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アリを護衛に雇うカイガラムシ

蟻をガードマンに雇うオオワラジカイガラムシ

邦画『七人の侍』(*)は無力な農民が侍を雇って野武士から守ってもらう話だ。飯を食わせることで侍たちに村にとどまってもらい、村をおびやかす野武士を撃退してもらう──よくできた面白いアイディアだが、同じようなことをしている虫がいる。
シラカシの幹にとまったオオワラジカイガラムシが甘い分泌物でアリの用心棒を雇っていた。














オオワラジカイガラムシは日本最大のカイガラムシ(体長:10~15mm)だそうで樹木について篩管(しかん)液(糖が多く含まれる)を吸う。アリの取り巻きを従えていることが多い。
上画像の個体はシラカシの幹についていた。同じ幹の少し離れたところにいた同じサイズの別個体↓。


こちら↑にはなぜかアリがついていなかった(活動停止状態?)。
また別の木(やはりシラカシ)にやや小さめの個体がいて、多くのアリに取り巻かれていた↓。




アリはオオワラジカイガラムシをとりまき、ときおり排出される甘露(糖液のしずく)を競い合うように飲んでいる。しかし甘露は呑み込んだアリ個人(個体)の胃袋には入らず、素嚢(そのう)と呼ばれる器官にたくわえられ、後に仲間たちに分配されるらしい。ミツバチでは働き蜂が集めた蜜は(自分の消化器官には入らず)蜜胃という器官に貯蔵され、仲間の間で吐き戻し分配されることで初めて自分の胃袋(消化器官)に入るようなしくみがあるそうだが、このアリたちにも同じような仕組みがあって「家業の報酬(甘露)」を個人(個体)が横領できないようになっているのだろう。

甘露を回収するアリは触角でタップするようにオオワラジカイガラムシに触れ続けていた。あるいはこの刺激に甘露の排出をうながす効果があるのだろうか。オオワラジカイガラムシにとってアリのボディタッチは「催促のプレッシャー」なのか、排出をスムーズ化する「快適なマッサージ」なのかはわからないが……断続的に甘露を排出してアリの求めに応じていた。

この甘露を回収するだけなら、こんなに多くのアリが待機している必要はないような気もする。集団でプレッシャー(マッサージ?)をかけた方が甘露の出がよくなるのだろうか?
「甘露回収」だけにしては大掛かりな人員(蟻員)配置をしくのは、「大事な《甘露の供給源》を天敵や他の巣のアリに奪われないため」かもしれない。
多くのアリがガードしていれば、それだけ捕食性の昆虫やクモが近づきにくくなる──という効果はありそうな気がする。

ちなみに、オオワラジカイガラムシの天敵の1つにベニヘリテントウがいる↓。


この画像↑ではベニヘリテントウ成虫がオオワラジカイガラムシの幼虫を食べている(口元からオオワラジカイガラムシ幼虫の頭と黒い触角がのぞいている)。ベニヘリテントウは幼虫もオオワラジカイガラムシを食うのだが、その姿がオオワラジカイガラムシ幼虫や成虫♀によく似ている。


白い矢印が(2つとも)ベニヘリテントウの幼虫↑。右の画像は、撮影している時はオオワラジカイガラムシのペアだとばかり思っていた。しかし画像を確認しているときにオスの頭部が食われているのに気づき、ようやくオオワラジカイガラムシ♀だと思っていたのがベニヘリテントウ幼虫だったと判ったしだい。捕食ターゲットに似ているということは、ひょっとすると、アリの用心棒を欺いてエサに近づくため、あるいはオオワラジカイガラムシ♀と勘違いして近づいたオオワラジカイガラムシ♂を捕食するための偽装工作(擬態)なのかもしれない。
オオワラジカイガラムシ成虫は♂と♀ではずいぶん姿が違う↓。



ベニヘリテントウ以外にもオオワラジカイガラムシを狙う捕食性の虫たちは少なからず存在するだろう。しかしアリがガードしていれば、そのぶんオオワラジカイガラムシを狙うのは難しくなるはずだ。アリは実は虫たちに恐れられがちな存在だ──「虎の威を借る」ではないが、アリに擬態した虫も意外に多い(※【蟻えないほど似てる虫!?】)。
アリの存在がオオワラジカイガラムシの「身の安全」に寄与しているのだとすれば、《無力なオオワラジカイガラムシが、甘露でアリを雇い、用心棒(ガードマン)にしている》といえなくもない──これは黒澤明監督の名作『七人の侍』の秀逸アイディアと同じ構図といえる。

ちょっと脱腺するが、今まで見た映画の中で最高傑作を1つ上げるとしたら?──僕なら最有力候補としてまず思い浮かぶのが『七人の侍』だ。基本設定は冒頭で述べた通り──《無力な農民が侍を雇って野武士から守ってもらう》という、うまいアイディアに立脚している。ちなみに、このアイディアは全くのフィクションというわけではなく、実際に《農民が侍に飯と宿を提供し、その代わりにガードマンのようなことをしてもらった》というようなことがあったらしい。そんな資料をみつけたことが『七人の侍』のヒントなったそうだ。

そんな傑作映画『七人の侍』の秀逸アイディアを虫たちが誰に教わるともなく採用していたのかと考えると感心せずにはいられない。
互いの利害が一致した、いわゆる《共生関係》が成立していたのだとすると、それ自体、驚きと感嘆に値するが……それではどうして、そんな関係が成立し得たのか……そんな疑問に関心はシフトしてしまう。
ヒトの世界でならば(『七人の侍』では)、農民と侍は言葉が通じるから話し合いで合意ができる。しかし、カイガラムシとアリでは言葉が通じるとは思えないし、それ以前に言葉や言葉で交渉すべく思考があるのか……という気もする。
ならば、いったいどうやって「うまくできた仕組み」ができあがったのだろう?

オオワラジカイガラムシはカメムシ目(半翅目)の昆虫で、セミやカメムシと同じグループになる。基本的には針のような口吻を植物に刺して汁を吸う。吸った汁のうち必要な成分を吸収し、余剰成分はどんどん排出する。同じカメムシ目(半翅目)のヨコバイがとまった茎の下には排出した液でしみができていることがあるが、あれを見ると「甘露」も本質はこれなのではないかという気がする。
カイガラムシが分泌する甘露も、基本的には余剰成分──排泄物のようなものだろう。最初からアリを雇うために精製されたものではなかったはずだ。
カイガラムシが吸っている植物の篩管液には糖が多く、余剰分の糖と水分を糖液として排泄したものが甘露だという。オオワラジカイガラムシが捨てていた余剰成分(甘露)が、たまたまアリにとってはお宝だった──それでこれをリサイクルするシステムが生まれたのだろう。自然は無駄のない美しい仕組みを良しとする──そんな気がしないでもない。

カイガラムシとアリも初めから共生関係にあったわけではないはずだ。まだこの関係が結ばれていなかった頃から、どのようにこのシステムが成立したのか、想像してみると……。
エサを求めて歩き回っていたアリがオオワラジカイガラムシと出会う。オオワラジカイガラムシを「エサ」あるいは「敵」と認識すればアリの攻撃対象となる。アリはみつけたカイガラムシを触角でさわりながら調べ始めるだろう。アリは昆虫たちに恐れられる存在だ──そんなアリにぺたぺたと触りまくられれば、カイガラムシだってビビリおもらしくらいするだろう。ぷりっと甘露を排泄しても不思議はない(子どもの頃セミとりをしていて、あわてふためくセミにおしっこをかけらけた経験を持つ者は少なくないだろう。あれと同じ?)。
オオワラジカイガラムシが排出した甘露にはアリの好む糖が多く含まれているわけだから、当然、アリの関心はカイガラムシ本体から排出された甘露に移るはずだ。結果的に甘露を差し出すことでオオワラジカイガラムシ本体は攻撃をまぬがれる……いわば、ビビリおもらしによる《意図しない陽動作戦》が、オオワラジカイガラムシを救った形となり──こうしたことがくり返されて、「アリによる刺激(触角タッチ)」を受けると「甘露排出」が促されるというスタイルが定着していったのではないか。そしてアリがオオワラジカイガラムシのまわりに常駐するようになったことでオオワラジカイガラムシは天敵の捕食性昆虫やクモなどから守られ、《対価(甘露)を支払ってアリをガードマンに雇う》という共生関係の構図を獲得していったのではないか……そんな想像ができなくもない。

もっとも、こうした《共生関係》という構図はヒトの脳がつくりだした概念(解釈)であって、じっさいにシステムとして機能しているのかどうかは、「アリのガードマン(?)つき」と「アリなし」のオオワラジカイガラムシの生存率を比較してみないと確かめられないのだろうが……。
実際に《共生関係》としてどれだけ機能しているのかは確かめたことがないから判らないが……オオワラジカイガラムシとアリたちを見ていて、そんな脳内シミュレーションが展開したしだい。例によって昆虫を見ていると想像力が刺激される──ということで。

ヒーロー!?Not緋色?世界最大級オオモンキカスミカメ

カメムシ目(半翅目)つながりってコトで、2週間程前に撮って保留になっていたカメムシ・ネタを賞味期限切れになる前に出しておくことに。


同日みつけた別個体↓。何度か見ており珍しいカメムシという印象はなかった。


このカメムシは昨年も5月に撮っていた。カメムシも種類が多く、よくわからないものが多い。僕は虫屋ではないので「(個人的に)おもしろいと感じるか否か」という観点で虫見をしている。昆虫学的な興味とはまた別な尺度。興味を覚えた虫は撮って調べたりするが、そうでないものは(調べるのが面倒なので)スルーすることも多い。
実はこのカメムシも、ちょっとビミョ~なところだった。パッと見、漠然とカスミカメムシの仲間っぽい感じはしたのだが、そのわりには大きい。まあまあキレイだし……空目ネタに使えるかな?──くらいの気持ちで撮影したような気がする。なんどか見かけた記憶があるがスルーしていたこともあった。


このカメムシが何者か──ネットで検索した画像と見比べると、ヒイロオオモンキカスミカメというのが最も似ている気がするのだが……これは分布的にないらしい(赤みが強いヒイロオオモンキカスミカメの分布は四国・九州)。よく似た別種でもっと暗い色のオオモンキカスミカメというのが本州には生息しているということで、(色合い的には違和感があるものの?)オオモンキカスミカメの色彩変異だろうというのが、同じ狭山丘陵で同じ種類と思われるカメムシを撮ったブロガーさんたちの判断のようだ。このオオモンキカスミカメ(体長15mm)は世界最大級のカスミカメムシなのだとか。

狭山丘陵に定着(?)していると思われるこのカメムシ──分布情報からすればオオモンキカスミカメなのかも知れない。ただ、オオモンキカスミカメの画像を見ると、もっと黒っぽい……。そして山地(高地)性を示唆するような情報もあるようなので……もしかすると低地でみつかる赤みが強いものは、九州・四国でみつかる南方系の(?)ヒイロオオモンキカスミカメが北上したものではないか?──という可能性も想像してしまう。
関東で《以前は見られなかった南方系の昆虫》は増えている。ナガサキアゲハやツマグロヒョウモン、ラミーカミキリもそうだし、カメムシでいえばキマダラカメムシ(※)やヨコヅナサシガメなどがある。
そうした例を考えると、ヒイロオオモンキカスミカメが北上し(?)関東低地で見つかってもおかしくはないような気がする。オオモンキカスミカメとの見分け方を僕は知らないので正確なことはわからないが……いずれにしても世界最大級のカスミカメムシらしい。

近年北上してきたキマダラカメムシ&ラミーカミキリ

ということで、北上組で最近東京でも見られるようになったキマダラカメムシの最新画像を↓。








僕が初めてキマダラカメムシを見たのは2011年(*)。南方系カメムシだという認識があったので東京で目にした時はビックリした。Wikipedia情報によれば東京で確認されたのは2010年だそうだ。
まだ狭山丘陵の緑地では1度も見たことがないが、1~2km離れた市街地の桜並木や公園では、すでに普通に見られるようになっている。
このキマダラカメムシが発生していた桜並木のそばにムクゲがあったのでのぞいてみたら、やはり北上組のラミーカミキリがいたので、これもついでに↓。


僕がマイフィールドで初めてラミーカミキリを確認したのは2012年だった(*)。以後いくつかのポイントで発見。このカミキリも定着したようだ。ちなみに今回みつけた場所では初めての確認。ラミーカミキリは市街地でも丘陵地帯でも見られるようになっている。


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