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今季初フユシャク確認

今シーズン初のフユシャク(冬尺蛾)を確認
雪をかぶった富士山が見える狭山丘陵では、さほど落葉は進んでいない。葉をすっかり落とした木もあるが、まだ緑色の葉をつけたコナラやカエデもある。そんな中、今シーズンも初フユシャクを確認。今シーズン初のフユシャクはクロスジフユエダシャクだった。
今回の画像はないが……こんな蛾だということで昨年の画像から⬇。

01黒筋冬枝尺ペアA
02黒筋冬枝尺ベアB

今シーズン初のクロスジフユエダシャク:オス&メス&婚礼ダンス
昨日(11/29)、雑木林の縁で低く飛ぶクロスジフユエダシャクのオスを確認──これが今シーズン初のフユシャク(冬尺蛾)だった。とまりそうでとまらずに飛び続けるクロスジフユエダシャク♂──メスを探しているが見つからないときの飛び方だ。
おそらくオスはメスより早めに羽化しているのではないかと思うのだが、メスがいなければ飛ぶのを止めて待機状態に入る──まだ、とまっているオスが多いので(枯葉にまぎれて見つけにくいために)目にとまる個体が少ないのだろう。この日目にしたオスはこの1匹だけだった。
メスが現われれば飛翔するオスが目につくようになるはず──そう思って今日(11/30)、前日オスを確認した場所に行ってみると、10匹前後のオスが飛んでいた。そのうち数匹は比較的狭い範囲に集中しており、婚礼ダンス(はばたき歩行)をしているものもいる。メスが近くにいる──そう思って近づくと、低い植込みの枝にとまっているクロスジフユエダシャクのメスが目に入った。今シーズン初のフユシャク♀である。ふつうは落葉の葉の裏に隠れてオスを(フェロモンで)呼び寄せるのだが、まだ落葉が少ないせいもあってか、このメスはヒト(僕)の目にとまりやすい枝にとまっていた──そのおかげで、僕は婚礼ダンスでニオイをたぐって♀を探り当てるクロスジフユエダシャクのオスたちより早くメスを見つけることができた。ほどなく婚礼ダンスするオスの1匹がメスに到達し交尾が成立。今シーズン初の婚礼ダンス&ペアとなった。

この時期になると、期間限定のクロスジフユエダシャクの婚礼ダンスによるペアリングは見ておかないと……という気になるが、婚礼ダンスはいつでも簡単に見られるものでもない。オスは飛べども婚礼ダンスがなかなか始まらない……ということも少なくない。一方、たまたま通りかかった時に婚礼ダンスが始まることもある──昆虫観察は運任せのようなところがある。
それが、今シーズンは初フユシャク♀を確認したとたん、ほぼ待機時間0でに初婚礼ダンスによるペア成立を観察できたというラッキーな出だしとなった。夏休みの宿題が初日に片付いてしまったみたいな感じ?


まるで別種なフユシャクの♂と♀〜冬尺蛾記事一覧

フユシャクの婚礼ダンス
クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか
意外な翅の役割り!?クロスジフユエダシャク
昆虫など〜メニュー〜
チャンネルF+〜抜粋メニュー〜
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まるで別種なフユシャクの♂と♀〜冬尺蛾記事一覧

まるで別種!? フユシャクのオスとメス
先日読んだ『不思議だらけ カブトムシ図鑑』(小島渉・著/彩図社)には《カブトムシほどオスとメスの区別が容易な昆虫は他にいないだろう(P.74)》という一節がある。しかし「オスとメスの違いっぷり(性的二型)」ということでいえば、フユシャク(冬尺蛾)は、カブトムシの上をいっている。カブトムシはオスの特徴であるツノをのぞけば、オスとメスは体つきも色合いも似ていて「同じ種類」もしくは「同じ仲間」っぽさを感じさせる。ところがフユシャクでは、オスは何の変哲もない普通のガなのだが……メスが変わっていて同じ種類どころかガにさえ見えないものも多い。カブトムシはオスのツノが発達しているが、フユシャクではメスの翅が退化している。そのため容姿がオスとメスでは、かけ離れたものになっているのだ。体色や模様がオスとメスで違う種類もいる。
今年もそろそろフユシャク(の成虫)が現れる時期。これまで狭山丘陵周辺で撮ったフユシャク画像から、オスとメスの「違いっぷり」をまとめてみた。

01黒筋冬枝尺♂♀F
02茶翅冬枝尺♂♀F
03一文字冬波尺♂♀F
04黒帯冬波尺♂♀F
05広翅冬枝尺♂♀F
06白斑冬枝尺♂♀F
07霜降棘枝尺♂♀F
08白棘枝尺♂♀F
09漣冬波尺♂♀F
10途切冬枝尺♂♀F
11縁黒棘枝尺♂♀F
12薄翅冬尺♂♀F
13黒点冬尺♂♀F
フユシャク(冬尺蛾)というのは、年に1度、冬に成虫が出現し、メスの翅が退化した特徴を持つシャクガ科の蛾の総称。フユシャク亜科・エダシャク亜科・ナミシャク亜科にまたがっている。オスかメスかは一見して容易に判断できるのに種類は識別するのが難しいものも少なからず──種の違いよりも雌雄の違いの方が、はるかにかけ離れているのがおもしろい。カブトムシは「ツノが進化した(特徴を持った)オス」に関心が向きがちだが、フユシャクでは「翅が退化した(特徴を持った)メス」の方にに関心が向いてしまう……。
オスとメスの違いっぷり(メスの容姿のユニークさ)もさることながら、僕が初めてこの虫を知ったときに驚いたのは、《昆虫なのに(わざわざ)冬に活動(繁殖)する》という生態や《ガなのにメスは(翅が退化しているため)飛ぶことができない》という意外性だった。


フユシャクの風変わりな生態
オスとのかけ離れた容姿を生み出している《メスは翅が退化して飛ぶことができない》ことと、《昆虫なのに冬に繁殖活動する》という二大ユニークな生態は、きっと無関係ではないだろう。昆虫は外温性(変温)動物なのだから、本来なら気温の低い冬は活動に向かないはずだ。実際、多くの昆虫は活動を休止した状態で冬越しをしている。それなのにどうしてわざわざそんな時期に活動するのだろう? おそらく、捕食者である他の外温性(変温)動物(昆虫・爬虫類・両生類)が活動していない「天敵不在の時期」だからだろう──当初はそんな生存戦略なのだろうという解釈で納得していた。そう考えると、天敵がいなければ「飛んで逃げる」必要も無い。メスは翅や飛ぶための筋肉にあてていた資源を卵の生産に回すことができる。繁殖のためにオスとメスの出会いは必要だが、オスに飛翔能力を残しておけばメス探しはできるから何とかなる。寒い冬に卵を抱えた身重のメスが飛ぶより、身軽なオスが飛ぶ方が容易いだろうから、繁殖相手をさがす役割り(飛翔担当)はオス──というのは納得できる。メスは飛翔能力を放棄し卵の生産性を上げることに専念し、繁殖相手を探して飛ぶのはオスにまかせるという役割り分担をしてことで、オスとメスの違いっぷり(性的二型)が顕著化したのだろう……フユシャクを知った当初は、そんなふうに想像していた。

冬でも存在する天敵
しかし、フユシャクを見ているうちに《天敵がいない冬に活動する》という解釈に疑問がわいてきた。フユシャクの多くは夜行性だが、もし天敵がいないのであれば、気温が高い日中に活動する種類がもっと多くても良さそうなものだ。また、オスとメスで翅の有無による体型の違いがあるのはわかるが……体色や模様に違いがあるのことの意味は何だろう?
オスは翅が落葉にとけこむ「隠蔽擬態」仕様に見える種類も多い。翅が退化したメスにはボディラインをかく乱するような模様(オスにはない)があったり、とまっている幹や樹皮上の地位類に溶け込むような色(オスとは違う)のものもいる……これは天敵の目をあざむくための進化なのではないか──つまり冬にも天敵が存在することをあらわしているのではないかと思うようになった。
実際、フユシャクの成虫がアリに襲撃されたりクモに食われたりしているのを見たこともある。冬とはいえ、捕食者が全くいなくなるわけではなく、天敵は存在しているようだ。

14黒筋冬枝尺蟻襲撃
15冬尺亜科♀クモ捕食
フユシャクの卵塊を物色する寄生蜂らしき虫を見たこともある。フユシャクの中には産卵した卵塊に腹端の毛を塗りつけてコーティングする種類もいるが、これは防霜(?)効果や物理的な保護などのほかに寄生蜂対策や(鳥などに対する)隠蔽効果としての役割りもはたしているのではないかと思えてくる。
また、フユシャクの中では小数派の昼行性であるクロスジフユエダシャクは、メスが落葉の下などに隠れていてオスをフェロモンで呼び込む。天敵がいなければ目立つところに出ていた方がオスに見つけてもらいやすそうなものたが(その方が繁殖に有利)……わざわざ隠れているのは、天敵がいるからではないか? 鳥類は冬場でも活動しているが、彼らにとってみればフユシャクはこの時期の数少ない食料源のひとつなのかもしれない。鳥による捕食圧があるために昼行性のクロスジフユエダシャクはメスが葉の下に隠れ、フユシャクも昼行性の種類が少ないのではないか……と考えるようになった。

昼行性のクロスジフユエダシャクはメスが落葉の下などに隠れているのに対し、オスはメスを探して落葉が積もった雑木林の林床を舞い飛ぶ。そのためオスばかりが目立つが、オスは落葉の上に降りると周囲に溶け込んで隠蔽能力が高い。これも鳥に狙われる機会が多いことで隠蔽擬態の精度を高めてきたのではなかろうか。とはいっても日中舞い飛ぶオスの方が被捕食リスクは高そうだ。しかし、それも理にかなった役割り分担なのだろう。種の存続にはメスの産む卵の数が多い方が良いわけだろうが、メスが捕食されれば、そのぶん卵の数は減ってしまう。オスならば少々食われても、他のオスがカバーすれば卵の生産量を確保できる。
クロスジフユエダシャクの繁殖行動(オスの婚礼ダンスによるメスの確保)を観察していると、落ち葉の下隠れたメスが発したフェロモンに反応し、あっという間にオスたちが集まってくる。この様子を見ているとオスが多少、捕食間引きされても繁殖にはさして影響がなさそうな気もする。

16黒筋冬枝尺♂4舞
17黒筋冬枝尺PRB2
メスでは種の存続のためにも自分の遺伝子を残すためにも卵を無事に産むことが最優先されるはずだ。オスが自分の遺伝子を多く残すためには多くのメスと交尾をする必要があるので、リスクをおってでもメス探しの役割りを担うというのは理にかなっているように思われる。
フユシャクをみていると、いろいろなことを想像する。


フユシャク(冬尺蛾)記事一覧
冬の間(晩秋〜初春)にかけて(成虫が)見られるフユシャクだが、種類によって発生時期にはズレがあって、それぞれの旬の時期は短かったりする。見られるうちに見ておかねばとそのつど記事にしてきたが、記事の数が増えて、何をどこに書いたか自分でもよくわからなくなってきている。
ということで、とりあえずフユシャク関連記事のタイトル一覧を作ってみることにした。


フユシャク:翅が退化した♀/翅でニオイを嗅ぐ♂
空目フユシャク
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フユシャクの婚礼ダンス
フユシャク探し
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フユシャクの交尾・産卵・卵
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フユシャクの産卵:列状卵塊ほか
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クロスジフユエダシャクはなぜ隠れて交尾するのか
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クロテンフユシャクのペア他
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振袖フユシャク【卒】を探せ〜トギレフユエダシャク♀
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ヒロバフユエダシャク♀の前翅・後翅を確認
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クロスジフユエダシャク:冬尺蛾の不思議
婚礼ダンスでペア成立:クロスジフユエダシャク
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ホルスタインちっくなチャバネフユエダシャク♀
クロオビフユナミシャクとチャバネフユエダシャク
フユシャク色々
イチモジフユナミシャク♀は地衣類擬態!?
年末のフユシャク♀2017
フユシャクの産卵&コーティング
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シモフリトゲエダシャク・シロフフユエダシャク
シモフリトゲエダシャクのペア他
ヒロバフユエダシャクのツーショット
産卵後のシモフリトゲエダシャクと産卵中のシロフフユエダシャク
シロフフユエダシャクのペア〜産卵前後
シモフリトゲエダシャク♀@桜
フユがつかない冬尺蛾
シモフリトゲエダシャクペア&ヒロバフユエダシャク
てんしのヒロバ他
片牙ゾウムシ&シロトゲエダシャク
フチグロトゲエダシャクの産卵他
冬の蝶!?クロスジフユエダシャク
クロスジフユエダシャクのペア集
クロスジフユエダシャク:婚礼ダンスに異変!?
翅の大きさが違う冬尺蛾3種
クロオビフユナミシャク♀色々
フユシャク♀5種
クロオビフユナミシャク♀きらめく鱗粉
クロバネフユシャクのペア他
ギボッチ&桜っちで冬尺蛾
イチモジフユナミシャク♀色々
サザナミフユナミシャクの愛称!?他
イチモジフユナミシャク美麗♀
水色の翅の天使!?イチモジフユナミシャク♀
イチモジフユナミシャク・ペア〜特大♀
昼間のオスは?イチモジフユナミシャク
イチモジフユナミシャクのキューティクル
冬尺蛾の他人の関係
フチグロトゲエダシャクを見た…
今季初フユシャク確認 ※2019NOV
昆虫など〜メニュー〜
チャンネルF+〜抜粋メニュー〜

クロスジフユエダシャク:婚礼ダンスに異変!?



見どころは♀の容姿と♂の婚礼ダンス

クロスジフユエダシャクは冬にだけ出現する蛾・フユシャクの1つ。メスは翅が退化して飛ぶことができないというユニークな特徴を持つ。そのため、出会いを求めて飛ぶのはオスの仕事。メスが放つフェロモン(ニオイ物質)をたよりにオスが《婚礼ダンス》を舞うことによってメスをゲットするのはこれまで何度か紹介してきた通り(*)。
クロスジフユエダシャクの見どころは、(オスとはかけ離れ、とても蛾には見えない)小さな可愛らしい翅をもつ「メスの風変わりな容姿」と日中観察できる「オスの婚礼ダンス(によるメス探し)」だと僕は思っている。雑木林ではごく普通に見られる昆虫だが、発生時期が冬の初めに限られるので、いつでも見られるというわけではない。鑑賞期間限定なのでこの時期になると見ておきたくなる。

《婚礼ダンス》について簡単に説明しておくと、メスと交尾する直前のオスが激しく羽ばたきながら歩き回る行動(羽ばたき歩行)のこと。クロスジフユエダシャク♂は落葉が積もった雑木林の林床を低く飛び続けるが、これは落葉の下などに隠れているメスを探してのこと。メスの存在が近いと察知したオスは、降りて婚礼ダンス(はばたき歩行)を開始する。メスが放つフェロモンを探知するのは触角だが、羽ばたくことによって前方の空気を触角に引き込み「嗅ぐ」機能を高めていると考えられる。羽ばたきながら向きを変え、どちらを向いた時に左右の触角が均等にフェロモンを捉えるか──方角を調整しながらより強くニオイを感じる方へと進むことでその発生源であるメスに到達する仕組みである。
《婚礼ダンス》はカイコガで知られていた行動だそうだが、クロスジフユエダシャクも同じことをする。クロスジフユエダシャクは昼行性なので、日中そのユニークな行動を観察することができる。
ということで、クロスジフユエダシャク♂が舞う雑木林で婚礼ダンス待ちをしていたときのこと──。落葉の上を後ろ向きに歩くクロスジフユエダシャク♂が目にとまった。これは交尾状態でメスがオスを引きずっているのだろうと思い、よく見るとやはり──↓。


フユシャクは、まずオスの姿が目にとまりがちだか、その翅の陰にメスが隠れていることも少なからず。メスはなかなかパワフルで、時々オスを引っ張って歩いている姿を見かける。
この状態では交尾中のオスも羽ばたかないし、近くでメス探しに飛びまわっているオスも関心を示さない(婚礼ダンスの気配も見せない)。メスがいてもフェロモンを放出していない時は、オスの婚礼ダンス・スイッチはONにならないのだろう。
一方、ひとたび婚礼ダンスのスチッチが入ったオスたちは、我先にメスに到達しようと懸命に羽ばたくことでその位置を嗅ぎあてようとする。隠れている1匹のメスに複数のオスたちが集まることも多く、僕の観察では通常、婚礼ダンスを舞う複数のオスたちがいた場合は、徐々に互いの距離が縮まり、集まってくる。それぞれがメスに近づいていくためだ。そしていち早くメスを見つけたオスが交尾を成立させるとゲームオーバー。フェロモンの放出がシャットダウンするのか、あるいは《売約済み》の情報でも発信されるのか……情熱的な婚礼ダンスは突然打ち切られ、タッチの差で敗れた者も未練を残すことなく、あっさりと引き上げて次のメス探しに出かけてしまう。
婚礼ダンスは突然はじまり、オスたちが収斂していくと、あっけなく終了してしまう──そんな印象が僕にはある。

狂乱の婚礼ダンス!?その意外な原因は…

ところが、先日(僕の感覚では)尋常でない婚礼ダンスを目の当たりにした。雑木林の一角で10匹を越えるクロスジフユエダシャク♂が婚礼ダンスを始めたのだ。その様子をカメラに収めようとしたが、範囲が広くて全景をとらえるのは困難──画面を広くとると個々のオスが小さく写って背景にまぎれてしまうため静止画では判別できなくなってしまう。婚礼ダンスは分散しているので、どれがメスに近づいている本命個体なのか判断できない。これだけのオスが探しているのだからすぐにメスは見つけ出されて婚礼ダンスは終了してしまうのではないかと気をもむが……婚礼ダンスはエスカレートするばかり。普通なら収斂していくはずの婚礼ダンスはむしろ拡散していくようにも見える!?
何が起こっているのかよくわからないまま、とりあえず♂密度の高いポイントを撮ってみた。


いつもなら、フレーミングやフォーカシングの間に終了してしまいがちな婚礼ダンスが、いつになく長く続いていて「普通ではない感」が高まっていく……。
オスたちが集中するポイントをのぞき込むと──不自然な動きのクロスジフユエダシャク♀が目に入った。その周囲をアリが取り囲み──♀を運んでいたのだ。狂乱の婚礼ダンスの原因は、フェロモンを放つクロスジフユエダシャク♀へのアリの襲撃にあったようだ。




12月を目前にクロヤマアリがこれほど活発に活動していようとは思わなかった。今年は立冬を過ぎてからもアブラゼミが鳴いていたし、昆虫の活動終了時期がズレ込んでいるのだろうか?
アリの襲撃に、飛んで逃げることができないクロスジフユエダシャク♀はひとたまりもなかったろう。しかし、メスのピンチをよそにクロスジフユエダシャク♂は交尾しようと次々に押し寄せてくる。中にはクロヤマアリにとらわれ引きずられて行くオスもいるが、オスの婚礼ダンスは続く……。フェロモンが放出され続け、婚礼ダンスのスイッチがONのうちは、本能が定める行動が継続されるということなのだろう。こんな状況下でも機械的な反応を続けるオスたちが小さなロボットのようにも見えた。


クロスジフユエダシャク♀の体の構造はよくわからないが、婚礼ダンスの元祖(?)カイコガの場合は、産卵管の根元にフェロモン腺という器官があって、これを腹端からのぞかせることでフェロモンが拡散するらしい。クロスジフユエダシャク♀も同じようにしてフェロモンを放ち、オスたちを呼び、交尾が成立した段階でフェロモン腺を収納しフェロモン放出をシャットダウンするのだとすると……アリの襲撃を受けたクロスジフユエダシャク♀は交尾を完了していないからか、あるいはアリの攻撃にもがくことで断末魔の叫びならぬ断末魔のフェロモン放出を続けているのか──フェロモン放出をシャットダウンできずにいるのかもしれない。カイコガではフェロモン腺をこすりつけたろ紙やガラス棒にもオスは反応し(メスがいなくても)婚礼ダンスをするそうだが、アリに運ばれるクロスジフユエダシャク♀でも、もがきながら露出したフェロモン腺が周辺の落葉などに接触すれば、そこにフェロモン臭が残ることになるだろう。アリに連れ去られるクロスジフユエダシャク♀本体だけではなく、引きずられたあとに残されたフェロモン臭のするポイントにもクロスジフユエダシャク♂が集まってきた──これが婚礼ダンスが拡散した理由ではないかと思われる。
フェロモンはおそらく物理的にはごくごくわずかな量なのだろうが、アリの攻撃にさらされながらも交尾をしようとしたり、メスがいないのに婚礼ダンスを舞ったりするオスの姿に、行動を支配するフェロモンのすごさを改めて感じたしだい。


ところで、クロヤマアリに引きずられていくクロスジフユエダシャク♀の画像を見て気がついたことだが──フユシャクの口吻がこれほど伸びるものとは知らなかった。フユシャク成虫はエサはとらないものが多いらしいので機能しているのかどうかはわからないが……想像していた以上にクロスジフユエダシャク♀の口吻は長かった。過去に撮った擬死状態のクロスジフユエダシャク♀の画像と比べてみると──↓。


オスが集まるのに婚礼ダンスが始まらない場所!?

雑木林でクロスジフユエダシャク♂の婚礼ダンス待ちをして気になることがある。本来ならもっと積もっていて良い枯葉が緑地管理のためか、かなり撤去されている。人が往来する道路ならともかく、緑地内で必要以上に撤去することもなかろうに……と思わないでも無い(落葉の中で越冬する昆虫が少なからず影響を受けそうな気がする)。こぎれいになった雑木林内の小道ではクロスジフユエダシャク♂が飛び交う姿が見られるが、《オスの密度が高く、今にも婚礼ダンスが始まりそうな気配を漂わせながら、そのわりに待っていても婚礼ダンスがいっこうに始まらない》ということがよくある。
おそらく……人がよく通る小道や、落葉撤去作業が頻繁に入る場所では落葉の下で踏みつぶれれたクロスジフユエダシャク♀もいて、そのフェロモンを含むニオイが地面や周囲の落葉などにしみ残っているのではあるまいか。これがクロスジフユエダシャク♂を誘い、まどわしているのではないかという気がしないでもない。飛来するオスは多いのに、いっこうに婚礼ダンスが始まらない場所には、ひょっとするとそんな事情があるのかもしれない。フェロモンの残り香にオスが反応を示すことは、今回の狂乱の婚礼ダンス騒動(?)でも明らかになった気がする。


クロスジフユエダシャクのペア集

クロスジフユエダシャクのペア

昼夜行性のフユシャク(冬尺蛾)・クロスジフユエダシャクが雑木林周辺を飛ぶ姿が多数見られるようになった。メスは翅が退化して飛ぶことができないので、舞っているのは全てオス。落葉の上を低く徘徊飛行しながらメスを探し続ける。今回はペアが成立したクロスジフユエダシャクを集めてみた。


法面の緑化ブロックにとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↑。単独のオスがとまる時は頭を上に向けることが多いが、交尾中のオスは下の方を向いていることが多い。上を向いてとまっているメスと交尾をするためだろう。
木柵にとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。


やはり木柵の支柱にとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。メスにはオスとは比較にならないほど小さいながら、ちゃんと4枚、翅がある。


はちきれそうに膨らんだ♀の腹↑。節のすきまから卵の淡い緑色が透けて見える。
コナラの幹にとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。


クヌギの幹のくぼみに隠れるようにとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。




クロスジフユエダシャク♀は落葉の裏や樹皮のくぼみなどに隠れていることが多い。サクラの樹皮の隙間に隠れていたメスと交尾していたクロスジフユエダシャク♂↓。


雑木林の中の古い切株にとまっていたクロスジフユエダシャクのペア↓。


撮り始めるとオスが飛び去ったので交尾後のメスの単独ショット↓。


周囲にメスを探して飛び続けるクロスジフユエダシャク♂はいるが、交尾後のメスにはまったくの無反応。しかし、落葉の下に隠れている未交尾♀には反応し、《婚礼ダンス(はばたき歩行)》で見つけ出すことができる。

婚礼ダンス(はばたき歩行)によるメス探し

雑木林の林床を低く飛び続けるクロスジフユエダシャク♂はメスが放つフェロモン(ニオイ物質)をたよりにメスを探り当てる。近くにメスの存在を察知したオスは着地し激しく翅を羽ばたかせながら歩き回る──これが、カイコガで知られる《婚礼ダンス》。家畜化されたカイコガは飛ぶことができないが、メスの放つフェロモンを感じ取ると《婚礼ダンス》をし、メスとの交尾に至る。目隠ししたオスはメスにたどり着けるが、翅を固定したり切除したオスはメスにたどりつけなくなるという。羽ばたく翅は吸引ファンの役割りをし、「(フェロモンを)嗅ぐ」ために触角へと空気を引き込む。体の向きを調整しながら左右の触角のステレオ効果でニオイ源の方向を割り出し、より強くニオイを感じる方向へと進むことで発生源(メス)を探し当てることができるわけだ。
以前、轢死したクロスジフユエダシャク♀の周りで複数のクロスジフユエダシャク♂がカイコガのような《婚礼ダンス》をしているのを見て驚いたことがある。クロスジフユエダシャクのメス探しもカイコガと同じように行われているのだろうと考え、クロスジフユエダシャク♂の《婚礼ダンス》に注目し、これによってオスが葉の裏など見えないところに隠れているメスを見つけて交尾することが観察できた。

《婚礼ダンス》に注目すれば、オスがメスを見つけるところが確認できるわけだが──《婚礼ダンス》はいつ始まるか判らない。比較的短い間に複数回観察できることもあるが、なかなか始まらず待たされることも多い。おそそらくメスがフェロモンを放つタイミングで近くを徘徊飛行していたオスが反応するのだろう。飛び交う♂は多いのに《婚礼ダンス》はなかなか始まらず……始まると、あっという間に終わってしまったりする(婚礼ダンスから交尾までは早い)。
今回も、婚礼ダンスを始めたオスがいたのでカメラを向けるが、フレーミングとフォーカシングでまごついている間に♂は枯葉の下にもぐり込んでしまっていた……↓。


メスが見えるアングルを模索し手前の落葉などの障害物をどけて撮ったのが↓。


やはりメスは落葉の裏に隠れていた。ちゃんと見えるように、ゆっくりと落葉を裏返そうとしたのだが……横着して右手にカメラを持ったまま左手で作業したところ、落葉同士が引っかかっていて、それが外れる反動でクロスジフユエダシャク・ペアをはじき落としてしまった。落ちたクロスジフユエダシャク・ペア↓。


別の場所──低い笹がのぞく一角でクロスジフユエダシャク♂の婚礼ダンスが始まった↓。複数のオスが引き寄せられたようにやってきてはげしく羽ばたきながらせわしなく動き回る。


オスの1匹がメスを探り当てて交尾が成立したのだろう。ほどなく婚礼ダンスは終了し、他のオス達は何事とも無かったかのように去って行った。一瞬にぎやかだった笹の陰に逆さになったオスの姿がのぞいている↓。


角度を変えて確かめてみると──やはりメスは葉の裏に隠れていた。


雑木林で待機中、数メートル離れた落ち枝で4~5匹の♂が婚礼ダンスを始めた。近づいてカメラを構えるが……例によってフレーミング&フォーカシングの間に婚礼ダンスは終わっていた。成立したてのクロスジフユエダシャク・ペア↓。


婚礼ダンスの最中は我先にと情熱的に動き回っていたオスたちだが、交尾が成立すると、とたんに淡白になる。メスが放っていたフェロモンが、交尾の成立でシャットダウンするのか、あるいは交尾が成立した時点で《売約済み》のシグナルが発信されるのだろうか?
甲虫類では1匹のメスにオスが何段重ねにもなっていることがあるが、クロスジフユエダシャクは潔いというか、諦めが良い!?


婚礼ダンスでペア成立:クロスジフユエダシャク

続・《婚礼ダンス(はばたき歩行)》で♀探し

昼行性フユシャク(冬尺蛾)のクロスジフユエダシャクは、オスが《婚礼ダンス(はばたき歩行)》を舞うことで、落ち葉の裏などに隠れたメスを探し当てる。今シーズンも《婚礼ダンス》を確認したことは先日【クロスジフユエダシャク:冬尺蛾の不思議】で記したが、このとき見つけたメスは木の幹にとまっていた1匹だけ。《婚礼ダンス》もうまく撮れていなかったので、「オスの《婚礼ダンス(はばたき歩行)》でメス探し」~「ペア成立」までの追加観察をしに、雑木林に行ってみた。
林床を低く舞うオスの姿はだいぶ増えていたが、《婚礼ダンス(はばたき歩行)》は、いつどこで始まるのかわからない。散々待たされ、やっと見つけても近づいてフレーミング~ピント合わせをしているうちに終了してしまうことも多い。そして、今回もやはり苦戦した……。

2匹のオスが反応していたが…



少し離れたところで2匹のオスが《婚礼ダンス(はばたき歩行)》を始めたたので、近づいてカメラを向けたのだが……撮る前に《婚礼ダンス》は終了。オスはすでに落ち葉の陰に姿を消していた。問題の葉の裏側に回り込むとオスの翅が見えてきた↓。


さらに回り込んで落ち葉の裏をのぞきこむと、既にペアが成立していた。


《婚礼ダンス》に注目することで、ここでの交尾を確認することができたが、この静止した状態を見つけるのはまず無理。ちょっと目を離すと周囲の落ち葉に紛れて見失ってしまうので油断ならない。
ペアがとまっていた落ち葉をひっくり返して撮影↓。


クロスジフユエダシャクに限らず、フユシャクのメスは翅が退化して飛ぶことができない。


4匹のオスが反応:《婚礼ダンス》の乱舞



動きがせわしない1匹の♂を目で追っていると、視野に次々と別のオスも入ってきて《婚礼ダンス(はばたき歩行)》が始まった。


複数のオスが狭いエリアで同時に《婚礼ダンス(はばたき歩行)》を始めることはよくある。どのオスが「当たり」なのか、その時点ではわからないので、被写体の選択&フレーミングにまごつき、ピントもボケがち……。
オスたちが1カ所に集まり、葉の裏にもぐり始めた。すると、大挙して押し掛けたオスたちにあわてたのか、メスが葉の裏から姿をのぞかせた。


すでに交尾は成立していて、あぶれたオスたちも魔法がとかれたように《婚礼ダンス(はばたき歩行)》を終了。






ペアがもぐりこんだあたりの落ち葉をそっとどけていくと……。


卵が詰まったメスの腹ははちきれそう。伸びきった腹の節の間から卵の緑色が透けている。

単独♂《婚礼ダンス》を撮る間もなくペア成立



1匹のオスが《婚礼ダンス(はばたき歩行)》を始めたので、近づくが……あっという間にペアが成立していた……。


《婚礼ダンス》で落ち葉の下へ



別の場所で《婚礼ダンス(はばたき歩行)》が始まったので、撮影しようとするが……やはり撮る前にオスは落ち葉の下へもぐり込んでしまった……。葉の下をのぞきこむと、オスが逆さにとまっているのが見える↓。


暗いので上の落ち葉をとりのぞくと、黒っぽいメスの姿も確認できた。


とまっていた葉を裏返して撮影↓。


大きさがわかるように直径20mmの1円玉と──。


《婚礼ダンス(はばたき歩行)》でオスがメスを見つける瞬間



《婚礼ダンス(はばたき歩行)》を始めたオスを追いながら撮影を開始。メスを見つける直前&ペア成立直後のシーンが撮れた。この2枚の画像↑の撮影間隔は、わずかに10秒。ペア成立はあっという間だ。


オスが羽ばたいている時は目立つが、静止すると落ち葉だらけの背景に溶け込んでしまい、見つけるのは困難。


オスの《婚礼ダンス(はばたき歩行)》を追っていなければ、こんなシーンを見つけることはできなかったろう。昼行性のクロスジフユエダシャクは、オスを目にする機会が多い──そういった意味ではありふれたフユシャクだが、こうして日中、配偶行動が観察できるという点では貴重な存在という気もする。