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ドラゴンを折って昆虫進化の奇跡を思う


ふとしたことからネット上に《折り鶴》ならぬ《折り龍(ドラゴン)》の折り方を紹介する動画を見つけた(*)。「折り紙でこんなもの(形)まで作れるのか!?」と、にわかに興味がわいて、動画を見ながら《ドラゴン》に挑戦。なんとか折り上げたのが冒頭の画像。出来映えはともかく……1枚の折り紙から《ドラゴン》を折り上げることができることを実体験として確認。「よく、こんな複雑な形を実現する折り方を開発したものだ」と発案者には感心するばかり。

正方形をした1枚の紙片──このシンプルな素材から多様な形を折り上げる《折り紙》は創造的な遊びだ。日本人なら(?)誰でも子どもの頃に遊んだことがあるのではなかろうか? 折り紙のスタンダード・《折り鶴》を折ることができる人は決して少なくないだろう。その《折り鶴》の場合、突起部分は両翼とクチバシ(頭部)・尾の4つ──正方形の角も4つなので、紙の角を利用して突起部分を作ることは、なんとなく「できそう」な気がする。しかし、《折り龍(ドラゴン)》はかなり複雑な形をしている。突起部分は頭・四肢・両翼・尾など多い。こんな複雑な形を正方形の紙1枚で──切ったり貼ったりすることなく折り上げることができるというのだから驚嘆する。複雑な形をした《ドラゴン》を展開していけば1枚の正方形の紙に戻ってしまうというのも、なんだか不思議な気がする。これはもはやマジックだ。折り紙を全く知らない人が見たら《奇跡》のように感じるのではなかろうか?

折り方の行程を知らない人が《ドラゴン》の完成体を見たら──「この複雑な形は、どのように実現したのだろう?」と感じるに違いない。構造を理解するために完成体を展開して折り目を確認するかもしれない。正方形の紙の上につけられた折り目(山折り・谷折り)を正確にトレースし、その図面を「設計図」と考えるのではあるまいか。かなり複雑で難解な「設計図」だ。正方形の紙の上に引くことができる線(折り目)は無限に存在する。その中から《ドラゴン》で採用された図面を見つけ出すというのは《奇跡》に近い。できあがった結果(複雑な形)だけを見れば、《ドラゴン》の実現は《奇跡的》ということになる!?

しかし、実際に《ドラゴン》を折っていく過程は──(折り鶴に比べれば行程が多い分、複雑にはなるが)1つ1つのステップは、さほど難解ではない。理屈の上では紙のどこをどう折るかの選択肢は無限に存在するわけだが……実際の折り紙では、基本的には「角や辺を(他の角・辺・折り目や対角線などの基準に)合わせて折る」あるいは「折られた部分を開いて折り目を変える」などの手順で進められる。個々の手順──「次にどう折るか(もしくは開くか)」を考えるとき、実現できる選択肢は無限というよりむしろ限定的だ。いじることの出来る部分は限られてくる。

《折り鶴》にしたって、折り紙を知らない人が見れば「1枚の正方形の紙を折って作られた」とは信じがたい《複雑》なものだろう。ところが、多くの人がこの折り方を覚えている(折り方は《単純》なので記憶していられる)。ずっと折り紙から離れ「もう忘れた」という人でも、折り始めたら完成までたどり着くのはそう難しいことではないだろう。実際に折り紙を手にしてみれば、そのつど折ることができる選択肢はそう多くない──折りながら手順を思い出し、完成にこぎ着くことができるのではないかと思う。つまり完成体は《複雑》だが、それを折る手順は意外に《シンプル》だということだ。

「一見《奇跡》のように見える複雑さ──しかし、完成するまでの行程は、実は意外にシンプルな選択で形成されている」──久しぶりに折り紙を折ってみて、そんな感想を持った。

そして連想したのが昆虫などで顕著な《奇跡的とも思える複雑な進化》だ。
例えば《擬態》などは、その極みで、まったく系列が異なるのに酷似しているものがいたりする。複雑で完成度が高い《擬態》を見ると、「よくこんなデザインが実現したものだ」と驚嘆せずにはいられない。
デザインの酷似について、無限に存在しうるデザインの中から「たまたま似たもの」が生まれて、それが自然選択で残ったなどという解釈は都合が良すぎると疑う向きもある。《擬態》を含む《進化》は、偶発的な変異に由来するとはとても思えず、超自然的な(?)《意志》のようなものが働いているのではないかと考える人もいるようだ。

しかし、複雑きわまりない進化も折り紙の行程のように、実は個々の局面では、(「無限の選択肢の中から選ばれた」ものではなく)「シンプルな選択」の積み重ねで実現した複雑系なのではないか……そんな風に思えてきたりもする。
擬態する側も擬態される側も、その形態は細胞分裂(繰り返し)によって形成される。細胞分裂の制御で実現しうるデザインにはきっと共通のパターンがあるに違いない。そう考えると、デザインの選択肢は無限に存在するのではなく、あるていど限定的(規則的)なものなのかもしれない。
擬態の効果などとてもなさそうな種類で似通ったデザインを持つ昆虫もいる。こうした「他人のそら似」現象がちょくちょく存在するのも、デザインの選択肢が限定的であるためかもしれない。「他人のそら似」現象がしばしば起これば、その中から生存率に有利に働くデザインを持ったものが自然選択され、世代を重ねる中でその特徴が洗練されて酷似といえる擬態を完成させるケースがあったとしても、そう不思議なことではない気がする。

《ドラゴン》を折ってみて、その複雑な形を、実は比較的単純な行程を繰り返すことで作り上げることができることを実感した。《奇跡》のからくりをちょっとだけかいま見たような気がしないでもない。
《奇跡》つなかがりで、《昆虫進化の奇跡》も似たようなものではないか……などと思ってみた次第。
もちろん、折り紙と生き物の体の形成は全く別のものだが……《ドラゴン》の最初の行程は正方形の紙の対角を重ね合わせ二つ折りにするところから始まる。まっさらな正方形が谷折りの対角線で2分割されるわけだが、これは受精した卵子が二つに分裂する、最初の2分割のイメージと重ならないでもなかった。

*折り紙「ドラゴン」の折り方 (Jo Nakashima) - Dragón #6

https://www.youtube.com/watch?v=kUsxMXwCW8A


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