インディーズヒーローの記事 (1/3)
- 2019/01/16 : 1月16日は《ヒーローの日》
- 2012/04/23 : ヒーロー的宙返り
- 2011/07/21 : 最後の宙返り
- 2010/07/11 : 幻のインディーズヒーロー・アクション
- 2010/01/12 : ミラクル☆シリーズさくっと制作経緯
1月16日は《ヒーローの日》
きょう──1月16日は「ヒーローの日」だとか。1(ヒ)1(イ)6(ロ)→「ヒーロー」いう語呂合わせらしい。めでたい記念日ができていたので周知を兼ねて(?)、僕も昔──もう28年も前に制作&頓挫したインディーズ・ヒーローをあらためてあげておこうかと。

●ミラクル☆スター~実写版~
変身ヒーロー・怪人・撮影を1人で兼ねて撮った極小規模ビデオ作品。
●ミラクル☆キッド~実写版~
ミラクル☆スターの続編を撮り始めたものの、ケガで中断。ケガをしたミラクル☆スターに代わって小学2年生のヒーローが誕生・活躍する番外編。

●幻のインディーズヒーロー・アクション
【ミラクル☆スター】に続いて三宅裕司のえびぞり巨匠天国(TBSテレビの映像作家発掘番組)への再登場をもくろみ、番組スポンサー商品・ポカリスエットをネタに考えた《1本のポカリスエットが日本を救う続編》。撮影はケガで頓挫したがその絵コンテ。
懐かしのハカイダー宙返り
中学~高校生時代に撮影したハカイダー宙返り(と勝手に呼んでいた技)。画像がカラーではないのは……昔の白黒写真だから……。

ハカイダーは40年ほど前に放送されていた東映ヒーローTV番組『人造人間キカイダー』(1972年)にでてきた宿敵キャラ。このハカイダーがよくみせていたのが前方半屈伸宙返りだ。
通常の屈身宙返りより屈身は浅めで両手を広げるのがハカイダーの特徴。これをマネて撮ってみたもの。
左の画像は学校の砂場にて。右の画像は低いベンチで踏み切ってみたもの。

仮面ライダーやV3に学ぶ!?
ひとつ技をマスターすると、応用してみたり、工夫を加えて発展させてみたくなる。あるときテレビで仮面ライダーが前方かかえ込み宙返りから半ひねりを行うのを見て(トランポリン・カット)、この技術をとりいれてみたくなった。「動き」を脳内再生して運動の原理を分析・理解──そしてイメージトレーニングをくり返したのち試してみたところ、意外にあっさりとマスターすることができた。
ということで、さらに仮面ライダーV3が行っていた前方宙返り1回半ひねりにも挑戦。これは半ひねりに比べて難しかった。この技はルドルフ(ルディー)と呼ばれる、やはりトランポリン競技の技なのだが、半ひねりとはまた別の技術が必要になってくる。

この時点↑では、まだ1回ひねるのがやっと。
さてこの頃、体操競技では床運動(マット運動)での「前方宙返りにひねりをくわえた技」は、皆無といってよかった(僕が知る限りは)。鉄棒や平行棒、吊り輪、跳馬では降り技にひねりをともなう前方宙返りは普通にあったのだが、なぜか床運動に関してはそれが無く、ひねりといえば後方宙返り一辺倒だった。
だから体操競技界において、床運動(マット運動)の前方系の宙返りひねりは、ありそうで無かった未知の技だった……といえるかもしれない。
(1)踏切でひねり始めるもの(ひねりの角運動量アリで空中に出る)
(2)空中に出てからひねり始めるもの(ひねり角運動量ナシで空中に出る)
──ひねりのきっかけをどこで作るかによって運動の質がまったく異なってくる。
踏切りのときに腕をふりこめば、その力はしっかりけり返されるので回転(ひねり)方向への力が発生するが、宙に浮いた状態で腕をふりこもうとした場合、ふんばりがきかないから、(ふつう)力は抜けてしまう。振り込もうとする腕とは逆方向に体の軸が空回りしてしまうから回転力は生まれない。
これは逆さにつるされた猫が落とされたときに宙で体をひねって足から着地するというのと原理は同じである。
前方かかえ込み宙返り半ひねりでは、踏切り~前半は(ひねりのない)普通の前方宙返りだが、かかえ込んだ体をひらくさいに下半身で円を描くようにすると向きを変えることができる。ひねりの角運動量が増加したわけではなく、(運動によって)体の向きが変わっただけである。
妙な表現だが(ひねり方向の)回転しにくさ(慣性モーメント)を利用して体の向きを変えている──と言うことができる。
この技術ではひねりの回転力(角運動量)そのものを生み出すことはできない。あくまでも体を動かすことで体の向きを変えているだけである。

余談だが前方かかえ込み宙返りの後半にサイドキックを放つようにすると4分の1ひねりができる(前方宙返りの後半が側方宙返りになる)。これも半ひねりと原理的には同じ技術である。
前述の前方宙返り半ひねりが【ひねりの回転力を生み出さずに体の向きを変える】技術だったのに対し、ルドルフ(1回半ひねり)では、体を開ききったあとも回転(ひねり)運動が持続する──こちらは【無の状態からひねりの回転力(角運動量)を生み出す】技術なのである。
砂場でのルドルフの練習写真でも、体をのばした後もひねりが継続している。
単純イメージ化して説明すると、折り畳んだ上半身と下半身で、力が「抜けない」ように対称的に逆回転のひねりを始め、上半身・下半身の2本の逆回転軸をのばして一本の軸にすることで同じ方向のひねりにまとめる──という感じ。
前屈して(あるいは反って)体の外にずらした重心を通る面で腕の振り込みを行いながら体をはじくようにひらくイメージである。

高飛び込みでは、いきおいよくひねっていたのに宙返りの間に一瞬体をかがめることできれいにひねりの回転力を吸収・消失させてしまう技術がある。ちょうどこの逆の運動が無からひねりの回転力を生み出す技術である。
前記の写真を撮った時だったか……体育祭の日にグランドすみの砂場でルドルフの練習をしていると、たまたま来ていた某大学の体操部員の人たちがいて「前方宙返りのひねりをやっている!」と驚かれたことがあった。
そしてその少し後に行われた体操競技の学生選手権大会をテレビ観戦していたところ、その某大学の選手が床で前方宙返りにひねりを加えた技を行っていたので「おっ!」と思った。体育祭のときに来ていた体操部員かどうかはわからなかったが、もしかしたら、僕がルドルフを練習しているのを見て、床運動の演技に取り入れる事を考えたのかもしれない──そんな想像をした。
もちろん某大学の選手が真っ先に前方系の宙返りにひねりを持ち込んだのはただの偶然で、僕のルドルフ練習とは無関係かもしれない。素人の僕が仮面ライダーを見てトランポリンの技術を地上で行う宙返りに応用する事を思いついたのだから、体操選手が同じように考え実践したとしても全く不思議ではない。
ただ、僕のルドルフがヒントになった可能性も無いではないような気もしている。
いずれにしてもそれ以降、床運動でも前方宙返りにひねりをくわえた技は普通に見られるようになった。
幻のオリジナル宙返り!?
前方宙返り半ひねりやルドルフはそれまで床運動ではなかったものの、トランポリンの技術としては既にあった。そういう意味では「自分で考えた技」ではなかった。これに対し、それまで見たことも聞いたことも無い、自分で考えた技──というのも工夫し開発(というほどのものではないが)してみた事がある。
この猫宙からさらに半ひねりやルドルフを行うことを考えた。
とくに猫宙ルドルフは踏切りのあと半ひねりしたひねり運動が一度かかえこみになるときに消失し、そこから加速的に速まる──宙返りの間に空中姿勢とひねりスピードが変化するというおもしろい動きになる。
トータルで2回ひねるわけだが、通常行われる2回ひねり=後方伸身宙返り2回ひねり(ひねりの速度は一定)よりも変化があって見栄え的には目を魅きそうな技ではないかと思う。

テレビの体操競技中継などでは見た事が無い技で、これは僕が自分で考えた技ではあるのだが……おそらく同じ事を考え、やってみた体操選手も少なくなかったろうと考えている。
猫宙を覚えた選手なら考えつきそうな技だし、見た目はおもしろいのだが……演技に採用されなかった理由も想像できる。
宙返りの途中に「かかえ込み」姿勢が入るので、「伸身」姿勢で行われる通常の2回ひねり(後方伸身宙返り2回ひねり)よりも難度的には低い扱いになってしまうに違いない。そのため競技会で行う技としては選択されにくく、メジャーな大会では披露されることが無かったのではないかと思う。
スーパーヒーローのアクロバット技
というように僕は独学(というより邪道?)で宙返りを覚えたわけだが、人造人間キカイダーや仮面ライダーなどの東映ヒーローの映像も多いに刺激になっている。そうして覚えた技の一部が、はからずしも後にインディーズヒーロー『ミラクル☆スター』の映像を撮るときに役に立ったわけである。

ちなみに『ミラクル☆スター』は小説版がオリジナルで、小説版の中でも宙返り&ひねりを利用したアクロバティックな必殺技を得意にしている。
もしかしたら、スーパーヒーローが跳び蹴りの前に「無駄に宙返りをしている」と思っている向きも、あるいはあるかもしれない。そこで、ミラクル☆スターの宙返りキックの秘密を公開しておこう。

スーパーヒーローがアクロバテッイクな技を披露するのは決して「意味の無い(視聴者)サービス」ではないのである。
「宙返りを最後に跳んだのはいつのことだったか?」とふり返ってみると……。
それは、たまたま映像に残っていた。

【ミラクル☆スター】がきっかけで知り合った某・自主制作映画グループの変身ヒーロー作品に1992年と1993年に参加。そのとき、アクションシーンやトランポリンカットの撮影(演技)を行っている。
1993年のGWロケで、撮影の合間に久々に技のチェックをしておこうと8mmビデオで録画した「崖を駆け上がっての後方宙返り」が、僕の最後の宙返りだった。
同ロケ地で行っていた撮影のワンシーン
撮影場所を確認するスタッフ&役者↓
【ミラクル☆スター】に続いて【三宅裕司のえびぞり巨匠天国】(TBSテレビの映像作家発掘番組)への再登場をもくろみ、番組スポンサー商品・ポカリスエットをネタに考えた【ミラクル☆スター2(仮題)】である。

【ミラクル☆スター2】の全貌
当時(1991年)の絵コンテで【ミラクル☆スター2(仮題)】の全カットを紹介。(※オリジナル絵コンテは鉛筆描きだったが、それだと縮小すると見づらくなるのでパソコンに取り込んで加工)
ファーストカットは設定では地震研究所なのだが、コネも金もないのでそれらしく見せるのは諦め、知人のオフィスをそのまま使わせてもらい、字幕やナレーションで設定を説明するつもりだった。















●ミラクル☆キッド~実写版~※小学2年のスーパーヒーロー誕生
◎ミラクル☆シリーズさくっと制作経緯
◎自作ヒーロー:型紙マスクの作り方

高校時代に撮った(撮ってもらった)写真。もちろん合成ではない。当時は時々こんな写真を撮りに(演じに)行っていたのだが、8mm(フィルム)カメラを持っていた友人の提案で、こうしたシーンを含むアクション映画を撮ってみようということになった。その作品は完成こそしなかったが暫定版を文化祭で上映。『燃えよドラゴン!』と『仮面ライダー』を合わせたような内容だった。これが実写版ミラクル☆シリーズの原点(?)だったのかもしれない。

いくつかの同人誌(ヒーローものとは無関係の文芸系)を経て、ワープロで簡単な個人誌《チャンネルF》を作る。この9号で初めて【ミラクル☆スター】が登場。同号にはゲスト作品として某氏の内輪ウケ・パロディ・ヒーロー小説【スーパースター】シリーズを掲載。これに対抗する作品として小説版『ミラクル☆スター 激闘篇』を書き下ろしたわけである。10号では小説版『ミラクル☆スター~復活篇~』を収録。
プライベード・レベルの小説版ヒーロー・バトルが展開する中、この架空のヒーローを実体化してみようと思い立ちFRPでマスク作りを開始。
色々アクシデントもあったが、下手なりになんとか仕上げる。

※バケツからの生還
マスクができるとこれを使って実写ビデオが撮れないかと考え始める。コマ単位で編集できるフィルムと違ってダビング編集のビデオではカットの位置を正確に決めるのが難しい。果たして思い通りの映像が作れるものかどうか……やってみないとわからない──ということでボディーを作って試作撮影に着手。
FRPマスクは視界を広くとったデザインだったのだが、すぐに息で曇って視界不良に陥る事が判明。それでもなんとか撮った映像を試験的に編集していたちょうどその時──【三宅裕司のえびぞり巨匠天国】の第1回目放送を偶然目にする。番組で映像作品を募集していると知り、さっそく編集したビデオを応募。するとあっさり採用が決まってテレビ出演ということに。

●ミラクル☆スター~実写版~
実は【えび天】出演時には肩にワイヤーが入っていた。ミラクル☆スターの続編(本編?)に向けてミニトランポリンの練習をしていたところ、踏み切りに失敗して肩から落下──鎖骨を骨折し手術を受けていたのだ。この時はまだマットが無かった。
療養中【えび天】再登場をもくろんで続編を練る。高校時代に8mmアクション映画を撮った仲間の協力を得てミラクル☆スター2を撮る事に。鎖骨骨折の苦い経験からウレタンマットを用意してのロケだったのだが……撮影開始して間もなく首を折り損なう事故が待っていた。

塀を跳び越え前方2回宙返りで降り立つシーンで、ウレタンマット(簡易合成で隠してある)に首から突っ込み、首・胸・背中に激痛が走る。歩くだけで患部に響いて痛い症状だったが、この日予定していたもう1つのアクションシーンを撮る。

結局、このカットを撮影してロケは中断。
事故の原因だが、FRPマスクの視界不良が大きな要因。このため、もっとよく見える改良型マスクを考案&作成。

新型マスクの作り方は→●自作ヒーロー:型紙マスクの作り方
この型紙マスクの応用でミラクル☆キッドのマスクを作成。急きょ特別番外編を制作することとなる。

●ミラクル☆キッド~実写版~
【えび天】狙いの『ミラクル☆キッド』だったが、番組は終了してしまい再登場は叶わなかった。
実写版ビデオを撮った後に作った個人誌《チャンネルF》──「ミラクル☆スター秘密大百科」と「ミラクル☆シリーズ秘密大百科」の表紙。

「秘密大百科」は個人誌《チャンネルF》の11号・12号に相当。その後「ミラクル☆スター」「ミラクル☆キッド」は季刊『宇宙船』(Vol.63/1993年冬)の自主製作映画投稿欄で紹介してもらうことができた。

ミラクル☆シリーズ実写版は【えび天】終了で頓挫した形になったが、ミラクル☆スターをきっかけに知り合ったアマチュア映像サークルの特撮ヒーローもの『超兵機エクシーザー』シリーズにチラッと参加。

しかし残念ながら、この作品は完成を見なかったようである……。
※最後の宙返り
今にして思えば、体が動くうちにもう少し撮っておけば良かったという気がするが、その一方、体が完全に錆び付く前にこれだけでも撮っておくことができたのは良かったのかも知れないという思いもある。
「もっとこうしていれば……」と思うところは多々あるが、いずれにしても懐かしい作品である。
●ミラクル☆キッド~実写版~※小学2年のスーパーヒーロー誕生
◎自作ヒーロー:型紙マスクの作り方
◎幻のインディーズヒーロー・アクション※『ミラクル☆スター2』絵コンテ