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セミヤドリガの羽化/幼虫~繭~成虫

セミヤドリガ:幼虫~繭へ



先日、空中にぶら下がっていたセミヤドリガの幼虫↑(*)。セミに外部寄生するかわった蛾の幼虫だ。
《成虫期間が短いといわれるセミだが、セミヤドリガ幼虫に寄生されたセミは養分を奪われることで成熟速度が落ち、そのぶん活動満期(?)が後にずれ込むようなことがあれば……セミヤドリガ幼虫の寄生が結果的にセミを延命させることになり、それはセミヤドリガ幼虫にとっても成長期間を稼げるという意味で都合が良い──そんな仕組みでもあるのではないか?》
などという冗談めいた妄想的想像が展開したのも先日(*)記した通りだが、そんなこともあってにわかにこの虫への関心が高まった。
蛹化のためにセミから離脱したと思われるセミヤドリガ終齢幼虫にでくわしたことで、この機会に繭や成虫の姿も確かめてみたくなった。昆虫の飼育経験はあまり無いので長期間の管理となると不安だが、セミヤドリガは繭を作ると1週間程で羽化するらしい(Wikipedia等情報)という認識でいたので──そのくらいならなんとかなるだろう……そう考えて、先日発見した終齢(5齢)幼虫を持ち帰っていた↓。


小物容器に入れて持ち帰った幼虫は、容器内部を糸or綿毛だらけにし始めていた。セミを離脱した終齢(5齢)幼虫が、ほどなく繭作りを始めたのだろう。


この幼虫が繭づくりを始めた容器のフタ↑ごと、別の容器に収納。
3時間半後にみると、抜けた綿毛に包まれてモゴモゴ繭作りを進めているようだった。うごめく白いかたまりの隙間から幼虫の赤茶色の地肌がのぞく↓。


翌日には《白いかたまり》になり動きは無かった。どうやら綿毛にまみれて繭は完成したらしい↓。


「蛾の繭」というと、カイコやイラガ、ウスタビガ(ヤマカマス)、クスサン(スカシダワラ)など、芸術性を感じさせる造型を思い浮かべてしまうが……、


これらの繭に比べると、セミヤドリガの繭は周囲に抜けた綿毛の束が散乱し、散髪後の床屋の床のようだ。繭の表面にコーティングされた綿毛も方向性が不規則で、とっ散らかった感じがいなめない……なんともザツな作りに見えてしまう。もっとも、セミヤドリガ繭のいびつな形は「繭には見えない」(天敵に虫だと気づかれにくい)という点で生存には有利な気がしないでもないが……。
このセミヤドリガの繭は乾燥防止のために濡らしたティッシュとともに小型のタッパーに入れて保管。蒸れないようにタッパーのフタには孔が開けてある。


セミヤドリガ幼虫:ロウの綿毛の役割り!?



キープしたセミヤドリガの羽化を待つ間に、新たにみつけたセミヤドリガ幼虫@ミンミンゼミ。上のミンミンゼミは1匹、下のミンミンゼミは2匹の幼虫をつけていた。


セミヤドリガの幼虫は5齢(終齢)になると白い蝋状物質の綿毛で背面がおおわれるようになるのだとか。4齢までに比べるとかなり目立つ。終齢(5齢)幼虫は、なぜ白い綿毛を身にまとうようになるのだろう?。ちょっと考えると白い綿毛は目立つため、この幼虫をつけたセミは天敵に見つかりやすくなるだろうから(天敵から狙われやすくなればセミヤドリガも一蓮托生で)リスクが増えそうな気がするが……そんなリスクを凌駕する《必要性》があるのだろうか?
成長した5齢のセミヤドリガ幼虫を見ると、セミの翅と腹の間にはさまれて窮屈そうだ。蝉の翅脈のある翅をおしつけられ、あるいは蝉が飛翔するさい、この翅でたたかれたりこすられたしそうだが、小さかった4齢までと比べればセミの翅による圧力・摩擦・衝撃は(成長して窮屈になったぶん)増加しているはずだ。その摩擦や衝撃を緩和し、やわらかい体を守る役割りをしているのが《白い(蝋状物質による)綿毛のコーティング》なのではないか?──などと想像してみたが、ホントのところはわからない。
5齢(終齢)幼虫の白い綿毛は繭づくりのさいにコーティングに再利用されていたが、繭の輪郭を隠しカムフラージュする役割りもありそうな気がする。
持ちかえったセミヤドリガ幼虫が作った繭を見てそう感じたわけだが……自然の状態ではどう見えるかも確かめておきたい──という気になり、「蝉しぐれ」というより「セミ豪雨」というべきセミが大合唱する林を注意して歩いてみると、それらしきものが見つかった。


持ちかえったセミヤドリガ幼虫が作った繭を見ているから「それっぽい」と気づいくことができたが、ふつうなら目にしても繭には見えない。セミヤドリガの繭を探してみると……葉や木に付着した鳥の白いフンが目にとまり、これがいささかまぎらわしい……ということは、「不規則な形の白いモノ」は鳥糞擬態の効果があるのではないか?
そんなことを考えていると、ちょうど鳥糞にまぎれているかのような繭を発見↓。


白矢印が鳥のフン、黄矢印がセミヤドリガの繭。これ↑を見て、やはり鳥糞擬態の効果はありそうだと感じた。5齢幼虫の綿毛の白さは、目立つぶんリスクを増やしそうだが、繭では逆に隠蔽効果を高める役割りを果たしているといえそうだ。

セミヤドリガの羽化

さて、糸で降下してきたセミヤドリガ幼虫は持ちかえったその日に繭を作った。この繭が何日で羽化するのかについて、当初「1週間程度」(Wikipedia等情報)という認識でいたのだが、その後「約2週間」とする情報もあることを知り、はたして何日で羽化するのか気になっていた。
実際に羽化したのは、繭づくりを始めた日(糸で降下してきたセミヤドリガ幼虫を持ちかえった日)からちょうど14日後だった↓。


羽化は「未明~午前中が多い」とか「早朝」という情報を読んでいたので、昼過ぎに繭に変化がないことを確かめ「きょうも羽化はないか……」とあきらめかけていたのだが……。それでも油断せずに注意していると、白い繭の端に小さな黒っぽい点が出現!? 黒点はしみ出したタールのようにみるみる大きくなってくる──繭の中から(羽化のために)蛹がせり出して来たのだ。あわてて撮影の準備をした。


画面すみの数字は撮影時刻。画面右では蛹がだいぶ露出しているが↑、黒点が見えはじめてから1~2分ほどでここまでせり出してきた。








初めて見るセミヤドリガの成虫。1週間で見られると思っていたのが2週間待たされ──待ちわびていただけに、ちょっとした感慨があった。


触角が♂にありがちな「両櫛歯状」にも見えるが……セミヤドリガは♀が多く、単為生殖できるという。オスなのかメスなのかは、僕にはわからない。
この後セミヤドリガは容器の縁を歩こうとして落ち、ひっくり返ったので、まだ伸びきっていない翅が痛むことを心配し、とっさに指にとまらせた。


翅がのびてくると、(蛾なのに)チョウのように翅を立てた。これは羽化直後と思われる蛾がよく見せる行動のような気がする。


翅をとじた姿勢を10分あまり続けた後、翅を開いた通常の姿勢に戻った↓。


しばらくするとクリーム色の液を排泄した↓。


今回のセミヤドリガの羽化のようすを簡単にまとめると──。
・繭から蛹がせり出しはじめる…………おそらく12:48頃
・蛹の殻がやぶれて頭・胸背面がのぞく……………12:55
・触角が抜け、脚が抜ける……………………………12:56
・体全体が蛹殻から抜ける……………………………12:57
・翅がほぼ伸びきる……………………………………13:02
・開いていた翅を閉じる(立てる)……………………13:03
・閉じていた翅を開く…………………………………13:14
・クリーム色の糞をする………………………………13:24

セミヤドリガ成虫の頭部を腹側から撮影↓。


口吻が退化しているのがわかる。セミヤドリガは成虫になると餌をとらないらしい。
あらためて背面ショット↓。翅が光って見えない角度からみると地味な蛾だが、青っぽく光って見える角度から見ると美しい。




大きさは、直径2cmの1円玉と比べて、こんな感じ↓。




プラスチック食の蛾!?/タヌキ顔の蛾!?他

緑地の柵や手すりには木を模した擬木が使われていることが多い。コンクリート製やプラスチック製だが、わざわざ天然の木に似せてあるのは自然の景観との調和を意識したためだろう。本物の木を使った柵や手すりも無いことはないが、虫に食われたり腐食してボロボロになっているところも多い。メンテナンスや寿命のことを考えると木材より擬木の方が便利なのだろう。
僕が虫見で歩くギボッチ(擬木ウォッチ)コースではプラスチック擬木が使われている。
プラスチック製の擬木ならば虫に食くわれる心配もない……と思いきや──!?

プラスチック擬木をホストとする「ど根性蛹」!?



プラスチック擬木の表面から蛹(既に羽化したあとの抜け殻)が生えていた。
樹木の幹に「ぬけがら(蛹)」を残して羽化するスカシバガという蛾によく似ている。
他にもプラ擬木で発生した!?蛾とおぼしき蛹があちこちで見つかった。




実は昨年も3月に同じど根性蛹を見ている。今年も複数見られたということは、この虫にとってプラスチック擬木からの羽化は、もはや定番となっているのだろう。
良く似たスカシバ(蛾)の幼虫は木にもぐりこんで内部を食べて育つが……この「ど根性蛹」は幼虫時代、擬木内部でプラスチックを食べて育っていたのであろうか!?




「ど根性蛹」がプラ擬木内部からはい出てきて、ここで羽化したことは疑いようがない。
ちなみに昨年撮った、よく似たコスカシバではないかと思われる蛾の蛹↓


サクラの幹からのぞくコスカシバ(と思われる蛾)の蛹(抜け殻)↑はしばしば目にする。幼虫がもぐりこんだ木の内部を食べて育つのは不思議ではない。しかし、自然界には存在しなかったプラスチックのような分解しにくい素材を食べる昆虫がいるとは、にわかに信じられない。

プラスチックを食って育つ虫がもしいたとしたら……幼虫がプラスチックを分解するしくみを調べ《増え続け処分場所に困窮しているプラスチックゴミ》の処理に応用できるのではあるまいか?──などと、妄想が広がってしまう。

しかし実際は……プラスチックを食して成長する虫がいるとは思えない。
では、どうしたら、こういう状況が生まれるのだろう?
考えられる可能性としては──、
《他の場所で育っていた幼虫が蛹になるため食樹を離れ、擬木の隙間(直射日光が当る表面の劣化や、内部との温度差による膨張差などで剥離が生じてできた隙間?)に潜り込んで蛹になった》という可能性。プラスチックを食べて成長するとは考えにくいから、成長に必要な養分は他で得ていたとすると、こうしたケースが思い浮かぶが……ホストの樹皮下で育った幼虫がわざわざ1度そこから出て擬木に入りなおすという面倒なことをするだろうか?──と思わないでもない。
他に考えられる可能性を思いめぐらせてみると──、
《擬木に生じた隙間内部には苔やカビなどが発生していて、幼虫はそれを食して成長した》というシナリオ。
擬木に卵を産みつける蛾は少なくない。その多くは孵化後移動したり餓死したりするのだろうが……広食性の種類なら、そんなところに活路を見いだす幼虫がいてもいいかもしれない?


色々想像は広がるが、確たることはわからない。
謎めいた蛹(の抜け殻)について考えながら歩いていると、さらに妄想が飛躍するものを目にした。
「プラスチックの擬木に穿孔する蛾ばかりか、金属の柵に穿孔する昆虫もいるというわけか!?」
鉄の柵が虫に食われないよう、虫たちに向けて鉄柵内部に穿孔しないよう禁止を訴えるプレートがあったのだ!?


ということは、このあたりの虫たちには、この告示文が読めるということなのであろうか? プラスチックや鉄を食うこともさることながら、文字が読める昆虫おそるべしっ!
……というのはもちろんジョーク。
しかし、そんなことまで妄想を展開させた「ど根性蛹」おそるべしっ!

謎の「ど根性蛹」には何だか化かされたような気分だが……「化かす」と言えば「タヌキ」。
──という強引な展開で、プラ擬木で見かけた「タヌキ顔」の蛾もついでに……。

キアイを入れればタヌキ顔に見える蛾!?





サカハチトガリバという春に出現する蛾。この個体↑は羽化不全だった↓。


本来の姿はこんな↓


背中の中央(前翅後半の褐色部分)が金色っぽくも見える、意外に美しい蛾。
このとろ雑木林沿いの擬木や柵でよく見かける。これはまた別の個体↓




さらに別個体のサカハチトガリバ↓。




やっぱりタレ目のタヌキ顔に見えてしまうのは僕だけであろうか?


春めいてきて昆虫も増えてきた



コツバメはスプリング・エフェメラル(春のはかない命)と呼ばれるチョウの1つだそうで、遊歩道の路面に降りていた。飛ぶ気配がないので放置すると自転車に轢かれそうなので指に載せて植込みへ移動させた。同じ日、ヒオドシチョウ(これは越冬明けのチョウ)も何匹か目にした。画像はクヌギの幹で翅を広げていた個体。チョウでは他にミヤマセセリやアゲハ(ナミアゲハかキアゲハかは確認できず)、キタキチョウ、テングチョウなども目にした。甲虫類も色々出ていた。


トラフコメツキもこの時期によく見かける。同じ時期に見かけるようになるナカジロサビカミキリも出ていた。






このナカジロサビカミキリは今年初。今年3種類目のカミキリということになる。ちなみにこれ以前の2種類はヘリグロチビコブカミキリキボシカミキリで、いずれも1月の確認だった。これからさらに色々な種類が見られるようになるだろう。
カミキリも幼虫が木に穿孔する昆虫だ。ときに家具製品等から羽脱する強者もいるというが、プラスチック擬木から出てくるカミキリはさすがにいないだろう……。

ど根性蛹!?

ど根性蛹(さなぎ)~擬木ミステリー第2弾~

「ど根性ダイコン」や「ど根性ナス」──舗装の割れ目やコンクリートのわずかな隙間でたくましく育った「ど根性野菜」がしばしば話題になったりするが……それを彷彿とさせる光景が……。








さらに、この近くの擬木でも……








桜の幹からのりだすようにのびた蛹ぬけがらは時々目にしていたが……人工物の擬木から飛び出していた蛹(ぬけがら)には驚いた!
桜の幹からでてくる蛹の方はコスカシバという蛾のものだろうと思っていた。


擬木からとびだした「ど根性蛹」もコスカシバによく似ているが、成虫の発生時期からする別種のようだ。おそらく近い種類の蛾ではないかと思う。スカシバガ科の蛾の多くは幼虫が樹木に穿孔するという。
しかし……こうした蛾の幼虫は樹皮下で材を食べて育つはずだ。「ど根性蛹」は──無事に羽化した昆虫(おそらく蛾?)は、擬木の中でいったい何を食べて育ったのだろう?
擬木ウォッチでみつけた新たなミステリーである。

擬木の隙間から入り込んだ有機物あるいは内部スペースに発生したカビ・苔などでも食べていたのだろうか?
人工物の擬木といっても、これが木材ならば、さほど驚くこともないのかもしれない。カミキリが木材の家具から出てきたなんてハナシはある。
しかし画像の擬木が木材でない事は明らかだ。擬木の素材が何か調べてみたところ《再生ポリエチレン樹脂を使用したプラスチック擬木》というのが、どうも似ている。
プラスチックを食う虫などいるものか──と直感的には思ったが、プラスチックも石油(生物由来)製品ということを考えれば……これを食う生物がいたとしてもおかしくはないのだろうか?

分解し難いプラスチックを食う(分解する)虫がもし発見されたとしたら……プラスチックゴミの処分等で商業利用できるかもしれない(阿刀田高氏の短編にもそんな着想の作品があった)。
そんなSF的な想像が展開した……。

もちろん擬木を食って育ったとはとても思えないのだが……それでは「ど根性蛹」の主は何を食って育ったのか……納得できる答えは見つからない。

ど根性蛹をみてわかった(気がする)こと

桜の幹から飛び出した蛹(ぬけがら/コスカシバと思われる)を初めて見た時は、《蛹の状態で幹から這い出て羽化する》ことにちょっと驚いた。
考えみれば、蛹になった樹皮下で羽化すれば、翅が邪魔になり脱出し難くなるし、外へ出るまでに翅を痛めてしまうかもしれない……翅が伸びる前に広い場所へ移動できなければ羽化不全の危険が高まるから、そうした危険を避けるために《蛹のまま外へ出て、そこで羽化する》というのは理にかなっている。
それはわかるのだが……しかし、羽化前の蛹が自由に歩き回れるとも思えない……いったいどうやって「蛹のまま」移動してきたのだろう?──そんな疑問が浮かんだわけである。

余談だがセミの抜殻を「蛹」だと思っている人は意外に多いようだ。しっかり形が残る抜殻はたしかに「蛹」っぽい感じがしないでもない。しかしあれは「幼虫」(セミは蛹を経ずに成虫になる不完全変態の昆虫)。だから羽化場所まで歩いて移動できるわけだ。
しかし樹皮下で蛹化した蛾が、蛹の状態で歩いて木の外へ移動できるとは思えない……。
コスカシバの蛹はどうやって木の幹から出てくるのだろう──そんな疑問を抱いていたのだが……「ど根性蛹」を撮ってみて判ったような気がする。よく見ると蛹の腹には下向きにギザギザがついている。コスカシバにも同じような器官があって、孔の中で身をよじるとギザギザエッジが壁面に引っかかり後退はできず頭方向へのみ移動できるしくみ──そんな構造になっているのではないだろうか?(個人的推測/この解釈が当っているかどうかは?)。



「蛹」がどうやって木の(擬木の)内部から出てくるのかという謎は解けた(かもしれない?)気がするが……「ど根性蛹」は擬木の内部で何を食って育ったのかという新たな大きな謎に突き当たってしまったのであった……。

ところで、最初の見出しに「擬木ミステリー第2弾」とつけたが、「擬木ミステリー第1弾」は【しおり糸の迷宮!?】。その後の続報の追記もあり。

擬態する幼虫&蛹:アカボシゴマダラ

以前は見たこともなかったのに、ここ何年かで最も良くみかけるチョウの1つになってしまったアカボシゴマダラ(*)。
成虫をあちこちで見かけるようになった頃、幼虫や蛹を探してみたが、なかなか見つけることができなかった。それが「こんなところに!」というような道路脇のちょっとしたエノキの幼木などにもいることがわかり、目が慣れてくると、あちこちに確認できるようになった。
それにしても、ちょっとした幼木にまぎれてしまう忍者っぷりには感心するばかり。この春もそんな姿を見ることができた。

擬態する幼虫



越冬幼虫は枝に溶け込むような色合いをして、枝に化けている。
それが餌であるエノキ若葉が展開する頃、終齢幼虫へと脱皮。脱皮直後の終齢幼虫は赤みを帯びているが、これが展開中の若葉の赤みによく溶け込んで見える。


エノキの葉がすっかり展開し枝が緑でおおわれるころには、終齢幼虫の赤みも薄れ、葉にとけこむような緑色になっている。




そしてある日、幼虫はこつ然と姿を消してしまう……!?

擬態する蛹







消えた終齢幼虫は、地上20~30cmほどの低い位置で蛹になっていた。
蛹もなかなかの忍者っぷり。まるで垂れ下がった葉の裏のように周囲に溶け込んで見える。

前蛹から蛹へ

これは別の場所にいたアカボシゴマダラ。遊歩道わきに生えたエノキの幼木で前蛹になっていた。






蛹もこれだけ見ると、さほど葉に似ているとも思えないのだが……葉にまぎれていると意外なほど溶け込んで隠蔽されてしまうのがフシギでおもしろい。
追記:↑この蛹のその後……↓




※追記:4月後半から5月はじめにかけて寒い日が多かったが、蛹になって3週間程での羽化だった。





手すりの昆虫ドラマ

手すりは意外な虫見ポイント!?





【ゴマフカミキリ】の色や模様は《複雑な自然の景色》の中では目立たないが、《表面パターンが単純な人工構造物》にとまっていると見つけやすい。また小さな昆虫も自然物の中では輪郭をとらえるのが困難だが、手すりやフェンスなどの上では比較的目につきやすかったりする。






【ヨツボシチビヒラタカミキリ】はこのあたり(狭山丘陵)では、4月頃よく見かける(今年はGW明けにも見られた)。【ヨコヤマトラカミキリ】は5月にしばしば目にする。ヨコヤマトラカミキリはアリに擬態しているのではないかという説(?)があるが、たしかに遠目にはムネアカオオアリっぽく見える。白い模様がウエストラインをアリのように細く見せるデザインのように見えなくもない。他にもアリに擬態していると思われる虫は色々いるようだ。昆虫を食うハンターの間でもアリはスルーされがちなのだろう。

手すりは虫見ポイントとして便利(?)だし、飛ぶことができる昆虫にとっても活動温度確保するのに都合の良い場所なのかもしれない。手すりの接続部にある隙間は昆虫やヤモリなどの越冬場所にもなっている。

手すり遭難!?

しかし、飛ぶことのできない幼虫にとっては、この手すりは容易に脱出できない迷宮トラップでもある。
風で枝から落ちた虫、地表に産み落とされた卵から孵った幼虫、落ち葉の下で冬を越した幼虫などがエサとなる葉を求め樹上を目指すとき、誤って手すりに登ってしまうと迷路にはまり込む。


草食幼虫は葉(エサ)があるはずの枝先や梢──「上」をめざすが、のぼりつめてもそこに求めるものはない。擬木の切り株(?)にそってグルグル円を描くように歩き回らされる。少し戻って(下って)水平部分を隣に移動して「上」を目指しても同じことのくり返し……飛ぶことのできない幼虫がこの迷宮から逃れるのは難しい。
【ナナフシ(ナナフシモドキ)】は枝に擬態した昆虫だが、手すりにいたのではカムフラージュの効果はあまり期待できない。こうした虫にとって、手すりは危険なトラップといえる。



春の歩道ではよく見かける光景。蛾の幼虫が糸にぶら下がって降りてくる。蛾の幼虫が繭を作るさいに糸をはくことは知られているが、幼虫の糸にはクモのしおり糸のような役目もあるのだろうか。
鳥などの敵からのがれるために葉から落ちたのか、風に揺さぶられて枝から落ちたのか──忍者のようなワザでピンチを逃れたかのように見える(?)蛾の幼虫だが……1度手すりに脚をかけてしまうとやはり迷宮トラップをさまよい続けることになる。手すり遭難者(虫)には蛾や蝶の幼虫も多い。




【ウスタビガ】のように、こうした迷宮のトラップ──ガードレールの反射板・フェンス・手すりで遭難している幼虫は多い。
人工物のために遭難者(遭難虫?)が続出するのは、なんだか可哀想な気もするが、彼らもただそこでムダな死をとけるだけ──というわけでもないようだ。

手すり上のサバイバル

手すりの上で迷子になるのは草食幼虫だけではない。昆虫食の幼虫やクモもいる。
手すりの上部(僕はステージと呼んでいる)で待っていれば、意外に多くのエサが自分からやってくる。


見通しの良い手すりでは、鳥などの外的に狙われるリスクは増えそうな気がするが、エサのみつけやすさからすると、昆虫食の虫やクモにとっては良い猟場なのかもしれない。遭難した草食幼虫はこうした昆虫食の虫の生命を支えている。




ヨコヤマトラカミキリの《アリ擬態説》については首を傾げる人もいるかもしれない。しかし、クロヤマアリそっくりな【アリグモ】に関しては誰もがアリへの擬態を認めるところだろう。
蟻そっくりなアリグモ

同種間での餌の奪い合いに限らず、手すりの上ではハンター虫同士の食う・食われるの闘いもある。
それでは草食幼虫については、手すりに迷い込んだ時点で飢え死にするか他の虫の餌食になるか──死が確定しているのかと言えば、必ずしもそうではないのかもしれない。
蛾の幼虫が這い回ったあとにはクモのしおり糸のようなものが残る。これに風で飛ばされて来た葉や植物片がひっかかっているのはよく見る光景で、こうした《天からの贈り物》を食べている幼虫もやはりよく見られる。


2匹の幼虫が食べている葉は、糸が無ければこの場所にとどまっていられず落下しているはずだ。糸の主がこの幼虫たちかどうかはわからないが(クモのしおり糸の可能性もある)、蛾の幼虫が手すりの迷宮をムダに這い回っている(かのように見える)ときに、糸を残していることはある。これが落ちてくる餌(葉や植物片)を受け止めるトラップの役割をはたし得ることにちょっと驚いた。
もちろん蛾の幼虫が糸を吐く機能は、もともとこんな目的のためのものではないはずだし(葉から離れたとき戻るための道しるべ?)、虫が落ちてくる葉をキャッチすることを意図して行動しているとは思えない。単に偶然の副産物にすぎないのだろうが、手すりという非自然環境の中で、こんな意外な形でしおり糸(?)が役立つことがあるとは……。
もし手すり環境がずっと続いたとすれば、遠い未来に、やがて餌を確保する目的で糸を吐く蛾の幼虫が現れるかもしれない……そんな妄想が頭に浮かんだ。
しかし考えてみれば、クモが巣(糸のトラップ)を張るのも、もともとは《しおり糸》にひっかかる獲物がいて、そこから餌の確保用に機能が進化してきたものなのかもしれない。
だとすると、蛾の幼虫が餌確保に糸を使うようになる──というストーリーも、あながち荒唐無稽な妄想ではないかもしれない?

草食幼虫の中には蛹になる際に積極的に(?)手すりを利用するものもいる。水平にわたされた擬木の下側にぶら下がって蛹になるのだ。安定した水平面は足場として適しているのだろう。


手すり(擬木)の下で蛹になると天敵に見つかりやすいというデメリットがありそうな気もするので、これが生存率に有利に働くのかどうかは疑問だが……とりあえずここを利用するガやチョウはいる。

虫たちにとって、自然にはなかった手すりという人工物は、想定外の環境だったはずだ。ヒトにとってはただの手すりだが、虫たちにとっては迷宮トラップとなる巨大な迷惑装置──最初はそんなふうに思ったものだが、ここでの虫たちをみているうちに、どうもそう単純ではないらしいと考え直すようになった。
人工的環境変化に対して自然はもろいという印象があるが……手すりの上で繰り広げられているドラマの一端をかいま見て、自然の潜在的対応力・フレキシブルさ──みたいなものを、うっすらとながら感じた気がした。
自然の川を流れる水は自然の形をしているが、人工物のコップですくえば水はコップの形で安定する……生命の営みにとって「自然か人工か」はさして意味が無いのかもしれない。そこにある環境に適応したシステムが構築されて行く──それが自然というものなのかもしれない。