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今季初フユシャク確認

今シーズン初のフユシャク(冬尺蛾)を確認
雪をかぶった富士山が見える狭山丘陵では、さほど落葉は進んでいない。葉をすっかり落とした木もあるが、まだ緑色の葉をつけたコナラやカエデもある。そんな中、今シーズンも初フユシャクを確認。今シーズン初のフユシャクはクロスジフユエダシャクだった。
今回の画像はないが……こんな蛾だということで昨年の画像から⬇。

01黒筋冬枝尺ペアA
02黒筋冬枝尺ベアB

今シーズン初のクロスジフユエダシャク:オス&メス&婚礼ダンス
昨日(11/29)、雑木林の縁で低く飛ぶクロスジフユエダシャクのオスを確認──これが今シーズン初のフユシャク(冬尺蛾)だった。とまりそうでとまらずに飛び続けるクロスジフユエダシャク♂──メスを探しているが見つからないときの飛び方だ。
おそらくオスはメスより早めに羽化しているのではないかと思うのだが、メスがいなければ飛ぶのを止めて待機状態に入る──まだ、とまっているオスが多いので(枯葉にまぎれて見つけにくいために)目にとまる個体が少ないのだろう。この日目にしたオスはこの1匹だけだった。
メスが現われれば飛翔するオスが目につくようになるはず──そう思って今日(11/30)、前日オスを確認した場所に行ってみると、10匹前後のオスが飛んでいた。そのうち数匹は比較的狭い範囲に集中しており、婚礼ダンス(はばたき歩行)をしているものもいる。メスが近くにいる──そう思って近づくと、低い植込みの枝にとまっているクロスジフユエダシャクのメスが目に入った。今シーズン初のフユシャク♀である。ふつうは落葉の葉の裏に隠れてオスを(フェロモンで)呼び寄せるのだが、まだ落葉が少ないせいもあってか、このメスはヒト(僕)の目にとまりやすい枝にとまっていた──そのおかげで、僕は婚礼ダンスでニオイをたぐって♀を探り当てるクロスジフユエダシャクのオスたちより早くメスを見つけることができた。ほどなく婚礼ダンスするオスの1匹がメスに到達し交尾が成立。今シーズン初の婚礼ダンス&ペアとなった。

この時期になると、期間限定のクロスジフユエダシャクの婚礼ダンスによるペアリングは見ておかないと……という気になるが、婚礼ダンスはいつでも簡単に見られるものでもない。オスは飛べども婚礼ダンスがなかなか始まらない……ということも少なくない。一方、たまたま通りかかった時に婚礼ダンスが始まることもある──昆虫観察は運任せのようなところがある。
それが、今シーズンは初フユシャク♀を確認したとたん、ほぼ待機時間0でに初婚礼ダンスによるペア成立を観察できたというラッキーな出だしとなった。夏休みの宿題が初日に片付いてしまったみたいな感じ?


まるで別種なフユシャクの♂と♀〜冬尺蛾記事一覧

フユシャクの婚礼ダンス
クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか
意外な翅の役割り!?クロスジフユエダシャク
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ムシヅカサシガメとハリサシガメ

養老孟司『虫の虫』特装版DVDの謎のカメムシ
01虫の虫DVD特装版
養老孟司・著『虫の虫』DVD付き特装版(廣済堂出版・刊)という本を買った。DVDなしバージョンもあるのだが、映像が見たかったので特装版の方。発行は2015年で、本の存在自体は以前から本屋の棚で見知っていたのだが、最近この本の特装版DVDのダイジェスト版をYouTubeで見つけ、にわかに興味が湧いてきた。というのも、このダイジェスト動画に気になる昆虫が出てきたからだ。

1分35秒頃に出てくるアリの死骸を背中に盛った捕食性カメムシが、僕の興味の対象・ハリサシガメの幼虫によく似ている。僕が知っている日本のハリサシガメは地上性で、アリの死骸だけでなくアリの捨てたゴミ(?)と思われるものや土粒を身にまとっている。しかし「ハリサシガメ」で画像検索すると、外国産のサシガメで葉や茎などにとまっている良く似た虫もヒットし、外国には樹上性のハリサシガメ(の仲間?)がいるのかと気になっていた。
それと良く似た虫が「養老先生が行くラオス昆虫採集記」ダイジェスト版にはチラッと映っていたので、がぜん興味を覚えた次第。
また、この「養老先生が行くラオス昆虫採集記」では虫屋さんの生態(?)も見られるようなので、そのことにも興味を持った。僕はテレビを離脱する前、昆虫に関する番組はよく見ていたが、虫にスポットをあてた番組はあったものの、虫屋の活動自体を記録した映像は意外に少なかった気がする。僕は虫屋ではないが、昆虫同様(?)謎めいた虫屋の生態には興味があった。そんなわけで、養老氏らの虫屋っぷりも見たくて『虫の虫』DVD付き特装版を購入した次第。


ラオスのムシヅカサシガメ!?
まず付属のDVD「養老先生が行くラオス昆虫採集記」(74分)から鑑賞。お目当てだったアリをデコったハリサシガメ幼虫風の昆虫は、4:20〜6:35にかけて紹介されていた。同行者の池田晴彦氏は「見たこと無いよ、こんなの」といい、養老氏も「すげ〜ヘンなの」と見つめていた。YouTubeのダイジェスト版では名前が示されていなかったが、DVD本編では「ムシヅカサシガメ(幼虫)」というスーパーが付けられていた。養老氏はナレーションで、名前が無いのでムシヅカサシガメとつけた──というようなことを言っていた。『虫の虫』(書籍)の方でも【ラオスのサシガメ】として「ムシヅカサシガメ(幼虫)」と紹介されている(P.3)。
ちなみに、日本のハリサシガメ幼虫はこんな姿↓。

02ハリサシガメ幼虫F1
03ハリサシガメ幼虫F2
特装版DVDでは見つけたムシヅカサシガメを飼育し羽化させた成虫とその羽化殻の映像も収録されていた。幼虫はハリサシガメより敏捷で、成虫のカラーリングも違うものの、ハリサシガメとよく似た印象を受けた。成虫は黒い体に白い双紋、小楯板の棘状突起と腿節が赤というきれいなサシガメだった。
「ムシヅカサシガメ」という初めて知った名前(仮名?)を足がかりに、何か新しい情報が得られないかと検索してみたのだが……何もヒットせず……。
「ハリサシガメ」でヒットする「ムシヅカサシガメ」と思われる画像をたどって、こんなブログ記事をみつけた↓。

タイで昆虫採集>背中にお荷物を背負ったサシガメ

ラオスの隣国タイで撮影されたサシガメのようだが、養老氏のいう「ムシヅカサシガメ」と同じ種類のように見える。草木上で暮らしているからだろう──地上性のハリサシガメ幼虫のような土粒はつけておらず、そのぶん(?)デコったアリの密度が高く感じられる。
DVD「養老先生が行くラオス昆虫採集記」を見た後に『虫の虫』本編(書籍)を読んだのだが、巻末に、付録DVDと書籍にでてくる昆虫の学名一覧があった。そこでムシヅカサシガメをみると斜体で「Inara alboguttata」とあった。学名で検索すると欧文のサイトがゾロゾロとヒットしたのであった。


「養老先生が行くラオス昆虫採集記」の感想
特装版DVDに話を戻すと……新種のクチブトゾウムシやカミキリを含め、色々珍しい昆虫が紹介されており、幻のチョウと呼ばれるテングアゲハの生態映像も貴重なものらしい。僕にとっては、ラオスの自然もさることながら、養老氏はじめとする虫屋仲間たちの楽しげ&真剣な虫屋っぷりもみどころだった。
夜の灯火採集(ライトトラップ)では、シーツに集まる昆虫よりも、耳につめものをし(虫の潜入を防ぐため?)、吸虫管をくわえて真剣にまなざしでシーツを睨みつける虫屋さんたちの方が見応えがあった。地球の生き物を調査に来た宇宙人がいたら、灯火に集まる虫の標本の隣にその虫に集まっていた虫屋さんたちの標本を並べたくなるに違いない。
DVDの最後には特典映像として、ラオスで採集した昆虫がどのように標本になるのかを紹介した「養老先生流 標本の作り方」(9分弱)が収録されている。標本作りをしない僕には、この行程の映像も興味深かった。昆虫関連の番組の中で虫屋がネットを振る(虫を採る)映像は時々見ることがあったが、標本づくりの映像はほとんど見たことがなかった気がする。


『虫の虫』の感想
本の方は「虫採りエッセイ集」ということになっていて、「虫を見る」と「ラオスで虫採り」の2つの章で構成されている。
前半の「虫を見る」では昆虫について虫屋がどんな見方をしているかについて記されているのだが、これは編集者から提案されたテーマで書かされた(?)ものらしい。じゃっかん抽象的で、DVDを観たあとに読むと、いささか面白味が薄い……。おそらく編集者から出された課題に対し、養老氏が普段感じたり考えたりしている雑多なコトの中から対応する内容を引っ張り出し、その方向で書いていけば何とかなる(まとめられる)と見当をつけて書き始めてみたものの……あまり話が広がらなかった……みたいな感じだったのではないか? 個人的には共感できる部分もあったが、「あたりまえのことを書くのに、いささか手間取った感じ」がしないでもない。虫屋でない僕には感覚的によくわからないところもあった。僕の個人的な好みは別にして……前半のエッセイは著者自身がノッて書いた文章ではなかったろうことが感じられる。
ところがしかし! 後半の「ラオスで虫採り」になると、がぜん文章が活き活きとしてくる。ノッて書いているのが伝わってくる。前半の抽象的なテーマから、体験的・具体的テーマになったこともあって、読者にも分かりやすいし、執筆している側も書きたいことがどんどん湧いてくる状態だったのだろう──その意欲が感じられる。しかし「活き活き」の最大の理由は「虫採り」に付随するエッセイだったからだろう。アシナガバチに刺されてアナフィラキシーを体験したというおそろしい話もあったが、虫屋っぷりが発揮されるエピソードでは何度か笑ってしまった。そんなエピソードをまとめた「実録・虫屋武勇伝」でも書いたら、かなり面白いのではあるまいか。


虫屋・養老孟司
僕が養老孟司という人を知ったのは確かNHKのテレビ番組だった。オーストラリアの昆虫を紹介するシーンで灯火にやってきたニジイロクワガタ(こんな虫がいることもその番組で初めて知った)などについて語っていたのが養老氏で、その姿が印象的だった。このときは昆虫学者だとばかり思っていて、本業が解剖学で脳の権威だと知ったのはしばらく後だった。NHKの『驚異の小宇宙 人体II 脳と心』では解説役で登場していたが、「こっちが本職のはずなのに、以前見た時より、なんだかテンションが低いな……」と感じながら観ていたのを覚えている。最初は体調でも悪いのだろうかなどと訝ったが、毎回なのでそうではないらしい。他にも脳に関する科学番組に解説者として出演している番組を見たことがあったが、やっぱりテンションは低め。これが養老孟司氏の普段のテンションなのだろうと思うようになった。
それが、「養老先生が行くラオス昆虫採集記」ではなんと活き活きしていたことか! 僕が初めて養老氏を見た時の「(昆虫を語る)あのテンション」だった。本業の仕事をしている時より、虫と向かっている時の方がテンションが高い──仕事的には脳の権威なのだろうが、本質的には根っからの虫屋なのであろう。
《水を得た魚》ならぬ《虫を得た養老孟司》──『虫の虫』DVD付き特装版はそれを実感させる映像&エッセイ集だった。


ハリサシガメぷちまとめ2
ハリサシガメ記事一覧


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エサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし&亀虫臭

エサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし
先日、擬木で羽化中のエサキモンキツノカメムシを見つけた。羽化後の《抜け殻落とし》(羽化殻落とし)が観察できるチャンスと思い、(おどかさないように)3〜4mほど離れたところから、しばしウォッチング。そのもようを記しておく。カメラはなかったので今回の画像は無いが、エサキモンキツノカメムシがどんな昆虫で、どのような形で羽化をするのか──イメージが描けるように、過去の画像をあげておく。
01江崎紋黄角亀虫成虫A
02江崎紋黄角亀虫羽化14

羽化殻落とし(羽化後の抜け殻落とし)とカメムシ臭
今回(2019年11月15日@東京)観察した羽化殻落とし(羽化後の抜け殻落とし)行動は以下の通り。

【10:46】遊歩道の擬木で羽化中のエサキモンキツノカメムシを見つける。新成虫の体はほとんど露出し、腹端が抜け殻の中に残りぶら下がっている状態。見つけたときは脚はまだ見えず(抜けきっていないようだった)。

【11:05】新成虫は腹端で抜け殻にぶら下がり脚も6本とも抜けて擬木につかまる(上記羽化画像と同じ状態)。

【11:08】腹端を外し完全に抜け殻から離脱。頭部を上に向ける(まだ羽化殻とは向き合っていない)。

【11:20】新成虫が羽化殻の真下で羽化殻と向き合う(抜け殻落としは頭突きするように行われる)。

【11:28】新成虫は下から頭で羽化殻を押し始める(抜け殻落とし行動)。しかし、すぐわきを自転車が通りぬけ、動きを止める。

【11:30】新成虫が羽化殻(抜け殻)落とし行動を再開。羽化殻は落ちかけるも……すぐ下にひっかかって宙吊り状態となる(羽化殻は上向きになる)。

03羽化殻落とし図解E1
擬木にはクモのしおり糸や蛾の幼虫が徘徊して残した糸が残っており、意外に抜け殻がひっかかりやすい。

【11:31】3〜4m離れて観察していたのだが、突然、カメムシ臭を感じる。以前、エサキモンキツノカメムシやモンキツノカメムシに触れた時に発せられたニオイと同じ。近づいて確認してみると、やはり観察中の新成虫のものだった。カメムシの抜け殻落とし(脱皮殻落とし&羽化殻落とし)はこれまで何度か見てきたが、観察中にカメムシ臭を感じたのは初めてだった。

その後、1時間の間に何度か新成虫は抜け殻の横で向きを変えるが、動き始めると人や自転車の往来があって停止ということを繰り返す。

【12:31】新成虫が動きだし、2度目の羽化殻落とし行動。しかし羽化殻は数cmほど落ちたところでまたひっかかってしまう(羽化殻は下向きになる)。新成虫は落としたと認識したのか(?)上の方を向く。

04羽化殻落とし図解E2
【12:32】新成虫が真上を向く。
【12:37】羽化殻の方を向く(引っかかっていることとに気づいたか?)。
【12:38】新成虫は斜め上を向く。

【12:43】新成虫が羽化殻を向いて横向きになる。3度目の羽化殻落とし行動にでるかと思いきや、羽化殻から離れて擬木支柱を登っていく。なかなか落ちない羽化殻に負けて(?)自分が移動したのか?

【12:46】擬木支柱を登る。
【12:47】擬木支柱の上まで登りつめると──、
【12:48】支柱を下り始める。羽化殻から離れようと上へ移動を始めたが、それ以上進めないので、より遠くへ移動できる方向を模索?

【12:50】羽化殻の横を降りて下の横棒(平桁)を進む。
【12:53】羽化殻から160cmほど離れた場所で上を向いて静止。

05新成虫移動図解E3

──ということで、今回の観察では、羽化後のエサキモンキツノカメムシ新成虫は2度、羽化殻落とし行動を見せ、そのつと羽化殻は落ちかけるが、クモもしくはガの幼虫が残したと思われる糸にひっかかって宙吊りでとまってしまう。すると落ちない羽化殻を嫌ってか、新成虫は自分が移動して羽化殻から160cmほど離れた場所で静止(翌日おなじ場所にいた/体色はほとんと整っていた)。
羽化殻が落ちていれば、新成虫は移動せずにその場にとどまって体色が整うのを待ったのではないかと思う。
今回、興味深かったのは、1度目の羽化殻落としに失敗し、新成虫と羽化殻が並んでしまったときに、カメムシ臭が発せられたことだ。3〜4m離れたところにいた僕にもハッキリわかる強さ(濃度)だった。過去にエサキモンキツノカメムシやモンキツノカメムシに触れた時、何度か嗅いだニオイだが、敵に襲われるなど《身の危険を感じたとき》と同様の反応であったとすると、新成虫は、少し前まで自分の体だった羽化殻を《敵》もしくは《身の危険》と認識するのだろうか? そのために《攻撃(羽化殻落とし)》をしかけて追い出そうとしたり、それができないと自らが《逃亡》をはかる──という行動にでたのだろうか?
(一部の?)カメムシが抜け殻落としをするようになった原因行動(?)と何か関係があるのかもしれない……。



カメムシの奇行!?抜け殻落としプチまとめ ※抜け殻落とし&その意味

ハートフルな亀虫エサキモンキツノカメムシ
ハート亀虫羽化 見守るキリスト!? ※初めての抜け殻落とし
笑顔とハート(愛)のエサキモンキツノカメムシ
ツノカメムシの異種ペア
モンキツノカメムシとエサキモンキツノカメムシ他
エサキモンキツノカメムシの抜け殻落とし他 ※羽化殻落とし
ハート紋のモンキツノカメムシ&… ※紋型では見分けられない
ハートカメムシとブロークンハート亀虫!? ※ハート紋も色々
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まるで別種なフユシャクの♂と♀〜冬尺蛾記事一覧

まるで別種!? フユシャクのオスとメス
先日読んだ『不思議だらけ カブトムシ図鑑』(小島渉・著/彩図社)には《カブトムシほどオスとメスの区別が容易な昆虫は他にいないだろう(P.74)》という一節がある。しかし「オスとメスの違いっぷり(性的二型)」ということでいえば、フユシャク(冬尺蛾)は、カブトムシの上をいっている。カブトムシはオスの特徴であるツノをのぞけば、オスとメスは体つきも色合いも似ていて「同じ種類」もしくは「同じ仲間」っぽさを感じさせる。ところがフユシャクでは、オスは何の変哲もない普通のガなのだが……メスが変わっていて同じ種類どころかガにさえ見えないものも多い。カブトムシはオスのツノが発達しているが、フユシャクではメスの翅が退化している。そのため容姿がオスとメスでは、かけ離れたものになっているのだ。体色や模様がオスとメスで違う種類もいる。
今年もそろそろフユシャク(の成虫)が現れる時期。これまで狭山丘陵周辺で撮ったフユシャク画像から、オスとメスの「違いっぷり」をまとめてみた。

01黒筋冬枝尺♂♀F
02茶翅冬枝尺♂♀F
03一文字冬波尺♂♀F
04黒帯冬波尺♂♀F
05広翅冬枝尺♂♀F
06白斑冬枝尺♂♀F
07霜降棘枝尺♂♀F
08白棘枝尺♂♀F
09漣冬波尺♂♀F
10途切冬枝尺♂♀F
11縁黒棘枝尺♂♀F
12薄翅冬尺♂♀F
13黒点冬尺♂♀F
フユシャク(冬尺蛾)というのは、年に1度、冬に成虫が出現し、メスの翅が退化した特徴を持つシャクガ科の蛾の総称。フユシャク亜科・エダシャク亜科・ナミシャク亜科にまたがっている。オスかメスかは一見して容易に判断できるのに種類は識別するのが難しいものも少なからず──種の違いよりも雌雄の違いの方が、はるかにかけ離れているのがおもしろい。カブトムシは「ツノが進化した(特徴を持った)オス」に関心が向きがちだが、フユシャクでは「翅が退化した(特徴を持った)メス」の方にに関心が向いてしまう……。
オスとメスの違いっぷり(メスの容姿のユニークさ)もさることながら、僕が初めてこの虫を知ったときに驚いたのは、《昆虫なのに(わざわざ)冬に活動(繁殖)する》という生態や《ガなのにメスは(翅が退化しているため)飛ぶことができない》という意外性だった。


フユシャクの風変わりな生態
オスとのかけ離れた容姿を生み出している《メスは翅が退化して飛ぶことができない》ことと、《昆虫なのに冬に繁殖活動する》という二大ユニークな生態は、きっと無関係ではないだろう。昆虫は外温性(変温)動物なのだから、本来なら気温の低い冬は活動に向かないはずだ。実際、多くの昆虫は活動を休止した状態で冬越しをしている。それなのにどうしてわざわざそんな時期に活動するのだろう? おそらく、捕食者である他の外温性(変温)動物(昆虫・爬虫類・両生類)が活動していない「天敵不在の時期」だからだろう──当初はそんな生存戦略なのだろうという解釈で納得していた。そう考えると、天敵がいなければ「飛んで逃げる」必要も無い。メスは翅や飛ぶための筋肉にあてていた資源を卵の生産に回すことができる。繁殖のためにオスとメスの出会いは必要だが、オスに飛翔能力を残しておけばメス探しはできるから何とかなる。寒い冬に卵を抱えた身重のメスが飛ぶより、身軽なオスが飛ぶ方が容易いだろうから、繁殖相手をさがす役割り(飛翔担当)はオス──というのは納得できる。メスは飛翔能力を放棄し卵の生産性を上げることに専念し、繁殖相手を探して飛ぶのはオスにまかせるという役割り分担をしてことで、オスとメスの違いっぷり(性的二型)が顕著化したのだろう……フユシャクを知った当初は、そんなふうに想像していた。

冬でも存在する天敵
しかし、フユシャクを見ているうちに《天敵がいない冬に活動する》という解釈に疑問がわいてきた。フユシャクの多くは夜行性だが、もし天敵がいないのであれば、気温が高い日中に活動する種類がもっと多くても良さそうなものだ。また、オスとメスで翅の有無による体型の違いがあるのはわかるが……体色や模様に違いがあるのことの意味は何だろう?
オスは翅が落葉にとけこむ「隠蔽擬態」仕様に見える種類も多い。翅が退化したメスにはボディラインをかく乱するような模様(オスにはない)があったり、とまっている幹や樹皮上の地位類に溶け込むような色(オスとは違う)のものもいる……これは天敵の目をあざむくための進化なのではないか──つまり冬にも天敵が存在することをあらわしているのではないかと思うようになった。
実際、フユシャクの成虫がアリに襲撃されたりクモに食われたりしているのを見たこともある。冬とはいえ、捕食者が全くいなくなるわけではなく、天敵は存在しているようだ。

14黒筋冬枝尺蟻襲撃
15冬尺亜科♀クモ捕食
フユシャクの卵塊を物色する寄生蜂らしき虫を見たこともある。フユシャクの中には産卵した卵塊に腹端の毛を塗りつけてコーティングする種類もいるが、これは防霜(?)効果や物理的な保護などのほかに寄生蜂対策や(鳥などに対する)隠蔽効果としての役割りもはたしているのではないかと思えてくる。
また、フユシャクの中では小数派の昼行性であるクロスジフユエダシャクは、メスが落葉の下などに隠れていてオスをフェロモンで呼び込む。天敵がいなければ目立つところに出ていた方がオスに見つけてもらいやすそうなものたが(その方が繁殖に有利)……わざわざ隠れているのは、天敵がいるからではないか? 鳥類は冬場でも活動しているが、彼らにとってみればフユシャクはこの時期の数少ない食料源のひとつなのかもしれない。鳥による捕食圧があるために昼行性のクロスジフユエダシャクはメスが葉の下に隠れ、フユシャクも昼行性の種類が少ないのではないか……と考えるようになった。

昼行性のクロスジフユエダシャクはメスが落葉の下などに隠れているのに対し、オスはメスを探して落葉が積もった雑木林の林床を舞い飛ぶ。そのためオスばかりが目立つが、オスは落葉の上に降りると周囲に溶け込んで隠蔽能力が高い。これも鳥に狙われる機会が多いことで隠蔽擬態の精度を高めてきたのではなかろうか。とはいっても日中舞い飛ぶオスの方が被捕食リスクは高そうだ。しかし、それも理にかなった役割り分担なのだろう。種の存続にはメスの産む卵の数が多い方が良いわけだろうが、メスが捕食されれば、そのぶん卵の数は減ってしまう。オスならば少々食われても、他のオスがカバーすれば卵の生産量を確保できる。
クロスジフユエダシャクの繁殖行動(オスの婚礼ダンスによるメスの確保)を観察していると、落ち葉の下隠れたメスが発したフェロモンに反応し、あっという間にオスたちが集まってくる。この様子を見ているとオスが多少、捕食間引きされても繁殖にはさして影響がなさそうな気もする。

16黒筋冬枝尺♂4舞
17黒筋冬枝尺PRB2
メスでは種の存続のためにも自分の遺伝子を残すためにも卵を無事に産むことが最優先されるはずだ。オスが自分の遺伝子を多く残すためには多くのメスと交尾をする必要があるので、リスクをおってでもメス探しの役割りを担うというのは理にかなっているように思われる。
フユシャクをみていると、いろいろなことを想像する。


フユシャク(冬尺蛾)記事一覧
冬の間(晩秋〜初春)にかけて(成虫が)見られるフユシャクだが、種類によって発生時期にはズレがあって、それぞれの旬の時期は短かったりする。見られるうちに見ておかねばとそのつど記事にしてきたが、記事の数が増えて、何をどこに書いたか自分でもよくわからなくなってきている。
ということで、とりあえずフユシャク関連記事のタイトル一覧を作ってみることにした。


フユシャク:翅が退化した♀/翅でニオイを嗅ぐ♂
空目フユシャク
なんちゃってフユシャク?
ゼフィルス的フユシャク!?
ヒメシロモンドクガの冬尺化!?
フユシャクの婚礼ダンス
フユシャク探し
フユシャクの口
ユキヒョウ的フユシャク
フユシャク♀34匹/日
フユシャクの交尾・産卵・卵
雪豹フユシャクふたたび+産卵&卵
シロトゲエダシャク
トギレフユエダシャク&なんちゃってフユシャク:メスコバネマルハキバガ
この冬みられた冬尺蛾
どんより曇りはフユシャク日和
12月下旬のフユシャクなど
2013年末のフユシャク
フユシャクの産卵とその後
フユシャクの産卵 before & after
フユシャクの卵塊:1年経ってとけた謎
フユシャクの産卵:列状卵塊ほか
フユシャクの天敵!?
冬尺蛾とオオムラサキ若齢幼虫!?
クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか
フユシャクも出てきた11月下旬
婚礼ダンスでフユシャク・ペア探し
ウバタマムシとフユシャク♀2種
12月前半までの昆虫
冬の蛾と冬のカミキリ
スクラッチならぬサクラッチでフユシャク♀を当てよう!?
フユシャクとマエムキダマシ
水色のフユシャク・イチモジフユナミシャク♀
桜ッチは不作〜謎のフユシャク!?
謎のフユシャク♀?Part2
セーブル冬尺!?
シロフフユエダシャクとクロテンフユシャク
雪と冬尺蛾/シロフフユエダシャク♀理想の翅型!?
2月のカミキリ〜ヒロバフユエダシャク♀
フユシャクと冬のハンター
ヒロバフユエダシャク・シロトゲエダシャク他
振袖フユシャク?〜可変翼蛾
晩冬の冬尺蛾トギレフユエダシャク
冬尺蛾シロトゲエダシャク〜非冬尺オカモトトゲエダシャク&偽冬尺?
初フユシャク2015他
フユシャク婚礼ダンスで♀探し
クロスジフユエダシャクの♂♀比
フユシャク3種:退化した翅
あわいブルーの冬尺蛾
2015年末のフユシャク
元日の昆虫2016
一部黒化?イチモジフユナミシャク♀他
フユシャクのペア他
雪と冬尺蛾
クロテンフユシャクのペア他
シロフフユエダシャク・ペア他
2月のウバタマムシ&冬尺蛾
ヒロバフユエダシャクとシロフフユエダシャク
振袖チックなヒロバフユエダシャク♀他
振袖フユシャク【卒】を探せ〜トギレフユエダシャク♀
腹黒いヒロバフユエダシャク
プレフユシャク〜初フユシャク
意外な翅の役割り!?クロスジフユエダシャク
冬尺蛾と極小カミキリ他
婚礼ダンスでペア成立
フユシャク3種〜12月中旬の昆虫
チャバネフユエダシャクのペア
空色の羽の妖精!?
桜でイチモジフユナミシャク
年末のフユシャク♀@桜
正月のフユシャク2017
昆虫の発生ムラ
クロオビフユナミシャク♀@桜ほか
シロフフユエダシャクも出てきた
フユシャクがとまりがちな所
民話風フユシャクなぜ話
蛹の時は大きい!?フユシャク♀の翅
ヒロバフユエダシャクなど
曇天のヒロバフユエダシャク♀
シモフリトゲエダシャク♀の毛皮感!?
シロトゲエダシャクなど
《卒》的ヒロバフユエダシャク♀
ヒロバフユエダシャクのペア/♀の前翅はどっち?
ヒロバフユエダシャク♀の前翅・後翅を確認
3月中旬のフユシャク&トカゲ
なんちゃって冬尺蛾メスコバネマルハキバガ
クロスジフユエダシャク:冬尺蛾の不思議
婚礼ダンスでペア成立:クロスジフユエダシャク
クロオビフユナミシャク♂♀卵他
ホルスタインちっくなチャバネフユエダシャク♀
クロオビフユナミシャクとチャバネフユエダシャク
フユシャク色々
イチモジフユナミシャク♀は地衣類擬態!?
年末のフユシャク♀2017
フユシャクの産卵&コーティング
フユシャクの卵塊
シモフリトゲエダシャク・シロフフユエダシャク
シモフリトゲエダシャクのペア他
ヒロバフユエダシャクのツーショット
産卵後のシモフリトゲエダシャクと産卵中のシロフフユエダシャク
シロフフユエダシャクのペア〜産卵前後
シモフリトゲエダシャク♀@桜
フユがつかない冬尺蛾
シモフリトゲエダシャクペア&ヒロバフユエダシャク
てんしのヒロバ他
片牙ゾウムシ&シロトゲエダシャク
フチグロトゲエダシャクの産卵他
冬の蝶!?クロスジフユエダシャク
クロスジフユエダシャクのペア集
クロスジフユエダシャク:婚礼ダンスに異変!?
翅の大きさが違う冬尺蛾3種
クロオビフユナミシャク♀色々
フユシャク♀5種
クロオビフユナミシャク♀きらめく鱗粉
クロバネフユシャクのペア他
ギボッチ&桜っちで冬尺蛾
イチモジフユナミシャク♀色々
サザナミフユナミシャクの愛称!?他
イチモジフユナミシャク美麗♀
水色の翅の天使!?イチモジフユナミシャク♀
イチモジフユナミシャク・ペア〜特大♀
昼間のオスは?イチモジフユナミシャク
イチモジフユナミシャクのキューティクル
冬尺蛾の他人の関係
フチグロトゲエダシャクを見た…
今季初フユシャク確認 ※2019NOV
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