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肩甲骨カミキリ~えぐれた複眼・触角が浸食!?

肩甲骨カミキリことハイイロヤハズカミキリ

先日、擬木のヘリにハイイロヤハズカミキリがとまっていた。僕は密かに(?)「肩甲骨(けんこうこつ)カミキリ」と呼んでいる。タケやササなどがホストだそうで、周囲を見ると、なるほど竹だか笹だかが生えていた。




背中(上翅上部)の特徴的な隆起が肩甲骨に見えてしかたがない。【ハイイロヤハズカミキリ】の標準和名は長いので、愛称で【肩甲骨カミキリ】。標準和名についている「ヤハズ」の由来は「矢筈(矢の末端の弓弦をうけるところ)」──上翅先端の「く」の字型の切れ込みが「矢筈」に似ていることからつけられたらしい。だが、個人的には「ヤハズ」より「肩甲骨」に目がいってしまう……。


こうしてアップで見ると特徴的な複眼にも目がいく──《眼の中から触角が生えている》ようにも見える奇妙な構造。ハイイロヤハズカミキリでは触角の根元で複眼が分断されているのがわかる。
前回ネタにしたキマダラカミキリ(キマダラミヤマカミキリ)でも、触角の根元で複眼が大きくえぐれていたが、キマダラカミキリは複眼が、かろうじてつながっていた。


奇妙なカミキリの複眼──ハイイロヤハズカミキリではギリギリで分断、キマダラカミキリではわずかにつながっていたが、ルリカミキリでは完全に分断していて、背面の複眼は《取り残された三日月湖(河跡湖)》のようだ。




カミキリの《複眼に触角の付け根が食い込むようなデザイン》は子どもの頃から、なんとなく知っていた。たぶん図鑑か何かに載っていたのだろう──シロスジカミキリの複眼(つながっているが、触角の根元付近でえぐれている)の写真を見て、「フシギな形の眼だな」と思った記憶がかすかにある。カミキリの複眼については、ずっと「そういうものだ」という認識でいた。


これ↑は今年1月に撮ったキボシカミキリ(活動期には黄色かったはずの斑紋がすっかり白くなっていた生き残り個体)。このカミキリも大きな複眼が触角の根元で大きくえぐれている。

えぐれた複眼と触角の関係!?

《眼の中から触角が生えている》ように見えるカミキリの《えぐれた複眼》&《複眼に埋もれた触角》──これまで「そういうものだ」と思ってきたが……あらためて考えてみると、どうしてこのような形になったのか、不思議な気がする。
「触角の周囲に複眼が回り込んだ」のか、それとも「複眼の中に触角が入り込んだ」のか──。
ハイイロヤハズカミキリやルリカミキリのような複眼が分離したケースがあることを考えると、「もともと複眼のあったエリアに触角が侵出した」とみるのが自然だろう。本来は一塊だった複眼が触角に浸食され、ついには分断に至った……ということなのだろう。

カミキリの触角はよく発達している。その触角を支えるためには──力学的には体幹軸の中心に近い部分に触角基部を置いた方が頑丈なつくりを実現できる。それで、顔の先端できなく中心に触角基部を置く(移動する?)ことになったのではないか? 太く長い触角を支えるためには頑丈な土台や関節が必要だろうし、大きな触角を動かすためにはそれなりの筋肉の拡充だって必要だったろう。顔の中心──つまり左右の複眼の間で「触角基部」が充実・発達してその容積を拡大させたことで、複眼が浸食され削られていったのではないか……と想像してみた。

また、複眼エリアの縁あるいは内側に触角が入り込めば、その直近の個眼(複眼を構成するひとつひとつの小さな眼)は触角の影になってしまうから、センサーとしての役割りを充分果たせなくなる。それで触角の根元にある個眼は消失し、その結果、複眼エリアの境界線が後退して「えぐれた」形になった──というようなこともあったのではないか。

理屈としては筋が通りそうな気もするが……しかし浸食され、えぐられた複眼だって、もともとは「必要があってその位置に発生・発達した器官」だったはずだ。その大事な器官を浸食させずに触角を発達させることはできなかったのだろうか?──と思わないでもない。

それでは「触角の立派な他の昆虫」ではどうなのだろうか?──と考え、思い浮かんだのが、シリジロヒゲナガゾウムシ。このオスはユニークにして立派な触角をもっている。


シリジロヒゲナガゾウムシ♂は大きな触角が目立つ昆虫だが、複眼も大きい。そしてその複眼は浸食されることなく、ちゃんとキープされている。発達した触角と大きな複眼は両立しうる──という例だろう。
触角の位置を口の方にずらせば、複眼を浸食することなく長い触角を獲得できる──少なくともそういう《処理》をして「両立」させている昆虫がいるということだ。
シリジロヒゲナガゾウムシ♂の立派な触角もカミキリに比べれば、まだ小ぶりだからこの《処理》が可能なのだろうか? しかしカミキリで触角が比較的短い種類でも、ちゃんと(?)複眼はえぐれていたりする。


トラフカミキリはスズメバチやアシナガバチに擬態していると思われるカミキリ。ハチに擬態してのことなのか、触角は(カミキリにしては)短い。だが、やっぱり触角付近で複眼は、しっかりえぐれている。
さて、ここで興味深いのは、このトラフカミキリが擬態したモデルのスズメバチやアシナガバチも《触角付近でえぐれた複眼》を持っているということだ。
カミキリとハチ──まったく別のグループなのに、この奇妙な特徴が共通しているということは、それぞれの生態の共通する部分に《謎解きの鍵》が隠されているのかも知れない。






一方、ハチの仲間であっても複眼がえぐれていない種類もいたりする。






セイボウの仲間では触角の基部が口に近いところにあり、複眼は干渉を受けずに基本的な形(?)をキープしているようだ。触角基部を複眼の間ではなく、口に近い所に置いているというのはシリジロヒゲナガゾウムシの《処理》と似ている。
同じハチの仲間にして複眼がえぐれたスズメバチ・アシナガバチと、複眼がえぐられていないセイボウの違いは何なのだろう?
スズメバチやアシナガバチは木をかじって巣の素材に使う。カミキリも木を齧って産卵したり、幼虫は木を内部から食ったりする。アゴが発達しているという点で似ている。
セイボウの仲間はそれにくらべてアゴは小さい。
大きなアゴをもつカミキリやスズメバチ・アシナガバチではアゴ付近に収納される筋肉の量もそれなりに大きいに違いない。そのため口の近くに触角基部を収納するスペースがとれず、やむなく(?)触角基部は複眼の間へと追いやられた……ということではないだろうか?
「硬い木を齧る→アゴの筋肉が発達→口の近くで触角基部セット収納スペースがない→複眼の間に移行→複眼が浸食」
──という構図を思い描いてみた。
しかし木を齧るということでは、複眼が浸食していないシリジロヒゲナガゾウムシも、複眼がえぐれているカミキリと同じだ。《発達した大きなアゴ&複眼の間へ追いやられた(?)触角》を持つに至った理由は、単に「木などの硬いものをかじる」ためだけではなさそうだ。

カミキリのオス同士を同じ容器に入れておくと触角を切り合ったりするという。
オオスズメバチは、他のハチの巣を襲ったりするが、そのさい大アゴは戦闘用の武器として使われる。他のスズメバチやアシナガバチも襲撃されれば大アゴを使った防衛戦を余儀なくされる。
こうした戦闘のさいに──カミキリやスズメバチ・アシナガバチが戦闘で大アゴをつき合わせて闘うシーンでは、口の近くに触角があったのでは、相手に噛み切られてしまうおそれがある。その危険を回避するために相手の大アゴと交錯する口元から離れたところに触角を後退させたのではないか……そんな可能性に思い至ったりもした。

もちろん、これは単なる素人の脳内シミュレーション。僕はカミキリのこともハチのこともよく知っているわけではないから、ごく限られた知識に中で《えぐれた複眼》の意味・誕生した理由についての《解釈》を探してみたにすぎない。この《解釈》で、疑問のすべてが説明できるとは思っていないし、これが《真相》だと考えているわけでもないが……身近な昆虫に想像力(妄想力?)を刺激されることがある──ということで、思いめぐらせたコトを記してみたしだい。

4月中旬のカミキリ

ハイイロヤハズカミキリの他に、4月中旬になってアトモンサビカミキリ・ゴマフカミキリ・トゲヒゲトラカミキリ・ヒナルリハナカミキリなども確認。カミキリの顔ぶれも増えてきた感じだが、今もっとも多く目にしているのがヨツボシチビヒラタカミキリ。
ということで、ついでに4月中旬のヨツボシチビヒラタカミキリ。ちなみに、ヨツボシチビヒラタカミキリも複眼はえぐれている。












宝石蜂ムツバセイボウ待機中

宝石蜂!?ムツバセイボウ待機中











メタリックな青緑に輝くセイボウの仲間はみな鮮やかなのだが、赤系が入ったムツバセイボウは特にカラフル。腹に入った金属光沢の模様が光の加減や見る角度によって紅金色~オレンジ色~黄金色に変化してグラデーションが美しい。
なので見かけるとカメラを向けたくなるのだが、なかなかおとなしく撮らせてくれないことが多い。前回(輝くミドリセイボウ)も宿主を探して巡回中だったため、まともに撮ることができなかった。
今回も前回と同じ場所でムツバセイボウをみつけたが、やはり巡回中(せわしなく撮影は困難)だった。「きょうも撮らせてもらえないだろうなぁ」とあまり期待せずに見守っていると、宿主のヤマトフタスジスズバチがもぐり込んでいった材の近くに降りて《待機モード》に入った。グルーミングを始めたので、そっと近づき撮ることができた。








この日はムツバセイボウがきていた材の近くにヤマトタマムシの姿もあった。


光沢のある美麗昆虫といえばヤマトタマムシが思い浮かぶが、セイボウの仲間も(小さいながら)とても美しい。ということで過去に撮った他のセイボウ↓


宝石蜂セイボウの生活史起源考?の画像より


輝くミドリセイボウ

緑に輝くミドリセイボウ

前の記事【ミドリセイボウとルリジガバチ】で何とか撮れたミドリゼボウの画像は、やや青みが強く腹部第2節の紋の赤みが薄いものがほとんどだった。「ミドリセイボウ」の名前の示す通り、もう少し緑っぽいものも撮っておきたい。また、腹の紋の赤みがもう少しハッキリわかる画像も欲しいところ……ということで、同じ場所へ行って撮ってきた。






メタリック輝きは、光の加減で色合いが変わって見える。個体差もあるようだ。






この場所で見られるミドリセイボウは宿主・ヤマトルリジガバチの巣を探して欄干を巡回している。その姿を見つけるのはたやすいが、巡回中はせわしなく移動し続けているため、カメラに収めるのが難しい。ときおり止まってグルーミングを始めることがあって、そのときが撮影のプチ・チャンスなのだが、近づきすぎるとすぐに飛び去るので、なかなかうまく撮ることができない。前回はけっきょくスーパーマクロモード(撮影範囲:1cm~10cm)で撮ることはできなかった。上の画像は通常のPモード(撮影範囲:10cm~∞)で撮影したもの。
今回は、欄干の隙間をのぞき込んでいたミドリセイボウが、その近くで《待機モード》に入ったので、ようやく10cm以内まで近づけスーパーマクロモードで撮影することができた↓。






このミドリセイボウが待機モードに入る前にのぞいていた隙間からはルリジガバチが現れ、ミドリセイボウはその隙間に入って行った。
これはまた別のシーン↓(Pモードで撮影)。






落とした獲物は拾わない!?ルリジガバチ



ミドリセイボウに寄生される側のヤマトルリジガバチ(ルリジガバチ)は、巣に備蓄する獲物(クモ)を狩って欄干に戻ってくる。運ばれてきたクモは麻酔処理されていて動けない(殺してしまうと腐敗するので、動けなくして生かしたまま、やがて孵化する幼虫の保存食にする)。
ルリジガバチが抱えてきたクモを隙間に運び込む姿が見られる欄干で、動かないクモを見かけることがあった。これはルリジガバチが運んできた獲物ではないだろうか?






ルリジガバチが獲物を巣の直前まで運んだところで、何らかのアクシデントが発生し、やむなく獲物をその場に遺棄したと考えるのが自然な気がする。
労力を費やしてハンティングし、やっとここまで運んできたのに……巣の目前で捨てられてしまうのは、なんとももったいない。落とし主は例えば天敵に襲われるなどして、これを回収に来ることができなくなったということなのだろうか?
それにしても漁父の利で他のルリジガバチ♀が拾って利用しても良さそうなものだが……。しかし、すぐそばにルリジガバチはたびたび現れるものの、落ちているクモには見向きもしない。そこに現れたのは♂だったからだろうか? あるいは一度遺棄された獲物は自分のものであれ他人(他虫?)のものであれ、拾わないという習性があるのだろうか?

そう考えてふと思いうかぶことがあった。ルリジガバチは巣に搬入する前に卵を産みつける──そんな動画(ルリジガバチの産卵)を見た覚えがある。
巣の外で獲物に卵を産みつけるということは、つまり巣の外に遺棄された獲物にはすでに他者の卵が産みつけられている可能性がある。拾った獲物を自分の巣に運び込むことは他者の卵を自分の巣に招き入れることにもなりかねない。それは自分の子を脅威にさらす危険をはらむ。それでそんな(生存率を下げるような不利な)行為は淘汰されてきたのかもしれない……そんなことを想像した。

ミドリセイボウを撮ったあと、以前ムツバセイボウを撮影したポイントをのぞいてみた。ムツバセイボウは見られたのだが……この日は巡回中で動き回っていたためマトモなショットが撮れなかった……。やはり「巡回中」は撮影が難しい。



話は前後するが、ミドリセイボウ・ポイントへ向かう途中、メタリックな輝きを放つ昆虫の代表・ヤマトタマムシがいたので、これも撮っておいた。


セイボウの仲間もこのヤマトタマムシくらい大きければもっと知名度・人気は高かっただろうに……。小さくても頑張れ、セイボウ!


ミドリセイボウとルリジガバチ

欄干(らんかん)を巡回するミドリセイボウ



今年もミドリセイボウが、昨年みられた(*)同じ欄干(らんかん)に出ていた。
セイボウ(青蜂)はメタリックな輝きが美しいハチの仲間。むし社・刊『月刊むし』472号(2010年6月号)の《日本産セイボウ図鑑》によれば、日本には38種のセイボウ類が生息しているとのこと。






ミドリセイボウが欄干でみられるのは宿主であるヤマトルリジガバチ(ルリジガバチ)が手すりと支柱の隙間に営巣しているため。
ヤマトルリジガバチは竹筒や材の虫食い孔など、すでにある穴を利用して営巣する。クモを狩っては巣に運び込むが、これがやがて孵化するルリジガバチ幼虫のエサとなる。この資源に目をつけ寄生するのがミドリセイボウというわけだ。ミドリセイボウはスキをみてルリジガバチの巣に潜入し卵を産みつける。孵化したミドリセイボウ幼虫はルリジガバチの卵あるいは幼虫と備蓄されたクモを食べて成長する──ということのようだ。


この欄干では獲物や巣材搬入のため隙間から出入りするルリジガバチと、托卵すべくチャンスをうかがい巡回するミドリセイボウの姿がみられる。






セイボウの仲間はいくつか見ているが、触角で歩行面をさわるしぐさをよくしている。ちょっと犬が地面に鼻を這わせるようにしてニオイを嗅いでいるしぐさに似ていなくもない。セイボウも触角でニオイを探っているのだろう……これまで漠然とそう思っていた。オスならメスがたどったニオイを、メスなら宿主ヤマトルリジガバチのニオイを──。手すりや材、葉の表面に触角を触れるのは、それらの表面に残されたニオイ物質を拾っているのだろう……そう解釈していた。
今回、撮影しながらミドリセイボウやルリジガバチをみていて、ふと「ひょっとしたら、触角を触れているのは振動をキャッチするためではないか?」と思った。というのもルリジガバチが巣に潜っていったあと、「ジジジジジ……」というジガバチ特有の(?)バイブレーション音が聞こえてくることがあったからだ。
ジガバチの仲間が翅を高速で振るわせ、こんな音をだすことはよく知られている。この音は「ジガジガ」と聞こえなくもない──これが【ジガバチ】の名前の由来だとか。昔の人は、この蜂が狩ってきた虫を埋め「ジガジガ(似我似我=「我に似よ」)」と呪文(?)を唱えることでジガバチに変身させると考えた……「似我蜂」→「ジガバチ」という伝承に由来するらしい。
以前、ムツバセイボウを撮ったところでも、積まれた材の奥に潜り込んだ狩り蜂が「ジジジジジ……」と音を発していたことがあった。
営巣で穴を掘るとき・狩った獲物を搬入するとき・穴に詰め物でフタをするときなど、バイブレーションを使うと作業がはかどることがあるのかもしれない。つまり振動を加えることで粒子のつながりが壊れ掘削しやすくなったり、狭い穴にひっかかりがちな獲物を引き込む(押し込む)ときに振動させて少しずつずらすことで通しやすくしたり、詰め物をするさいには振動が素材の粗い粒子の隙間に細かな粒子を入り込ませ「なじませる」効果があったりするのではないか。
ジガバチではないが、以前ライポン(コマルハナバチ♂)をつかんだとき、指の隙間から逃げようとして翅を羽ばたき「ジジジジジ……」と高速振動することで少しずつ体をずらし、みごとにすり抜けたことがあった。


※【刺さない蜂!?ライポン】より

いずれにしても営巣の途上でセイボウの宿主蜂が「ジジジジジ……」とバイブレーション音を発することがあるのは事実だ。「振動」が営巣作業に利用されていたとすると、これを手掛かりにセイボウが宿主の営巣場所を察知していたとしても不思議は無いだろう──宿主が発する「振動」に気づくのはむしろ自然な気がする。
セイボウが触角を歩行面にふれているのは「振動探知」のため(でもあるの)ではないただろうか!?
はたして触角に音(振動)を感じとるような機能があるのかどうか──確かめたわけではないのでサダカではないが、今回ちょっとそんなことを考えた。

ヤマトルリジガバチ(ルリジガバチ)

ミドリセイボウに寄生される側のヤマトルリジガバチ(ルリジガバチ)。欄干の隙間に狩ってきたクモや巣材を運び込むようすが何度も見られた。また、その合間にはミドリセイボウが潜入する姿も──。












ルリジガバチの搬入物だが……クモはすぐに判ったが、白っぽいものをくわえて巣に入る姿も何度か目撃。クモにはみえないので、巣材に使う泥だろうかとも考えてみたが、それにしては白すぎる。いったい何を運び込んでいるのだろうと周囲を見回してみると……こんなものが目に入った↓。




アオバハゴコロモ幼虫は分泌したロウ物質を体にまとう──これで白く見える。クサカゲロウの幼虫は(種類によっては)補食した虫の死骸などを背負ってカムフラージュするといわれている。アオバハゴロモの幼虫やクワキジラミの幼虫などロウ物質にまみれた虫を補食した後背中に乗せていると白い塊と化す……こうなるとカムフラージュ効果というより逆に目立ってしまう気がしないでもないが……ルリジガバチかくわえてきたのは大きさ・形・色合いから、これに似ているように感じた。
ヤマトルリジガバチはこれをクモと誤認(?)し、獲物として巣に運び込んでいるのだろうか?──そんな想像もしたが、帰宅後調べてみると、ルリジガバチは完成した巣の入口をふさぐさいに鳥糞の白い部分や石灰を使うらしい(育室の隔壁にはふつうに泥が使われるそうな)。僕が見た白い物体は、白くデコレーションしたクサカゲロウ幼虫ではなくて、《鳥の糞》だったようだ。
まさか天敵が「エンガチョ」と嫌って敬遠する「えんがちょガード効果」を狙って鳥糞を抜擢したわけではないだろうが……ムツバセイボウの宿主ヤマトフタスジスズバチが巣穴の入口を塞ぐのに噛み砕いた葉片を使っていたのを思い出した。種類によっては素材への「こだわり」があるのがおもしろい。

クモや巣材を運び、かいがいしく働くルリジガバチ♀とは対照的に、欄干の上に陣取って縄張り争いをするように他の個体が近づくと追い回すルリジガバチの姿もあった。ルリジガバチ♂なのだろうか? 他の♂を蹴散らし、♀を待ち受けているように見えなくもない。あるいは自分で狩りをせず、他の♀が狩ってきた獲物を強奪しようと狙っている♀という可能性もあるのだろうか……。
そんな中、手すりの上にベタッと腹這いになってはりついているルリジガバチがいた。


弱っているわけではなく、カメラを向けると起き上がり飛び去って行った。飛び去ったあとの場所に触れてみると金属製の手すりは太陽光にさらされかなり熱くなっている。こんなところに腹這いになっていたのでは高熱による機能不全を起こしそうな気もするが……焼かれたプールサイドで甲羅干しをするようなあのポーズは何だったのだろう?
もしかすると、他の個体と空中戦で競い合うさいに、相手よりも敏捷に動けるよう筋肉を暖めていたのだろうか? 筋肉が充分に暖まっていない昆虫は飛翔がままならないことがあるが、逆に高熱にすることで超暖機状態をつくりターボをかけていたりして!?……そんなことも考えてしまった。

実はこの日、ミドリセイボウとヤマトルリジガバチを撮影した欄干にはクロバネセイボウも姿を見せていたのだが、せわしなく動き回るので不鮮明なショットしか撮れなかった。ミドリセイボウに関しても、なかなか近くに寄らせてもらえず、スーパーマクロモードでの撮影はついにできなかった。手すりをくり返し巡回しているのは判っていたので、逃げられてもまた現れるのを待って仕切り直し。現れたところでそーっと近づいては逃げられることのくり返し……。
「いま撮ろうと思ったのに飛ぶんだものなぁ~、もう!」
と、西田敏行(のかつての洗剤CM)風にぼやいてみたり、ようやくベストのフレーミングまで迫ったのにシャッターを切る直前に飛ばれて、
「ちょっとくらい撮らせてくれたって、いいやろ! 減るもんぢゃあるまいし! けち!」
などと心の中で地団駄をふんで、「これが号泣県議だったら、どれほど泣き叫んでいたことか!」と思ってみたりしつつ、ビミョ~にねばって撮ったもののなかからマシな画像をチョイスしたしだい。





ムツバセイボウふたたび

待機中のムツバセイボウ



前回()ムツバセイボウを観察した木材置き場で、ヤマトフタスジスズバチ(フタスジスズバチ)が飛んでいるのを確認。この蜂を宿主とするムツバセイボウがまた現れるのではないか──と注意してみると、やはりいた。
今回も狙いを定めたヤマトフタスジスズバチの巣の近くで待機するムツバセイボウを撮ることができた。
じつは他の場所でもムツバセイボウを見かけたことがあったのだが、この時はターゲットを探してせわしなく移動し続けていたので撮影することができなかった。
セイボウの撮影には、ターゲットを定め(その巣穴から)少し離れたところで待機している個体が適しているのかもしれない。












ムツバセイボウがチラッとのぞいただけで托卵せずにヤマトフタスジスズバチ(フタスジスズバチ)の巣穴(カミキリの脱出孔を利用)を離れたのは、まだ卵を産みつけるタイミングではないことを確認したためだろう。フタスジスズバチが我が子のためにたくわえるエサ(蛾の幼虫/これがムツバセイボウ幼虫の餌となる)の貯蔵量がまだ充分でなかったからかもしれないし、あるいは巣穴を塞ぐ前段階の《葉片を詰め込む作業》が始まるのを見きわめて卵を産みに入るのかもしれない(そのときに葉片を引っぱりだす?)。
ムツバセイボウはフタスジスズバチの巣穴から少し離れたところで待機しながらグルーミングを始めた。


寄生蜂にも寄生虫!?

宿主のヤマトフタスジスズバチ(フタスジスズバチ)が狩りや巣作りで忙しく働いている間に、のんびりと身繕い……と思いきや、撮影しているときは気づかなかったが、ムツバセイボウの体には小さなダニらしきものがいくつもついていた。これをおとすべく、脚を使って体をなでまわしたり翅をしごいていたのだろう。










このダニ(?)がムツバセイボウ(成虫)の外部寄生虫なのか、あるいは成虫にとりついて、巣穴へ入り込んで卵や幼虫に寄生するものなのか……そのあたりのことは判らないが、寄生蜂であるムツバセイボウも寄生虫には悩まされることがあるのか──と妙なところに感心した。
このあと、ムツバセイボウがどのタイミングで産卵しに入るのか~ヤマトフタスジスズバチの巣穴が塞がれるまで見届けたかったのだが……諸事情により現場を離れた。
今回撮影した画像の中で、不鮮明ながら「ムツバ(6個の刺状突起=六歯)」の写っていたものを↓。


セイボウ族は腹部第3節背板の後端に3~6個の刺状の突起をもつものが多く、ムツバセイボウはその名のとおり6歯を備えている。

翌日現場をのぞいてみると、ヤマトフタスジスズバチが作業中だった。


ムツバセイボウの姿はない。おそらくヤマトフタスジスズバチのスキをねらって産卵をすませて立ち去ったあとなのだろう。
フタスジスズバチの仕事っぷりを記録しようとカメラを向けたのだが……不用意に近づいてしまったため、母蜂に飛び去られてしまった。巣穴はすでに塞がれており、最後の仕上げをしていたところだったようだ。
普通ドロバチの仲間は、その名のとおり巣材に泥を使うが、ヤマトフタスジスズバチ(ドロバチ科)は葉片を使う。育室の間には葉片が詰め込まれ、仕切りは葉片を噛み砕いたものが使われるとか。最後の仕上げ──出入り口をふさぐさいにも噛み砕いた葉片が使われる。
塞がれた巣の中にヤマトフタスジスズバチが運んだ保存食(蛾の幼虫)とヤマトフタスジスズバチの卵、そしておそらくムツバセイボウが産みつけた卵が入っているのだろう。





※夏期のセイボウの発育は早くて、通常の全発育期間は15~20日ほどだそうだ。