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- 2010/06/09 : 疑問:ヤマカガシが《相手の目を狙って毒液を飛ばす》説 [小動物など]
ヤマカガシは口の奥(デュベルノア腺)と頸部背面(頸腺)に毒腺を持っている事が知られているが、頸線毒について「相手の目を狙って毒液を飛ばす」というような記述があちこちで見られたからだ。
ウィキペディア(ヤマカガシ-Wikipedia)でも、
僕はヤマカガシを何度も捕まえたことがあり、手に頸腺毒が付着したこともあったが、この黄色っぽい液は「分泌」という印象だった。
ちなみに頸腺毒はヤマカガシが餌としているヒキガエル由来のものだそうだ。僕はヤマカガシが毒のあるヒキガエルを食べるところを何度か見ており「毒があるのによく平気で食うな」と思っていたが、ヤマカガシはヒキガエルの毒を自らの防衛用に再利用していたわけだ。
※京都大学理学研究科・理学部 研究紹介(184号)
《頸部の皮内に由来のよくわからない腺があって、そこを圧迫されると内容の黄色い液が鱗の間から射出するのである。》
改訂版学研の図鑑『爬虫・両生類』(昭和62年2月26日新改訂版1刷)にはヤマカガシの体の作りが解剖図つきで見開きで紹介されており──、
《くびからせなかにかけて、いくつかのけいせんというふくろ(毒せんの一種)をもっている。しかし、この毒せんの出口はなく、何のためにあるのかよくわかっていない》
小学館の学習百科図鑑36『両生・はちゅう類』には
《頸腺の毒液は、黄色く、にがい。頭部を押すと出るので、敵にかまれたときに役立つのであろう。》
と記されている。
昔、テレビでムツゴロウさんがこのコブラに毒を吹きかけられた映像を見たことがある。メガネをしていたために大事には至らなかったのだが、「相手の目を狙って毒を飛ばす」精度に驚き、強く印象に残っている。
納得できずにさらに調べてみると、眼科からの頸腺毒被害報告があるということがわかった。
によると当時国内で報告のあった13例は、いずれも、捕らえたヤマカガシの頸部をいじっていたり、打殺しようとして頸部をたたいたり、あるいは、剥皮しようとして被害にあっていたそうだ。
しかし、こうした眼科からの頸腺毒被害報告が続出していることから、《危険が迫ると相手の目を狙って毒液を飛ばす》という誤解が生まれ、その情報がWikipediaを介して広まっているのではないか……というのは僕の素人推理なのだが。
へんに不安を煽れば「そんな恐ろしいヘビなら見つけ次第殺してしまえ!」と考える者も少なからず出てくるだろう。
その結果、放っておけば無害なヤマカガシを駆除しようとして叩いたり踏みつけたり切りつけたりすることで頸腺毒を浴びる危険をわざわざ増やしている──といったこともあるのではないのだろうか?
不安を煽ってキャッチを高めようとする報道のあり方に関しても疑問を感じる。
毒の危険性を強調するだけではなく、被害に合わないためにはどうすれば良いか──ちょっかいを出さなければ無害であるということをキチンと伝える事が大切なのではないかと思う。