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カメムシの奇行!?抜け殻落としプチまとめ



羽化や脱皮をしたカメムシが自分の抜け殻を落とす──この行動を僕は《抜け殻落とし》(もしくは《羽化殻落とし》・《脱皮殻落とし》)と呼んでいる。冒頭の画像↑は2018年5月に撮影した羽化後のアカスジキンカメムシ。新成虫が《抜け殻(羽化殻)を落とし》をした瞬間──ではなく、落とした抜け殻がクモのしおり糸にひっかかって宙に浮いているシーン。カメムシの《抜け殻落とし》については、これまで幾度も記事にしてきたが、ここで少しまとめておくことにした。

カメムシの《抜け殻落とし》とその意味

自分の抜け殻を攻撃して落とす──初めて目にした時は奇異に感じて、この行動にはどんな意味があるのだろうとあれこれ想像をめぐらせた。
抜け殻には、その虫が存在することを示す痕跡(例えば──羽化や脱皮のさいに分泌される離型剤のようなもの?)が残っていて、そのニオイが寄生蜂や寄生蠅、アリなどを呼び寄せてしまうことがあるのではないか? だとすれば抜け殻がカメムシの近くにあると、自分や仲間が天敵に見つかる危険が高まる……そこで、これを回避すべく生活圏の外に(災いの元となる)抜け殻を落とすのではないだろうか──今は、そのように考えている。
イモムシなどでは孵化後に卵殻を食べたり、脱皮後に脱皮殻を食べるものがいるが、これも1つには「天敵の指標となる抜け殻を隠滅する」という意味があるのではないかと思う。カメムシは口の構造上、抜け殻を食べて隠滅することができないので、生活圏の外に落とすことで処理しているのではないだろうか。
セミやチョウ・蛾などは羽化殻を残すが、羽化後その場から離れてしまうので抜け殻を残しておいても問題がないのだろう。セミは羽化する時に地中から出てきて木に登るし、チョウ・蛾は蛹になる前に食草を離れて移動するものがいる──こうした行動で「天敵の指標となる抜け殻を仲間から遠ざける」ことをしていると考えることもできそうな気がする(あるいは、ハチやハエに寄生されていた場合にも仲間から離れたところで蛹になることで、羽化した寄生蜂や寄生蠅を仲間から遠ざける効果があるのかもしれない)。
素人の考えたことで、この解釈が当っているのかどうかはわからない。しかし、カメムシが《抜け殻落とし》をするシーンは何度も目撃している。

エサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし



成虫は背中のハート・マークが目をひくエサキモンキツノカメムシ。僕が初めて《抜け殻落とし》を目にしたのは、2012年10月──擬木で羽化する、このエサキモンキツノカメムシ↓を観察している時だった。


①擬木支柱で羽化するエサキモンキツノカメムシ。②羽化殻から離脱すると頭を上にし羽化殻と向き合う。③頭突きをするように羽化殻を攻撃し始め、ついに落としてしまった。羽化殻への攻撃が始まったのは新成虫が羽化殻から離脱して9分後のことだった。このときのことを記した記事→【ハート亀虫羽化 見守るキリスト!?】)。
2015年11月に、やはり擬木で羽化していたエサキモンキツノカメムシの羽化殻落とし↓。


①擬木支柱にとまった羽化後の新成虫と羽化殻。②羽化殻に頭からぶつかっていく新成虫。③羽化殻を落とす。このときは離脱後20分余り経ってからの羽化殻落としだった(※詳細記事→【エサキモンキツノカメムシの抜け殻落とし他】)。

アカスジキンカメムシの羽化殻落とし&脱皮殻落とし



《抜け殻落とし》はアカスジキンカメムシで観察することが多かった。といっても必ず行うわけではなく、葉の裏に抜け殻だけが残されていることもある(地面に落とされている抜け殻の方が多い)。また羽化中や羽化直後の新成虫を見つけて羽化殻シーンを撮影しようと近づくと、(警戒して)固まったままなかなか始まらなかったり、アクシデントで他の昆虫と接触して羽化殻を残して逃去る新成虫もいた。近くで待機していると《抜け殻落とし》が始まらないし、離れていると《抜け殻落とし》が始まっときに接写が間にあわず、画像での記録は失敗が多かったが……とりあえず記録ということで……。


2018年5月に撮影したもの↑。ムクゲのやや高い位置にとまっていたのできれいに撮れなかったが……①葉の裏で羽化中のアカスジキンカメムシ。②離脱した新成虫が向きを変える。③羽化殻と頭をつき合わせるような形。この時点で羽化殻の脚は葉から外れかけていた。④しばらくじっとしていた新成虫が動き出す。⑤頭で羽化殻を押しながら前進。⑥前進して寄り切るように羽化殻を落とす(この直後に羽化殻は落下)。⑦羽化殻落としを終えたアカスジキンカメムシ新成虫。※【羽化殻落とし@アカスジキンカメムシ】より↑。
《羽化殻落とし》を目の前で確認しながら、肝心のシーンが激しくピンポケになってしまった例……↓。


2017年5月に撮影↑。羽化中のアカスジキンカメムシが古い殻から離脱して2時間ほど経ってからの《羽化殻落とし》だった(※詳細→【アカスジキンカメムシ:羽化~抜け殻落とし】)。《羽化殻落とし》を接写しようと近くで待機していると、警戒して(だろう)なかなか始めてくれない。待たされることが多かった。


2017年5月に撮影↑。①を撮影した後、少し離れたところから監視を続けて《羽化殻落とし》を待っていた。②《羽化殻落とし》の瞬間──フレーミングもピントも間に合わず、角度も悪くてこんな画像しか撮れなかった(①から50分が経過していた)。③羽化殻を落とした後の新成虫(※詳細→【アカスジキンカメムシ羽化後《抜け殻落とし》確認】)。



2018年5月に撮影↑。①新成虫は孵化殻から少し離れたところに移動していて体色もだいぶ濃くなってきている(時間も経過している)。もう《羽化殻落とし》はしないのだろうか……とあきらめかけていると、した──が、その瞬間は撮り逃し、その直後の画像が→②羽化殻落とし直後の画像(1秒前にはフレーム内に羽化殻があった)。目の前で《羽化殻落とし》を確認していながら、またしてもその瞬間は撮り逃してしまった(※詳細→【羽化殻落とし@アカスジキンカメムシ】)。



2018年5月に撮影↑。これは《羽化殻落とし》のシーンを確認していない。葉の裏で羽化殻と対峙している羽化直後の新成虫(左画像)。2時間40分後に見に行くと、新成虫はすでに葉の表に移動しており、葉の裏の羽化殻はなくなっていた(右画像)。新成虫は、おそらく《羽化殻落とし》をしたあとに葉の表に移動したのだろう(※詳細→【アカスジキンカメムシの羽化他】)。
アカスジキンカメムシの《抜け殻落とし》は幼虫の脱皮でも確認している(《脱皮殻落とし》)。


2015年9月に撮影↑。①コブシの葉で脱皮中のアカスジキンカメムシ幼虫。②触角や脚が抜けていく。③最後に腹端が抜けて新幼虫が抜け殻から離脱。よくこのサイズの体が小さな抜け殻に収まっていたものだといつも感心する。④向きを変えて抜け殻と対峙。⑤抜け殻に頭突き攻撃。⑥抜け殻の下にもぐることで抜け殻の前脚を葉から引き剥がす。カメラを近づけたためこの姿勢で触角を倒し、静止してしまった。この2分20秒後の画像が→⑦接写するカメラを離していたわずかのスキに脱皮殻は落とされてしまった(※詳細→【アカスジキンカメムシの抜け殻おとし】)。
こちら↓は2015年10月に撮影した《脱皮殻落とし》。


①擬木の支柱で脱皮殻落としを開始したアカスジキンカメムシ幼虫。葉の裏ではすんなり落ちる抜け殻が、擬木では徘徊する蛾の幼虫やクモが残した糸がひっかかってなかなか落ちない。②頭突きをし抜け殻を押し上げる新幼虫。③なかなか落ちない脱皮殻を持ち上げ、このあとようやく落としたのだが……。④擬木に残されていたしおり糸(?)にひっかかった脱皮殻は宙吊りになっていた。⑤脱皮殻がまだあることに気がついた新幼虫は……⑥わざわざ支柱をおりていき脱皮殻を落とそうと頭突きをする。⑦脱皮殻は再び落ちかけて途中で宙吊りに──この後、風にあおられて、ようやく落下した(※詳細→【カメムシの抜け殻落とし行動】)。
宙吊りになった脱皮殻に追い打ちをかけにいく行動に《抜け殻落とし》に対する執着のようなものを感じた。
《抜け殻落とし》への執着は羽化でも感じるケースがあった。


2017年5月に撮影↑。ふつう羽化後の新成虫は羽化殻と同じ葉にいるものだが、上下の葉に分かれてしまった羽化殻と新成虫。①では羽化殻と新成虫がとまった葉は離れているが、羽化は羽化殻のある上の葉で行われたはず。そのときは上の葉(羽化殻がある葉)は終齢幼虫の重みで下がり、下の葉(新成虫とまっている葉)は(新成虫の体重がかかっていないため)もっと上がっていて上の葉と接していたのだろう。羽化の過程で新成虫が、接していた下の葉につかまり、そのまま体重がかかってこの状態(上下の葉が離れる形)になったものと思われる。この状態で下の葉に移ってしまった新成虫が羽化殻を落とすために、わざわざ上の葉まで戻るのかどうか──興味があったのでしばらく近くにスタンバって観察していたが、警戒してかなかなか動かず。少しその場を離れ、22分後に戻ってみると→②新成虫はすでに上の葉に移動しており、羽化殻は落とされた後だった。羽化殻はこの枝の下でみつかったので、風で落ちたわけではなく(風に飛ばされたのであれば直下には落ちない)、新成虫がわざわざ上の葉に移動している事からも《羽化殻落とし》が行われたことは、まず間違いない(※詳細→【アカスジキンカメムシ新成虫《抜け殻落とし》のケース】)。
羽化や脱皮をしたあとのカメムシが労力を要して行う《抜け殻落とし》には、やはりそれなりの意味があるのだろうとあらためて感じた。
僕が想像した《抜け殻落とし》の意味の一端を裏付けるようなシーンもあった。


2018年5月に撮影↑(※詳細→【アカスジキンカメムシの羽化他】)。葉の裏で羽化していたアカスジキンカメムシの羽化殻落としを接写すべく、ずっと近くでスタンバっていたが、(警戒して?)なかなか羽化殻落としは始まらない……。そのうちアリがやってきてしまい、アカスジキンカメムシ成虫は羽化殻を残して別の枝へ移動していってしまった。羽化殻はアリによって運び去られた↓。


これで、羽化殻を放置すればアリが来ることは確認できた。アリがくるのだから、寄生蜂や寄生蠅など、他の天敵が嗅ぎ付けてくることも充分ありそうだ。こうした天敵を生活圏に誘引しないように抜け殻を落とすというのは理にかなっているように思われる。もちろんカメムシが「効果を考えて」こうした行動をとっているわけではいだろうが……進化の中で、何らかのきっかけによって抜け殻を落とす行動が生まれ、それを行う個体の生存率が高かったことから、その子孫にこの行動が受け継がれ定着していったのではないか?

ツヤアオカメムシ・チャバネアオカメムシの《羽化殻落とし》



エサキモンキツノカメムシやアカスジキンカメムシの他には、ツヤアオカメムシとチャバネアオカメムシで《羽化殻落とし》を確認している。



2015年11月に擬木で撮影したツヤアオカメムシの羽化殻落とし↑(※詳細→【モンキツノカメムシとエサキモンキツノカメムシ他】)。



2018年9月にケヤキの幹上で行われていたチャバネアオカメムシの羽化殻落とし↑(※詳細→【チャバネアオカメムシの羽化殻落とし】)。

謎めいたカメムシの《抜け殻落とし》

何の予備知識も無くカメムシの《抜け殻落とし》を目にした当初は理解しがたい光景のように思われた。つい今しがたまで自分の体の一部だったものを攻撃する!?──自分の体から離れたとたん、《自己》だったものが《非自己》と認識されてしまうのだろうか? それにしても、エサキモンキツノカメムシは母虫が卵~若齢幼虫集団を守ることで知られているし、アカスジキンカメムシも葉の裏に数匹が体をよせあって集まっていたりする──仲間と協調できる昆虫が、どうして少し前には自分の体だった抜け殻を攻撃するのか、とても不思議だった。
最初に記した通り、今では「天敵に嗅ぎつけられる危険を避けるため」に《抜け殻落とし》をするのだろうと僕は考えている。長い進化の中で、抜け殻を放置するものの中から落とすものが現れ、その一群の生存率が高かったことで《抜け殻落とし》の習性が自然選択されたのだろうという解釈なのだが……それでは、最初の《抜け殻落とし》はどのようにして起こったのだろう? カメムシが「天敵を避けるため」と意識して始めたわけではないだろうから、きっと何か別の行動システムの副産的な(あるいはエラー?)発現がきっかけになってのことではないかという気がするが、そのあたりのことはまだ想像がつかずにいる。
僕の解釈がどの程度当っているのか、まるっきり的外れなのかはわからないが……いずれにしても脳味噌を刺激し続けるカメムシの《抜け殻落とし》は、気になる《謎めいた生態》の1つである。

※追記:風変わりなハリサシガメの脱皮殻剥ぎ

ちょっと(かなり?)変わったカメムシ──ハリサシガメの《抜け殻落とし》に相当すると思われる行動について追記。ハリサシガメは捕食性カメムシでエサはもっぱらアリという変わり種。しかも幼虫は捕食後のアリの死骸を背中にデコレーションして擬装するという風変わりな習性を持っている。背中にデコるのは狩ったアリばかりでなく、おそらくアリのゴミ捨場から拾ってきたのではないかと思われる虫の残骸等も混じっていたりする。さらにハリサシガメは脱皮も奇想天外で、古い殻を破って出現する新幼虫は脱皮殻が背負っていたデコレーション素材をそのまま引き継ぎ、背負いながらでてくる↓(*)。




画像を90度回転しているが、実際は石垣の鉛直面に頭を下にして脱皮している↑(画面左が下)。この脱皮のさいに、引き継いだデコレーション素材とともに、これにくっついていた自分の脱皮殻もいっしょに背負ってしまうことが起きる。
自分の脱皮殻を背負って擬装する昆虫(セモンジンガサハムシなど)もいるのだし、ハリサシガメ幼虫は他の昆虫の残骸をわざわざデコレーションしているのだから、自分の抜け殻だってデコっても良さそうな気がするが……ハリサシガメ幼虫は自分の脱皮殻だけは嫌って、引き剥がそうとする。先に紹介したカメムシの《抜け殻落とし》が、基本的には頭を使って──頭突きで押し出すように行われていたのに対し、ハリサシガメ幼虫の、いわば《脱皮殻剥ぎ》は後脚を使って行われるようだ。




別の脱皮後と思われるハリサシガメ幼虫↓。


ダンゴムシかワラジムシの殻(白く見える物)を背負っているが、その後ろに脱皮殻も付着している(腹の背面がデコ素材にくっついている)。この30分後、すでに脱皮殻は引き剥がされていた↓。


アリの死骸やアリが廃棄したと思われる虫の残骸などは積極的にデコるのに、自分の抜け殻はデコレーションから排除しようとするのが興味深いところ。擬装がアリの嗅覚を欺くためのものだとしたら、自分の(ニオイがついた)脱皮殻を排除するのは理にかなっている。

★ハリサシガメ記事一覧
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ハリサシガメ羽化殻のレガース

ハリサシガメ羽化殻のレガース(脛当て)



石垣の鉛直面にハリサシガメの羽化殻が残されていた。これまで羽化殻はいくつか見つけているが、羽化後に落ちたり飛ばされたりしてきたものではないか……と思われるものが多かった。1度観察できた脱皮では幼虫は石垣の鉛直面に頭を下にしていたので、きっと羽化もそうに行われるのだろうと予想していた。
今回見つけた羽化殻は鉛直面に頭を下にとまっていたので、おそらくここで羽化したのだろう。飛ばされたり落ちてきた羽化殻が、この位置でひっかかるとは考えにくい。
ただ、腹と背中のデコレーション素材が頭の方に垂れ下がって左後脚が大きく浮き上がっていたので、羽化殻はなんともわかりにくい形になっていた。


この羽化殻をプチ容器に回収(採集)↓。


羽化のさいに破れた背中の裂け目から腹面の殻の内側──「脚が抜けた穴」が見える。デコレーションの中にはプラチナ風(?)の昆虫の腹部の一部がコレクションされていた。
容器に入れて移動したあと、撮影し直すために葉の上に乗せると、元の形に整っていた↓。


今回みつけたハリサシガメ羽化殻の背面↑。
腹面↓をみると、前脚と中脚の脛節内側にレガース(脛当て)のようなパーツがあるのがわかる。


このレガースは成虫にもついているが、羽化殻──つまり終齢幼虫にもある器官。先日ファーブル昆虫記で読んでハリサシガメとよく似ていると感じたセアカクロサシガメだが──標本図を見るとセアカクロサシガメには、レガースはついていなかった。




ハリサシガメは成虫も幼虫もアリを捕食する。アリを狩るときは前脚と中脚の4本の脚でしっかり押さえ込んで口吻を刺すのだが、レガースはアリを押さえるさいに滑らないように──アリの体表面にフィットしてグリップ力を増す役割りを果たしているのではないかと僕は考えている。狩りのさいに(獲物を押さえるのに)使われない後脚には、この器官はない。
ハリサシガメが前後&中脚を使って獲物をコントロールするようすを【本とは違う!?ハリサシガメ】から再掲載↓。




今回見つけた羽化殻の大きさは……直径20mmの1円玉と比べると、こんな感じ↓。


アリを捕食するカメムシ

アリはどこにでもいるものだが、その割にアリをエサとする捕食者は少ない気がする。アリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)なんていう有名どころはいるが、ハリサシガメのようにアリを狩る昆虫は珍しいのではないだろうか?
しかし、アリを狩るカメムシは他にもいた──。


葉上の小さな虫影──目に入ったときは極小のハエかと思った。よく見ると小さなカメムシでアリの頭部に口吻を突き刺している。


オオメナガカメムシ──体長5mm前後ということだが、もっと小さく感じた。葉の表面の微細な棘(?)──肉眼では気づかない──と比べても、小ささがわかる。オオメナガカメムシはアリの他にも小さな昆虫を捕食する雑食性(植物の汁も吸う)カメムシだそうだ。


ハリサシガメ:初成虫&若齢幼虫

今シーズン初のハリサシガメ成虫



雑木林ふちの石垣で今シーズン初のハリサシガメ成虫を確認。幼虫時代は土粒にまみれアリの死骸やゴミを背中に盛って擬装しているが、成虫になるとイメージは一新。目をひくのが背中の黒い翅に映える淡いペールオレンジの模様──「ハ」の字が上下裏返った形なので「ハ裏(り)・サシガメ」──というのはこじつけだが、この特徴的な模様がトレードマーク。6月の終わりに初羽化殻を確認しているが、初成虫の確認は7月7日だった。ちなみに昨年同場所で初成虫を確認したのは7月23日だった。
今シーズン初のハリサシガメ成虫はオスで、アリを捕えていた。


接写するため近づくと獲物のアリから口吻を抜いてしまった。


前胸背はゴツゴツしていて左右に棘状の突起(前胸背側角)を備えている。背中(小楯板)から突き出した棘状の突起も特徴的。しばらくすると、アリを口吻の先端にぶら下げて石垣の上を移動していった。


ハリサシガメは成虫も幼虫もアリを捕食する。この石垣では色々なサイズのアリが活動しているのでハリサシガメが育つには良い環境なのだろう。


この石垣にはヒガシニホントカゲも多いのだが、ヒガシニホントカゲがハリサシガメを襲うシーンは見たことがない。
この成虫♂を見つけた後、メスの姿も確認することができた。


成虫♀の下に移っているのはアリをデコったやや小さな幼虫──3齢くらいだろうか? ハリサシガメ幼虫は色々なステージが混在している。


このハリサシガメ成虫♀は翅がやや短い。ハリサシガメの翅の長さは個体によってかなりバラツキがある(【ハリサシガメぷちまとめ2】参照)。
『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』(石川忠・高井幹夫・安永智秀/編/全国農村教育協会)のハリサシガメの項目を見ると《前胸背側角は棘状に突出し、後葉に4つの黄褐色の楕円紋が横一列に並ぶ》という記述があるが、このメスは側角の間の紋が消失していた(冒頭のオスにはある)。


幼虫は若齢も混在



これ↑は大きめのハリサシガメ幼虫。4齢か5齢(終齢幼虫)だろう。
同日みた幼虫の中で一番小さかったのが↓。


2~3mmほどだろうか……小さなゴミ片に見えるが、このあとスタスタと移動して石垣のすきまに入ってしまった。拡大してみると腹部が白っぽい(4齢・5齢になると腹部は黒っぽくなる)。




これまでに回収した脱皮殻から推察すると、2齢幼虫ではないかという気がする……。若齢幼虫の白っぽい腹部は脱皮殻では透明な膜のようになる。


ハリサシガメの羽化殻



時期は前後するが、7月に入ってから見つけたハリサシガメの羽化殻↑(今季2つ目)。石垣のすきまに腹面を上にしてひっくり返っていた。現場で起こして(背面を上にして)撮ったのが↓。


土の上では輪郭がわかりづらいので、回収して撮影した羽化殻↓。


画面右側に頭部がある↑。画面左側に頭部がある↓。


幼虫への脱皮では背中のデコレーション素材は新幼虫に受け継がれる。なので、抜け殻にデコ素材は残らない。成虫になるとデコ擬装はしないので、羽化殻にデコ素材が残される。



ハリサシガメの羽化殻&脱皮殻

ハリサシガメの羽化殻&脱皮殻

ハリサシガメの羽化殻&脱皮殻

今シーズンは5月19日に初めて幼虫を確認したハリサシガメ。成長段階の異なるものが混在しているが、終齢幼虫ではないかと思われるものも出てきて、だいぶ育ってきた感じがする。






この個体↑は小さいアリを捕え、体液を吸っているようだ。獲物を捕らえるときや口吻を刺し直すときなどは前脚と中脚を使って獲物をおさえるので、小さい獲物は土粒コーティングした脚の陰になって確認しづらい。ハリサシガメ幼虫は成長にともなって大きな獲物(アリ)を狩ることができるようになるが、小さなアリも狩っている。
ハリサシガメ幼虫は成長しているので、脱皮のシーンが見られないかと期待しているのだがなかなかその機会が得られない(昨年1度【謎めいたハリサシガメの脱皮】で見たきり)。しかし成長しているのだから、脱皮殻はもっと見つかって良いのではないかと、石垣の隙間やその下の地面なども注意して見ている。老眼が進んだ眼では心もとないが……石垣の下を探していると草にひっかかったアヤシイものを発見。




ハリサシガメ幼虫がデコレーションしたアリの死骸&土粒だらけの体!?──幼虫の死骸の可能性も考えたが、羽化殻だった。石垣で羽化した後、羽化殻が落ちて草にひっかかったのではないかと想像。撮りづらいので草ごと抜いて撮影↓。


これまで見つけた脱皮殻・羽化殻は乾燥して形を保っていたが、この羽化殻はしめって(少し前に雨が降っていた)しんなりしており、回収するさいに形が崩れ、脚が脱落してしまった。


昨シーズンは最初のハリサシガメ成虫を確認したのが7月23日だったから、羽化には早い気もするが、幼虫の育ち具合からすると新成虫が現われても不思議ではない。成虫を探したが見つからなかった。


今回みつけた羽化殻は形が崩れてしまったので↑、一昨年みつけたハリサシガメの羽化殻を↓。


ハリサシガメの幼虫はアリの死骸などを背中にデコレーションするが、これは脱皮のさいに引き継がれるので《幼虫への脱皮》では抜け殻にデコ素材は残らない(【ハリサシガメ脱皮後の再装備は?】参照)。成虫になるとデコレーション擬装はしないので《羽化(成虫への脱皮)》では抜け殻にデコ素材が残される。
ということで、これまでにみつけた脱皮殻──いずれも背中からデコ素材が剥ぎ取られている↓。






若齢の頃は腹が白っぽく(脱皮殻では透明)、成長すると黒っぽくなっていくようだ。幼虫はどんな姿をしているかというと──おそらく4齢と思われる幼虫の死骸からデコ素材と土粒を取り除いたもの↓(【ハリサシガメ幼虫のスッピン】参照)。


脱皮したての幼虫は、脱皮殻から引き継いだデコ素材を背負っているが、脚や腹の一部が露出していたりする。まだ腹がいくらか白っぽいハリサシガメ幼虫が、狩ったアリを食事後に背中にデコったようす↓(【白腹のハリサシガメ幼虫】参照)。




きれいなマツアワフキ

マツアワフキ:泡巣・幼虫・羽化殻・成虫





先日葉の上にきれいなアワフキがとまっていた。ちょっとブチ模様のジュウシマツを連想した。調べてみるとマツアワフキ──松につくアワフキムシだそうで、模様や体色は個体によって差があるようだ。
ということで、この虫を見つけた近くの松を探してみるつと、すぐに幼虫が作った泡巣が見つかった。


泡巣は若い枝のあちこちで見つかった。泡の中で黒い幼虫が動いている。




泡巣周辺の枝を探すと松葉に羽化した後の抜け殻があった。


松葉にぶら下がる形で残っていた羽化殻を角度を変えて撮ってみた。




羽化殻はあちこちの松葉で見つかった。


羽化殻から察するに──終齢幼虫は泡巣のある枝から松葉へと移動して羽化しているようだ。松葉にぶら下がる形で頭は上を向いている抜け殻が多かった。
抜け殻が見つかると周囲の枝で成虫の姿も目につくようになった。


成虫は松葉の根元に隠れるようにとまっていた。目が慣れてくると次々に見つかる。




周囲にとけこんでいる成虫も少なからず。松の枝ではブチ模様が意外に高い隠蔽効果を発揮していた。






マツアワフキの羽化画像を追加







ということで、羽化中のマツアワフキの画像を追加。3枚↑は同じ個体。
近くでみつけた別の個体↓






撮影アングル(斜め下から撮影)の関係で頭が下を向いているようにも見えるが、実際はぶら下がった松葉の高い方に頭を向けている。マツアワフキの羽化殻を見ると、とまっている松葉の先端が上を向いている場合は先端向きにぶら下がっているし、先端が下を向いていれば松葉の付け根の方を向いてぶら下がっていることが多いようだ(高い方に頭を向けてぶら下がる)。
今回追加した2匹の羽化中のマツアワフキ──どちらも羽化殻と松葉の間に泡がある。泡巣があるのは枝で、そこから離れ、松葉で羽化しているのに、泡をつけているのが、ちょっと不思議な気がする。