FC2ブログ

ユーザータグ : タマムシの記事 (1/6)

姿も食性もユニークなウシカメムシ



晩秋~冬に擬木で目にする機会が増えるウシカメムシ。前胸の左右に大きく張り出した立派なツノ(前胸背側角)が特徴的なカッコ良いカメムシだ。見た目もユニークだが、食性も大いに変わっていて、最近読んだ『カメムシ博士入門』によると、主食はセミの卵だという。

ユニークな体型&模様のウシカメムシ幼虫



擬木にとまっていたウシカメムシの幼虫。10月・11月にはしばしば目にしているが、冬になると見かけるのはもっぱら成虫となり、おそらく成虫で越冬するのだろう。幼虫を12月に見たのは初めてかもしれない。




なんといっても、この肩のあたりから左右に突き出した装甲(?/前胸背側角)がカッコ良い。成虫とはまた違った模様もおもしろい。






ウシカメムシの幼虫は、快傑ゾロ風の仮面に見えたり黒猫に見えたり──空目ネタで取り上げたこともあった。


仮面虫!?…かめn虫…カメムシ 第2弾!】より↑/【ソンブレロ仮面ウシカメムシ幼虫ほか】より↓。


ウシカメムシ成虫



成虫にも、もちろん立派な肩のツノ(前胸背側角)があって、これを牛のツノにみたてて「ウシカメムシ」となったのだろう。幼虫の前胸背側角は薄いが、成虫ではごつさを増している。




カメムシには前胸背側角が発達したものや、ハリサシガメのように小楯板に棘状の突起を持つものがいる。こうした特徴には何か意味・役割りのようなものがあるのだろうか? 鳥や小動物などに呑み込まれそうになったとき、これが天敵の口腔内を刺したり引っかいたりすることで吐き出されやすくなったり、そのため天敵から敬遠されて生き残るチャンスが増える……というようなことでもあるのだろうか?


別の擬木の上にいたウシカメムシ成虫は動き回っていたので指にとまらせて撮影↓。


この成虫は前胸背板と小楯板の間(黒く見える部分)がやけに離れていた。左右の翅が完全に収納しきれていないようにも見えるが、どこか故障しているのかもしれない。


セミの卵を主食とするユニークな食性

『カメムシ博士入門』を読んで驚いたことのひとつが、ウシカメムシがセミの卵を主食にしているということだった。ネット上ではアセビ・シキミ他等植物の汁を吸うというような情報があって僕も当初、ウシカメムシは植物食だと思っていた。あるときセミの卵について言及した記事を読んで意外に感じたが、その時は「へえ!? セミの卵を吸うこともあるのか」くらいに思っていた。木の汁を吸うウシカメムシが樹皮上で口吻を刺しやすい場所を探していて、その結果、セミの産卵痕に口吻を突っ込んでみたらセミの卵があって、それを食す──といったことは起こり得そうな気がする。時々起こっても、さして不思議ではないだろう。
しかし「主食」となると話は違う。「なんで、そんなもの(どこにでもある汁が吸える植物より、探すのに労力を要しそうなセミの卵なんか)に依存することになったのだろう!?」と首をかしげたくなってしまう。セミの卵は、ウシカメムシが育つ間、確保できる食糧源なのだろうか?
現在使っているパソコン内に残っている画像では、ウシカメムシの幼虫は7月8日に撮ったものが一番早く、8月・9月・10月・11月・そして今回の12月と撮影している。




ウシカメムシ成虫を撮影したのは9月・10月・11月・12月・2月・4月・5月・6月だ。ウシカメムシの活動期間中、「主食」は安定供給可能なのだろうか?
調べてみるとセミの卵は早いものでその年の秋、多くが翌年の梅雨頃に孵化するらしいく、意外に(?)卵の期間は長い。狭山丘陵ではハルゼミが鳴き出すのは4月後半。ニイニイゼミは6月中旬から鳴いているのを確認しているから、セミが産卵する時期から翌年梅雨まで、けっこう長期間「主食」は存在することになるのかもしれない。

セミの卵がウシカメムシの主食だったということには驚いたが、『カメムシ博士入門』を読んで同じくらい意外だったのが、カメムシは元々は肉食が基本だったということだ。

カメムシの多様な食性①
●多様な食生活への適応
形態やDNA解析から推定される系統(第3章系統樹参照)と、グループごとの食性を重ねあわせてみると、カメムシの最初の祖先は、肉食が基本だったと考えられる。それらが分化・放散する歴史のなかで雑食性のものが現れ、やがて植物専門へと適応していったらしい。一部は食菌や吸血といった特殊化への道をたどったが、こうした特殊な群がグループのまとまりを超えて並行的に派生していることはには、カメムシたちの強靭な適応力を感じさせられる。(『カメムシ博士入門』P.10)

カメムシの多様な食性②
●動物食-伝統的なカメムシの食文化-
伝統的食性とはいえ、動物由来の栄養のみに依存する種は現存のカメムシでは比較的少なく、むしろ「肉食・菜食兼備タイプ」が多いことを知っておきたい。(『カメムシ博士入門』P.12)


僕はカメムシの口吻はセミのように植物の汁を吸うためのもので、もともと植物食がベースで、その中からサシガメのような肉食が誕生したのだろうと思っていた。元々植物の汁を吸っていたところにその植物を食う虫が現われ──植物と間違えてか、あるいは生活の場を守るために虫を口吻で刺すなどして、たまたま吸った体液に味をしめ、肉食に移行するカメムシが現われた──というようなイメージ。
だから、ウシカメムシが植物食(がベースと思っていた)からセミの卵に「主食」を移行させたということに疑問を感じたが、元々動物食だったカメムシが、セミの卵を求めて産卵痕を探しているうちに(もっと容易に手に入る)植物の汁も吸うようになった──というシナリオなら比較的自然な感じがする。セミの卵がウシカメムシの「主食」らしいが、ということは「副食」で植物の汁も吸っているのだろう。ウシカメムシは「肉食」から「肉食・菜食兼備タイプ」へ移行しつつあるカメムシなのかもしれない。そう考えると納得しやすい気がした。

ついでに擬木でみつけたウバタマムシ





ウバタマムシは昆虫が少なくなったこの時期にも見られる大型の昆虫。狭山丘陵では1年中成虫が見られる数少ない甲虫→【雪とウバタマムシ&1年中

スポンサーサイト



紅葉モードのセアカツノカメムシ他

紅葉モードのセアカツノカメムシと臭腺開口部



ワイヤーフェンスの上部にとまっていたセアカツノカメムシ成虫♀は紅葉したかのように赤っぽくなっていた。本来はもっと緑色をしている──ということで、比較用に6月に撮影したセアカツノカメムシ成虫の♂と♀↓。


ワイヤーフェンスの上部にとまっていたセアカツノカメムシ成虫♀を腹面が見える角度で撮ってみると……、


ニオイ(カメムシ臭)物質を分泌する臭腺開口部(開孔部)は、成虫では中脚と後脚の付け根ふきん──後胸腹面に1対(2個)開口している。


成虫では胸の腹面に1対(2個)ある臭腺開口部(開孔部)だが、幼虫では腹部背面に3対(6個)開口している。7月に撮影したセアカツノカメムシ幼虫↓。


カメムシ幼虫の臭腺開口部(背板腺)は科によって位置や数に違いがあるが、ツノカメムシ科の種はキンカメムシ科と同じ──第4・5・6番目の体節の背中に各1対=計6個)開口している。アカスジキンカメムシ幼虫の臭腺開口部に比べると判りやすい。

最近目にした虫から



やはりワイヤーフェンスの上部にとまっていたハサミツノカメムシ成虫♂↑。あざやかな緑色をキープしていた。


ワイヤーフェンス支柱のトップにとまっていたモンキツノカメムシ↑。
そして、よく似たエサキモンキツノカメムシ↓。


モンキツノカメムシとエサキモンキツノカメムシは、紋の形が違うとされているが、まぎらわしい個体もいる(*)。
ワイヤーフェンスの上部には、ウバタマムシの姿も↓。


ウバタマムシはホストのマツでも見られる。






↑と同じ個体↓。


松の枝先を見ていくと、ウシカメムシの幼虫がとまっていた↓。


今シーズンはカメムシが多いという報道があったが、ウシカメムシ幼虫を見かける機会も今年は多めかも? 別個体↓。


ちょっとキレイなウスミドリナミシャク(蛾)↓。


10月にも何度か見かけていたウスミドリナミシャク。ホストはイヌマキらしいが、僕が見たウスミドリナミシャクはいずれもサクラの幹にとまっていた。


擬木の上にいたコブハサミムシ。ハサミムシは時々見かけるが、虫見を始める前は飛翔できる種類がいるとは思わなかった。(ハサミムシにしては)立派な翅が目立つコブハサミムシは飛ぶことができるそうな。コブハサミムシにはユニークな習性があって、それについて、Ohrwurmさんがブログで興味深い話を記されている↓。




擬木の上にいた人面蜘蛛的ビジョオニグモの♀↑。晩秋に時々見かける。
晩秋に見かけるといえば、この蛾もお馴染み↓。


ニトベエダシャクが見られるようになったので、ぼちぼちフユシャクも出てくるだろう。


シブく輝くウバタマムシ他

シブい輝きを放つウバタマムシ美麗個体



マツのそばのエノキの葉にウバタマムシがとまっていた。幼虫はマツの枯木に穿孔し、成虫になるとマツ類の葉や樹皮を後食するらしい。美麗昆虫の代表ヤマトタマムシと体型も大きさもよく似ている大型のタマムシなのだが、派手なヤマトタマムシに比べると地味なためか知名度はいまひとつな気がする。しかしこの個体はシブい色合いながらシックな輝きを放っていた。


画像では光沢感が分かりにくいが……赤銅色もしくはセピア色orチョコレート色に輝いていた。ヤマトタマムシのような派手さは無いが、なかなか味わいのある昆虫だ。背面の模様は立体的な凝った造りになっていて──おそらく上翅の強度を増すための構造なのだろう。これがまるで《浮造り(うづくり)加工》(木材を研磨し柔らかい夏目を削って硬い冬目を浮き上がらせることで木目を強調する技術)をほどこしたかのような味わいをかもしだしている。


宝石にたとえられるヤマトタマムシの上翅は実はペラペラ──シワや折り目が入りやすいが、それに比べ表面構造が凝ったつくりのウバタマムシの方が、高級感(?)が漂っている気がしないでもない。


凹んだ部分の点刻の集合が、離れて見るとセピア色に輝き、その中に黒い筋が走っているように見える。




ウバタマムシの眼には、昔の少女漫画のヒロイン顔負けのキラ星がいくつも輝いていたりもする。


地味なイメージがあるウバタマムシだが、その中でも美麗個体はいる──ということで。ついでにやはり(ヤマトタマムシに比べれば)地味系(?)のアオマダラタマムシでも、時々目にすることがある赤紫ががって輝く美麗個体を↓──過去の記事から再掲載。


シブい輝きを放つアカスジキンカメムシ幼虫ほか



シブい色合いながら、よく見ると金属光沢のある昆虫つながりで……アカスジキンカメムシの終齢(5齢)幼虫。ゴンズイの実にとまって汁を吸っていたこの5齢は、まだ脱皮してあまり時間が経っていない個体のようだ。
アカスジキンカメムシの幼虫にはユニークな白黒模様がある。この黒っぽい部分(金属光沢がある部分)は硬く脱皮後ほとんど大きさは変わらないようだ。成長とともに大きくなるのは白い部分──脱皮後この白い部分が広がることで幼虫は大きくなる(なれる)。5月に撮影していた羽化前の終齢(5齢)幼虫と比べると、白い部分の幅に差があるのがわかる↓。


ちなみに、この白い部分は抜け殻では透明感のあるやわらかい膜になっている。
ゴンズイの葉にはアカスジキンカメムシの幼虫が集まっていた。


4齢幼虫の中に5齢幼虫が1匹まじっている。この5齢幼虫も脱皮してさほど経っていない感じ。白い模様部分(脱皮直後の幼虫は赤みがかっている)がまだ狭い。近くで脱皮したはずだが、抜け殻は見つからなかった。おそらく脱皮後、幼虫によって落とされたのだろう(*)。


アカスジキンカメムシ幼虫がいた場所の近くにとまっていたムラサキツバメ↓。


Wikipediaによると、《ムラサキツバメは1990年代までは本州(近畿地方以西)、四国、九州に分布していると考えられていた》とのこと。南方系昆虫の北上化は珍しくないが、ムラサキツバメの場合は幼虫の食植物になるマテバシイが植樹で増えたことも関係しているらしい。


やたらハデなガガンボがいたので撮ってみた。ホリカワクシヒゲガガンボというらしい。オスはその名のとおり触角が櫛(くし)状になるので、これはメス。ネット上には「成虫は餌を食べない」というような情報があったが、葉の上の濡れた部分を舐めていた。水分補給はするようだ。よく見ると右側の脚が1本とれていた。




ヤニと謎に包まれたヤニサシガメ!?

一見地味だが…謎めいたヤニサシガメ



最近、にわかに注目しているヤニサシガメ。その名のとおり、ヤニのような粘着物質におおわれている捕食性カメムシ。いるのはこんなところ↓。


以前は擬木の上にいるのを目にするくらいでスルーしがちな昆虫だったが、ちょっとした疑問からプチ飼育をし(*)、今は自然の活動が見たくてホスト(?)の松で観察中。ホスト(?)といっても捕食性カメムシなので餌は昆虫など。ヤニサシガメは松や杉の樹皮の隙間に潜り込んで幼虫で冬を越すという。松で生活しているのはそのためだろうと思っていたが、松ヤニに依存しているというような研究もあるらしい。詳しいことは僕にはわからないが、何かヒントになるような行動が見られないか松をチェックしているというしだい。
これまで積極的に松を見ることは無かったのだが……探してみるとヤニサシガメはけっこう見つかる。






触角は途中から2つに折り曲げることができる。樹皮下にもぐりこんで集団で越冬するさいに折りたためるのは便利そうだ。途中で折れ曲がった触角は角度によって初代ウルトラマンを倒したゼットンを思い起こさせる(……と思うのは僕だけ?)






松の枝先を見ていると、幼虫が脱皮した抜け殻もみつかる。




松葉をかかえるようにぶらさがるのがヤニサシガメの通常の脱皮スタイルのようだ。中には、かかえていた松葉からすり抜け、抜け殻表面に残されている粘着物質で貼り付いているものも見受けられる。


後頭部~背中が割れここから幼虫が出たのがわかる(白っぽい半透明の部分が眼)。脚は松葉をかかえた形を残しているが、その中に松葉はなく、別の松葉に貼り付いた形で残っていた(尻と後脚の一部で松葉にくっついている)。松葉の先端を抱えて脱皮した後に、風にあおられるなどして隣接する松葉に貼り付いて抱えていた松葉から抜けてしまったか、抜け落ちる途中で別の松葉に貼り付いてしまったのだろう。
この抜け殻に残された粘着物質──ヤニサシガメの全身を覆うベタベタについては【分泌物】とする説と【松ヤニ】とする説があって、どちらが本当なのか確かめたくてプチ飼育したのは以前記した通り──(松ヤニが供給されない)飼育下で脱皮した幼虫は9日経っても粘着性分泌物に覆われることはなかった(*)。【分泌物】を否定する結果だったが、だからといって【松ヤニ】そのものだと考えるにはまだ疑問があって素直に受け入れられずにいることも記した通り(*)。


そのヤニサシガメ記事を投稿したとき、今日も、こっそり自然観察!さんに教えていただいた『カメムシ おもしろ生態と上手なつきあい方』(野澤雅美・著/農山漁村文化協会・刊/2016年)という本をを読む機会を得た。
「ヤニサシガメが自ら松ヤニの分泌部へ移動し脚を使って体にぬりつける行動」を含め、色々と興味深いことが記されていた。

僕はヤニサシガメがベタベタしているのは(粘着物質に覆われているのは)幼虫だけだと思っていたが、この本には《ヤニサシガメは、その名のとおり、幼虫、成虫ともに体の表面にヤニ状の粘着物質で覆われているのが大きな特徴である(『カメムシ おもしろ生態と上手なつきあい方』P.70)》と記されていた。僕が「成虫はベタベタしていない」と思い込んでいたのは、成虫が幼虫のようにベタベタしていたのでは翅の開閉もままならず飛翔能力に支障をきたすだろうと考えたからだ。ヤニサシガメを含め、カメムシの仲間では翅がたたまれたとき重なっている部分があり、どちらが上になるかは決まっていない。ベタベタした翅の上にもう一方の翅を重ねれば貼り付いてしまうだろう──だから当然、成虫はベタベタしていないものと思っていたのだ。


(※↑【ヤニサシガメのベタベタは分泌物なのか松ヤニなのか?】より再掲載)
しかしヤニサシガメ成虫はちゃんと《飛ぶことはできる(同P.70)》そうだ。
問題のヤニサシガメと松ヤニの関係については──、

 ヤニサシガメのからだのヤニはどこからくるのだろうか。ヤニサシガメの行動を観察すると、マツヤニの分泌部分に口吻を差し込んで、吸収することも確認されている。ということは、ヤニサシガメの各脚の節状の膨らみから分泌しているという説もあることから、吸収されたヤニが体内で消化吸収されたものが、あるいは老廃物として分泌していると言うことも考えられる。
 ところが、幼虫の行動から、体内からヤニを分泌するということとは全く違う行動をすることも分かってきたのである。何と、ヤニサシガメ自身が、ヤニの分泌されている場所に行き、体にこのマツヤニを塗りつけるのである。この行動を見た時は、にわかに信じがたい光景であったが、飼育実験でも、マツの枝の切り口から分泌されるヤニに近づきこすり取る姿は何度も確認できたのである。ヤニサシガメのヤニを体に塗りつける付着行動はヤニサシガメ特有の行動と考えられる。(『カメムシ おもしろ生態と上手なつきあい方』P.70)


と記され、こすりとった松ヤニを体に塗りつける行動が次のように紹介されている。

 ヤニ分泌部への移動→前脚の先端部(跗節)によるヤニのこすりとり
 →前脚の先端部(跗節)による中脚の大腿部(腿節)へのこすりつけ→中脚の大腿部(腿節)による後脚の大腿部(腿節)とすね(脛節)へのこすりつけ→中脚の大腿部(腿節)による前脚の大腿部(腿節)とすね(脛節)へのこすりつけ→後脚のすね(脛節)による腹部側面と背面へのこすりつけ(同P.70)


飼育実験では1時間ほどかけて念入りに付着行動がなされるのが確認されているという。
この付着行動で思い浮かんだのはグルーミング。前後となり合った脚をからめるようにこすりあわせたり後脚で腹部背面をさするような動作はカメムシに限らず昆虫ではよくみられる行動だ。僕のプチ飼育でも、松ヤニを与えていないヤニサシガメが脱皮後(粘着物質がない状態で)グルーミングを行なっていた。


前脚と中脚をからめるようにこすすりあわせるヤニサシガメ幼虫↑。
後脚で背中をなでつける羽化後のエサキモンキツノカメムシ↓。


『カメムシ おもしろ生態と上手なつきあい方』の著者・野澤雅美氏は50年以上もカメムシの研究をされている専門家だそうで、こうしたベテランが、グルーミングと松ヤニの付着行動を見誤ることなどないとは思うが……この行動の前後で実際にベタベタ感に変化があったのか──つまり、ベタベタしていなかった個体がこの行動によってベタベタを得たこと(この行動によって粘着物質のコーティングが行なわれたこと)が確認されていているのかが気になる。

一応ことわっておくが、僕の疑問は実際に行なわれてきた松ヤニ説の研究・観察に対して向けられたものではない。どういう研究や観察がなされたのか、その詳細について僕は知らないし、だから評価もできない。疑問は「僕が知り得た情報」に対して「僕が納得できるかどうか」という次元の問題である。

さて、もしヤニサシガメの粘着コーティングが松ヤニで、それを脚で体全体に塗り付けているのだとしたら──次のような疑問が残る。
①体の表面に極薄に引き延ばされた松ヤニがなぜ固化せずに長い間、粘着性を保っていられるのだろうか?……僕のプチ飼育個体は飼育を始めて10日目に脱皮したが(10日松ヤニの供給が無かったのに)、脱皮後の抜け殻はベタベタしていた。松の枝先でみつかる松ヤニは大半が固くなっている。ヤニサシガメのコーティングが松ヤニそのものであれば揮発成分が飛んですぐに固化してしまう(ベタベタしなくなる)のではないか?
②脚が届かない背中にヤニを塗り付けられるのだろうか?……僕のプチ飼育個体では、餌として与えた虫がヤニサシガメ幼虫の背中に貼りついてしまうというアクシデントが発生したが、ヤニサシガメはそれを取り除こうとして脚が届かなかった。つまり脚が届かない部分にも粘着コーティングはほどこされていたことになる。脚の届かぬ場所にどうやって塗り付けたのだろうか?
こうした疑問を考えると、単純に「松ヤニの塗り付け」では片付けられない気もする。①と②は、分泌物であれば説明できそうだが、脱皮後の個体には粘着コーティングがなされなかったことから、単純に「分泌物」とも考えられない。

それから……疑問と言えるほど明確な根拠があるわけではないが、漠然と思い浮かんだことを、覚え書きとして記しておくことにする。

『カメムシ おもしろ生態と上手なつきあい方』では飼育実験におけるヤニサシガメの付着行動について、《ヤニ分泌部(マツの枝の切り口)への移動》をし、《(塗りつけ)動作を開始してからその場を去るまでに、およそ1時間を費やしたのである》と記されている。
飼育実験では必要に応じて松ヤニを供給できるだろうが、自然の中でヤニ源は豊富にあるのだろうか?……と思った。松の枝先でみつかるヤニはすでに固まっているものが多く、適度な粘度をもったヤニ源は思っていたより少ない気がする。
ヤニサシガメに興味を持った当初、擬木上にいた10匹程に触れてみが、その全てが粘着物質に覆われており指に貼り付いてきた。ベタベタしているのがヤニサシガメ幼虫の通常の状態であるとすれば、ほぼ全てのヤニサシガメ幼虫の需要を満たすに足るヤニ源がなくてはならないことになる。はたして自然の中でそれだけ豊富に供給ポイントがあるものだろうか?

ヤニサシガメが松ヤニの分泌部に移動するということからは「樹液に集まる昆虫」を思い浮かべた。カブトムシやクワガタ・カナブンその他チョウやハチなどが樹液に集まるお馴染みのシーン──しかし、彼らはには飛翔能力がある。樹液の分泌されている場所まで飛んで移動することができるから集まって来ることもできるわけだが、ヤニサシガメ幼虫にはそれができない。
また、カブトムシらが利用している昆虫酒場(樹液の分泌部)は夏の間ずっと営業状態だが、松ヤニの場合は揮発成分が飛んでしまえば固まってしまうから、すぐに閉店状態となってしまう。歩行で移動するしかないヤニサシガメ幼虫が利用できるできる新鮮なヤニ源はそう多くはないのではなかろうか。
松ヤニの新鮮な分泌部が開店すれば、その松に暮らすヤニサシガメ幼虫たちが集まって来るだろう……1匹のヤニサシガメが付着行動に1時間を要すとすれば、集まってきた全ての個体が装備を完了するにはそれなりの時間が必要なはずだ。新鮮な分泌部には順番待ちの集団ができてもよさそうな気がするが……僕はまだそんなシーンには出会えずにいる。

飼育実験では、松ヤニを分泌した枝をいくらでも用意できるだろうが、自然の中では各個体(歩行しか移動方法をもたない幼虫)がヤニ源を補給し続けるのは簡単ではなさそうな気もするのだが……。

 ヤニサシガメの幼虫や成虫を見ると、野外の個体の方が光沢も強く、粘着性もある。この光沢は、ヤニの光沢によるものであり、松の枝葉が古くなったり、枝葉からヤニが出なくなったりすると容器内の飼育個体の光沢は失われ、次第に動きが弱まり餌もとらなくなりやがて死んでしまうのである。このことから、明らかにヤニサシガメにとっては、マツのヤニは、欠くことのできないものであるに違いないことが分かる。ヤニサシガメの体の光沢は、いわばヤニサシガメの健康のバロメーターとも言える。(同P.71)

「松ヤニを充分供給できる飼育個体」より、「ヤニ源確保が難しそうな野外個体」の方が《光沢も強く、粘着性もある》のはなぜだろう?──上記部分を読んでそう思った。

ひょっとすると、ヤニサシガメの体を覆っている粘着物質は【松ヤニ(松の樹液)を原料とする分泌物】で、飼育環境では充分な生成ができなかったのではないか?
たとえば紫外線を浴びることがビタミンD3の生成に必要なように……分泌物質の生成には何らかの条件が必要で、飼育下ではそれ充分満たされず、そのため分泌物の生成が不充分となり、《野外の個体の方が光沢も強く、粘着性もある》ということになるのではないか?──そんな解釈が思い浮かぶ。
【松ヤニ(松の樹液)を原料とする分泌物】と考えると、プチ飼育で脱皮後の個体に粘着コーティングがなかったのも、薄いコーティングなのに粘着性が持続すること等も説明がつきそうな気がするが(「脚で塗りつける」にはヤニ源が必要だが枝からの吸汁でまかなえればヤニ源がなくても樹液は調達できる)……ホントのところはわからない。
(ちなみに僕がプチ飼育した個体は脱皮して9日後、松に戻すまで、粘着性は全く無かったものの、黒い部分には光沢があり、捕食も続け元気だった)

ところで、以前のヤニサシガメ記事(*)を投稿したさい、Ohrwurmさんより日本応用動物昆虫学会大会でヤニサシガメと松脂に関する興味深い講演があったことを教えていただいた。ヤニサシガメの孵化には松脂が必要で、メスには松脂を溜め込む器官があって腹部末端から松脂を吸い込むという驚くべき内容だったそうだ↓。


詳しいことはわからないが、ヤニサシガメと松ヤニには意外に深い関係があるらしい!?
その真相についても興味があるが、それが本当だったとして「どうして、そういうコトになったのか?」という進化のプロセスも気になるところ。
少し前までは、珍しくもない地味~な虫として、あまり気にとめることもなかったヤニサシガメだが、実は謎に満ちた存在だった。そんなわけで、何か謎解きシミュレーションのヒントでもみつからないかと思って松の木をのぞいているのであった……。

ヤニサシガメを探していて「!」と思うウバタマムシ









ということで、松でヤニサシガメ幼虫を探しているときに目に入ると、やけにでかく感じるウバタマムシ。



ウラギンシジミ幼虫など

クズの花穂にウラギンシジミ幼虫~アオダイショウほか



クズの花穂にウラギンシジミ(チョウ)の幼虫がいた。2本(一対)の筒状のツノは、ちょっとカタツムリの触角を思わせる。キレイなので《陸のウミウシ》といった感じもしないではない。別の花穂には、ひとまわり小さい紫色の固体が↓。


実はこのユニークなツノがある方が尻。刺激を与えるとこの筒状角からブラシのようなものを出してパッと広げたかと思うとサッと収納する──ほんの一瞬広がるブラシがまるで線香花火のようで、知らずに初めて見た時は大いに驚いた。


この画像↑は【紫のピカチュウ!?ウラギンシジミ幼虫の線香花火】より再掲載したものだが、いったい、どんな器官がどういう経緯をたどって発達し、こんな奇抜なギミックを完成させたのか……フシギでならない。ちなみに、成虫はこんな蝶↓。


成虫はどこといって変わったところのない普通のチョウなのに……幼虫がユニークすぎる。他にもいないかと探してみると……ウラギンシジミ幼虫がいたクズがからむクサギの木に、こんなのがいた↓。


アオダイショウの生体。このアングル↑からでは顔が見えなかったので……顔がみえるアオダイショウ幼蛇の画像も↓。


アオダイショウは幼蛇と成体で模様や体色が違う──まるで別種のようだ。いったいデザインが変化することにどんな意味があるのだろう?──そう考えて推察してみたことがあった→【幼蛇と成体・模様が異なる理由:アオダイショウ】。
僕が虫見で歩くエリアはだいたい決まっているので、であう生き物の種類も重複することが多い。ということで、やはりこれまで何度もネタにしているヤマトタマムシ↓。


ヤマトタマムシは何といっても美しいので目をひく。いれば撮ってしまう。構造色と呼ばれるメタリックな輝きを放つ翅鞘が「玉虫厨子(たまむしのずし)」の装飾に使われたのは有名な話だ。「コガネムシは金持ちだ 金蔵建てた 家建てた」の歌詞で知られる野口雨情・作詞の童謡『黄金虫(こがねむし)』で歌われている「コガネムシ」はヤマトタマムシだという説がある。僕は「ヤマトマムシの翅鞘で装飾された《玉虫厨子》」を「コガネムシ(ヤマトタマムシ)の《金蔵》」に見立てるという着想を得て雨情はこの歌詞を書いたのではないかと想像している(*)。
やはり擬木にとまっていたニホントビナナフシ成虫♀↓。


ニホントビナナフシも狭山丘陵では常連の昆虫。そのほとんどがメス。九州以北では単為生殖といわれ、僕もこの周辺でオスはいないものだと思っていたので、4年前に初めてオスを見た時は驚いた。そして2013年12月には両性生殖を確認(*)。屋久島以南では両性生殖をする本来は南方系の昆虫のようだが、東京で12月にニホントビナナフシのペアをみつけたときは何ともフシギな気がした。
ニホントビナナフシについては、雌雄モザイク(1つの個体の中にオスとメスの特徴が混在する)を見つけたことも2度ある(*)。
当初はニホントビナナフシの成虫♀は緑色──と思っていたが黄色い個体を見つけて「こんな体色になることもあるのか……」と驚いたことも(*)。
これもなかなかフシギな昆虫だ。