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カメムシの奇行!?抜け殻落としプチまとめ



羽化や脱皮をしたカメムシが自分の抜け殻を落とす──この行動を僕は《抜け殻落とし》(もしくは《羽化殻落とし》・《脱皮殻落とし》)と呼んでいる。冒頭の画像↑は2018年5月に撮影した羽化後のアカスジキンカメムシ。新成虫が《抜け殻(羽化殻)を落とし》をした瞬間──ではなく、落とした抜け殻がクモのしおり糸にひっかかって宙に浮いているシーン。カメムシの《抜け殻落とし》については、これまで幾度も記事にしてきたが、ここで少しまとめておくことにした。

カメムシの《抜け殻落とし》とその意味

自分の抜け殻を攻撃して落とす──初めて目にした時は奇異に感じて、この行動にはどんな意味があるのだろうとあれこれ想像をめぐらせた。
抜け殻には、その虫が存在することを示す痕跡(例えば──羽化や脱皮のさいに分泌される離型剤のようなもの?)が残っていて、そのニオイが寄生蜂や寄生蠅、アリなどを呼び寄せてしまうことがあるのではないか? だとすれば抜け殻がカメムシの近くにあると、自分や仲間が天敵に見つかる危険が高まる……そこで、これを回避すべく生活圏の外に(災いの元となる)抜け殻を落とすのではないだろうか──今は、そのように考えている。
イモムシなどでは孵化後に卵殻を食べたり、脱皮後に脱皮殻を食べるものがいるが、これも1つには「天敵の指標となる抜け殻を隠滅する」という意味があるのではないかと思う。カメムシは口の構造上、抜け殻を食べて隠滅することができないので、生活圏の外に落とすことで処理しているのではないだろうか。
セミやチョウ・蛾などは羽化殻を残すが、羽化後その場から離れてしまうので抜け殻を残しておいても問題がないのだろう。セミは羽化する時に地中から出てきて木に登るし、チョウ・蛾は蛹になる前に食草を離れて移動するものがいる──こうした行動で「天敵の指標となる抜け殻を仲間から遠ざける」ことをしていると考えることもできそうな気がする(あるいは、ハチやハエに寄生されていた場合にも仲間から離れたところで蛹になることで、羽化した寄生蜂や寄生蠅を仲間から遠ざける効果があるのかもしれない)。
素人の考えたことで、この解釈が当っているのかどうかはわからない。しかし、カメムシが《抜け殻落とし》をするシーンは何度も目撃している。

エサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし



成虫は背中のハート・マークが目をひくエサキモンキツノカメムシ。僕が初めて《抜け殻落とし》を目にしたのは、2012年10月──擬木で羽化する、このエサキモンキツノカメムシ↓を観察している時だった。


①擬木支柱で羽化するエサキモンキツノカメムシ。②羽化殻から離脱すると頭を上にし羽化殻と向き合う。③頭突きをするように羽化殻を攻撃し始め、ついに落としてしまった。羽化殻への攻撃が始まったのは新成虫が羽化殻から離脱して9分後のことだった。このときのことを記した記事→【ハート亀虫羽化 見守るキリスト!?】)。
2015年11月に、やはり擬木で羽化していたエサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし↓。


①擬木支柱にとまった羽化後の新成虫と羽化殻。②羽化殻に頭からぶつかっていく新成虫。③羽化殻を落とす。このときは離脱後20分余り経ってからの羽化殻落としだった(※詳細記事→【エサキモンキツノカメムシの抜け殻落とし他】)。

アカスジキンカメムシの羽化殻落とし&脱皮殻落とし



《抜け殻落とし》はアカスジキンカメムシで観察することが多かった。といっても必ず行うわけではなく、葉の裏に抜け殻だけが残されていることもある(地面に落とされている抜け殻の方が多い)。また羽化中や羽化直後の新成虫を見つけて羽化殻シーンを撮影しようと近づくと、(警戒して)固まったままなかなか始まらなかったり、アクシデントで他の昆虫と接触して羽化殻を残して逃去る新成虫もいた。近くで待機していると《抜け殻落とし》が始まらないし、離れていると《抜け殻落とし》が始まっときに接写が間にあわず、画像での記録は失敗が多かったが……とりあえず記録ということで……。


2018年5月に撮影したもの↑。ムクゲのやや高い位置にとまっていたのできれいに撮れなかったが……①葉の裏で羽化中のアカスジキンカメムシ。②離脱した新成虫が向きを変える。③羽化殻と頭をつき合わせるような形。この時点で羽化殻の脚は葉から外れかけていた。④しばらくじっとしていた新成虫が動き出す。⑤頭で羽化殻を押しながら前進。⑥前進して寄り切るように羽化殻を落とす(この直後に羽化殻は落下)。⑦羽化殻落としを終えたアカスジキンカメムシ新成虫。※【羽化殻落とし@アカスジキンカメムシ】より↑。
《羽化殻落とし》を目の前で確認しながら、肝心のシーンが激しくピンポケになってしまった例……↓。


2017年5月に撮影↑。羽化中のアカスジキンカメムシが古い殻から離脱して2時間ほど経ってからの《羽化殻落とし》だった(※詳細→【アカスジキンカメムシ:羽化~抜け殻落とし】)。《羽化殻落とし》を接写しようと近くで待機していると、警戒して(だろう)なかなか始めてくれない。待たされることが多かった。


2017年5月に撮影↑。①を撮影した後、少し離れたところから監視を続けて《羽化殻落とし》を待っていた。②《羽化殻落とし》の瞬間──フレーミングもピントも間に合わず、角度も悪くてこんな画像しか撮れなかった(①から50分が経過していた)。③羽化殻を落とした後の新成虫(※詳細→【アカスジキンカメムシ羽化後《抜け殻落とし》確認】)。



2018年5月に撮影↑。①新成虫は孵化殻から少し離れたところに移動していて体色もだいぶ濃くなってきている(時間も経過している)。もう《羽化殻落とし》はしないのだろうか……とあきらめかけていると、した──が、その瞬間は撮り逃し、その直後の画像が→②羽化殻落とし直後の画像(1秒前にはフレーム内に羽化殻があった)。目の前で《羽化殻落とし》を確認していながら、またしてもその瞬間は撮り逃してしまった(※詳細→【羽化殻落とし@アカスジキンカメムシ】)。



2018年5月に撮影↑。これは《羽化殻落とし》のシーンを確認していない。葉の裏で羽化殻と対峙している羽化直後の新成虫(左画像)。2時間40分後に見に行くと、新成虫はすでに葉の表に移動しており、葉の裏の羽化殻はなくなっていた(右画像)。新成虫は、おそらく《羽化殻落とし》をしたあとに葉の表に移動したのだろう(※詳細→【アカスジキンカメムシの羽化他】)。
アカスジキンカメムシの《抜け殻落とし》は幼虫の脱皮でも確認している(《脱皮殻落とし》)。


2015年9月に撮影↑。①コブシの葉で脱皮中のアカスジキンカメムシ幼虫。②触角や脚が抜けていく。③最後に腹端が抜けて新幼虫が抜け殻から離脱。よくこのサイズの体が小さな抜け殻に収まっていたものだといつも感心する。④向きを変えて抜け殻と対峙。⑤抜け殻に頭突き攻撃。⑥抜け殻の下にもぐることで抜け殻の前脚を葉から引き剥がす。カメラを近づけたためこの姿勢で触角を倒し、静止してしまった。この2分20秒後の画像が→⑦接写するカメラを離していたわずかのスキに脱皮殻は落とされてしまった(※詳細→【アカスジキンカメムシの抜け殻おとし】)。
こちら↓は2015年10月に撮影した《脱皮殻落とし》。


①擬木の支柱で脱皮殻落としを開始したアカスジキンカメムシ幼虫。葉の裏ではすんなり落ちる抜け殻が、擬木では徘徊する蛾の幼虫やクモが残した糸がひっかかってなかなか落ちない。②頭突きをし抜け殻を押し上げる新幼虫。③なかなか落ちない脱皮殻を持ち上げ、このあとようやく落としたのだが……。④擬木に残されていたしおり糸(?)にひっかかった脱皮殻は宙吊りになっていた。⑤脱皮殻がまだあることに気がついた新幼虫は……⑥わざわざ支柱をおりていき脱皮殻を落とそうと頭突きをする。⑦脱皮殻は再び落ちかけて途中で宙吊りに──この後、風にあおられて、ようやく落下した(※詳細→【カメムシの抜け殻落とし行動】)。
宙吊りになった脱皮殻に追い打ちをかけにいく行動に《抜け殻落とし》に対する執着のようなものを感じた。
《抜け殻落とし》への執着は羽化でも感じるケースがあった。


2017年5月に撮影↑。ふつう羽化後の新成虫は羽化殻と同じ葉にいるものだが、上下の葉に分かれてしまった羽化殻と新成虫。①では羽化殻と新成虫がとまった葉は離れているが、羽化は羽化殻のある上の葉で行われたはず。そのときは上の葉(羽化殻がある葉)は終齢幼虫の重みで下がり、下の葉(新成虫とまっている葉)は(新成虫の体重がかかっていないため)もっと上がっていて上の葉と接していたのだろう。羽化の過程で新成虫が、接していた下の葉につかまり、そのまま体重がかかってこの状態(上下の葉が離れる形)になったものと思われる。この状態で下の葉に移ってしまった新成虫が羽化殻を落とすために、わざわざ上の葉まで戻るのかどうか──興味があったのでしばらく近くにスタンバって観察していたが、警戒してかなかなか動かず。少しその場を離れ、22分後に戻ってみると→②新成虫はすでに上の葉に移動しており、羽化殻は落とされた後だった。羽化殻はこの枝の下でみつかったので、風で落ちたわけではなく(風に飛ばされたのであれば直下には落ちない)、新成虫がわざわざ上の葉に移動している事からも《羽化殻落とし》が行われたことは、まず間違いない(※詳細→【アカスジキンカメムシ新成虫《抜け殻落とし》のケース】)。
羽化や脱皮をしたあとのカメムシが労力を要して行う《抜け殻落とし》には、やはりそれなりの意味があるのだろうとあらためて感じた。
僕が想像した《抜け殻落とし》の意味の一端を裏付けるようなシーンもあった。


2018年5月に撮影↑(※詳細→【アカスジキンカメムシの羽化他】)。葉の裏で羽化していたアカスジキンカメムシの羽化殻落としを接写すべく、ずっと近くでスタンバっていたが、(警戒して?)なかなか羽化殻落としは始まらない……。そのうちアリがやってきてしまい、アカスジキンカメムシ成虫は羽化殻を残して別の枝へ移動していってしまった。羽化殻はアリによって運び去られた↓。


これで、羽化殻を放置すればアリが来ることは確認できた。アリがくるのだから、寄生蜂や寄生蠅など、他の天敵が嗅ぎ付けてくることも充分ありそうだ。こうした天敵を生活圏に誘引しないように抜け殻を落とすというのは理にかなっているように思われる。もちろんカメムシが「効果を考えて」こうした行動をとっているわけではいだろうが……進化の中で、何らかのきっかけによって抜け殻を落とす行動が生まれ、それを行う個体の生存率が高かったことから、その子孫にこの行動が受け継がれ定着していったのではないか?

ツヤアオカメムシ・チャバネアオカメムシの《羽化殻落とし》



エサキモンキツノカメムシやアカスジキンカメムシの他には、ツヤアオカメムシとチャバネアオカメムシで《羽化殻落とし》を確認している。



2015年11月に擬木で撮影したツヤアオカメムシの羽化殻落とし↑(※詳細→【モンキツノカメムシとエサキモンキツノカメムシ他】)。



2018年9月にケヤキの幹上で行われていたチャバネアオカメムシの羽化殻落とし↑(※詳細→【チャバネアオカメムシの羽化殻落とし】)。

謎めいたカメムシの《抜け殻落とし》

何の予備知識も無くカメムシの《抜け殻落とし》を目にした当初は理解しがたい光景のように思われた。つい今しがたまで自分の体の一部だったものを攻撃する!?──自分の体から離れたとたん、《自己》だったものが《非自己》と認識されてしまうのだろうか? それにしても、エサキモンキツノカメムシは母虫が卵~若齢幼虫集団を守ることで知られているし、アカスジキンカメムシも葉の裏に数匹が体をよせあって集まっていたりする──仲間と協調できる昆虫が、どうして少し前には自分の体だった抜け殻を攻撃するのか、とても不思議だった。
最初に記した通り、今では「天敵に嗅ぎつけられる危険を避けるため」に《抜け殻落とし》をするのだろうと僕は考えている。長い進化の中で、抜け殻を放置するものの中から落とすものが現れ、その一群の生存率が高かったことで《抜け殻落とし》の習性が自然選択されたのだろうという解釈なのだが……それでは、最初の《抜け殻落とし》はどのようにして起こったのだろう? カメムシが「天敵を避けるため」と意識して始めたわけではないだろうから、きっと何か別の行動システムの副産的な(あるいはエラー?)発現がきっかけになってのことではないかという気がするが、そのあたりのことはまだ想像がつかずにいる。
僕の解釈がどの程度当っているのか、まるっきり的外れなのかはわからないが……いずれにしても脳味噌を刺激し続けるカメムシの《抜け殻落とし》は、気になる《謎めいた生態》の1つである。

※追記:風変わりなハリサシガメの脱皮殻剥ぎ

ちょっと(かなり?)変わったカメムシ──ハリサシガメの《抜け殻落とし》に相当すると思われる行動について追記。ハリサシガメは捕食性カメムシでエサはもっぱらアリという変わり種。しかも幼虫は捕食後のアリの死骸を背中にデコレーションして擬装するという風変わりな習性を持っている。背中にデコるのは狩ったアリばかりでなく、おそらくアリのゴミ捨場から拾ってきたのではないかと思われる虫の残骸等も混じっていたりする。さらにハリサシガメは脱皮も奇想天外で、古い殻を破って出現する新幼虫は脱皮殻が背負っていたデコレーション素材をそのまま引き継ぎ、背負いながらでてくる↓(*)。




画像を90度回転しているが、実際は石垣の鉛直面に頭を下にして脱皮している↑(画面左が下)。この脱皮のさいに、引き継いだデコレーション素材とともに、これにくっついていた自分の脱皮殻もいっしょに背負ってしまうことが起きる。
自分の脱皮殻を背負って擬装する昆虫(セモンジンガサハムシなど)もいるのだし、ハリサシガメ幼虫は他の昆虫の残骸をわざわざデコレーションしているのだから、自分の抜け殻だってデコっても良さそうな気がするが……ハリサシガメ幼虫は自分の脱皮殻だけは嫌って、引き剥がそうとする。先に紹介したカメムシの《抜け殻落とし》が、基本的には頭を使って──頭突きで押し出すように行われていたのに対し、ハリサシガメ幼虫の、いわば《脱皮殻剥ぎ》は後脚を使って行われるようだ。




別の脱皮後と思われるハリサシガメ幼虫↓。


ダンゴムシかワラジムシの殻(白く見える物)を背負っているが、その後ろに脱皮殻も付着している(腹の背面がデコ素材にくっついている)。この30分後、すでに脱皮殻は引き剥がされていた↓。


アリの死骸やアリが廃棄したと思われる虫の残骸などは積極的にデコるのに、自分の抜け殻はデコレーションから排除しようとするのが興味深いところ。擬装がアリの嗅覚を欺くためのものだとしたら、自分の(ニオイがついた)脱皮殻を排除するのは理にかなっている。

★ハリサシガメ記事一覧
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マツヘリカメムシ:卵・幼虫・成虫



僕が子どもの頃にはいなかったのに今ではすっかり普通種──という昆虫は少なくない。マツヘリカメムシもその1つ。Wikipedia によると、北米大陸西部原産の外来種で日本では東京で2008年に初めて確認されたとか。僕がこの虫を初めて見たのは2011年(@東京)。ベルボトム(裾広ズボン)を連想させる後脚や頭を下にすると白枠の菱形メガネをかけた顔のように見える姿が印象的なカメムシだった。


今ではちょくちょく見かけるし、昆虫ブログ等にもよく登場しているので、もはや《よく知られた、お馴染みの昆虫》になっていると思っていたのだが……幼虫や卵について確かめたくて検索してみたところ、ヒットするのは成虫の画像ばかり。幼虫や卵の画像が意外に少ない……と、いうことでマツヘリカメムシの幼虫と卵(抜け殻)の画像を上げておくことにした。

マツヘリカメムシ幼虫とユニークな卵





松葉にカメムシの若齢幼虫がかたまっていた↑。マツヘリカメムシのようだったので撮り始めると、近くの松葉に彼らの(ものと思われる)卵(抜け殻)があることに気がついた。円筒形(円柱)をきれいに連ねたユニークな卵にビックリ。


カメムシの卵には円形のフタがついているものが多いが、円柱形の卵であれば、底面(円形の部分)にフタがある──これまで僕はそう思い込んでいた。しかしマツヘリカメムシの孵化殻では、円柱形の卵の側面に円い穴が開いていた──これには、ちょっと意表を突かれた感じがした。


Wikipedia の【マツヘリカメムシ】の項目には《卵は円筒形で、中春から晩春にかけて寄主植物の葉の付け根などに数個ずつ産み付けられる》と記されているが、ここでは松葉にそって12個の卵が1列に整然と産みつけられていた。

脱皮中のマツヘリカメムシ幼虫と成虫



松の枝先で、枯れた松葉につかまって(ぶら下がって)脱皮中のマツヘリカメムシ↑。
松の球果(松かさ)の上にいたマツヘリカメムシの幼虫↓。


7月の末にエノキの葉の上でみつけたマツヘリカメムシの幼虫↓。おそらく4齢か5齢(終齢幼虫)ではないかと思われる。近くの松から落ちてきたのだろう。


ネット上ではよくみかけるマツヘリカメムシの成虫↓(小雨の撮影で水滴がついている)。


マツヘリカメムシ成虫は飛翔できる──その翅を広げた瞬間↓。意外にキレイな腹部背面の模様がのぞいた。


ところで、マツヘリカメムシは《洋ナシのようなフルーティーな匂い》がするらしい?(ネット情報)
そこで確かめるべく成虫を小型容器に入れ、シェンクしたのち嗅いでみた。


この個体↑(右中脚が欠けていた)を含めて2匹で試してみたが、今回はニオイは感じられなかった(同じ種類のカメムシでも、そのときのコンディションによって発するニオイの強さ=分泌量はまちまち)。
ちなみにフルーティーな匂いがするカメムシは僕も過去に確認している↓
真・青リンゴの香り/キバラヘリカメムシ
オオトビサシガメのバナナ臭

※【追記】松の球果(松かさ)にとまり、針のような口吻を刺して汁を吸うマツヘリカメムシ成虫の画像を追加↓。


同個体を別アングルで──↓。


【追記】松の球果上の終齢幼虫&成虫の人面もよう



松の球果(松かさ)で汁を吸うマツヘリカメムシ終齢幼虫↑と成虫↓。


キアイを入れれば、白い菱形フレームのメガネをかけた顔に見える成虫↓




ハリサシガメ脱皮後の再装備は?

擬装する珍虫ハリサシガメ





雑木林ふちの石垣に、今年もこの昆虫が姿をみせるようになった。土粒をまといアリの死骸などを背負って擬装するユニークなハリサシガメの幼虫だ(成虫は擬装しない)。




ハリサシガメは幼虫も成虫もアリを狩る捕食性カメムシ。かなりおもしろい昆虫だと思うのだが……その割にこの虫に関する情報は少ない。
しかたないので、素人観察で謎解きに挑んでいるが……「なるほど、そうだったか」と驚いたり納得することがある一方、解明できずにいる疑問も少なくない。
そんなハリサシガメについて、今更ながら、こんなサイトを見つけた。


このサイトではハリサシガメの生態に関して興味深い情報が紹介されていた。ただ、使用されていた画像は外国産の種類ばかりだったので、僕が観察している(日本産の)ハリサシガメとは異なる部分もあるかもしれない。
そこで、このサイトのハリサシガメ情報を見て感じたことを、《僕の観察・考察と合致する点》《知りたかった点》《僕の観察とは異なる点》に分けて記してみることにする。

僕の観察・考察と合致する点:擬装の意味

ハリサシガメの特徴といえば、幼虫が土粒をまといアリなどの死骸を背負うことだ。そしてこのユニークな姿を見れば、まず思い浮かべるのは、「この擬装には、いったいどんな意味があるのか?」という疑問だろう。
前記サイトではこの擬装について、《自分のニオイをごまかす》意味もあるというような解説をしていた。この点は僕の観察&考察と合致する。

ハリサシガメが土粒をまといアリの死骸などをデコレーションするのは、一見、体を隠す視覚的カムフラージュのように見える。もちろん昆虫食の捕食者に対しては、そういった効果もありそうだが、アリの行列のすぐそばでハンティングするようすを観察していると、アリに対する擬装工作としての意味合いが強いのではないかと思えてくる。アリは一般的に視覚はあまり良くはないそうで、触角で触れてニオイで相手を識別しているらしい。そこでアリの触角タッチで正体がバレないよう、ハリサシガメは土粒で体の表面を覆っているのではないか──つまり、土粒コーティングには「自分のニオイを隠してアリをごまかす擬装工作」の意味があるのだろうと僕も推理していた。
あくまでも個人の素人想像だったのだが、《自分のニオイをごまかす》という見方があることを知って、僕の解釈もまんざらではなかったかと思った。

僕が知りたかった点:どうやってデコるのか?

「擬装の意味」については関心の1つだったが、それでは、ハリサシガメ幼虫は土粒やアリの死骸などの擬装素材を「どうやって体に貼り付けているのか?」という疑問も当初から知りたいことの1つだった。

僕はハリサシガメの羽化殻に残されていた擬装素材を剥がしてみたことがある。そのとき素材同士がくっついていたので、「何らかの粘着物質で接着するのだろう」と考えた。その接着剤にあたる物質を体から分泌するのか、口から吐き戻すのか、排泄するのか、あるいは臭腺開口部から分泌される液が接着剤の役割りを果たすのか……色々な可能性を思い描きながらハリサシガメ幼虫のデコレーション行動を観察してみたが、結局よくわからなかった。
これについては、昆虫学の大家・岩田久二雄氏が『昆虫を見つめて五十年(II)』(朝日新聞社/1978年)という本の中に次のように記されている。

吸血をおわるとサシガメは不器用なかっこうをしながら、前肢でその吸殻を自分の背中に押しあげた。それはしっかりと糊着されるわけではなく、ただ乗せられるだけであるが、何分忙しげに走りまわれるたちの虫ではないので、それらの無様な積荷が崩れおちるおそれもない。後になっていよいよ最後の脱皮を終えて成虫になり、その吸殻の山をくっつけた抜け殻が、すっぽりぬぎすてられた時に、初めて明らかになったのだが、いちばん下層の吸殻はカメムシの背中の棘にひっかかっていて、上層のものは下層のものの付属肢と、もつれあって巧くとまっているのであった。(『昆虫を見つめて五十年(II)』P.96)

この部分は岩田久二雄氏の間違いだと僕は思っている。僕の観察では捕食後のアリの死骸(岩田氏のいうところの《吸殻》)は、《前肢》ではなく、決まって「後脚」で背中にデコられる。羽化殻の擬装素材を剥がしたとき、土粒同士もくっついていた。付属肢などない土粒同士が《もつれあって巧くとまっている》ことは考えられず、これは岩田氏が否定している《糊着》だろう。
これについては、「きっと多くの人はド素人の僕の観察より、岩田久二雄氏の著書の記述を信じるのだろうな……」と思っていた。
しかし、先のサイトでは、擬装行動について《ペースト状のフンを使って食べかすを貼り付けていると言われている》と解説されていた。
これは大いにありそうだと感じた。幼虫がアリを背中に貼りつけるさいには、後脚で尻の方から既に背負った素材と背中の間に押し込むような動作を見せる。このときペースト状のフンをぬりつけているとすれば、筋は通る。

僕の観察とは異なる点:脱皮後の再装備は?

先のサイト情報には納得できる部分も多かったが、疑問に感じる点もいくつかあった。明確に「僕の観察とは違う」と感じたのが、ハリサシガメ幼虫は脱皮後、いつ・どのようにデコレーションの再装備をするかという点についての説明だった。先のサイトでは《脱皮のとき、そばに残骸を置いておいて、終わったらちゃんと背負いなおす》という解説がされていた。

脱皮後の擬装素材の装備は、いつ・どのように行われるのか──という疑問は僕も当初から抱いていた。擬装がアリ狩りに必要な(身を守る)アイテムであったとするなら、脱皮後丸裸で狩りに行くのは危険だ。おそらく狩りの前に土粒コーティングをするなり、アリのゴミ捨場で死骸を調達してデコるのだろうと当初は想像していた。
ところが、ハリサシガメの脱皮殻をみつけ、背中から擬装素材が剥ぎ取られていることに気がついた。脱皮の前に貯えてきた擬装素材は脱皮後、引き継がれ再利用されるのだと考えを改めた。
先サイトの解説にあった《脱皮のとき、そばに残骸を置いておいて、終わったらちゃんと背負いなおす》という説(?)も「脱皮後の幼虫が、脱皮前に背負っていた素材を背負っている/脱皮殻からは擬装素材がなくなっている」という状況を見て(実際の脱皮のシーンは確認せずに)、そう判断したのではないか……という気がしないでもない。

しかし、実際に脱皮を観察する機会があって──大いに驚いた。ハリサシガメ幼虫は「脱皮しながら擬装素材(残骸)を引き継いでいた」のだ。




(※【ハリサシガメぷちまとめ2】より再掲載↑。実際は鉛直面に頭を下にして脱皮している)
擬装素材は脱皮殻に付着している。新幼虫が擬装素材を背負おうとすれば脱皮殻もくっついてきてしまう。背負った擬装素材にくっついてくる脱皮殻を後脚を使って引き剥がす──という形で脱皮&擬装素材引き継ぎが行われていたのだ。
つまり──、

①脱皮前に擬装素材(残骸)を外し、そばに置いておいて
②脱皮を行う
③脱皮後、擬装素材(残骸)を背負いなおす

のではなく──、

①擬装素材(残骸)をつけたまま脱皮を開始
②脱皮しながら新幼虫が擬装素材(残骸)を背負う
③擬装素材(残骸)から脱皮殻を引き剥がす

という手順で行われていたのだ。
ときに③にてこずることがあるのだろう、脱皮殻を背負った幼虫や、背負った擬装素材(残骸)から脱皮殻を剥ぎ取ろうとする幼虫を目にすることが何度かあった。




このシーン↑も【ハリサシガメぷちまとめ2】からの再掲載↑。
今シーズンも、抜け殻を背負っていた幼虫が、抜け殻を剥がしたと思われるケースを2例見ている(剥がすシーンは見ていない)。
直近の例↓。


何日か前、脱皮殻を背負っていた幼虫がその後見た時には剥がしていたということがあったので、このときも剥がすのではないかと思って30分後に見に行くと──、




やはり脱皮殻を剥がしていた。アリの死骸やアリが廃棄したような虫の残骸などは積極的にデコるのに、自分の抜け殻はデコレーションから排除しようとするのが興味深いところ。擬装がアリの嗅覚を欺くためのものだとしたら、自分の(ニオイがついた)脱皮殻を排除するのは理にかなっている。そんなふうに僕は解釈している。
ハリサシガメについては色々と思うところが多い……。

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ハリサシガメ幼虫と脱皮殻

今シーズン初のハリサシガメ幼虫





今シーズン初のハリサシガメ幼虫を5月19日に確認した。初めてハリサシガメに出会ったのは一昨年の7月下旬。その時は成虫と終齢幼虫が混在していた。キレイなデザインの成虫と土粒をまとい虫の死骸等を背負ったユニークな幼虫が同じ種類の昆虫とは現場では気づかなかった。帰宅後調べて「ハリカメムシ」を知り、がぜんこの虫に興味がわいのだが……とてもおもしろい昆虫のわりにこのカメムシに関する情報は少ない。いつ頃から活動するものなのかもわからず、昨年は気をつけて発生場所をチェックしていたたところ、5月31日に初個体(幼虫)をいくつか確認。今年はさらに気をつけていて、5月19日に2匹を確認することができたしだい。すでに土粒とアリなどのデコレーションをしており、いつ頃から活動を開始していたのかは今年もよくわからなかった。
とりあえず、この段階では小さいながらあるていど育っている(2齢以降?)。記録程度にと思って数枚撮っておいたのだが……帰宅後、画像をチェックしてみると、このうちの1匹が背負っていたデコレーションの中に自身の若齢脱皮殻と思われるものがあることに気がついた。




こうなると↑、一見どっちを向いているのかもわからない!? 「く」の字型の触角がある方が頭部なのだが、ボデイラインはおおい隠され、背中のデコレーションからつきだした虫の脚がまぎらわしい……。この触角とまぎらわしい虫の脚が、ハリサシガメの脱皮殻の後脚だった──と、気づいたのは帰宅後、パソコン画面で画像をチェックしていたとき。
この画像を見て、去年も1度同じような光景を見ていたことを思い出した。
自分の脱皮殻を背負う昆虫はいる。セモンジンガサハムシなどもそうだが、多くは視覚的擬装としてのカムフラージュではないかと思う。ハリサシガメの場合は、獲物であるアリに対するもの──嗅覚的な擬装の意味あいが大きいのではないかと僕は考えている。アリに近づいても(アリが接触してきても)ニオイでバレないように土粒で体をコーティングし、アリが廃棄したゴミ(昆虫の死骸)をデコっているのだろうという解釈。だとすれば、自分のニオイのついた脱皮殻をかついでいたのでは都合が悪いのではないか……という気がする。
ハリサシガメは狩ったアリなども背中にデコるが、抜け殻に関しては積極的に背負うわけではない。僕の観察ではハリサシガメは脱皮する際に(脱皮しながら)古い殻が背負っていたデコ素材を引き継いで行く。その過程で、デコ素材とつながっている脱皮殻がいっしょにくっついてきてしまうのだ。脱皮後、それを引き剥がす行動も観察したことがあったので、自分の脱皮殻は排除する習性があるのではないかと考えていた。去年見た《自分の脱皮殻を背負ったハリサシガメ》は、たまたまその離脱が上手く行かなかったケースなのだろうか……などと想像していたのだが、よくあることなのだろうか?
脱皮殻を背負った個体をもっと観察しておけばよかったと悔やみ、近く確かめに行かなければ……と思った。

アリをデコったハリサシガメ



ということで、2日後に発生場所に行ってみると、まず石垣の上に1匹ハリサシガメ幼虫が出ていた。先日見た2匹とはおそらく別個体。


アリの死骸をデコっている。ちょっとわかりづらいがこの幼虫は画面左手前を向いている。まだ小さく、直径20ミリの1円玉と比較すると、こんな感じ↓。


自分の脱皮殻を背負ったハリサシガメ

さて、問題の自分の脱皮殻を背負ったハリサシガメ幼虫がいたポイントを探すと……若齢幼虫の抜け殻をデコっている個体を発見!


先日見た個体よりもデコレーションが増え、その配置もじゃっかん変化しているが、同じ個体ではなかろうか!? 帰宅後、画像を比較してみると、デコレーションの中に共通する素材(水色矢印)があり、脱皮殻に付着した土粒の位置等も符合することから、やはり同じ個体のようだった。


現場では、他の個体がいないか石垣を一通り見て戻ってくると(その間約10分)……先日2匹を見たのと同じ石垣の隙間に2匹がかたまっていた。1匹はデコレーションから先日見たもう1匹の方であるとわかった。先日見た2匹だろうと思ったのだが……よく見ると、もう一方に脱皮殻がついていない!?──と、思いきや、近くに落ちていた!?


画面右のハリサシガメ幼虫が先日・そして先ほども確認した脱皮殻を背負っていた個体だと思ったのだが……そのデコレーションに脱皮殻はなく、手前に落ちている!? これは今しがた、引き剥がしたということなのだろうか? 画像を確認すると、先ほど脱皮殻を背負っていた個体と同じ素材(黄色矢印)を背負っているので、やはり同一個体のようだ。2日間背負っていた脱皮殻を、この10分の間に脱ぎ捨てたということなのだろうか? なんともフシギな気がするが……やはり自分の脱皮殻は排除したいのかもしれない。
とりあえず、脱皮殻を回収。


これまで見たハリサシガメの抜け殻の中で一番小さい。カメムシにしては短めの口吻がハリサシガメっぽさをかもしている。脚やその基部は黒く硬い組織だが、腹は透明な部分が多かった(終齢に近い抜け殻では腹は黒っぽかった)。




去年回収した脱皮殻の画像と比較してみると──、


一番大きい脱皮殻(画面右端)は羽化時のものではないので、おそらく脱皮後が終齢幼虫だったのではないかと思う。終齢幼虫が5齢であるとすれば、この(画面右端の)脱皮殻は4齢のもの、画面中央が3齢で、それより小さい今回の脱皮殻は2齢幼虫のもの(3齢に脱皮したさいの抜け殻)ではないか……と想像する。
今回みつけた脱皮殻と羽化殻から付着物を取り除いた画像を並べてみると──↓、


腹の色が違う(若齢脱皮殻では透明/羽化殻では黒)。
ハリサシガメについては色々なシーンを見て、あれこれ考えることも多いが、ぷちまとめの記事を作ってある。


《抜け殻落とし》の瞬間!?



アカスジキンカメムシの奇行(?)《抜け殻落とし》。羽化や脱皮の後に自らの抜け殻を攻撃して落下させる──そんな興味深い行動を僕は何度も見てきた。寄生蠅や寄生蜂、アリなどを呼び寄せかねない手がかり(抜け殻)を生活圏の外へ破棄する意味合いがあるのではないかと想像しているのだが、この《抜け殻落とし》の決定的瞬間をキレイな画像で記録しておきたいと常々思っていた。そしてついに新成虫が抜け殻を落とすシーン──落ち行く抜け殻が、まだ空中にある瞬間をとらえることができた!?!
──かに見える画像だが、(残念ながら)さにあらず。見つけたとき、抜け殻はこんな状態で宙に浮いていた!?

亀虫のイリュージョン!? 空中浮遊する抜け殻!?!



人体が宙に浮く《人体浮遊》はイリュージョンの代表の1つだが、アカスジキンカメムシが抜け殻を使ってイリュージョンを披露している──ようにも見えなくはない!?
イリュージョンでは、特殊なワイヤーを使ってマジシャンを吊り上げていたりするらしいが、アカスジキンカメムシの抜け殻も極細の糸で吊られていた。


糸の正体は、おそらくクモが歩いたあとに残していく「しおり糸」だろう。これは絹糸よりも強靱らしい。これがアカスジキンカメムシ新成虫によって落とされかけた抜け殻の脚に引っかかったと思われる。《抜け殻浮遊》はイリュージョンではなかったが……「終齢幼虫の抜け殻から、それより大きな成虫が出現する」という羽化の方が、よっぽどイリュージョンぽいかもしれない。
さて、抜け殻は羽化の最中、落下しないように、しっかり葉にしがみついているわけだが、その足先には二股に分かれたするどい鉤型のツメがついている。糸はこのツメに引っかかっていたようだ。
やはり《抜け殻落とし》で落とされたと思しき別の抜け殻でツメをチェックしてみると↓。


この鋭いツメが、羽化や脱皮のさいにしっかり足場をつかみ、体を支える役目をしているのだろう。アカスジキンカメムシは羽化や脱皮のさいには頭を下に向けてとまるが、そうすることで体重がかかり後脚と中脚のツメは足場にしっかりくいこみ安定性が増しているように見える。


羽化や脱皮の最中、自らの体重などで下向きの力がかかることで鉤型の爪はグリップ力を増していると思われるが、離脱後のカメムシが下から抜け殻を押しあげれば、上向きの力がかかって後脚と中脚の爪フックは容易に外れて抜け殻を落とすことが可能になるなわけだ。
本来なら、爪フックが外された抜け殻は地面に落ちるが、今回はたまたま近くにあったしおり糸にひっかかって宙に浮いた形になってしまったようだ。
しばらくして戻ってみると、抜け殻は下の葉に背中をつけていたが、後脚のツメにはまだ糸が引っかかっていた。


さらに25分後、のぞいてみると抜け殻は消え、外れた糸が残されていた。


──ということで、今回目にしたのは《抜け殻落とし》の瞬間ではなかったが、《抜け殻浮遊》の画像を見ると、《抜け殻落とし》があったことがうかがえる。
羽化が行われたのは新成虫がとまっていた葉の裏だろう。何らかの理由で抜け殻が葉から離れ、しおり糸に引っかかったとして……落下開始位置よりも高い位置に宙吊りになるとは考えにくいから、抜け殻は落下前には撮影時新成虫がとまっているあたりにあったものと思われる。抜け殻があったはずの位置に体色が整っていない(羽化してさほど時間が経っていない)成虫が陣取っているということは、新成虫がその位置まで抜け殻を押し上げ、爪フックを外した──と考えるのが自然だろう。

過去の《抜け殻落とし》シーン

ということで、今回は(も?)《抜け殻落とし》そのものは見ることができなかったので、《抜け殻落とし》がいかなるものか、過去の画像をあげておく。
2015年9月に撮影したアカスジキンカメムシの脱皮~《抜け殻落とし》。


①頭を下向きにとまって脱皮中のアカスジキンカメムシ。②後脚&中脚の鉤型ツメが葉面にひっかかっていることで、下向きに力(体重)がかかっても抜け殻は安定している。③新幼虫が抜け殻から離脱。よくこのサイズの体が小さな抜け殻に収まっていたものだといつも感心する。④向きを変えて抜け殻と対峙。⑤抜け殻に頭突き攻撃。⑥抜け殻の下にもぐることで抜け殻の前脚を葉から引き剥がす。カメラを近づけたためこの姿勢で触角を倒し、静止してしまった。この2分20秒後の画像が→⑦わずかに目を離したスキに抜け殻は落とされてしまった。
(※詳細→【アカスジキンカメムシの抜け殻おとし】)

次は擬木で脱皮したアカスジキンカメムシ幼虫が《抜け殻落とし》に悪戦苦闘するようす。擬木には周辺の枝先から落ちたイモムシ毛虫やクモが登ってくることが多く、彼らが徘徊したあとには糸が残っていたりする。これが抜け殻のツメにひっかかってしまうと、《抜け殻落とし》は難航する……。


①脱皮後の《抜け殻落とし》の最中のアカスジキンカメムシ新幼虫。通常(葉の裏での脱皮)であれば抜け殻は既に落ちていただろう。擬木にはクモや毛虫イモムシが這いまわるさいに残した糸が残留している。この糸に抜け殻が引っかかってなかなか落ちないのでアカスジキンカメムシ新幼虫は悪戦苦闘していた。②頭を使ってすくい投げしようとするが、抜け殻は姿勢を変えるだけで落ちない。③とうとう頭上高くリフトアップしてしまった。④リフトアップした抜け殻を擬木の下に投げ落とすことに成功した……かと思いきや、糸にひっかかった抜け殻は宙吊り状態に。⑤宙吊りの抜け殻に気づいたアカスジキンカメムシ新幼虫は、ふたたび落としに向かう。⑥頭突き攻撃で抜け殻を落とすが……。⑦抜け殻はさらに下で宙吊りになる。アカスジキンカメムシ新幼虫がどうするか注目していたが、この後風で抜け殻が飛ばされ《抜け殻落とし》は終了した。
(※詳細→【カメムシの抜け殻落とし行動】)

昨シーズン観察した羽化後の成虫による《抜け殻落とし》↓は、肝心のシーンが力いっぱいピンぼけ……。


※【アカスジキンカメムシ:羽化~抜け殻落とし】より再掲載↑。
このピンポケとなったシーンをきれいな画像で撮り直しておきたいものだが……今回の冒頭画像は《抜け殻落とし》ならぬ《抜け殻浮遊》だったしだい。