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僕にとっての〝いい虫〟ラミーカミキリ他

今年は新型コロナの影響で外出を自粛していたが、近所でチラッと〝お好み〟の虫を確認して「よしよし、今年も発生しているな」などとひそかにほくそ笑んでいたりはしていた。具体的にはラミーカミキリやルリカミキリ、キクスイカミキリなど。園芸植物などにもつくことから、いってみれば害虫なのだが、僕にとっては〝いい虫〟だったりする。
僕にとって〝いい虫〟とは美しかったり格好良かったり、珍妙だったり、おもしろかったり──《自然の創造力・あっぱれ!》と感じさせてくれる昆虫だ。容姿だけでなく行動なども含めてセンスオブワンダー感をかもしているものが好ましい。また、そうした魅力をそなえていつつ〝身近〟に見られる種類であることも大事なポイントだったりする。
昆虫採集をする虫屋さんやコレクターからすれば、希少種の方が価値が高いということになりがちなのだろうが、僕は《センスオブワンダーを感じることができる身近な存在》というところに昆虫の価値を感じているので、〝身近〟であることが重要なのだ。《コンビニエンス・センスオブワンダー》とでも言ったら良いだろうか。昆虫を見ることは現代人にとって必要だと僕は考えているわけだが(*)、わざわざ遠征しなくてもお手軽に遭遇できる自然物というところに価値がある。

普通種であっても、発生時期に実物の昆虫を見ると、それなりの感慨のようなものがある。目の当たりにして「こんなものが、実際に存在しているんだなぁ」としみじみと感じ入ることができる。
カメラが壊れてから新調していないので新たに撮影した画像はないが、最近〝しみじみ〟した昆虫を過去の画像から──。


タキシード・キョンシーちっくなラミーカミキリ


タキシード天牛・虹色葉虫ほかから⬆
タキシードを着たキョンシーにも見えるユニークなカミキリは、僕が子供の頃には身近に(関東には)いなかった昆虫だ。ずいぶん風変わりなファッション感覚(?)もそのはずで(?)、幕末から明治にかけて侵入した外来種らしい。以前は西日本では普通にみられたというが、温暖化にともなって分布域を北上させて、20世紀末に東京都の多摩地区でも生息が確認されるようになったという。

僕がラミーカミキリを意識したのは、小学館のアウトドア情報誌『BE-PAL』2004年8月号【西原理恵子さん親子がムシのお兄さんと昆虫採集】を見た時だった。この「ムシのお兄さん」というのが、電子会議室【昆虫フォーラム】で知り合い、何度か昆虫観察のオフ会でもご一緒させていただいた虫屋さんで、ピンガ大王(@鳥頭紀行ジャングル編)と呼ばれていた。サイバラ氏の虫採りマンガが『BE-PAL』に載るというピンガ大王情報を得て、この号を買ってみたもの。
記事は写真と文章による採集風景&採集昆虫が見開きで紹介されていて、次の見開きに西原氏のマンガによる昆虫採集日記が掲載されていた。採集した昆虫の写真の中にラミーカミキリが載っていて、タキシード姿のキョンシー風の空目デザインに不思議な魅力を感じた。サイバラ氏も漫画の中で「私はニワハンミョウとラミーカミキリがお気に入り」と記している。

当時は西日本に普通に見られるカミキリという認識で、関東の一部にも入ってきているというような話を聞いていた記憶がある。
「こんなカミキリを見てみたいものだなぁ」「僕の地元でも、見られる日が来るのだろうか?」などと、あわいあこがれを抱いた虫だった。

その、あこがれのラミーカミキリを初めて目にしたのは翌年──2005年の8月だった。イッシキキモンカミキリを採りに行くというカミキリ屋さんに同行させてもらうことになって出かけた奥多摩の川沿いで、カラムシの葉の上にラミーカミキリを発見! あこがれの映画俳優に街角でばったりでくわしたような驚きがあった。1匹見つかると次々に見つかり、3匹を持ち帰って飼育した思い出がある(貴重なイッシキキモンカミキリもカミキリ屋さんに1匹もらってこれも飼育した)。




ラミーカミキリ@武蔵野から⬆
そして、僕の地元でも──野火止用水沿いのカラムシで初めてラミーカミキリを確認したのが2012年7月。以後、市内のムクゲや狭山丘陵でも見られるようになっていった。
毎年、身近な場所でその発生を確認すると、ひそかに「よしよし」とほくそ笑むのであった。


子供の頃には見たことがなかったルリカミキリ

町の中でも見られる瑠璃色のぷちカミキリから⬆
キレイでかわいいルリカミキリも、僕が子供の頃には見たことがなかった昆虫だ。昔から分布はしていたのだろうが、生け垣に(ルリカミキリのホストとなる)カナメモチが使われることが多くなったことで市街地でも、あちこちで見られるようになった。昔はよく見かけていたシロスジカミキリやミヤマカミキリ──そのいかつい姿はずいぶん少なくなった昨今だが……そんな中で、かわいいルックスながら(?)拡大している〝野生の根性(?)〟には、ひそかに「あっぱれ!」と感心していたりもする。

小さいながら格好良いキクスイカミキリ

※キクスイカミキリ@シラハタリンゴカミキリ@スイカズラから⬆
春になるとヨモギなどで見られる小さなカミキリだが、今年は家のすぐ前に生えた雑草のような菊で初めて見た。新型コロナ自粛の最中に玄関あけてすぐ見られるキクスイカミキリに、ささやかなラッキー感を覚えたものである。
ちいさいけれど、洗練されたプロポーションで、シックな艶消し黒に、前胸背の赤いポイントが、なかなかオシャレである。この赤いポイントがウルトラマンのカラータイマーを連想させ、パワーランプに見えて仕方がない。電池(活動エネルギー)が切れかかってくると、この赤いポイントが点滅し、消灯すると活動を停止してしまう──そんなふうにイメージしてしまうのは僕だけであろうか?



ラミーカミキリ@武蔵野
ラミーカミキリ/オスとメスの違い
ラミーカミキリ&シラハタリンゴカミキリ
礼服ぷちキョンシー天牛&怪虫シャッチー
タキシード天牛・虹色葉虫ほか
昔はいなかった身近なカミキリ
シラハタリンゴカミキリ@スイカズラ キクスイカミキリ
キクスイカミキリ・ヒシカミキリ他
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メタリックな美麗昆虫10種

メタリックな輝きを放つ美しい昆虫
昆虫の中には金属的な光沢や宝石のような輝きを持つものがいる。これまでに僕が撮った画像の中からきれいな昆虫を10種ほどまとめてみた。

01銅猿葉虫A再
メタリックな光沢が美しい宝石のようなアカガネサルハムシ(体長7mm前後)。美麗昆虫として名高いヤマトタマムシ(体長30〜41mm)に比べるとぐっと小ぶりだが、鮮やかな輝きはひけをとらない。光沢昆虫は見た目の美しさを画像に収めるのが難しい。まぶしく輝く部分に露出を合わせると他の部分が暗くなってしまうし、他の部分に露出を合わせると輝きの部分が白っぽくとんでしまい実際の輝きが伝わりにくい。そんな中で比較的〝輝いている感じ〟がうまく撮れたかと思われた1枚⬆だったが……残念なことにこの個体は右触角の先が2節ほど欠けていた。これ⬇は別個体。
02銅猿葉虫B
成虫が現れるのは5〜8月。ノブドウやエビヅルでよく見かける。成虫は葉を食べているが、幼虫は根を食べるらしい。ありふれた虫ではあるけれど、〝身近に見られる美麗昆虫〟というところが良い。
03銅猿葉虫C
余談(ジョーク)だが……アカガネサルハムシの「サル」を「申(さる)年」にかけて年賀ブログに登場させたことがあった。「サル」を「申」と記せば「アカガネ申ハムシ」→「アカガ 神 ハムシ」(亜科が神ハムシ)と読めなくもない!?

04タマムシ@葉
メタリックな輝きを放つ美麗昆虫といえばタマムシ(ヤマトタマムシ)を思い浮かべる人が多いだろう。国宝の「玉虫厨子(たまむしのずし)」は有名だし、見る角度によって色合いが変化するメタルカラーから「タマムシ色」などという言葉もある。漢字表記では「玉虫」──この「玉」は「玉石混淆(ぎょくせきこんこう)」の「玉(ぎょく)」──宝石のことだろう。あるいは「吉丁虫」とも書き、縁起の良い虫ともされる。

タマムシのメタルカラーは体の表面が多層薄膜構造になっていることから生み出される光学的な色彩らしい。これはオスがメスを見つけるのに役立っているそうで、タマムシの大きな眼を見ると視覚依存度が高そうなこともうなずける。
また、キラキラ光ることは鳥に対して忌避効果があるとも言われている。鳥除けを目的に田んぼに設置された反射テープやCDなどを見ると、そういった効果もあるのかもしれない。自然界では捕食者にとって餌となる生き物は目立たないように進化したものが多く、逆に「目立つものは警告的意味合いを持つ」生き物が多い。それでキラキラ光って遠くからでもよく目立つものは警戒したくなるのかもしれない。

しかし、この〝目立つこと〟が「はったり」だと見破られ、エサになることがひとたび認識されてしまえば、逆に目立つことで狙われやすくなるというリスクがあるはずだ。ヤマトタマムシの金属光沢による忌避効果がいかほどのものか……じゃっかん疑問を感じないでもない。というのは、以前、タマムシが産卵に来る伐採木置き場で、日中、腹を食われたヤマトタマムシを見たことがあったからだ。そばからカラスが飛び立ったので、そのカラスが伐採木置き場にやってくるヤマトタマムシを待ち受けて捕食していたのではないかと考えた。この場所で何度かカラスを見ている。
05タマムシ腹欠A
06タマムシ腹欠B
この腹の無いタマムシはしきりと脚を動かし、こんな状態になりながら上翅を開いたり閉じたりしていたから、まだ被害にあってさほど経っていなかったのだろう。小さなアリが来はじめていたが、まだ少ない──時間が経っていればもっとたくさん集まっていたはずだ。日中に、こんな食い方をするのはカラスではなかろうか?
カラスはカブトムシやクワガタが集まる樹液ポイントを覚えているようで、その近くで腹の無いカブトムシやクワガタがもがいている姿をよく目にする。頭の良いカラスなら同様にタマムシが飛来する産卵ポイントを覚えていて待ち構えて捕食していてもおかしくない気がする。

本来(?)鳥にはキラキラ光る物を警戒する本能が備わっているのかもしれないが……中には冒険家の個体(?)がいて、手を出してみたら「食える」ことがわかり、一転して狙うようになる──というケースもあるのかもしれない?

07青斑玉虫A
ヤマトタマムシほど派手ではないが、深緑色の光沢があるアオマダラタマムシ(体長17〜29mm)。春に見つかるのは越冬個体なのか赤紫色がかっていて美しい。同じ個体を別アングルで撮影⬇。
08青斑玉虫B
見る角度によって赤紫に輝く部分と緑色に輝く部分が変化する。この角度からは体の右側で赤みが強く左側は緑色に見える。
アオマダラタマムシの飛翔の瞬間(別個体⬇)。腹の背面はこんな色。
09青斑玉虫C

10六星玉虫A
ヤマトタマムシに比べるとかなり小さいし地味なムツボシタマムシ(体長7〜12mm)。背中に並んだ6つの紋は凹んでいて見る角度で色合いが変わる。翅を閉じた通常の姿は地味なのだが……飛翔時にあらわになる腹の背面がエメラルドのように美しい。
11六星玉虫B
12六星玉虫C
初めて宝石のように輝く腹の背面を見た時は、通常の地味な姿との格差に驚いた。飛翔時に目立つこの輝きは配偶相手を見つける標識として役立っているのかもしれない。輝くことで天敵の鳥などに狙われやすくなりそうな気もするが、そのさい標的にされる〝エメラルドの輝き〟は着陸して翅を閉じてしまえば消えてしまう──目立つ標的を見せておくことによって(天敵はその目立つ特徴にターゲットを絞る)かえって(翅を閉じたときの)隠蔽効果を高める陽動的な効果もありそうな気がする。
トカゲが尾を自切して敵から身を守ることは良く知られているが、ニホントカゲの幼体の尾もサファイアのように輝いている。切れた目立つ尾に敵の注意を向けさせて捕食を逃れる──同じような《陽動効果》をムツボシタマムシのエメラルドの腹にもあると考えるのは、そう不自然なことではないだろう。前述のヤマトタマムシが(忌避効果があると言われる?)〝目立つ輝き〟を持ちながら食われてしまうケースがあることを考えると、翅を閉じることで〝目立つ輝き〟をOFFにできるムツボシタマムシの対捕食者戦略(?)は理にかなっているように思われる。

13赤脚大青天牛A
アカアシオオアオカミキリ(15〜30mm)も金緑色に輝く美しい昆虫だが、アカガネサルハムシやタマムシの輝きとは質感(?)に少し違いがある。タマムシなどは滑らかな表面が輝いているように見えるが、アカアシオオアオカミのきらめきはざらついた表面で光が細かく反射しているような感じがする。実際に拡大すると、輝く頭部・前胸・翅鞘(上翅)には細かい凹凸があるのがわかる。
14赤脚大青天牛B
15赤脚大青天牛C
反射面の細かい凹凸が無数の反射光の点をつくり、キラキラした輝きを生み出している。

16ルリカミキリA
ルリカミキリ(9〜11mm)は橙色の体に瑠璃色にかがやく翅鞘(上翅)が美しい。カマツカ・ナシ・ヒメリンゴなどのバラ科植物につくらしいが、ホスト(寄主植物)のひとつベニカナメモチの植込みが増えたことで、最近は住宅街でも見ることができるようになった。小ぶりでSD(スーパーデフォルメ)風のボディラインも可愛らしいカミキリ。

17陣笠葉虫A
ジンガサハムシ(7〜9mm)はコンタクトレンズのようなボディラインを持ち、光を反射する金色の部分と光を吸収する黒い部分、そして光を透過させる透明部分を兼ね備えたユニークな昆虫。食草であるヒルガオの葉の裏にとまっていることが多い。陽にあたると金色の部分がキラキラ輝いて美しいのだが、すぐ葉の裏に隠れたり飛んだりするのでなかなかきらめく姿を撮らせてもらえない。あまり良い画像が残っていなかった……。
セモンジンガサハムシ(6mm前後)は黒地に金色の「X」模様のコントラストが美しい。こちらはサクラの葉の裏にとまっていることが多い。
18背紋陣笠葉虫A
トレードマークの「X」模様が金色に発色するまで羽化してから20日ほどかかるらしい。

19青口太亀虫A
狭山丘陵ではよく見られるアオクチブトカメムシ(16〜23mm)もややザラっとした感じの表面が光を反射してきらめく奇麗なカメムシ。蛾の幼虫などを捕えて体液を吸う。日陰で撮るとキラキラ感がなかなかでず、陽が当るところで撮ると、まぶしく輝く部分がとんで、そうでない部分がつぶれがちになるので、見た目の美しさを画像で再現するのが難しい。
20青口太亀虫B
光の当たるとざらつきのある表面に細かい反射光の点がちりばめられたようにキラキラ輝く。見る角度で、緑〜赤の色合いが変わる。

21赤筋金亀虫A
アカスジキンカメムシ(18mm前後)は、メタルグリーンのボディに赤い模様が鮮やかな美しいカメムシ。きらめくメタルグリーン部分は、黒地に小さな輪紋が敷きつめられたように広がっている。タマムシのメタルカラーは標本になっても(死んでも)保たれるが、カメムシは標本にすると色褪せてしまうようだ。
ところが、色褪せたアカスジキンカメムシ(死骸)も、水分を与えると美しさがよみがえる。クモの巣に引っかかっていたアカスジキンカメムシの残骸──すっかり黒くなった前胸を水を含んだ筆で濡らしてみたところ、すぐにメタルグリーンの輝きが復活したので驚いたことがあった⬇。
22赤筋金亀虫B実験
アカスジキンカメムシは、羽化や脱皮をしたあとの《抜け殻を落とし》でよく観察した、僕にとっては馴染みのあるカメムシだ。

メタリックな輝きが美しい昆虫と言えば、セイボウ(青蜂)の仲間も目を見はるものがある。金属光沢のあるボデイに凹面鏡のような点刻がほどこされ、さらに光の粒に包まれたような輝き方をする。これは先日【宝石蜂セイボウ:輝きの秘密と生活史考】でプチまとめ記事にしているので、そちらをご覧あれ。



虹色の輝き!アカガネサルハムシ
タマムシとコガネムシ
輝くアオマダラタマムシと銀の蛾
エメラルドを隠し持つムツボシタマムシ
変化する輝き!?アカアシオオアオカミキリ@葉
可愛い悪役!?ルリカミキリの産卵
金色に輝くジュエリー昆虫
ゴールドX:セモンジンガサハムシ
アオクチブトカメムシの輝き
アカスジキンカメムシぷち実験で輝き復活
カメムシの奇行!?抜け殻落としプチまとめ
宝石蜂セイボウ:輝きの秘密と生活史考
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タマムシとコガネムシ

01玉虫と黄金虫

美麗度も知名度も抜群なタマムシ
メタリックにきらめくタマムシ(ヤマトタマムシ)は美麗昆虫の代表といえるだろう。その美しさから国宝「玉虫厨子(たまむしのずし)」の装飾にも使われたことは周知のことで知名度も高い。インドや中国では、この仲間が宝石商で取り扱われていたりもするらしい。また「タマムシ」は漢字で【吉丁虫】とも書く。縁起の良い虫としても知られ、「長持(タンス)に入れておくと衣裳が増える」とか「財布の中に入れておくとお金が貯まる」などという伝承もある。
02ヤマトタマムシFC2
俗称でタマムシを「カネムシ」「コガネムシ」と呼ぶ地域もあって、童謡の『黄金虫(こがねむし)』(野口雨情・作詞/中山晋平・作曲)もタマムシを歌ったものだとする説がある(『月刊むし』2010年6月号/枝 重夫・著【童謡"黄金蟲"はタマムシだ!?】)。
03黄金虫歌詞再
僕が子供の頃、この童謡を聞いてイメージしたのは黄金色(ゴールド)に輝くコガネムシだった。歌われているのが文字通りコガネムシであっても違和感はないが、これが縁起の良い虫「タマムシ」のことだとすれば、さらにピッタリくる。金運の伝承とも合致するので「金蔵立てた 蔵立てた」という展開も合点がいく。輝くゴーヂャスなルックスからしても、タマムシのイメージにふさわしい。

僕にはすんなりと納得できた枝氏の《タマムシ説》だが、これは、それ以前にあった《ゴキブリ説》への反論として打ち出されたものだったらしい。
「よく知られた童謡『黄金虫(こがねむし)』で唱われているコガネムシは、なんとゴキブリ(チャバネゴキブリ)のことだった」などという説が、衝撃をもって(!?)色々なメディアで紹介されており、かなり拡散&浸透しているようだ。僕の手元にある本でも4冊にそうした記述が見られる。

04黄金虫ゴキブリ説本A
05黄金虫ゴキブリ説本B
 『読んで楽しい日本の童謡』(中村幸弘/右文書院/2008年)
 『童謡の風景2』(合田道人/中日新聞社/2009年)
 『害虫の誕生──虫からみた日本史』(瀬戸口明久/ちくま新書/2009年)
 『少しかしこくなれる昆虫の話』(矢島稔・監修/笠倉出版社/2015年)

童謡『黄金虫』はタマムシなのかゴキブリなのか!?
『月刊むし』2010年6月号(472号)に掲載された「童謡"黄金蟲"はタマムシだ!?」(枝 重夫)によると、《ゴキブリ説》の発端は石原保博士が1979年に打ち出したもの(コガネムシは金持ちではない話@『虫・鳥・花と』築地書館・刊)だったらしい。
石原氏の《ゴキブリ説》を要約すると──《群馬県高崎地方では、屋内にいるチャバネゴキブリをコガネムシとよび、この虫がふえると財産家になれるといわれていた》という伝承を紹介し、《茨城県磯原町に生まれ育った野口雨情も、北関東という同地方なのだから、雨情の作詞した「コガネムシ」もチャバネゴキブリのことである》と説いたものだったという。しかし、群馬県と茨城県は、栃木県を挟んでかなり離れており、高崎市と磯原町は直線距離で170kmほど隔てられている──これを《北関東》というくくりで《同地方》とみなすのは、いささか強引だ。群馬県高崎地方の方言や伝承を茨城県磯原町に当てはめることには無理がある。
《タマムシ説》で反論した枝重夫氏は雨情と同じ茨城県に生まれ育ったそうで、この地方ではタマムシのことを俗に「コガネムシ」と呼んでいたという。枝氏が磯原町(正確には、茨城県多賀郡北中郷村磯原で、現在の北茨城市)周辺の方言について調べてみたところ、《タマムシをコガネムシと呼ぶ》《(この虫を)財布の中に入れておくとお金が貯まる/箪笥の中に入れておくと虫がつかないなどといわれていた》という内容が記された資料は見つかったものの、《ゴキブリをコガネムシと呼ぶ》という記述は見つけることができなかったという。また、枝氏は野口雨情の孫と実際に会ってゴキブリ説のことについて話す機会があり、彼から「生家では昔にはゴキブリはまったく見られなかったので、黄金虫はゴキブリではないと思う」という証言を得たとも記している。枝氏も少年時代に自宅の室内や周辺でゴキブリを見たことがなく、当時の冬は寒も厳しく室温も低かったのでゴキブリは生息していなかったのではないかと考えているという。

理屈から考えれば枝氏の《タマムシ説》に説得力があり、石原保氏の《ゴキブリ説》には不備が感じられる。しかし、石原保博士という権威のある人の発信だったためか、《ゴキブリ説》自体にインパクトがあったためか、これまでに色々な人が色々なメディアで《ゴキブリ説》を拡散させている。
具体的な一例をあげると──瀬戸口明久・著『害虫の誕生──虫からみた日本史』(ちくま新書/2009年)では、プロローグにこう記されている⬇。


群馬県高崎地方では、チャバネゴキブリのことを「コガネムシ」と呼んでいたという。「コガネムシは金持ちだ」という野口雨情の童謡で歌われているのは、この虫のことなのだ。(P.8)

《群馬県高崎地方》の例をあげて、いきなり童謡『黄金虫』のコガネムシはゴキブリのことなのだと決めつけているが、《群馬県高崎地方》の話を野口雨情の童謡に結びつける根拠は何も記されていない。
もし、本当に野口雨情の地方でもチャバネゴキブリのことを「コガネムシ」と呼んでいたのであれば、《群馬県高崎地方》の例を持ち出すまでもなく、《野口雨情の出身地・茨城県磯原町では──》と説明できたはずである。それができなかったのは、野口雨情のふるさとではチャバネゴキブリのことを「コガネムシ」と呼んでいたという実態が確認できなかった(なかった)からだろう。
野口雨情と同県人であった枝氏の調べでは、雨情の生家近辺でゴキブリをコガネムシとよぶ習慣はなく、タマムシをコガネムシと呼んでいたという。
にもかかわらず《群馬県高崎地方》の例をもって童謡『黄金虫』で歌われているのはチャバネゴキブリのことだと断定してしまったのは思い込みによるミスリードだろう。しかし、こうした形で《ゴキブリ説》は、まことしやかに拡散され続けている。

子どもの頃にこの童謡に親しんだ人は多かったはずだ。雨情ファンも決して少なくはないだろう。そうした人たちが《ゴキブリ説》を知ったとき、どう感じるだろう? 僕はファンではないけれど、いささかショック受け、なんだかガッカリした気分になったのを覚えている。
枝氏が初めて《タマムシ説》を打ち出したのは1980年(昆虫と自然)だったそうだが(『月刊むし』の記事は2度目)、その後も《ゴキブリ説》は拡散され続けている……。
孫引きで拡散するうちに、《ゴキブリ説》の不備部分──《群馬県高崎地方》と《茨城県磯原町》を《同じ北関東》ということで《同地方》とみなしてしまったいう根本的な間違いが、《同地方(群馬県高崎地方と茨城県磯原町)》→《茨城県》とすり替わってしまっている情報も目にするようになってきた。
出版物や報道記事などで《ゴキブリ説》に触れるたびに、もう少し《タマムシ説》を後押しする発言があってもよいのではなかろうか……と思ってしまう。

コガネムシの金蔵は玉虫厨子(たまむしのずし)!?
枝氏の《タマムシ説》は充分に説得力のあるものだったが、これに加えて僕には「きっとこうだったのだろう」と思うことがある。それは《童謡『黄金虫』は、おそらく玉虫厨子をモチーフに創作された》──ということだ。

冒頭でも触れた玉虫厨子──タマムシの翅を装飾に用いた国宝の存在は多くの人が知っている。この「知名度の高い国宝《玉虫厨子》を《コガネムシ(タマムシ)の金蔵》に見立てる」という着想を得て野口雨情はこの作品を書いたのではないか。そう考えると、実にしっくりくる。「コガネムシが架空の金蔵を建てる」という発想よりも「なるほど!」と思える意外性があって、創作をする者にとっては、はるかに「手応えのある着想」である。
《玉虫厨子》がモチーフであったとするなら、それを建てたコガネムシは、もちろんタマムシ(の俗称)ということになる。「財布の中に入れておくとお金が貯まる」という金運のよい伝承とも合致する。

《コガネムシの金蔵》=《玉虫厨子》と考えるとイメージがピッタリはまる──僕にはそう思えてならないのだが、この着想に気づいたのは僕ではない。某所で《タマムシ説》について記した時に「子どもの頃から、(『黄金虫』に歌われているのは)タマムシのことだと思い込んでいた」という人がいて「社会の時間で玉虫厨子の写真を見たとき、これこそ黄金虫の金蔵だと思った」そうである。これには「なるほど!」と膝を叩いた。野口雨情も、玉虫厨子を見て「コガネムシ(タマムシ)の金蔵だ!」とひらめいて創作イメージをふくらませ、童謡『黄金虫(こがねむし)』を書いたのではなかったか……。

玉虫厨子と水飴の関係!?
さて、童謡『黄金虫』で描かれた歌詞の、コガネムシが金持ちで金蔵を建てた──という展開は《タマムシ説》で説明できる。ただ、よくわからないのが、前半(1番)と後半(2番)のそれぞれ最後の行に出てくる「水飴」のくだりである。
これについては、以前【童謡『黄金虫』の謎】で、《玉虫厨子》と《水飴》を結びつける強引な解釈を考えたことがあった。
「玉虫厨子は現存する最古の漆絵」という情報から、「漆絵」に使われる「蒔絵」と呼ばれる技法の中に「水飴を用いる技法(消粉蒔絵)がある」という情報にたどり着き、ここに《玉虫厨子》と《水飴》とのつながりの可能性を考えてみたものである。
玉虫厨子に実際に水飴が使われていたのかどうか僕にはわからないが、もし野口雨情が、玉虫厨子の制作過程で水飴が使われていると考えていたとするなら──歌詞の意味はいちおう説明できる。

金蔵を建てるための水飴を買ってきた(伏線)➡その水飴を子供にも与えた(小道具の再利用:創作的工夫)というダブルミーニングでまとめたという解釈が成立する。
06黄金虫歌詞構造
つまり童謡『黄金虫』はダブルミーニングを意図した構造で、金蔵を建てるために買ってきた水飴(伏線)を子供への土産としても利用したという「もうひとつの意味」でオチをつけた(まとめた)作品だという見方もできる。

──というのは、あくまで解釈シミュレーションの1つ。伝統工芸に水飴を使う技法があるということが周知のことであれば、このダブルミーニングは成立するが、リスナーが知らなければ、なんのことか判らない(だからほとんどの人に水飴の意味がわからなかったという解釈もできるかもしれないが……)。

法隆寺と水飴の関係!?
そして、最近ふと思ったことなのだが……、
《玉虫厨子》といえば《法隆寺》──《法隆寺》と《飴屋》のつながりというセンはどうなのだろう?
《法隆寺》などを観光した人が《飴屋》で土産を買って帰るということが定番になっていて、野口雨情にも、そんな経験があったのだとすると、そこに《玉虫厨子(コガネムシの金蔵)》と《飴屋で買ってきた飴》のつながりが想像できなくもない。
ちなみに、法隆寺があるのは奈良県生駒郡だが、野口雨情は奈良県大和高田市と縁があったらしく『高田小唄』を書いている。大和を訪ね高田寺内に滞在していたこともあったそうで専立寺(高田御坊)に歌碑が残されている。

奈良・京都には歴史の長い飴屋があるようだし京都には飴屋町という地名もあるそうだから、ひょっとしたら野口雨情が活躍していた時期には、法隆寺などを観光するさいに飴屋で土産を買って帰るというような習慣があったのではないか? それで『黄金虫』の中に出てくる金蔵が玉虫厨子(法隆寺)であることを示唆するアイテムとして「飴屋で水飴を買う」というヒントが盛り込まれた……という解釈はできないだろうか?
もちろん、これも強引な解釈シミュレーションのひとつ。確証はない。

童謡『黄金虫』については、描かれているのはタマムシで、おそらく《玉虫厨子》を《コガネムシ(タマムシ)の金蔵》に見立てる着想を得て書かれたものだろうと僕は考えているのだが、「水飴」については……解釈シミュレーションはしてみたものの、果たして本当にそうなのか……よくわからないというのが正直なところだ。
童謡なのだから、もう少しわかりやすく作ってくれても良さそうな気もするが……野口雨情は、そのあたりにはあまり頓着しない人だったのだろうか?

以前【《イタチの魔かけ》と《鼬の目陰》】という記事の中でも野口雨情(作詞)&中山晋平(作曲)コンビの『霜夜の鼬』という童謡について触れたが、この作品にも判りにくいところがあった。
「寒い霜夜(しもよ)のしのやぶでイタチがアズキをといで赤飯をたく」という変わった内容で、なんでイタチがアズキを研ぐのか、歌詞からは、さっぱりわからない。おそらく「霜夜(しもよ)のしのやぶ(篠竹のやぶ)」は語呂合わせの言葉遊び(「こがねむしは金持ちだ」というのと同じ──韻を踏んだ語呂合わせの言葉遊び)で、寒い夜に霜柱を踏む音がアズキをとぐ音に似ている(「玉虫厨子」が「金蔵」に似ているというのと同じ《みたて》)という着想があったのではないか。ここで妖怪「あずきとぎ」を連想し、この妖怪の正体はイタチだという説からの発想で、イタチがアズキをとぐという筋立を考えたのだろう──僕はそう解釈したのだが、妖怪あずきとぎやその正体をイタチだとする伝承があることを知らない者には見当がつかないだろう。こういう「判りづらい話」を何の説明もなく歌詞にしてしまう人なのだから、『黄金虫』も同じように聞く人の解釈には頓着せずに書かれたものなのかもしれない。

これまで何度か《タマムシ説》を後押しする記事を書いてきたが、もっとそうした意見があっていいのではないかと言う思いもあって、最近思いついた水飴の解釈(かなりあやふやだが……)を加えて、あらためて記してみたしだい。



宝石昆虫タマムシ/玉虫の金蔵とは!?
黄金色のコガネムシ
セミとタマムシ
童謡『黄金虫』の謎
童謡『黄金虫』の解釈をめぐって
童謡『黄金虫』ゴキブリではなくタマムシ
メタリックな美麗昆虫10種
《イタチの魔かけ》と《鼬の目陰》
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宝石蜂セイボウ:輝きの秘密と生活史考

Jewel wasps(宝石蜂)…セイボウの仲間
過去に昆虫関連の記事をずいぶん投稿してきた。虫見に出て撮るたびに記事にしていたので、同じ種類があちこちに分散していたり、他の昆虫の記事に紛れていたりしている。あらためてまとめておいてもいいかなと思うものもあって、とりあえず、これまでに撮った美麗昆虫の中でもメタリックな輝きをもつセイボウ(青蜂)=【jewel wasps(宝石蜂)】(英名)のぷちまとめ(といっても4種)。この仲間は日本に38種類が生息しているそうだ。

メタリックな輝きが魅力のイラガセイボウ
01イラガセイボウ1
イラガセイボウ(イラガイツツバセイボウ)はグリーン〜ブルーのメタリックな輝きを放つとても美しいハチ。体長は9〜12mmほど。画像ではわかりにくいが、実際にはかなり輝いて見える。金属光沢の昆虫は見たままの美しさを画像に記録するのが難しい。さらにハチなのですぐに飛ぶので接写するのに苦労する……。この個体は左翅を欠損していたので飛ぶことができず、じっくり撮ることができた。
02イラガセイボウ2
体の表面には金属光沢があってそれだけでも充分美しいのだが、この体表面には点刻と呼ばれる微細なくぼみが密集していて、これが凹面鏡のように〝どの角度から見ても点刻内には反射光が映る〟しくみになっている。このためキラキラ輝く〝光の粒〟を全身にまぶしたように見える。
03イラガセイボウ3
点刻内に明るく輝く〝光の粒〟を撮ろうと露出を絞ると、地色のメタルグリーンが黒っぽくつぶれ〝光の粒〟は白っぽくとんでしまう(やはり翅を痛めていた別個体⬇)。
04イラガセイボウ4
05イラガセイボウ5
腹端に5つの歯状突起が見える⬆──これが別名:イラガイツツバセイボウの「イツツバ(5つ歯)」の由来。腹端の歯数はセイボウの種類を見分けるポイントの1つ。セイボウの仲間はふつう「竹の筒やカミキリの脱出孔、土で作った巣などに捕えた虫(幼虫の餌となる)をたくわえ卵を産みつける寄生蜂」に寄生するのだが、イラガセイボウは例外的に蛾(イラガ)に寄生する。母蜂はイラガの硬い繭に孔をあけて前蛹に産卵するという。イラガの幼虫は刺されると(触れると)痛い虫としてよく知られている⬇。
06イラガ幼虫&繭再
イラガセイボウは北進昆虫で、明治から昭和の初期にかけては九州のみにしか記録がなかったそうだ。関東で見られるようになったのは戦後のことらしい。

虹色の蜂:セイボウ(青蜂)ならぬレインボウ(レイン蜂)!?
07ツマアカセイボウ
ツマアカセイボウは体長:6〜12mmほどのハチ。腹の虹色に輝くメタルカラーが美しい。《セイボウ(青蜂)》というより《レインボウ(レイン蜂)》と呼びたくなる。腹部末端の歯状突起は4歯。宿主はシブヤスジドロバチ。

08ムツバセイボウ1
ムツバセイボウは体長:10〜12mm。このハチも腹のあざやかなグラデーションが美しい。
09ムツバセイボウ2
この画像⬆では判りにくいが腹部末端の歯状突起は6歯──和名の「ムツバ(六歯)」はここから。
グルーミングで翅をつくろうときに腹が見える⬇。この個体は小さな白いダニをつけていた。
10ムツバセイボウ3
ムツバセイボウの宿主はヤマトフタスジスズバチ・オオフタオビドロバチ。
カミキリの脱出孔を利用したヤマトフタスジスズバチ(フタスジスズバチ)の巣の近くでカッコウのように托卵(たくらん)の機会をうかがうムツバセイボウ⬇。
11ムツバセイボウ4
ムツバセイボウはスキを見てヤマトフタスジスズバチの巣にもぐりこんで産卵。孵ったムツバセイボウの幼虫は、ヤマトフタスジスズバチが(自分の子のエサとして)貯蔵した蛾の幼虫(メイガ・ハマキガ・キバガ・ヤガなど)を食べて成長する。

12ミドリセイボウ1
欄干にとまったミドリセイボウ。陽が当ると点刻内の反射光が光の粉をまぶしたようにきらめいて美しいのだが──画像では白っぽい点になってしまう。
13ミドリセイボウ2
ミドリセイボウの体長は10〜13mm。腹部末端の歯状突起は5歯。宿主はヤマトルリジガバチ。

セイボウの生活史はどのように誕生したのか?
まず、狩り蜂がどうして幼虫のエサとなる特定の宿主(寄主)を選択するのか……僕の素人想像にすぎないのだが、《狩り蜂は幼虫時代に食した獲物の味やニオイを記憶しており、母蜂になるとそれを頼りに獲物を探し出し、狩って卵を産みつける》のではないか?
そう考えると、なぜ《セイボウが他の狩り蜂(寄生蜂)の巣(わが子のために蓄えたエサの貯蔵庫)にもぐり込んで〝カッコウの托卵〟のようなことをする》ことになったのか説明できる気がする。
仮に──セイボウの祖先Aは蛾の幼虫などに直接卵を産みつけていたとする。その卵がついたイモムシを後からきた狩り蜂Bが狩って巣に運びこむこともあっただろう。すると巣の中で孵化したAは、BがBの幼虫のために貯蔵した豊富なエサを食べ、しかも野外で育つよりも安全にBの巣の中で育つことができる。Aは親になると、自分が育ったエサと環境(巣)のニオイ覚えていて、Bの巣を探してそこに卵を産むようになった──というシナリオは、合理的に思われる。
Aにとっては、それまで通り野外のイモムシに寄生して育つよりも、Bの巣で育つ方が生存率は高いだろう。生存率が高い方が進化の中で選択されて現在の《狩り蜂(寄生蜂)にもぐりこんで卵を産みつける》というセイボウの寄生スタイルが確立したのではないだろうか。

ハチに寄生するのが主流のセイボウ類の中で、例外的にイラガに寄生するイラガセイボウは「寄主の種類」でみると「蜂と蛾」でかけ離れているが、これも前記の前提にたてばそう不思議ではなのかもしれない。すなわち、セイボウの祖先Aが卵を産みつけたイモムシが、Aの孵化より先に蛹化してしまうケースがあったとする。チョウや蛾の幼虫は蛹化するときに脱皮をするので、そのさいに脱ぎ捨てられた抜け殻いっしょに孵化前の卵もエサから脱落して死んでしまうことになる。しかし、イラガの場合、幼虫は蛹化する前に繭を作り、繭の中で脱皮をするので、Aの卵はイラガの蛹とともに繭の中に残ることができる。それでイラガを食って育ったAの幼虫は、親になると自分が育ったイラガの繭のニオイをたよりに産卵ターゲットにイラガの繭を選択するようになった──と考えれば筋は通る。
蛹化する前に繭を作る蛾は他にもいるが、多くの蛾が作る繭とイラガの繭は質感的にずいぶん違う。仮に繭の中で寄生に成功して育つことができたとしても、成虫になったAが繭を破ることができなければ子孫を残せない。その蛾の繭は産卵ターゲットとなり得ないことになる。それがイラガの繭では成虫になったハチのアゴで食い破ることができたために、宿主としてイラガを選択することができたのかもしれない。

本当のところはわからないが、そんな可能性を想像してしまう。美しいセイボウの風変わりな生活史をみると、ついあれこれ考えてしまう。



メタリックに輝く虹色のハチ ※ツマアカセイボウ
宝石蜂(jewel wasps)セイボウ ※ミドリ・クロバネ・ツマアカセイボウ
宝石蜂セイボウの生活史起源考?
托卵の機会をうかがうムツバセイボウ
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ミドリセイボウとルリジガバチ
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ツインテールかわいい昆虫は

「ツインテールの日」にちなんで…
本日、2月2日は、日本ツインテール協会が定めた「ツインテールの日」──なのだそうだ。某所のニュース一覧に【ツインテールかわいいキャラは】という見出しがでていた。
「ツインテール」と言えば(僕らの世代では)その名の怪獣が思い浮かぶが……これは「かわいいキャラ」ではない。ニュース見出しを見て僕の頭に思い浮かんだのはブチミャクヨコバイの幼虫だった。

01斑脈横這B再
ルリボシカミキリ〜ツインテールヨコバイより⬆

ブチミャクヨコバイの幼虫が、小さな体を水平に保ちながら左右に動かすダンスは風変わりで、これは「かわいい」と言っても良いだろう。
02斑脈横這ダンス再
ミミズクのダンスより⬆

ヨコバイの仲間がときおり見せるダンス──その意味について考えてみたことがあって、【ミミズクのダンス】ではその考察を記している。

他に「ツインテール」で思い浮かんだのはヒメハサミツノカメムシだった。こちらは「かわいい」というよりは「カッコ良い」カメムシ。きれいな昆虫なので、これも過去の記事から画像を再掲載しておく。

03姫鋏角亀虫♂再
レッドV:ヒメハサミツノカメムシより⬆


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