FC2ブログ

ユーザータグ : 空目の記事 (1/21)

イチモジフユナミシャクのキューティクル

《飛べない空色の翼》をもつ妖精!?



サクラの幹にとまっている可憐な昆虫はイチモジフユナミシャクのメス。冬の一時期にしか見られないフユシャク(冬尺蛾)の1つ。僕の中では、この時期の「主役」的存在なので、ついついホストのサクラを探してしまう。


なんとも不思議な姿をしている。オシャレなミニサイズの翅は退化したもので、メスは飛ぶことができない。《飛べない空色の翼》をもつ妖精──そんな雰囲気もないではない。前翅の淡い水色(空色)は、イチモジフユナミシャク♀がよく見られるサクラの樹皮に散在する地衣類の色あいによく似ている。


イチモジフユナミシャク♀を探してサクラッチ(桜ウォッチ)をしていると、地衣類に反応してしまうこと(地衣類がイチモジフユナミシャク♀に見えてしまうこと)があるが、これは幹上のイチモジフユナミシャク♀が地衣類に見えるということの裏返し──鳥などの捕食者に対して隠蔽擬態の効果もあるのだろうと考えている。


ちなみにイチモジフユナミシャクのオスは形も色もメスとはずいぶん違っており、枯葉色をした普通の蛾といった感じ。


オスも交尾のさいにはメスがとまった木にやってくるようだが(夜行性)、この画像↑のように日中、木の幹にとまっているオスは(メスに比べると)少ない。昼間のオスは落葉の中に隠れているようだ(*)。
イチモジフユナミシャクが見られるのは(僕のフィールドでは)12月後半~1月初め頃──種としての成虫活動期間も短いが、個体としてのメスの見頃期間もめっぽう短い。新鮮なメスはぷっくら張りのある腹をしていてプロポーションも良く、鱗粉も整っていて美しいのだが、産卵後の♀はしおれて体型が変わってしまう。産卵前の比較的新鮮と思われる個体であっても、鱗粉は荒れやすく、強風にさらされたりすると体表面がザラついた感じになってしまう。
イチモジフユナミシャク♀は美しいけれど痛みやすい──そんな印象があるので、見られる時期に美しい姿のメスを見ておきたいという気になる。

イチモジフユナミシャク♀のキューティクル的鱗粉



サクラの古木でみつけたイチモジフユナミシャク♀。ぷっくら張りがあって美しいプロポーションの個体だ。別の角度から──、


アップでも色々撮ってみた。




プロポーション・色・模様とも良い感じのおそらく新鮮なメスだったのだが……この日は風が強く、そのためだろう──鱗粉の状態がじゃっかん荒れていた。


鱗粉がめくれ、痛んだ髪のキューティクルのよう↑。大晦日に見た美麗個体の整った鱗粉↓と比較すると違いがわかる。


鱗粉コンディションの違いは、健康な髪と痛んだ髪(ダメージヘア)のキューティクルの違いのよう。整った鱗粉の♀は「健康な髪」のようなツヤがあり、光のかげんできらめいて見える。この鱗粉コンディションの良い大晦日の美麗個体は──↓。


元日に見た新鮮なイチモジフユナミシャク♀↓。


これが産卵後の個体では、ずいぶん印象が変わってしまう。


今シーズンも産卵後の個体が増えてきた。やがてイチモジフユナミシャクも姿を消すのだろう。発生時期以外では、もちろんサクラの幹をいくら探したところで、その不思議な姿を見ることはできない。いないのがあたりまえの時期になると、本当にここ(桜の幹)に、あの不思議で可憐な生き物はいたのだろうか……と実感が薄れていき「《飛べない空色の翼》をもつ妖精」の幻想感を深めることになる。そして、翌冬、再会したときに「やっぱり、こんな生き物がいたんだなぁ」と実感するのである。



スポンサーサイト



謹賀新年2019亥年


姿も食性もユニークなウシカメムシ



晩秋~冬に擬木で目にする機会が増えるウシカメムシ。前胸の左右に大きく張り出した立派なツノ(前胸背側角)が特徴的なカッコ良いカメムシだ。見た目もユニークだが、食性も大いに変わっていて、最近読んだ『カメムシ博士入門』によると、主食はセミの卵だという。

ユニークな体型&模様のウシカメムシ幼虫



擬木にとまっていたウシカメムシの幼虫。10月・11月にはしばしば目にしているが、冬になると見かけるのはもっぱら成虫となり、おそらく成虫で越冬するのだろう。幼虫を12月に見たのは初めてかもしれない。




なんといっても、この肩のあたりから左右に突き出した装甲(?/前胸背側角)がカッコ良い。成虫とはまた違った模様もおもしろい。






ウシカメムシの幼虫は、快傑ゾロ風の仮面に見えたり黒猫に見えたり──空目ネタで取り上げたこともあった。


仮面虫!?…かめn虫…カメムシ 第2弾!】より↑/【ソンブレロ仮面ウシカメムシ幼虫ほか】より↓。


ウシカメムシ成虫



成虫にも、もちろん立派な肩のツノ(前胸背側角)があって、これを牛のツノにみたてて「ウシカメムシ」となったのだろう。幼虫の前胸背側角は薄いが、成虫ではごつさを増している。




カメムシには前胸背側角が発達したものや、ハリサシガメのように小楯板に棘状の突起を持つものがいる。こうした特徴には何か意味・役割りのようなものがあるのだろうか? 鳥や小動物などに呑み込まれそうになったとき、これが天敵の口腔内を刺したり引っかいたりすることで吐き出されやすくなったり、そのため天敵から敬遠されて生き残るチャンスが増える……というようなことでもあるのだろうか?


別の擬木の上にいたウシカメムシ成虫は動き回っていたので指にとまらせて撮影↓。


この成虫は前胸背板と小楯板の間(黒く見える部分)がやけに離れていた。左右の翅が完全に収納しきれていないようにも見えるが、どこか故障しているのかもしれない。


セミの卵を主食とするユニークな食性

『カメムシ博士入門』を読んで驚いたことのひとつが、ウシカメムシがセミの卵を主食にしているということだった。ネット上ではアセビ・シキミ他等植物の汁を吸うというような情報があって僕も当初、ウシカメムシは植物食だと思っていた。あるときセミの卵について言及した記事を読んで意外に感じたが、その時は「へえ!? セミの卵を吸うこともあるのか」くらいに思っていた。木の汁を吸うウシカメムシが樹皮上で口吻を刺しやすい場所を探していて、その結果、セミの産卵痕に口吻を突っ込んでみたらセミの卵があって、それを食す──といったことは起こり得そうな気がする。時々起こっても、さして不思議ではないだろう。
しかし「主食」となると話は違う。「なんで、そんなもの(どこにでもある汁が吸える植物より、探すのに労力を要しそうなセミの卵なんか)に依存することになったのだろう!?」と首をかしげたくなってしまう。セミの卵は、ウシカメムシが育つ間、確保できる食糧源なのだろうか?
現在使っているパソコン内に残っている画像では、ウシカメムシの幼虫は7月8日に撮ったものが一番早く、8月・9月・10月・11月・そして今回の12月と撮影している。




ウシカメムシ成虫を撮影したのは9月・10月・11月・12月・2月・4月・5月・6月だ。ウシカメムシの活動期間中、「主食」は安定供給可能なのだろうか?
調べてみるとセミの卵は早いものでその年の秋、多くが翌年の梅雨頃に孵化するらしいく、意外に(?)卵の期間は長い。狭山丘陵ではハルゼミが鳴き出すのは4月後半。ニイニイゼミは6月中旬から鳴いているのを確認しているから、セミが産卵する時期から翌年梅雨まで、けっこう長期間「主食」は存在することになるのかもしれない。

セミの卵がウシカメムシの主食だったということには驚いたが、『カメムシ博士入門』を読んで同じくらい意外だったのが、カメムシは元々は肉食が基本だったということだ。

カメムシの多様な食性①
●多様な食生活への適応
形態やDNA解析から推定される系統(第3章系統樹参照)と、グループごとの食性を重ねあわせてみると、カメムシの最初の祖先は、肉食が基本だったと考えられる。それらが分化・放散する歴史のなかで雑食性のものが現れ、やがて植物専門へと適応していったらしい。一部は食菌や吸血といった特殊化への道をたどったが、こうした特殊な群がグループのまとまりを超えて並行的に派生していることはには、カメムシたちの強靭な適応力を感じさせられる。(『カメムシ博士入門』P.10)

カメムシの多様な食性②
●動物食-伝統的なカメムシの食文化-
伝統的食性とはいえ、動物由来の栄養のみに依存する種は現存のカメムシでは比較的少なく、むしろ「肉食・菜食兼備タイプ」が多いことを知っておきたい。(『カメムシ博士入門』P.12)


僕はカメムシの口吻はセミのように植物の汁を吸うためのもので、もともと植物食がベースで、その中からサシガメのような肉食が誕生したのだろうと思っていた。元々植物の汁を吸っていたところにその植物を食う虫が現われ──植物と間違えてか、あるいは生活の場を守るために虫を口吻で刺すなどして、たまたま吸った体液に味をしめ、肉食に移行するカメムシが現われた──というようなイメージ。
だから、ウシカメムシが植物食(がベースと思っていた)からセミの卵に「主食」を移行させたということに疑問を感じたが、元々動物食だったカメムシが、セミの卵を求めて産卵痕を探しているうちに(もっと容易に手に入る)植物の汁も吸うようになった──というシナリオなら比較的自然な感じがする。セミの卵がウシカメムシの「主食」らしいが、ということは「副食」で植物の汁も吸っているのだろう。ウシカメムシは「肉食」から「肉食・菜食兼備タイプ」へ移行しつつあるカメムシなのかもしれない。そう考えると納得しやすい気がした。

ついでに擬木でみつけたウバタマムシ





ウバタマムシは昆虫が少なくなったこの時期にも見られる大型の昆虫。狭山丘陵では1年中成虫が見られる数少ない甲虫→【雪とウバタマムシ&1年中

冬の蝶!?クロスジフユエダシャク

冬のチョウ!?クロスジフユエダシャク♂

今シーズンは11月15日に初確認したクロスジフユエダシャクだが、目にする頻度も増えてきた。年に1度、冬に成虫が出現するフユシャクのひとつで、フユシャクの中では早い時期に出てくる。フユシャクの多くが夜行性だが、クロスジフユエダシャクは昼行性。日中オスが雑木林の林床近くをメスを探して舞い続ける。最盛期、落葉の上を低く乱舞するクロスジフユエダシャク♂たちは、ちょっと幻想的でもある。その光景を見て「(冬なのに)チョウがたくさん飛んでいる!」と驚く人もいる。昼間飛ぶところや優雅な飛び方がチョウに見えるのだろう。しかしクロスジフユエダシャクはチョウではなく蛾の仲間(フユシャクは全てシャクガ科の蛾)。とまった姿を見ると、蛾だということがわかる。


ふつう蛾らしいとまり方をするクロスジフユエダシャク♂だが、チョウのように翅を閉じて(立てて)とまっていることがある。


翅を立てた姿はチョウっぽくも見える。セミヤドリガの羽化でも見られたが、蛾の仲間は羽化後、翅が展開する過程で、こうして翅を閉じた姿勢をとることがあるようだ。蝶のように翅を閉じた羽化後と思われる蛾は、しばしば目にする。
翅が伸びきっていないクロスジフユエダシャク♂もいた↓。羽化不全ではなく、その後ちゃんと翅は展開していた。


枯葉擬態の名人(蛾)アカエグリバやヒメエグリバは頭を下にしてとまっていることが多い(その方が擬態効果が高まる)が、フユシャクは頭を上にしてとまっていることが多い。


通常上を向いてとまるクロスジフユエダシャク♂の頭が下の方を向いていたら、メスと交尾している可能性が高い。上向きにとまっている♀と交尾をしようとすると♂が下を向くことになる──ということなのだろう。


木柵の支柱にとまっていたクロスジフユエダシャク♂の向きが怪しいので、よく見るとやはり交尾中だった。


別々に見るとオスとメスは全く別の昆虫のようだが、こうしたシーンを見ると同種なのだということがわかる。
別のところにいたクロスジフユエダシャク・ペア↓。




飛べない蛾!?クロスジフユエダシャク♀

フユシャクのユニークな特徴(メスは翅が退化して飛ぶことができない)を観察できるのはメスだが、フィールドで目にするクロスジフユエダシャクはオスが圧倒的に多い。飛ぶことができないメスは落葉の下や樹皮の裂け目などに隠れていることが多いので目立たず、オスはメスを探して飛び回らなければならないので目につきやすいということだろう。
たまたま目立つところ──案内板の支柱にとまっていたクロスジフユエダシャク♀↓。


小さいながら翅が4枚あるのがわかる。


こうした目立つところにクロスジフユエダシャク♀が出ていることは少なく、たいていメスは見えないところに隠れている。隠れたメスをオスはどうやって探しあてるのか──というのが、なかなか興味深かったりする(*)。

クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか
意外な翅の役割り!?クロスジフユエダシャク

その他の蛾など



晩秋の蛾・ニトベエダシャクはこのところ、ちょくちょく見かける。


木の幹にとまっていたケンモンミドリキリガ↑。あわい緑の分断模様が周囲の地衣類にマッチしているように見えなくもない。


花のまわりを飛びまわりホバリングで吸蜜するホシホウジャクはハチドリのようだが、とまっている姿はずいぶんと印象が違う。


前回投稿したエゾギクキンウワバに似たイチジクキンウワバ↑。鉛直面に頭を下にしてとまっていた(画面右が下側)。
蛾でも昆虫でもないが……ついでに、ビジョオニグモ♀↓。





ミミズク似!?エゾギクキンウワバ~冬尺蛾

ミミズクに似た蛾!?エゾギクキンウワバ



ワイヤーフェンスにゴミっぽい感じの蛾がとまっていた。エゾギクキンウワバ──というのは帰宅後調べて判明した和名。現場では正体不明の蛾で、よく見るとおもしろい形をしていたので撮ってみたもの。


胸の背面に平たい耳介状の突起があって、ミミズク(耳蝉)の成虫↓に似ていると感じた。






ミミズク似(?)のこの蛾は初めて見る種類だった。蛾は種類が多く、手がかりが無いと名前を調べるのもなかなか面倒だ。科がわかればある程度絞り込めるのだが、外見から科の見当をつけるのは僕には難しい……。最初はミミズクを連想させる特徴からサカハチトガリバが思い浮かび、その周辺を調べてみたのだが該当せず……。似たような蛾を以前撮った記憶を辿ってイチジクキンウワバの画像を引っ張り出した↓。


これは近いと感じてキンウワバの仲間をさがし、エゾギクキンウワバにたどり着いたしだい。ちなみに、ミミズクっぽい(?)サカハチトガリバはこんな蛾↓。


エゾギクキンウワバはミミズクを連想させる耳介状突起が目をひくが、背びれ風の突起もイイ感じ。そして「あれ!?」と思ったのが翅の中央にある白っぽい条紋だった。




じつはエゾギクキンウワバを見つけたとき、「ゴミのような蛾」と認識したあと、この白条紋を見て「あれ!? 蛾のように見えるゴミ!?」とプチ混乱があった。白い部分が浮き上がったゴミに見え、その下が少しへこんでいる──(蛾の翅にはないだろう)立体的な段差があるように見えた(錯覚した)からだ。




白条紋があることで、実際にはない段差の立体感(錯覚)が強調されて、白っぽいゴミが付着した暗色のゴミの塊のように見えた。ユニークな耳介状突起も尾びれ風突起もボディーラインをかく乱するような効果があるのかもしれない。ゴツゴツした樹皮や枝あるいは枯れ草などにとまっていたら気づくのは難しいだろう。天敵に対する隠蔽効果がありそうだ。
エゾギクキンウワバの幼虫は和名にあるようにエゾギクなどのキク科植物やヒルガオの葉や花弁を食べ、成虫は花の蜜を吸うらしい。成虫の大きさは、こんな感じ↓。


今季初の冬尺蛾クロスジフユエダシャクも出てきた



晩秋の蛾・ニトベエダシャク↑。この蛾が出てくるとフユシャク出現も近い──というようなコトを前記事に記したが、フユシャク(冬にだけ成虫が出現しメスは翅が退化して飛ぶことができないという特徴を持つシャクガ科の蛾の総称)も現われた。




今シーズン初のフユシャクはコンクリート擬木でみつけたクロスジフユエダシャク羽化不全♂だった。その47分後に笹の葉にとまった2匹目のクロスジフユエダシャク♂↑を確認できたので、その画像を採用。
今シーズン初のフユシャクを確認した5日前にはアブラゼミが鳴いていたのだから、今年は季節感がつかみづらい……。