に似たニオイをわずかに感じたが、これまで嗅いだ、カメムシやオサムシ・ゴミムシのニオイに比べれば弱くてたよりない……この虫(アメンボ)の特徴として命名化するようなものとは思えなかった。「飴のようなニオイがするらしい」というハナシは何だったのか?……と首を傾げながら実験に協力した(させた)5匹のアメンボを川にかえした。

今回、5匹のアメンボでニオイをチェックしてみたが、いずれも「飴のようなニオイ」は感じられなかった。あるいはこれは時期的なものや個体のコンディションなどが関係してのことなのだろうか? 状況によっては「飴のようなニオイ」と感じることもあるのだろうか? いずれにしても「飴に似たニオイはいつでも確かめられるものではない」ということはわかった。そんな頼りない特徴が名前になったりするものだろうか?
アメンボの《飴》由来説に対する懐疑的な心証は深まった。


アメンボ《飴棒》語源説に関する2つの疑問
今回僕は【アメンボの語源・由来】に関して2つの疑問を感じている。1つは「《飴》由来説というのは本当なのだろうか?」という疑問であり、これまで述べた通りだ。2つめは「根拠が不明の《飴》由来説に対して、どうして皆は疑問を抱かないのだろう?」ということだ。検索すると《飴》由来説を踏襲した記事はわんさかヒットするのに、疑問を呈する記事や《雨》由来説はなかなか見つからない……。

しかし、よく考えてみると……僕が違和感を覚えた「アメンボの《アメ》は《雨》ではなく《飴》起源」という情報──これには、実はやはり多くの人が「え!?」と、にわかに納得できないものを感じていたのではなかろうか? ただ、その「意外性」ゆえにネタ(記事)にされ発信(投稿)されやすかった……。
つまり、「アメンボの語源が《雨ん坊》である」という記事を投稿したところで、「ふ〜ん、そうだろうね」「そうだと思った」という薄いリアクションしか期待できないが……「アメンボの語源は《雨》ではなく《飴》だった」と発信すれば、注目が集まりやすい。違和感≒意外性があったからこそ、(真偽はさておいて?)注目されやすいという判断で、《飴》由来説が投稿・拡散されやすかったのかもしれない。

ネット上の《飴》由来説を眺めると、「飴のニオイ」を実際に確かめた人は少なく、大半が孫引き情報ではないかという印象を受ける。実際にニオイを嗅いだ人は「ちょっと違うんじゃないか……」と疑問に感じ、《飴》由来説の拡散に参加しなかったのかもしれない。そうしたこともあって、問題のニオイを確かめようとしなかった人の孫引き情報の割合ばかりが増えていったのではないか?……そんな気もしないではない。

ネット上でひろった情報の信憑性を確かめるために、他にも同様の記事があるか検索することはよくある。多くの人が同じようなことを言っていれば、その意見の信頼性は高いと判断できる……そう思いがちだが、「え〜!?」と驚くような胡散臭い情報ほど(内容の真偽を置き去りにして?)その意外性から拡散しやすいという現象もありがちなのかもしれない……。食いつきの良い情報は真偽をおきざりにして拡散していく──そういった可能性もふまえて情報を評価しなければいけないとあらためて感じる。

アメンボの由来は《雨ん坊》が起源と考えるのが自然で、《飴棒》説は臭腺の知識を持つ人がアメンボの「アメ」にかけて「飴のようなニオイ」に例えることで符合させた語呂合わせの「なんちゃってウンチク話」なのではないか……今のところ僕は、そんなふうに想像している。


アメンボの語源・由来に疑問


真・青リンゴの香り/キバラヘリカメムシ
オオトビサシガメのバナナ臭
キマダラカメムシの臭腺開口部 ※悪臭を放つカメムシの1つ
メダカチビカワゴミムシの最後っ屁ほか
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