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マツトビゾウムシのシンデレラ



着想の経緯

昆虫ウォッチングで擬木を見続けていると、脳味噌は設定した昆虫フィルターに反応があったときに注意が呼び覚まされる自動運行モードになりがちだ。(機械的に?)目では擬木を追いながら、脳味噌はあまり働いていないか別のことを考えていたりする。
《悟りの境地》か《妄想の狂地》か──こうした状態では弛緩した脳味噌の片隅・意識の隙間にたあいもない着想がわいたり、荒唐無稽なイメージが展開すことがある。僕はこれを「エアポケット幻想」などと呼んでいるが、今回もそんなハナシ。タイトルをつけるなら──『マツトビゾウムシのシンデレラ』。

今回の着想のきっかけは、ギボッチ(擬木ウォッチ)をしていて目に入った入れ歯だった(冒頭の画像)。昆虫を想定していたので、まさかこんなものがフィルターに引っかかるとは予想もしておらず、違和感たるや大きかった。いったい、どうしてこんなモノが擬木の上に置かれるなどといった状況が発生しうるのか!?──どうでもいいといえばどうでもいい話だが、これはちょっとしたミステリーとして心にひっかかっていた。そして後日、この入れ歯はこつ然と姿を消していたのである。誰が何のために持ち去ったのか!?……謎は深まるばかりであった……。

この「擬木上に残された入れ歯」からふと連想したのが(既に記した)シンデレラの話(*)。「残されたガラスの靴」で持ち主(シンデレラ)を特定する定番のストーリーは説得力に欠ける。持ち主を特定するのであれば、残されたツールは「靴」よりも「入れ歯」の方がふさわしいのではあるまいか? 歯の治療痕は(検死で)被害者特定にも使われたりもする。「残された入れ歯」がピッタリ合った人がシンデレラだというのであれば納得できる……そんなことを考えたわけだ。

さて、ギボッチ(擬木ウォッチ)ではその後、マツトビゾウムシを見るようになる。この虫の新成虫には牙(状突起)がついていて、地上に出てくるとほどなく脱落するらしい(*)。擬木上で片方の牙をなくしてたたずむマツトビゾウムシ(画像)を見ているうちに、ふと閃くものがあった。「マツトビゾウムシの失われた片牙」と「擬木上にとり残されていた入れ歯」が、頭の中でリンクしたのだ。『奇跡の人』で、「手に触れているもの(井戸水)」と「water」が突然結びついたヘレン・ケラーの心境!?
《擬木の上に残されていた謎の「入れ歯」は、片牙のマツトビゾウムシが落としていった「ガラスの靴」的存在ではなかったか?》──頭の中にはにわかに、『マツトビゾウムシのシンデレラ』のストーリーが展開するのであった。



マツトビゾウムシのシンデレラ

あるところに新出(しんで)玲良(れいら)という娘がいた。意地悪な継母とその連れ子である義理の姉に虐げられた生活で、自由な外出もままならない。彼女の友達は虫たちだけであった。その虫たちが擬木のステージで舞踏会を開くという話を知り、玲良はできるなら自分も虫になって参加してみたいと思う。と、そこに現われたお人好しの老婆──実はかつてシンデレラに魔法をかけ、車錠探偵長(@破裏拳ポリマー)にホラメット(転身用ヘルメット)を与えた魔法使いであった。
「虫たちの舞踏会に出たいんだね。願いをかなえてあげよう。一晩だけあんたを虫にしてあげるよ」──魔法使いのおばあさんが杖を一振りすると、玲良の姿ははあっという間にマツトビゾウムシに変わった。「ただし、今回の魔法の効力はは今日限り。夜12時を告げる鐘が鳴り終わる前に戻ってくるんだよ」
魔法使いのお婆さんに見送られて、マツトビゾウムシとなった玲良は飛翔して虫たちの舞踏会場へ向かう。

玲良は擬木の上で行われた虫たちの舞踏会に飛び入り参加。そしてマツトビゾウムシの王子に見初められる。あまりの楽しさに時が経つのを忘れていた玲良だが、ふと気がつけば夜12時が近づいていた。
「しまった。はやく戻らなければ!」あわてて舞踏会場をあとにするが、そのとき、マツトビゾウムシになっていた玲良は、牙(状突起)の片方を擬木の上に落としてしてきてしまう……。
なんとかタイムリミットギリギリで、部屋に帰りつき人間に戻ることができた玲良だったが……鏡を見てビックリ! 彼女の上あごからは歯がごっそり抜け落ちていたのであった。
そのころ、虫たちの舞踏会場となった擬木の上では……マツトビゾウムシの王子が、行方をくらました愛しい相手が落としていった片方の牙を手にしていた。「この牙が、欠け痕と一致する娘をきっと探し出して妃にするのだ」──王子が宣言したまさにそのとき、12時の鐘が鳴り終わった。すると彼が手にしていた牙は巨大化し、人間の入れ歯になった──シンデラレの魔法が解けたタイミングで、マツトビゾウムシの牙もヒトの歯に戻ったのだ。王子はその下敷きになって身動きがとれず、気を失ってしまう。

さて、人間に戻った玲良だが、歯がごっそり抜け落ちていたことに我慢ならず、魔法使いのお婆さんを探しまわって数日後にようやく見つけて談判する。「どうひて、わたひがこんな目にあわなきゃいけないの!? 元の姿に戻ひて!」
魔法使いのお婆さんは早合点して「おやおや、そんなに虫の姿がよかったかい。それじゃ戻してやろう」と玲良に魔法をかけて再びマツトビゾウムシに変えてしまった。
途方に暮れたマツトビゾウムシの玲良は舞踏会場だった擬木に戻る。すると彼女の片牙を抱いた王子が気を失って倒れていた。王子を押さえつけていた入れ歯は、再びかけられた魔法によってマツトビゾウムシの牙に戻っていたのだ。
「王子様、しっかり!」玲良が王子を抱き起こすと王子は覚醒し、かかえていた牙を玲良の顎にあてる。「おお、ピッタリ一致する! 君こそ探していたプリンセスだ!」
玲良は昆虫として生きることを受け入れ、マツトビゾウムシの妃になったのだった。

これが、「《擬木上に突如現われ、数日後にこつ然と消えた入れ歯》の真相」である……。
──という、エアポケット幻想ストーリー。


*シンデレラには嘘がある!?~ガラスの靴よりふさわしいもの

https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-745.html

*片牙ゾウムシ&シロトゲエダシャク
https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-749.html

●エアポケット幻想
https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-642.html

【冗区(ジョーク)】~メニュー~
https://hoshtani.blog.fc2.com/blog-entry-379.html

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片牙ゾウムシ&シロトゲエダシャク

片牙のマツトビゾウムシ



先日は牙なし&牙ありのマツトビゾウムシを紹介したが、今回擬木の上でみつけたのは……。


知らずに見ると「ゾウムシにするどい牙!?」とビックリするが……口吻が短いゾウムシ(短吻類)の中には、羽化直後の成虫が大顎に牙状付属突起を装備しているものがいて、これは蛹室から地上へ出るさいに使われると考えられているらしい。《牙(状付属突起)》は、役目を果たすと(?)ほどなく脱落してしまうようだが、左右同時にはがれ落ちるわけではないようだ。


このような片牙状態の新成虫を目にすることもしばしば。マツトビゾウムシの《牙》は大きく交差しているので、強く噛み合わせるとか、何かを挟んで噛むことで《牙》の根元に力をかければ、折る(剥がす?)ことができそうだ。しかし、どちらかの《牙》が脱落すると、「噛み合わせる力」を利用して折る(剥がす?)ことはできなくなるから、片牙が残った状態がしばらく続くのかもしれない。






別の擬木の上にいたマツトビゾウムシ↓。よく見ると、こちらも左の《牙》だけ残っていた。






よく見ると《牙(状付属突起)》の根元はアンプル容器の頸部のように細くなっている。この部分で折れるようにできているのかもしれない。

シロトゲエダシャク

マツトビゾウムシの新成虫もでてきて春の気配も感じられるが……頑張っているフユシャク(冬尺蛾)もいるということで──。


名前に「フユ」はつかないが、メスの姿はまさにフユシャク(メスは翅が退化して飛ぶことができない)。


僕は「はみ腹」と呼んでいるが、伸びきった腹の節部分──鱗粉エリアの裾から卵の詰まった薄い皮膚(緑色)がのぞいている。


メスはこんなにユニークな姿をしているのに、オスは平凡な(?)蛾↓。





擬木にいたカメムシも、ちょろっと──↓。


カッコ良いウシカメムシ↑とキレイなムラサキナガカメムシ↓。




牙なし&牙ありマツトビゾウムシ他

マツトビゾウムシ牙なし(越冬成虫?)&牙あり(新成虫)



2月の終わりに擬木上でみつけたマツトビゾウムシ。名前のとおり松の近くで見かけることが多い。この虫を見ると、つい口元をのぞき込んでしまう。ゾウムシの中でも口吻が短い(ゾウムシといいながらゾウには似ていない)短吻類の新成虫は牙(きば)状の付属突起を付けていることがあるからだ。この《牙(状付属突起)》は羽化直後の成虫にあって、蛹室から地上へ出るさいに使われ、その後脱落してしまうらしい。「鋭い鉤状の牙をもつゾウムシ」──温厚な(?)イメージのゾウムシと恐ろしげな(?)《牙》のミスマッチな姿が面白いので、このテ(短吻類)のゾウムシを見ると《牙》の有無を確かめてしまう。
──ということで、このマツトビゾウムシには《牙》はついていなかった。新成虫が現われるのは3月になってからだろうと予想していたが、それには少し早い。これは成虫で越冬した個体だろうか?


さて、そして3月。やけに暖かい日があったりして、そろそろ《牙》つき新成虫バージョンが出てきているのではないか……と思っていると、いた↓。


いたのは2月の終わりに牙なし個体を見たのと同じ松近くの擬木上。期待の《牙(状付属突起)》があるのはすぐわかったが……何やらゴミのような物がついている。




蛹室を破壊したときのなごりか、地上へ掘り進むさいに付着した物なのか……《牙(状付属突起)》が利用されたこと(器官として機能していること)を示すものだろうか? しかし、この状態では《牙(状付属突起)》の形がわからないので、ティッシュを使って取り除いてみた。


ぷちクリーニングした直後は触角を倒してじっとしていた↑が、やがて触角を立てて歩き出した↓。


もう少し色々な角度から撮りたかったのだが……この後、ポロッと落下。見失ってしまった。

牙付きマツトビゾウムシ
牙付きクチブトゾウムシ

ハートカメムシよりキレイなモンキツノカメムシ



やはり擬木の上に出ていたモンキツノカメムシ。成虫で越冬した個体だろう。よく似た種類で背中の紋がハート形のエサキモンキツノカメムシというのがいるが、紋の形には個体差があって両種にまぎらわしいものが存在する(*)。
ハート紋が標準のエサキモンキツノカメムシの方が人気&知名度は高いが、エサキモンキツノカメムシでは茶色の前胸背がモンキツノカメムシは緑色。配色的にはモンキツノカメムシの方が美しい──と僕は感じている。



*【ハート紋のモンキツノカメムシ&…】より↓。 ※標準的なタイプの比較



4月のウバタマムシなど

4月のウバタマムシ@松



久しぶりに松ウォッチをしてみると、枝にウバタマムシがとまっていた。前胸背から上翅に隆起した筋状の模様が走るシブイ味わいがある大きめ(24~40mm)のタマムシ。


幼虫はマツの枯木に穿孔し成虫はマツ類の葉や樹皮を食うという。昆虫は見られる時期が限られているものが多いが、ウバタマムシ(成虫)に関しては1月から12月まで全ての月で確認している(*)。
同個体の別アングル画像↓。


この個体は↑右上翅の先端がわずかに曲がっていた(羽化時に伸びきらなかったのか?)。
近くのマツで枝先に2匹目のウバタマムシを見つけた↓。


2匹目のウバタマムシを撮っていると、その上の枝にも3匹目がいるのに気がついた↓。


この3匹目を撮っているとき、2匹目が止まっていた枝を揺らしてしまい、2匹目が落下。せっかくなので(?)拾い上げて撮影↓。


色彩の派手さではヤマトタマムシに劣るが、ヤマトタマムシの上翅が薄くきゃしゃな感じがするのに対しウバタマムシの上翅は隆起のあるしっかりした作りで、質感的にはウバタマムシの方が高級感が漂っているようにも思う。
手に乗せたウバタマムシはこのあと上翅をパカッと開くとブォ~ンと飛び去った。十字架を思わせる飛行フォルムと翅音はヤマトタマムシとそっくり。
ウバタマムシの上翅を縦に走る隆起模様は翅の強度を高める構造なのだろうと想像するが、木目を浮き上がらせる技術をほどこした工芸品を思わせる。擬木にも隆起した木目模様を模したものがあるが、ウバタマムシを見るとこうした擬木が思い浮かぶ。また隆起木目調の擬木を見ると、ウバタマムシを連想してしまう。


ヤニサシガメ幼虫



松ウォッチで目につくものといえば──ヤニサシガメ。ウバタマムシが見つかったマツでは、ヤニサシガメの幼虫もあちこちで見られた。捕食性のカメムシながら、マツ類に依存しているという。


マツ周辺の擬木の上でも見られるヤニサシガメ幼虫↑。背中にゴミがついているが、ヤニサシガメの体はベタベタしている。このベタベタ物質については分泌物だとする説とマツヤニを塗りつけたものだという説があって、それを確かめるべく飼育してみたが、疑問はスッキリ解消できなかった……(*)。


擬木上でヨコバイの幼虫を捕食していたヤニサシガメの幼虫↑。
こちら↓は蛾の幼虫を捕食。


この個体は丸々と太っているが、幼虫で越冬したヤニサシガメは5月頃に羽化する。

片牙のクチブトゾウムシ



ところで、このところ口吻の短いゾウムシを見つけると牙付きクチブトゾウムシではないかと(期待して)口元をのぞき込んでいるが、ハズレ続き──新成虫の初期限定盤の牙(脱落性牙状大顎付属突起)はすでに失われたものばかり……と思っていたら──↓。




というわけで、片方だけ牙が残っているクチブトゾウムシがいた。


動き回るので希望のショットが撮れなかったが……これはカシワクチブトゾウムシだろうか? 以前、マツトビゾウムシでも片牙を見ているが、短吻類の脱落性牙状大顎付属突起は必ずしも両方同時に落ちるものではないようだ。


牙付きクチブトゾウムシ&ヨツボシチビヒラタカミキリ

牙付きクチブトゾウムシ

鉄柵の支柱てっぺんにクチブトゾウムシがとまっていた。短吻類のゾウムシは羽化したときには大顎に牙状の付属突起がついているそうな。土中の蛹室から地上へ出るさいに使われるとされ、地上にでるとほどなく脱落してしまうという。そんな新成虫発生初期限定の《牙(状付属突起)》がついていないかと口元をのぞきこんでみると……。


リッパな《牙》がついていた。カシワクチブトゾウムシではないかと思うのだが(コカシワクチブトゾウムシという似た種類もいる)、自信が無いのでクチブトゾウムシ(の仲間)としておく。いずれにしても草食性のゾウムシが肉食性を思わせるような牙をつけている姿はなんともフシギな感じがする。




これまで何度か見たマツトビゾウムシ↓では《牙》が不自然に大きく交差していたが、今回みつけたカシワクチブトゾウムシ(もしくはコカシワクチブトゾウムシ)では、ほどよい感じで(?)設置されていた。


比較用に【牙付きマツトビゾウムシ】から再掲載↑。
今回みつけた牙付きカシワクチブトゾウムシ(もしくはコカシワクチブトゾウムシ)↓。


おもしろいので撮り続けてしまう。




ちょっと判りづらい画像になってしまったが……上から見たところ↓。




体長は5mmほど。恒例の1円硬貨との比較↓。


《牙》が脱落した通常姿はこんな↓。


桜の花とヨツボシチビヒラタカミキリ

毎年サクラが開花する頃に出現するヨツボシチビヒラタカミキリが擬木の上に出ていた。ちょっとわかりにくくなってしまったが……画面左上に開花した桜を入れて。




名前の通り、黒いボディ(上翅)に白い4つの星(模様)が特徴。


ヨツボシチビヒラタカミキリの体長は3.5~6.0mmほど。



「咲き誇る 桜を見ずに 擬木見る」 ギボッチャー(擬木ウォッチャー)心の川柳