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- 2014/03/17 : カブトムシ《ツノのジレンマ》!? [昆虫など]

カブトムシの雄の角は、雄同士の闘争では長い方がよく、天敵から食われるのを避けるには短い方がよい、という深刻なジレンマを抱え込んでいる
──そんな共同研究が日本動物学会英文誌3月号に発表されたという。
■カブトムシの角は矛盾だった
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=00020140314008
《樹液が出ているクヌギ、コナラなどの広葉樹のそばに、散乱している「腹部だけが食べられたカブトムシの残骸」》について調べたところ、《日中はハシブトガラスが食べていたが、カブトムシの活動がピークとなる深夜の午前0~2時ごろにはタヌキが樹液を訪れて食べていた》ことがわかったという。
《タヌキに食べられたものは全体の残骸のうち6~8割に上ると推定された》そうで、《タヌキやハシブトガラスは、カブトムシのメスよりもオスを、さらに角の短いオスよりも角の長いオスを多く捕食していた》ことがわかったそうだ。
これらのことから──、
長い角をもつオスは、メスやえさの獲得などのオス同士の闘争で力の強さを表す目印として知られている。その一方で、天敵に対して目立ちすぎるため、食べられやすくなって不利になる。角の長さを追求すれば、天敵に食べられやすいという矛盾があったといえる。
としている。
しかし、この記事を読んでいくつかの疑問を感じ、「この《ジレンマ》はホントかなぁ……」と首をかしげた。記事だけ読んだのでは説得力に乏しく、にわかに納得はできない……。
日本動物学会英文誌に掲載されたというオリジナルは読んでいないし僕には読めないが……あくまで、上記URLの記事を読んだ限りの印象を記してみる。
「角の長いオス」と「角の短いオス」が同じ比率で出現しているわけではないだろう。死骸数の単純な比較のみで「どちらが《天敵に食べられやすい》」ということはできない。
「オスの角の長さ」は環境によっても格差がでそうだが……こうした角の長さと出現比率についてまず調べ、これを基準に「角が短い個体が食べられる率」より「角が長い個体が食べられている率」が高いと確かめられているのか──そのあたりがまず気になった。
共同研究はちゃんとした肩書きの人が学会誌に書いているのだから、このへんのことはしっかり調べた上でのことなのだろうが……URL記事だと、そのあたりの基本にして重要と思われる部分が判らない……。
しかしそうであるなら、「角が長い」個体は体が大きく「角が短い」個体は体が小さいのが一般的だ。「角が長い」から《天敵に対して目立ちすぎる》のではなく、単純に《体が大きいから目立つ》と考えるのが自然な気がする。角がないメスだって同じ大きさだったら、やっぱり目立って食われやすくなるのではないか。角があることで目立つということはあるかもしれないが、この場合、天敵に見つかりやすくなる要因は「角の長さ」というより「体の大きさ」というのが適切ではないかという気がする。
カブトムシが集まるようなポイントでは強く大きな個体が餌場を占領し、小さなオスやメスはあぶれがちだからだ。もともと大きなオスが幅を利かせている場所で大きなオスの死骸が多くみつかるのは当然のことといえる。
《関東地方では、タヌキこそがカブトムシの天敵といえる》そうだから、カブトムシの(角の長さではなく)飛翔力の差が生存率に関係しているのではないかと考えるのが自然だと思う。
フェレットはあまり目はよくないが、ニオイをたどって死角にいるカブトムシを見つけ出したり、土に潜っているカブトムシを探り当てて掘り出したりしていた。


《カブトムシの天敵》とされる夜行性のタヌキの場合も似たようなものではないかと思う。カブトムシ探しには主に嗅覚が使われているはずだ。日が落ちた雑木林でカブトムシの角の長さのわずかな差など、タヌキにとってはさほど意味を持たないのではないか……そんな気がしないでもない。

《カブトムシの角のジレンマ》という発想は構図としてはおもしろい。おもしろいけど、それだけに「角の長さで説明しようとする切り口」に無理矢理感を覚え、素直に納得できなかった……。
あくまでも、「(上記URL)記事だけ読んでの感想」である。
追記:NHKニュースでも「明からになった」と
カブトムシの角のジレンマに関する話題がNHKのニュースでも報じられていたことを知った。■カブトムシは「角長いほど狙われる」(NHK NEWS WEB 2014.03.17)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140317/k10013021441000.html
「昆虫の王様」とも言われるカブトムシは、そのシンボルである角が長いものほど天敵に狙われやすいことが、東京大学などの研究で明らかになりました。
──と報道されているが、これで本当に「明からになった」と言えるのだろうか?
NHKのニュースでは、前回読んだ記事より具体的な数字が紹介されていた。それによると──、
《天敵に食べられたカブトムシは、およそ70%が角のあるオス》
《食べられたオスは、周辺で天敵に狙われずに生きているオスと比べると、角の長さが平均で3ミリ程度長かった》
ということが判ったらしい。このことから──、
この結果について東京大学などの研究グループは、角が長いとオスどうしの争いでは有利になる一方、目立ちやすいため天敵に狙われる確率が高くなるためだとみています。
という解釈に至ったようだが……素人ながら、やはりおかしいと感じる。
その時間帯に樹液ポイントを訪れれば角の立派な強いオスが多いのは当然。餌場には強いものが陣取り、弱い小さな(角の短い)オスやメスは排除されがちだからだ。
カブトムシやクワガタ採りをして樹液の出ている木を見て歩いたことがある者なら、カブトムシは夜に多く、昼は少ないこと、夜には大きなオスの割合が多いが、昼はメスや小さなオスの割合が多いこと(夜に餌場から排除された弱い個体がやむなく本来の活動時間外の日中に食餌)は経験的に知っているものではないだろうか?
だから、樹液ポイントを狙った夜行性のタヌキがゲットした死骸に大きな(角の長い)オスが多かったからといって別段フシギとは感じない。「夜は強い大きなオスが多いんだな」と納得するのが自然だと思う。
そのことに疑問はないのだろうか?
追記:Wikipediaでも「明からになっている」と
Wikipediaの【カブトムシ】にも、【カブトムシの角は矛盾だった】の記事を出典とする記載があった↓。オスの角は長いほどオス同士の闘争の際に有利になる反面、タヌキやハシブトガラスといった天敵に捕食されるのを避けるには短い方がよいことが研究で明らかになっている。
個人的には懐疑的だが、Wikipediaで紹介されたことで、これは科学的事実という認識で一般に広まることになるのだろう。
【ナナフシ-Wikipedia】では、ニホントビナナフシの記述に《本州の個体は単為生殖を行なう》と記載されているが、僕は東京で両性生殖を確認している(【ニホントビナナフシ東京でも両性生殖】)。
頸部にも奥歯とは別種の毒を出す頸腺と呼ばれる毒腺があり、危険が迫ると相手の目を狙って毒液を飛ばす。
という記述があって、これについて疑問だと思う所を記したことがあったが(【疑問:ヤマカガシが《相手の目を狙って毒液を飛ばす》説】)、後に《相手の目を狙って毒液を飛ばす》という記述は《頸腺から出る毒液を飛ばすこともあり、これが目に入ると》と訂正されていたこともあった。