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フユシャクの産卵&コーティング

オスの翅に隠れたメス:ウスバフユシャク


擬木にとまっていたウスバフユシャク♂。フユシャク(冬尺蛾)のオスが頭を下にとまっているときは交尾していることが多い気がする。そう思ってよく見ると……オスの翅の下からメスの脚がのぞいていた。
角度を変えてのぞきこむと……。

ウスバフユシャクは12月半ばにもペアをみている(【フユシャク色々】)。フユシャクの1つで、オスには翅があるが、メスには翅がない。

産卵前のフユシャク亜科のフユシャク♀


年が明けてからはフユシャク亜科のフユシャクを見かけることが多くなった(他にエダシャク亜科・ナミシャク亜科のフユシャクがいる)。このメスは翅が消失していて、単独でいると種類を見分けるのが難しい(翅のあるオスとペアでいるとわかりやすい)。

あわいブルーの小さな翅が魅力のイチモジフユナミシャク♀ホルスタインちっくなチャバネフユエダシャク♀などに比べると、ルックス的には地味な印象が否めないフユシャク亜科のフユシャク♀だが……特典(?)をあげるとすれば、腹端の化粧筆(フェイスブラシ)のような毛束だろう。この毛束は産卵のさいに卵塊をおおうコーティング素材として使われる。

やはり木製の手摺の上にいたフユシャク亜科のフユシャク♀↓。


基本的には夜行性なのだろうが、しばしば日中も交尾や産卵している姿を目にすることがある。ということで──↓。

産卵中のフユシャク亜科のフユシャク♀


欄干(らんかん)の金属製手すりの上で産卵を始めたフユシャク亜科のフユシャク♀。まだ腹は大きく、腹端の化粧筆(フェイスブラシ)のような毛束もたっぷり残っているが、手摺にはすでに抜けた毛が貼り付けられている。この下に卵が産みつけられている。この25分後↓(画面左下の数字は撮影時刻──時:分:秒)。

卵を全て産み終えてから毛でおおうのではなく、卵を産みながら毛をカバーして産卵領域を拡張していく。

クロバネフユシャクかシロオビフユシャクあたりか……よくわからないが、この種類はかなり念入りに毛のコーティングを行う。卵を産みつけながら毛をはりつけていく一層目は特に時間がかかるようだ。

こうしてわざわざ手間をかけて卵を毛でおおっていくのは、労力に見合うだけの意味があるからだろう。卵に霜がつかないような防寒対策・乾燥を防ぐため・卵に寄生する蜂などから卵を守るため──そんな可能性を想像している。


このような卵塊を作るフユシャクを以前も観察したことがあるが(*)、卵を産み終わった後も、毛の上塗りを何度も繰り返していた。
ということで、翌日、現場に戻ってみると──↓。

産卵後のフユシャク亜科のフユシャク♀


すでに産卵&コーティング作業は終了し、そばには大仕事を終えて、やつれたメスの姿があった。


産卵前と同じ昆虫とは思えないほどのプロポーションの変わりよう……。
そして、「大仕事」の結果は──↓。

前日の「産卵しながらの一層目」作成時は、もっと毛羽立った感じのコーティングだったが、その後何度も「上塗り」をくり返して「みっちりしまった感じ」に仕上がっている。
別の場所(木製の手すりの上)でも、産卵&コーティングを終えた、同種と思われるフユシャク♀の姿をみつけた。


毛のコーティングは、やがて膜のようになり、その膜に孔をあけて幼虫が孵化するようだ(*)。
フユシャク亜科でも種類によって卵塊の形状やコーティングの精度には違いがる。雑なコーティングをする種類では毛の薄いところで卵が覗いていたりする(*)。

フユシャクの産卵とその後 ※産卵&腹端の毛によるコーティングのようす
フユシャクの産卵:列状卵塊ほか
フユシャクの天敵!?

ヒロバフユエダシャクなど

ヒロバフユエダシャクも出てきた


そろそろ現れる頃だろうとサクラッチ(桜ウォッチ)していたところ……桜のわきのサザンカの幹に、今シーズン初のヒロバフユエダシャク♀の姿が。


ヒロバフユエダシャクもフユシャクなので♀の翅は退化して飛ぶことはできない。この小さな翅を前翅・後翅ともにちゃんと見えるように──まるで展翅された標本のようにビシッと広げてとまる《姿勢の良さ》がお気に入り。
桜の幹でも見つけたヒロバフユエダシャク♀↓。

ヒロバフユエダシャク♀は前翅よりも後翅の方が大きい。

ユニークな♀に対し……飛翔能力がある♂は普通の蛾↓。

雨に濡れたサクラの幹にとまっていたヒロバフユエダシャク♂↓。

とりあえず、今シーズンもヒロバフユエダシャクが出てきたということで。

※昨シーズンのヒロバフユエダシャク
ヒロバフユエダシャクとシロフフユエダシャク 模様が似ている両♂の比較・違い
振袖チックなヒロバフユエダシャク♀他
振袖フユシャク【卒】を探せ~トギレフユエダシャク♀
腹黒いヒロバフユエダシャク

産卵中のフユシャク♀


フユシャク亜科のフユシャク♀が擬木支柱の上面で産卵していた。

翅は消失していて一見、成虫には見えないが……産卵シーンを見ると、こんな姿でもちゃんと成虫であり♀であることが理解できる。

冬の陽射しでコントラストがキツいので陰にして撮ってみたもの↓。

このタイプのフユシャク♀は腹端の化粧筆のような毛束を使って産みつけた卵塊を覆う。霜や乾燥を防いだり、卵に寄生する蜂などから守る役割りがあるのではないかと想像しているのだが。
※後日撮影した同卵塊を追記↓


※以前観察したフユシャク亜科のフユシャクの産卵(今回のものとは別種)→【フユシャクの産卵とその後

美しき奇蜂キスジセアカカギバラバチ

美しくして奇抜な蜂:キスジセアカカギバラバチ


雑木林ぞいの小道で、低く飛ぶ1cmほどのキレイなハチにであった。葉から葉へと移動し、葉上に降りるとふちでくるりと尻を葉の外側に向けて腹端で葉の裏にタッチするようなしぐさ──産卵行動をくり返していた。【キスジセアカカギバラバチ(黄筋背赤鍵腹蜂)】──黒い腹に名前の通り「黄色い筋」と「背中の赤」が目を引くハチ。「カギバラ」はメスの腹端が鉤のように曲がっていることに由来するそうな。その形が葉裏にくり返し産卵する作業には適しているのだろう。
赤・黄・黒の彩りも美しが、この昆虫は生活史がユニークなことでも、しばしば話題になる。

カギバラバチの仲間は葉に卵を産みつけるが、これが食草というわけではない。その葉を食いにきたチョウや蛾の幼虫に(葉といっしょに)呑みこまれ、その体内でその幼虫に寄生する別の寄生蜂や寄生蠅に二次寄生することで初めて成長できるという。キスジセアカカギバラバチについてはアサギマダラに寄生したマダラヤドリバエという寄生蠅の蛹からも出ることが確認されているらしい。

産みつけられた卵のうち「運良くたまたま」チョウや蛾の幼虫に(無事に?)喰われることができ、さらに「運良くたまたま」その幼虫に別の寄生蜂や寄生蠅がいた場合に限って成虫になりうる──「運良くたまたま」が重なることが必要なために「めったに成虫になれない」→「めったに見られない珍しいハチ」と思い込んでいる人もいるようだ。しかし、キスジセアカカギバラバチはさほど珍しい昆虫ではない気がする。1つの卵から成虫になれる確率は他のハチより低めかもしれないが、そのかわり小さな卵をたくさん産む。確率の低さを分母の大きさでカバーしているのだろう。じっさい、キスジセアカカギバラバチはブログでもしばしば登場しているし、検索すれば多くの記事や画像がヒットする。
僕も去年、(今回と)同じ時期・同じ場所でキスジセアカカギバラバチを撮っている。そのときは名前も生活史もと知らずにキレイな蜂ということでカメラを向けたのだが……木陰ゾーンだったため(暗くて)ブレたりボケたりで撮影した画像は全て削除。今回が1年ぶりのリベンジ撮影となった。
撮影状況が前回と同じだったので、やはりブレがちだが……とりあえず、キスジセアカカギバラバチの産卵行動のようすを──。

キスジセアカカギバラバチの産卵行動



去年も1匹のキスジセアカカギバラバチが複数の植物の葉で産卵するのを確認していたが、今回はドクダミの群生する場所で、ドクダミの葉での産卵行動が多く見られた。今回撮影したのも全て同一個体。



一度の産卵行動は短い。腹端もあまり深く葉の裏に差し入れているようすはなく、産卵にしてはあっさりした印象。葉のふちから浅いところに産みつけるのは、「手早く作業できる」という産卵効率の利点と、(イモムシ・毛虫は、よく葉のふちから食べ始めるので)「イモムシ・毛虫に取り込まれやすい位置に産める」という利点もあるのだろう。





あまり植物の種類にこだわりはなく産み続けているようにも見えた。植物によってそれを食草とする幼虫の種類も変わってくるはずだが、その幼虫に直接寄生するわけではないし、広い種類に対応できるよう「間口を広げている」のかもしれない。

キスジセアカカギバラバチの超極小卵

キスジセアカカギバラバチに再会するチャンスが来たら、今度こそちゃんと撮りたいと思っていたが、本体のみならず、葉の裏に産みつけられた超極小卵(0.12mmだそうだが)についても確認しておきたかった。
実は去年、産卵行動を撮った後、問題の葉を裏返して卵を探してみたのだが見つけることができなかった。その時は、それほど小さな卵(0.12mm)だとは知らなかったので見落としていたのだろう。
たとえばナミアゲハの卵は直径1.2mmほどだが──仮に同じ形であったとして1.2mmの卵に対して0.12mmの卵では、大きさ(体積)が1000分の1となる。

キスジセアカカギバラバチが産卵したとおぼしきこの葉↑。
その裏側の産卵ポイントを拡大して超極小卵を探してみた↓。




肉眼ではとうてい確認できず、スーパーマクロモードで撮影した拡大画像をみて、ようやくキスジセアカカギバラバチの卵とおぼしきものを確認することができた。鮮明な画像とは言いがたいが……とりあえず、とても小さいことはわかる。キスジセアカカギバラバチは、こんな小さな卵を数千個も産みまわるらしい。



『昆虫はすごい』の【カギバラバチ】について

以前、読んだ『昆虫はすごい』という本にもカギバラバチについて紹介した部分があった。この本ではカギバラバチを《宝くじ的な確率に運命を委ねている》と記しているのだが、その部分に違和感を覚えた。
後戻りできない進化の袋小路に入り込んで、複雑な生活史に追いやられた生物が存在することはあり得るだろう。しかし、後戻りできない進化のそれぞれの分岐点では、その時点で生存率が高まる選択肢が選ばれてきたはずだ。わざわざ生存率を下げるような道が選ばれるはずがない──そう考えるのが自然だろう。堅実な選択の積み重ねの結果であるはずの生態に対し、めったに当らない「宝くじ」の例えはふさわしくないように僕には感じられた。
ド素人の無知な感想だが、この本に対して思うところを記したことがある(*)。そのさいの『昆虫はすごい』からの引用部分(枠内)と僕の感想部分を最後に再掲載しておく↓。

*『昆虫はすごい』(丸山宗利・著/光文社・刊)より*
 寄生性の昆虫には、ほかにも遠まわしな寄生方法をとるものがいる。
 カギバラバチ科のなかまにはスズメバチに寄生するものがいるのだが、その方法はツヤセイボウよりさらに遠まわしで、まるで宝くじのようである。
 まず、カギバラバチは植物の上に非常に多数の微細な卵を産みつける。次に、その葉を食べるイモムシが、葉と一緒に卵を食べる。イモムシに傷つけられた卵は、イモムシの体内で孵化する。そして、スズメバチがそのイモムシを捕まえて、肉団子にして、巣に持ちかえり、幼虫に与える。
 運良くスズメバチの幼虫の体内に入ったカギバラバチの幼虫は、スズメバチの体内を食べ、そしてそれを食い破り、さらに外から食べ尽す。
 カギバラバチの卵の圧倒的多数は、植物の上に産みつけられたままで、さらにイモムシに食われても、そのイモムシがスズメバチに狩られる可能性はかなり低いだろう。このような宝くじ的な確率に運命を委ねているせいか、カギバラバチには個体数の少ない珍種が多い。(P.94~P.95)


これは、「スズメバチからカギバラバチが羽化した」ということなのだろう。その事実をうけて寄生ルートを調べてみると、カギバラバチの卵が産みつけられた葉を食べたイモムシ経由であることが判った──そういうことではないのか?
本文の説明(引用部分)では、「カギバラバチのターゲット(宿主)はスズメバチで、わざわざ手間のかかる非効率的な方法を選んで寄生している」というニュアンスを感じるが……ちょっと納得でない。「では、いったいどうしてそんな面倒ことをすることになったのか?」──誰だって疑問に思うはずだし、この解説だけでは合理性に欠け説得力がないように思われた。

正解はもちろん僕にも判らないが……僕なりの解釈で整理してみた。まず事実関係として確かめられているのは、きっと──、

(1)カギバラバチは葉に卵を産みつける。
(2)スズメバチからカギバラバチが羽化した。
(3)その寄生ルートは、カギバラバチの卵が産みつけられた葉を食べたイモムシ経由。

──ということだろう。
合理的な解釈をしようとすれば、次のようなシナリオが考えられるのではないか。
まず、寄生蜂の《カギバラバチが葉に卵を産みつける》というのは、そういうプログラム(本能)で繁殖してきた(それで必要な生存率は保ててきた)ということだろう。カギバラバチを「寄生者A」とし、そのプログラムが成立し得たのはなぜかを考えると、近くに「カギバラバチの宿主(寄主)B」がいたからだと考えるのが自然だ。カギバラバチと同じように葉に卵を産みつける寄生蜂もしくは寄生蠅などを「B」としよう。「A」と「B」が同じようなプログラムを持っていれば、同じような植物の同じような場所に産卵する事はあり得るだろう。もっと積極的に「A(カギバラバチ)」が「B」の産卵の痕跡を探して産卵している可能性もあるかもしれない。同じ環境下で「A」が「B」の卵の近くに産卵することは「宝くじ」に当るほど難しい事ではないはずた。「A」も「B」も「卵がどうなるかを考えて」そこに産んでいるわけではない。ただ同じようなプログラム(本能)に従って産卵しているだけ。それがどうやって寄生が成立するかというと、卵が産みつけられた葉を(これを食草とする)イモムシが食べ、「A」と「B」両者の卵がイモムシの体に入る。イモムシの体内でまず「B」が孵化しイモムシを体内から食いはじめる。そのさい、「A(カギバラバチ)」の卵も一緒に食べ、「B」の体内に「A(カギバラバチ)」が取り込まれることで二重寄生が成立する。A(カギバラバチ)は「宿主(寄主)B」の体内で孵化し、Bを食って成長する──というシナリオだ。
これならば、「A(カギバラバチ)」の「B」への寄生は「宝くじ」に当るような特別なことではないだろう。
これが基本的な寄生シナリオだったのではないか。それならば「あり得そうだ」と思える程度に自然で納得できる。

ではなぜ「A」は最初に卵を食べたイモムシへの単純寄生ではなく「B」への二重寄生という、より複雑な方法をとるようになったのか? そのプレシナリオも想像してみる──。
「A」は元々イモムシへの単純寄生をしていたのかもしれない。ところが同じようにイモムシに寄生する「B」という競争相手が現れ、同じイモムシの体内で「A」と「B」がかち合うことが頻発するようになったのではないか。イモムシの体内で孵化した「B」幼虫は強く、「A」の卵や幼虫を食い殺して、この競争を制していたとする。劣勢に立たされた「A」だが、「B」に食われた卵の中から「B」の幼虫体内で孵化し、二重寄生に成功するものが出てきたとすれば──「A」は寄生対象を「イモムシ」から「B」にシフトすることで巻き返しを図ったという可能性も考えられなくもない。
これはあくまでも想像で、実際の進化の過程はわからないが……「A」は《最初に食われた時には孵化せず2度目に食われるのを待って孵化し寄生する》という新たな戦略に活路を見いだしたのではないか……。

さて、イモムシに食われ、その体内で2度目に食われるのを待つ「A(カギバラバチ)」の卵──この《「A」の卵を体内に取り込んだイモムシ》をスズメバチが狩り、幼虫のエサにすることもあるだろう。そのさい、「A(カギバラバチ)」が孵化するのは「B」の体内ではなく「スズメバチの幼虫」の体内ということが起こる。そうして「A(カギバラバチ)」はそのまま「スズメバチの幼虫」に寄生するというシナリオが派生する。
「A(カギバラバチ)」が「B」に寄生する基本シナリオよりも「スズメバチの幼虫」に寄生する派生シナリオの方が確率的には低いだろう。しかし食料資源としては「B」より大きな「スズメバチの幼虫」の方が利用価値が高く、「A(カギバラバチ)」幼虫も大きく育ち、より多くの卵を産める成虫になるという利点がありそうな気はする。スズメバチに寄生できる確率は低いが、それがかなえば繁殖能力は高まる──この寄生確率と繁殖率のかねあいで、スズメバチに依存した方が有利であった場合には、「スズメバチがメイン・ターゲット」という選択肢が生まれるのかもしれない。しかし、そうでないとすれば、《「A(カギバラバチ)」のターゲットは「B」が基本》で《「スズメバチへの寄生」はしばしば起こるアクシデント》程度のものではないか……という気もする。
いずれにしても、《スズメバチからカギバラバチが羽化した》という事実だけから、《「宝くじ」的な寄生方法をとる蜂がいる》──というニュアンスのプレゼン(解説)に直結したのだとすると、ちょっと違和感があり、僕にはすんなり納得できなかった。

上記のシナリオはあくまでも想像ではあるが、「A(カギバラバチ)」と「B(Aの寄主でありイモムシの寄生者)」そして「イモムシ」──このような3者の関係は実際に存在するらしい。
飼育環境下で卵から育てたアサギマダラ(蝶)からマダラヤドリバエという寄生蠅が羽化することがあるという。アサギマダラ幼虫にエサとして与えた葉にマダラヤドリバエの卵がついていて、これを食べたアサギマダラ幼虫体内でマダラヤドリバエが孵化し寄生が成立するらしい。そしてアサギマダラ幼虫に寄生したマダラヤドリバエの蛹から、さらにキスジセアカカギバラバチという寄生蜂が羽化することもあるというのだ。キスジセアカカギバラバチもイモムシが食う葉に卵を産みつける。つまり、前述の「A(カギバラバチ)」:「B」:「イモムシ」の関係と「キスジセアカカギバラバチ」:「マダラヤドリバエ」:「アサギマダラ幼虫」の関係は構図としては同じといえる。
アサギマダラのエサとして与えた同じ葉にマダラヤドリバエとキスジセアカカギバラバチの両者の卵があることは、さほど不思議な事ではないだろう。
そうした寄生を受けたイモムシを、たまたまスズメバチが狩ることで《スズメバチからカギバラバチが羽化した》という状況が生まれる──そういうことではないのだろうか?
余談だが、キスジセアカカギバラバチと思われる蜂は狭山丘陵でも見たことがある。ここでもアサギマダラの姿はたまに見かけるが、狭山丘陵でのキスジセアカカギバラバチの寄生ターゲットはアサギマダラではないだろう。おそらく多くの(?)種にフレキシブルに対応(寄生)しうる種類なのだろう。それが、たまたまスズメバチのような狩り蜂に寄生するケースもある──というだけで、寄生蜂が「宝くじ」のような冒険をおかしているわけでは決してないだろうと思う。
仮にスズメバチをメイン・ターゲットとするカギバラバチがいたとしても、そこへ到達するまでには、合理的に説明できるルーツ(シナリオ)が必ずあるはずだ。


可愛い悪役!?ルリカミキリの産卵

ルリカミキリ@カナメモチ

今年は5/15に初個体を確認したルリカミキリ。その後カナメモチ(ベニカナメ?)を見ると葉の裏をのぞいている。食痕はあちこちで見つかるし、本体(ルリカミキリ)もボチボチ見かける。

いればキレイな順光ショット(葉の裏にとまっている状態では逆光なので上翅のキラキラ感がでない)を──と、トライしてみるのだけれど……たいてい落下or飛翔で撮り逃がしてしまいがち……。
先日はチョットもっさりした個体がいたので、落下したのをキャッチして近くの葉(カナメモチではない)にとまらせて撮ってみた↓。

少しばかりズンドウ系なプロポーションは《カミキリを可愛らしくデフォルメしたSDカミキリ風》と感じるのは僕だけであろうか? オレンジ色の体に瑠璃色にかがやく上翅が美しい。触角は黒いがその根元はオレンジ色で複眼を完全に二分している。顔(頭部)はオレンジ色だが複眼は黒いので、触角のつけ根で分断されて四つ眼となっているのがよくわかる。前面(腹面)の複眼は、ちょっと困ったような悲しげな表情にも見える。




撮影中、何度か飛んだが、すぐ近くの葉にとまったり指にとまったりで、撮り続けることができた。飛翔後、後翅の先がまだ収納しきれずにのぞいているルリカミキリ↓。


ルリカミキリの産卵行動

ルリカミキリは体長9~11mmほどで、バラ科の生木をホスト(寄主植物)とするそうな。【昔はいなかった身近なカミキリ】でも記したが、僕が子どもだった頃にはこの虫を見た記憶がない。当時は生け垣と言えばマサキやサワラ(ヒノキ?)が多かったが、気がつけば今はカナメモチだかレッドロビンだかが圧倒的。それで、これをホスト(寄主植物)とするルリカミキリがふえてきたということらしい。

成虫は葉の裏にとまって葉脈を齧る。ルリカミキリが発生しているカナメモチにはこの独特の食痕(かじった痕)が残されているので、すぐわかる。一方、幼虫は枝の内部を食害するという。
先日、カナメモチの枝を齧るルリカミキリ成虫を見つけ、はじめてルリカミキリの産卵行動を観察することができた。

葉の裏にとまっているときは、すぐに落ちる(逃げる)のに、カメラを近づけても一心不乱に枝をかじり続けていた。産卵するための孔を開けているのだろうということはすぐにわかった。

頭を下にして枝を齧っているが、横からの画像をよく見ると、産卵用と思われるメインの孔の上部にも樹皮にささくれができていた。メインの孔を掘りつつ、その上へ移動して樹皮を齧ることをくり返していた。初めは産みつける場所が気に入らず、産卵孔の位置変更を模索しているのだろうかと思ったが、どうもそうではないらしい……。

深めのメインの孔を掘り進めたり、その上の樹皮をかじったりをくり返し、観察を初めて45分あまり経って、ようやく産卵の体勢に入った。

産卵した痕を見ると、やはり産卵孔の上に樹皮をかんだ痕が残されていた。これは孵化した幼虫が樹皮下を食い進みやすくするための下準備なのだろうか?

この日、近くで別のルリカミキリの産卵も確認したが、ここでも同じ行動が見られた。

やはりメインの産卵孔の上にかじった痕がある。


ルリカミキリは、かわいい悪者!?

見た目は可愛らしく美しい昆虫なのだが、ルリカミキリはヒトが植えたカナメモチの生木などを食害するのだから、いわゆる「害虫」ということになる。ナシやリンゴの害虫でもあるらしい。
だからキレイだのカワイイなどと好意的な取り上げ方をしていると「害虫を賞賛するとは何事か!」と、お叱りを受けそうな気もしないではないが……僕の昆虫に関する関心は「ヒトの役に立つか否か(害になるか)」という視点とは別のところにある。

昆虫を話題にする時、よく「益虫か?/害虫か?」という価値観で選別されがちだ。
「益虫=良い虫/害虫=悪い虫」というカテゴリー認識のようなものがあって、条件反射のように害虫は忌むべき存在という位置づけで認識され、「悪者」とみなされがち。しかし、益虫も害虫も生物としての基本的なしくみは同じ。自然界で果たす役割りはそれぞれだろうが、生命活動としては同次元のはずだ。益虫か害虫かという区分は、それが、たまたま人にとって都合が良いか悪いか──というだけの話だ。
ヒトがヒト活動をする上で都合の悪いものを駆除するのは、ある部分しかたがない。しかし、それはあくまでの「ヒトの都合(利害)」の問題であって、なにも「虫が悪い」というわけではない。

ヒトはヒトの都合で自然(の一部)を資源として利用する。見映えがいい園芸種を植えたり、樹木を生け垣に使ったりもする。その持ち主とっては、そうした植物も私物であり財産なのだから、「大事な財産の価値を下げる(食害する)憎っくき虫」という目で害虫を捉えるのも無理からぬことだろう。
しかし、私物・財産といっても、そこは植えられた植物も生命体──生命は生命をよび、いのちのつながりを模索・展開しようとする。そこにはヒトの意志を越えた力が働いている。ヒトが誕生する以前から存在していた生命のシステム──生命は単独では成立し得ない。いくつもの種類が影響を及ぼしあって構築してきた生態系の中で初めて成立し得る。一片の生命はそこから生態系を再構築しようとする。ヒトがわずらわしく感じる「虫がわく」現象も、自然の生命パワーの一端にすぎない。
植物は虫の餌として利用される(食われる)一方、虫を利用して受粉に使ったりもしている。植物に集まる虫を狙って捕食性の生き物もやってくるだろう。植物によっては、自分(その植物)にとって都合の悪い虫を排除するためにガードマンの虫を雇うものもいるという。1つの生命を基点にそこに生命のネットワーク──生態系を展開しようとする。「招かざる虫」を呼ぶこともあるわけだ。

カミキリも植物食だが、中でも生木に付いてホストを弱らせたり枯らしたりする種類は農林関係者や園芸家達に目の敵にされやすい。しかしカミキリだって何も憎くてホストを攻撃しているわけではない。ホストが絶滅してしまえば自分たちが困ることになってしまう。
ホストが繁栄すればがカミキリも増える。カミキリが増えればホストが抑制される──自然の中では《1つの種が増え過ぎないような抑制装置としての働き》あるいは《森林の新陳代謝を加速し生命活動を活性化する役割り》をカミキリは担っているとみることもできなくはない。
ある種のカミキリは木を枯らす──だから「悪い」と考える人もいるかも知れないが、ヒトはカミキリとは比べ物にならないほどの森林伐採・自然破壊をくり返してきた。生木喰いのカミキリが「悪い」のなら、ヒトは「かなりタチが悪い」ことになる。
木を枯らすカミキリも自然の中では《森林の新陳代謝を加速し生命活動を活性化する役割り》すなわち《進化の加速装置》的な役割りを担っているのだとすると……ヒトの一見破壊的に見える自然改変にも何か意味があるのだろうか?──そんな着想から【SFメルヘン『地球のタネ』】などというショート・ショートを書いてみたこともあった。まぁ、それはさておき──、

昆虫を自然物・生命体としてみた場合、それが益虫か害虫か(人にとっての利害関係)は僕にとってはあまり関心が無い(次元が違う話)。それよりも、虫が《人の都合のために創られたものではない》というところに、むしろ(ヒトの利害とは無関係な)《自然の意志》のようなものを感じていたりもする。益虫も害虫も生物の多様性の1形態に過ぎない。

多様性といえば……生物多様性を大事にすべきだという観点から(?)、ビオトープ作りに熱心な向の中には、かつて自然が豊かだったときの在来種オールドメンバーで構成された生態系を復元することが正しい事だと信じている人がいるようだ。しかし環境は時代とともに変わる。生命とは器に注がれた水のようなもので、容器に合わせてフレキシブルに形を変える──そのつど環境に順応し適応するものが現れることで生態系も移ろっていくものではないかと思う。むしろ、したたかとも言える適応力が《多様性》の根源的な力になっているのではないかと僕は考えている。
生物多様性の本質は、1つの生態系モデルを頑にキープしようとする保守的なものではなく、したたかに変化し適応しようとする革新的なパワーにあるのではないかと思うのだ。(保守的でなく)革新的であったからこそ現在の多様性が実現できたのではないだろうか。

子どもの頃には見たことがなかったルリカミキリ──その小さな姿を町の中で目にし、《ヒト活動によって本来暮らしていた自然環境は少なくなっているだろうに、ヒト活動で導入されたカナメモチに活路をみいだすとはアッパレ!》と内心ひそかに感心したりする。そのしたたかさ・けなげさ・たくましさの中に(逆に?)自然の意志・多様性の根源的な活力の片鱗をかいま見るような気がしないでもない。

ヒトの科学テクノロジーは他の動物とは比べ物にならないほど進歩を遂げている。しかしながら自然が生み出したこの小さな虫1匹作ることができない。進化の歴史・世代交代の密度などはヒトより昆虫の方がはるかに進んでいる。現在見られる虫はそんな《進化の最先端モデル》ということができるだろう。そんなものが我々のが身近な、見過ごされがちなところに暮らしているなんてスゴイことだ。彼らは人ヒトが管理する環境の中でも、ヒトの意図とは関係なく独自の生命のシステムに乗っ取って淡々とそれを履行している──それを目の当たりにすることに、大げさな言い方をすれば感銘を受けるのである。

小さな昆虫を見て「身近な所にこんな世界があったのか」と感心することは少なくない。
人智を超えた世界の存在を感じさせ、好奇心や想像力を刺激する昆虫の存在。日常空間の中に隠された未知の扉をひらく鍵のような存在とも言える昆虫がおもしろくて僕は虫見をしているようなところがある。

変化する模様!?キマダラミヤマカミキリ他

変化する模様!?キマダラミヤマカミキリ


僕の図鑑には【キマダラカミキリ】と記されているが、最近は【キマダラミヤマカミキリ】と呼ぶらしい。なんでも、キマダラミヤマカミキリは「ミヤマカミキリ族(Tribe)」だそうで……それでこう呼ばれるようになったらしい。
「長い名前は、わずらわしい……【キマダラカミキリ】でいいぢゃん。だいたい深い山限定のカミキリでもないのに《深山(ミヤマ)》だなんて、ヘンだろう」──一般民間人的には、そう思わないでも無い。
ところで、このキマダラミヤマカミキリ──個人的に面白いなと感じることがある。光の加減や見る角度でマダラもようが変化して見える──ということだ。上の画像では上翅の模様は(ほぼ)左右対称に見えるが、同じ個体のこの画像↓をご覧あれ。

同じ個体でありながら上翅の模様が左右非対称に見える──まるで別人ならぬ別個体だが、同じ時に同じ場所で撮った同じ個体。光沢昆虫が光の加減や見る角度で色合いを変えるのはおなじみだが、キマダラミヤマカミキリの質感で模様が変化するのはおもしろい。このとき同じ個体を撮った画像を3つ並べてみた↓。

ちょっとした「なんちゃってカメレオン」。カメレオンは気分や光・温度などで体の色・模様を変化させるが、キマダラミヤマカミキリの模様の変化は、光学的な現象のようだ。上翅の濃淡部分が領域を変えることで模様が変化して見えるわけだが……なぜ濃淡部分が領域が変化するのかというと、上翅表面は細かい毛が密生しており、この毛の向きが部位によって違うため。
(僕はゴルフをしないが)ゴルフの芝目に例えると、密生した毛の向きが順目だと明るく見え、逆目だと暗く見える(毛に光があたる側では明るく、毛の影の側では暗く見える)。
密集した毛の向きは左右の翅で対称だが、光の入射角度や見る角度の関係で模様は左右の翅で非対称に見えがちだ。また、明るい日向ではコントラストが強まり、影に入ると明暗のギャップは少なくなる。
体表面に密生した癖毛(?)のアップ画像は【キマダラカミキリの左右非対称に見えがちな模様?】参照。

普通、昆虫は左右対称で、虫探しをするときは、この「対称性」が一つのポイントになる──これは僕の場合だが……たぶん昆虫を捕食する鳥や動物等もそうではないかと思う。この「対称性」を壊すことによって天敵から見つかりにくくする──という対策は有効なはずだ。ノコメエダシャクを初めて見た時はそう感じた。
それでは、キマダラミヤマカミキリの場合はどうか……上翅の模様が左右非対称に見えることで、はたして天敵からの被発見率を下げられるのか──生存率に影響を及ぼすほどの効果になっているかは、ちょっと怪しい感じもする。たまたま(?)くせ毛の多い表面になって、それが隠蔽効果のあるまだら模様に見えたので受け継がれた……左右の対称性はさほど生存率に関係せずに「まだらもように見える癖毛」の部分に隠蔽効果があって、この特徴を獲得したのではないか……と想像している。例によってド素人の脳内シミュレーション・頭の体操。

スイカズラ開花時限定!?旬のシラハタリンゴカミキリ


旬のカミキリということで、スイカズラを見ると、のぞいてしまう。葉脈がスリット状に食われる食痕があると、ふきんを捜索。見つかるとやはり嬉しい。

見つけたとき撮りづらい所にいたので、葉を動かそうとしたらポロリと落ちて、近くの葉によじのぼってきたシラハタリンゴカミキリ。


シラハタでないリンゴカミキリ@ベニカナメモチ

今の時期はルリカミキリも気になるので、ベニカナメモチの植込みをのぞきがち。葉の裏にとまっているルリカミキリ(体長9~11mm)の姿を思い描きながら見ていたところ、イメージよりもぐっとデカいカミキリが目にとまった。初めて見る(シラハタのつかない)リンゴカミキリ(体長13~21mm)だった。

リンゴカミキリの仲間だということはすぐにわかったが、シラハタリンゴカミキリではないとも直感した。見慣れたシラハタリンゴカミキリに比べて、だいぶ細い──これがリンゴカミキリかと思い当たった。


リンゴカミキリはサクラにつく──という話はきいていたが、ルリカミキリ狙いで探していたベニカナメモチの生け垣での初遭遇は想定外。ちょっと意外で驚いた。

旬のルリカミキリ@ベニカナメモチ


そんなわけで、ベニカナメモチで探していたルリカミキリ。先日【昔はいなかった身近なカミキリ】でネタにしたばかりだが……。

光沢のある昆虫は葉の裏にとまっていると、逆光になってその特徴──きらめきがキレイに撮れない。なんとかキラキラ感のあるところを撮りたいと思うのだが……みつけてもすぐに落下&飛び去ってしまって、なかなか希望通りには撮らせてもらえないのであった……。

ジンガサハムシの産卵

ルリカミキリからの《葉の裏にとまっている光沢昆虫》つながりで……ヒルガオの葉の裏のジンガサハムシの金タイプ。産卵中だった。例によって逆光のため、そのきらめきがわからないが、とりあえず、このまま撮影。

ジンガサハムシは薄い膜状のカプセルの中にいくつか卵を産みつける。すでに膜層(?)が葉に貼り付けられていた。その上を腹端がゆっくり往復して産卵と膜かけ(?)をくり返しているように見えた。





卵を包む膜は折り返され、いく層か重ねられているように見える。
卵鞘(卵の入ったカプセル)を離れたジンガサハムシは飛び去ったが、別の葉にとまっているところを見つけ、逆光でないところで撮る。

ちょっと上翅が開きかけているが、このあと飛翔した。
ジンガサハムシの産卵は以前も撮ったことがある。【ジンガサハムシの産卵~光沢昆虫は難しい】の記事の方が産卵中の卵は、きれいに撮れていた。

季節の移ろいは早い…


このところ、次々にシーズン初の顔ぶれを見かけているが、今年もアカシジミが出てきた。

この時期、やたらデカく感じるアカボシゴマダラの春型。夏型はもっと黒っぽく、赤い模様が入るので、一見全く別の種に見える。狭山丘陵では数年前に初めて見た外来種だが、今では最も良く見かけるチョウの一つとなっている。

キアシドクガもミズキの周りを飛び始めている。白いチョウよりもエレガントな白い蛾──僕はそう感じる。翅の白さに真珠やシルクのような高級感を覚える。画像は擬木の下で羽化した飛び立つ前のキアシドクガ。奥に抜け殻(蛹)が見えている。この蛹は、かつてマンガ『とりぱん』で極小ツタンカーメンとしてネタにされていたことがあった。

擬木の上にいたアカスジキンカメムシ新成虫。発色の具合は個体によって差があるのだが、今年は鮮やかな色合いの個体が例年より多いような気がする。