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セミヤドリガの繭と蛹

セミヤドリガの繭と蛹


先日羽化したセミヤドリガ↑。羽化のようすは【セミヤドリガの羽化/幼虫~繭~成虫】で記した。
そして残されたセミヤドリガの繭と抜け殻の蛹↓。


このときの羽化は昼過ぎに行われ、急きょ屋外に持ち出して自然光で撮影することができたが、セミヤドリガの羽化は未明から午前中に行なわれることが多いらしい。羽化に気づくことができても、それが陽が出ていない時間帯であったり、あるいは雨風などで屋外(自然光)で撮影できない可能性もあった。そうした状況に備えて実は室内撮影の準備もしていた。
現在使っているカメラ(OLYMPUS STYLUS TG-2 Tough)にはストロボが内蔵されているのだが、接写ではストロボ発光してキレイに撮れたためしがない(単に使い方が悪いのだろう)……なので、室内でもストロボを使わずに撮影できるよう、100円グッズを利用して簡易撮影セットを用意していた↓。


せっかくなので、この簡易撮影セットを使って、羽化後に残された繭を調べ、撮ってみることに──。

セミヤドリガの繭は綿毛におおわれていて形がよくわからない↑。そこで、綿毛の部分をピンセットでとり除いてみた↓。

毛を刈られたヒツジのようになったセミヤドリガの繭↑。綿毛をのぞいた部分はやや堅めで、しっかりしている。蛹(抜け殻)がのぞいている部分を確かめてみると、穴が開いているわけではなく、蛹は繭端のスリットにしっかり挟まれていた。
《繭に穴を開けて羽化する蛾》↓とは違うようだ。

イラガやギンシャチホコの繭には羽化後、きれいな穴が残されている↑。しかしセミヤドリガの繭にはこうした「穴」がみられず、蛹は「スリット」に挟まれた状態。「穴をあけて出てくる」のではなく「すきまを押し広げて出てくる」スタイルなのだろう。

繭をはがし、1円玉に乗せて撮影↓。

セミヤドリガの繭を見て思い浮かんだのがウスタビガ(蛾)の繭。ウスタビガの繭も出口がスリット状で、左右から押すと開口するガマグチ構造になっている。セミヤドリガの繭も同じような構造なのだろう。

ガマグチ構造を確かめるためにセミヤドリガの繭を左右から押してみた↓。

はたして蛹をしっかりはさんでいた「スリット」が開いた↑。この状態で開口部を下に向けると蛹(抜け殻)はなんなく抜け落ちた。

蛹がとれたあとのセミヤドリガ繭の開口部↑。ガマグチ構造が確認できる。
そして、とりだしたセミヤドリガの蛹(抜け殻)↓。



腹面からみた蛹と成虫の腹面からのショットを比べてみた↓。


触角や脚などが意外にはっきりしていて、チョウやガの蛹というより、甲虫類の蛹っぽい感じがしないでもなかった。
そしてあらためて、蛹をとり出した後のセミヤドリガの繭↓。

左右から加えた外力で、ガマグチ構造のスリットが開いている繭↑。
とりだした蛹(抜け殻)とのツーショット↓。


(ついでに)夏の昆虫

気づけば8月も終わりということで……撮ってはいたものの投稿する機会がなかった夏の昆虫から少し。

目の前に落ちてきたノコギリクワガタのオス↑。大きな個体は大顎の湾曲が美しい。これを見て昔のコルベットスティングレイ(スポーツカー)を連想するのは僕だけだろうか?
実はこのオスが落ちてくる直前に小型♂(大顎の湾曲は小さい)が落ちてきて、2匹つづけて落ちてきたノコギリクワガタにビックリ。よく見るとそばにメスも2匹落ちていた。

頭上の枝にで餌場あらそいでもあって落下してきたのだろうか?
近くに樹液が出ているクヌギがあったので、そこへ移すとすぐに根元の土に潜っていった。
僕が子どもだった頃はノコギリクワガタはカブトムシより頻繁に見られたものだが、今では少なくなり、カブトムシの方が見かける機会が多い。

樹液ポイントでカブトムシを見かけるのは昔と変わらないが、僕が子どもの頃にはいなかったアカボシゴマダラが今ではしっかり常連メンバーに加わっている。
カブトムシといえばオスの《いかついツノ》がトレードマークだが、小さな個体ではこのツノが貧弱なものもいる↓。

以前、カブトムシの《ツノのジレンマ》を指摘する説がニュースなどで報道されていたが、個人的には大いに懐疑的だ。カブトムシのツノの大きさ(≒体の大きさ)は、幼虫時代の栄養状態や育成環境によるところが大きそうな気がする。この場所では樹液が出ている木は多いものの、緑地管理が過剰(?)で落ち葉がすぐに撤去されてしまうため、カブトムシ幼虫の餌となる腐葉土が意外に少ない。それで、こうした小さなオスも出やすいのかもしれない。


セミヤドリガの羽化/幼虫~繭~成虫

セミヤドリガ:幼虫~繭へ


先日、空中にぶら下がっていたセミヤドリガの幼虫↑(*)。セミに外部寄生するかわった蛾の幼虫だ。
《成虫期間が短いといわれるセミだが、セミヤドリガ幼虫に寄生されたセミは養分を奪われることで成熟速度が落ち、そのぶん活動満期(?)が後にずれ込むようなことがあれば……セミヤドリガ幼虫の寄生が結果的にセミを延命させることになり、それはセミヤドリガ幼虫にとっても成長期間を稼げるという意味で都合が良い──そんな仕組みでもあるのではないか?》
などという冗談めいた妄想的想像が展開したのも先日(*)記した通りだが、そんなこともあってにわかにこの虫への関心が高まった。
蛹化のためにセミから離脱したと思われるセミヤドリガ終齢幼虫にでくわしたことで、この機会に繭や成虫の姿も確かめてみたくなった。昆虫の飼育経験はあまり無いので長期間の管理となると不安だが、セミヤドリガは繭を作ると1週間程で羽化するらしい(Wikipedia等情報)という認識でいたので──そのくらいならなんとかなるだろう……そう考えて、先日発見した終齢(5齢)幼虫を持ち帰っていた↓。

小物容器に入れて持ち帰った幼虫は、容器内部を糸or綿毛だらけにし始めていた。セミを離脱した終齢(5齢)幼虫が、ほどなく繭作りを始めたのだろう。

この幼虫が繭づくりを始めた容器のフタ↑ごと、別の容器に収納。
3時間半後にみると、抜けた綿毛に包まれてモゴモゴ繭作りを進めているようだった。うごめく白いかたまりの隙間から幼虫の赤茶色の地肌がのぞく↓。

翌日には《白いかたまり》になり動きは無かった。どうやら綿毛にまみれて繭は完成したらしい↓。

「蛾の繭」というと、カイコやイラガ、ウスタビガ(ヤマカマス)、クスサン(スカシダワラ)など、芸術性を感じさせる造型を思い浮かべてしまうが……、

これらの繭に比べると、セミヤドリガの繭は周囲に抜けた綿毛の束が散乱し、散髪後の床屋の床のようだ。繭の表面にコーティングされた綿毛も方向性が不規則で、とっ散らかった感じがいなめない……なんともザツな作りに見えてしまう。もっとも、セミヤドリガ繭のいびつな形は「繭には見えない」(天敵に虫だと気づかれにくい)という点で生存には有利な気がしないでもないが……。
このセミヤドリガの繭は乾燥防止のために濡らしたティッシュとともに小型のタッパーに入れて保管。蒸れないようにタッパーのフタには孔が開けてある。


セミヤドリガ幼虫:ロウの綿毛の役割り!?


キープしたセミヤドリガの羽化を待つ間に、新たにみつけたセミヤドリガ幼虫@ミンミンゼミ。上のミンミンゼミは1匹、下のミンミンゼミは2匹の幼虫をつけていた。

セミヤドリガの幼虫は5齢(終齢)になると白い蝋状物質の綿毛で背面がおおわれるようになるのだとか。4齢までに比べるとかなり目立つ。終齢(5齢)幼虫は、なぜ白い綿毛を身にまとうようになるのだろう?。ちょっと考えると白い綿毛は目立つため、この幼虫をつけたセミは天敵に見つかりやすくなるだろうから(天敵から狙われやすくなればセミヤドリガも一蓮托生で)リスクが増えそうな気がするが……そんなリスクを凌駕する《必要性》があるのだろうか?
成長した5齢のセミヤドリガ幼虫を見ると、セミの翅と腹の間にはさまれて窮屈そうだ。蝉の翅脈のある翅をおしつけられ、あるいは蝉が飛翔するさい、この翅でたたかれたりこすられたしそうだが、小さかった4齢までと比べればセミの翅による圧力・摩擦・衝撃は(成長して窮屈になったぶん)増加しているはずだ。その摩擦や衝撃を緩和し、やわらかい体を守る役割りをしているのが《白い(蝋状物質による)綿毛のコーティング》なのではないか?──などと想像してみたが、ホントのところはわからない。
5齢(終齢)幼虫の白い綿毛は繭づくりのさいにコーティングに再利用されていたが、繭の輪郭を隠しカムフラージュする役割りもありそうな気がする。
持ちかえったセミヤドリガ幼虫が作った繭を見てそう感じたわけだが……自然の状態ではどう見えるかも確かめておきたい──という気になり、「蝉しぐれ」というより「セミ豪雨」というべきセミが大合唱する林を注意して歩いてみると、それらしきものが見つかった。

持ちかえったセミヤドリガ幼虫が作った繭を見ているから「それっぽい」と気づいくことができたが、ふつうなら目にしても繭には見えない。セミヤドリガの繭を探してみると……葉や木に付着した鳥の白いフンが目にとまり、これがいささかまぎらわしい……ということは、「不規則な形の白いモノ」は鳥糞擬態の効果があるのではないか?
そんなことを考えていると、ちょうど鳥糞にまぎれているかのような繭を発見↓。

白矢印が鳥のフン、黄矢印がセミヤドリガの繭。これ↑を見て、やはり鳥糞擬態の効果はありそうだと感じた。5齢幼虫の綿毛の白さは、目立つぶんリスクを増やしそうだが、繭では逆に隠蔽効果を高める役割りを果たしているといえそうだ。

セミヤドリガの羽化

さて、糸で降下してきたセミヤドリガ幼虫は持ちかえったその日に繭を作った。この繭が何日で羽化するのかについて、当初「1週間程度」(Wikipedia等情報)という認識でいたのだが、その後「約2週間」とする情報もあることを知り、はたして何日で羽化するのか気になっていた。
実際に羽化したのは、繭づくりを始めた日(糸で降下してきたセミヤドリガ幼虫を持ちかえった日)からちょうど14日後だった↓。

羽化は「未明~午前中が多い」とか「早朝」という情報を読んでいたので、昼過ぎに繭に変化がないことを確かめ「きょうも羽化はないか……」とあきらめかけていたのだが……。それでも油断せずに注意していると、白い繭の端に小さな黒っぽい点が出現!? 黒点はしみ出したタールのようにみるみる大きくなってくる──繭の中から(羽化のために)蛹がせり出して来たのだ。あわてて撮影の準備をした。

画面すみの数字は撮影時刻。画面右では蛹がだいぶ露出しているが↑、黒点が見えはじめてから1~2分ほどでここまでせり出してきた。




初めて見るセミヤドリガの成虫。1週間で見られると思っていたのが2週間待たされ──待ちわびていただけに、ちょっとした感慨があった。

触角が♂にありがちな「両櫛歯状」にも見えるが……セミヤドリガは♀が多く、単為生殖できるという。オスなのかメスなのかは、僕にはわからない。
この後セミヤドリガは容器の縁を歩こうとして落ち、ひっくり返ったので、まだ伸びきっていない翅が痛むことを心配し、とっさに指にとまらせた。

翅がのびてくると、(蛾なのに)チョウのように翅を立てた。これは羽化直後と思われる蛾がよく見せる行動のような気がする。

翅をとじた姿勢を10分あまり続けた後、翅を開いた通常の姿勢に戻った↓。

しばらくするとクリーム色の液を排泄した↓。

今回のセミヤドリガの羽化のようすを簡単にまとめると──。
・繭から蛹がせり出しはじめる…………おそらく12:48頃
・蛹の殻がやぶれて頭・胸背面がのぞく……………12:55
・触角が抜け、脚が抜ける……………………………12:56
・体全体が蛹殻から抜ける……………………………12:57
・翅がほぼ伸びきる……………………………………13:02
・開いていた翅を閉じる(立てる)……………………13:03
・閉じていた翅を開く…………………………………13:14
・クリーム色の糞をする………………………………13:24

セミヤドリガ成虫の頭部を腹側から撮影↓。

口吻が退化しているのがわかる。セミヤドリガは成虫になると餌をとらないらしい。
あらためて背面ショット↓。翅が光って見えない角度からみると地味な蛾だが、青っぽく光って見える角度から見ると美しい。


大きさは、直径2cmの1円玉と比べて、こんな感じ↓。



セミヤドリガ幼虫

モコモコ綿毛のハリネズミ!?セミヤドリガ幼虫

蝉しぐれの公園を歩いていると目の前の空間に小さな白い物体が浮いていた。頭上の枝から糸を吐いて降下してきた蛾の幼虫だろうと思って、よけて通り過ぎかけて……「!」と足が止まった。思わず二度見するとセミヤドリガの幼虫だった。
この虫はセミに外部寄生する蛾の幼虫。先日、セミヤドリガ幼虫を腹につけているセミを撮って、ちょうどセミヤドリガについて考えていた時だった。
寄生していた蝉から離れて繭を作る場所を探しているところだったのだろう。セミヤドリガ幼虫をじっくり見たことはなかったので、グッドタイミング。
宙に浮かぶ不安定な状態だと撮りにくいので、てのひらに受けてみる。すると幼虫はロウの綿毛に覆われた背中をみせてダンゴムシのように丸まった。地肌が露出した腹を守る防御の姿勢なのだろうか?

ふと以前飼っていたミミナガハリネズミ(オオミミハリネズミ)が丸まった姿が脳裏に浮かんだ。《モコモコ綿毛の白いハリネズミ》に見えなくもない!?

まるまったセミヤドリガ幼虫と丸まったハリネズミは意外によく似ている!?


画面左が頭部。腹脚&尾脚の円状に並んだ爪(?)もなかなかユニークだ。
寄生するというと何だか恐ろしげなイメージがあるが、こうして見る限りセミヤドリガ幼虫は、なんだか可愛らしささえ感じられないでもない。
この虫に寄生されたセミは、それが原因で死んだり産卵ができなくなったりすることはないらしいが、そのあたりの《ホストに優しい寄生(?)》もちょっと不思議な気がする。

セミヤドリガ幼虫@アブラゼミ


これが先日みつけたセミヤドリガ幼虫をつけたアブラゼミ↑。これが「セミヤドリガの幼虫」だということはすぐ判ったが、この時点では実はあまりテンションは上がらなかった。
きれいな色合いやおもしろい形の昆虫などは、そのルックスだけでカメラを向けたくなるが、「セミヤドリガの幼虫」は今ひとつ見た目がパッとしない……。
ちなみにこれに近いハゴロモヤドリガというのがいて、似たような白いロウにまみれた幼虫がセミのミニチュアのようなハゴロモという虫にについていることは、けっこう前から知っていた。昔、カメレオンを飼っていたときに餌として採取していたハゴロモにしばしば見られたからだ。最初に見た時は、正体不明の不気味な繭に見えたものだが……後にそれがハゴロモヤドリガという蛾の幼虫であることを知った。その関連でセミヤドリガの存在も知ったのではないか……という気もするが、その時期や経緯は記憶があやふやだ。
セミヤドリガ幼虫もハコゴロモヤドリガ幼虫も、見た目の「おもしろさ」を感じなかった……それで、これまであまり気にとめてこなかった……。

ちなみにこれ↓がハゴロモの一種とハゴロモヤドリガ幼虫。

クワの茎にとまって汁を吸うベッコウハゴロモ成虫と、その腹にとまっているハゴロモヤドリガ幼虫。セミヤドリガ幼虫をそのまま小さくしたような感じで良く似ている。


先日、アブラゼミにとりついたセミヤドリガの幼虫に気づいた時も「いちおう撮っておくか」くらいの気持ちでカメラを向けていた。とりあえず何枚か撮ってその場を離れたのだが……この虫のことをあらためて考えてみたら……これが、とても謎めいていることに気がつき、にわかに興味がわいてきた。

まず、《蛾の幼虫なのにセミに寄生する》というのが考えてみれば不思議だ。
ふつう蛾やチョウ(鱗翅目)の幼虫といえば、葉などを食べる草食のイメージがある。
ハワイにはハエを捕らえて食べるシャクガの幼虫がいるというし、ボクトウガの幼虫が肉食だと知った時も驚いた。チョウの仲間ではオオゴマシジミの幼虫はアリを食うらしいし、ゴイシシジミ幼虫は植物につくアブラムシを食うというから、肉食鱗翅目(チョウ目)幼虫がいないわけではないけれど……セミに寄生するというのは、にわかに信じがたい感じがする。

例えば、ゴイシシジミ幼虫が植物につくアブラムシを食う──というのは「あり得そう」な気がする。本来植物を食っていた幼虫が、その植物につくアブラムシを誤食することはあり得るだろうし、そのまま(?)主食がシフトした……なんてことが起こっても、さほど不思議な感じはしない。

ところがセミへの寄生となると、ハードルが高い。植物食だった幼虫が、仮に「食植物とそこにとまったセミを間違える」ようなことがあったとしても……葉を食べていた口でセミの体液を吸うようなことができるものだろうか?
カメムシのように植物の汁を吸うような構造の口をもつ昆虫なら、その口を刺して他の虫の体液を吸うというようなコンバート(?)はできそうな気がする(実際に捕食性カメムシは存在する)が……葉を咀嚼していた幼虫が、他の虫の体液を吸うタイプにシフトするのは容易なことではないだろう。
そう考えると、蛾の幼虫がセミに寄生するなど不自然きわまりない。

いったい、どんなプロセスを経て、セミへの寄生が成立し得たのだろうか?

説明のつきそうなシナリオを考えてみると……この幼虫は元々「葉を食べる」→「植物をかじって汁を吸う」というような形態まで進化していたのではないか? その段階まで進化していたのであれば、その対象が「植物からセミへのシフト」はハードルが下げられる気がする。
本来、幼虫は植物を齧ってその汁を吸っていたのだが……例えば、親(蛾)が食植物でない木に卵を産んでしまうようなことがあって、ホストでない木に産みつけられた卵から孵った幼虫は餌にありつけず飢餓状態になる……そこへやってきたセミにとりついて齧ってみたら体液にありつくことができた……というシナリオ。いささか強引な気もするが、納得しうるつじつま合わせの解釈を探すとそんな可能性しか思い浮かばない。

とりあえず、仮に「セミへの寄生」が成立したとしよう。それでも謎はつきない。
セミヤドリガ幼虫は、いったいどのタイミングでセミに寄生するのだろう?
仮にセミの幼虫時代から寄生するのだとしたら、地中にいるホストにどうやってとりつくのか? また羽化するときに抜け殻と一緒に脱ぎ捨てられないのだろうか?──などの疑問がわく。
後に調べてみたら、セミヤドリガ幼虫はセミの幼虫ではなく成虫に寄生するそうだ。

そうなると、新たな疑問がわいてくる……セミの成虫といえば一般に「はかない命」というイメージで知られている。成虫になってからのセミの活動期間が短いのであれば、成虫に寄生したセミヤドリガはそのわずかな期間で《成虫になるまでに必要な養分》を摂取し急成長しなければならないことになる。セミヤドリガは羽化したあとは餌をとらないそうなので、成虫になってからの繁殖活動を支えるエネルギー源もセミに寄生している間に貯えておかなくてはならない。宿主のセミの方は何年もかけて幼虫時代をすごすのに、これに寄生するセミヤドリガ幼虫のタイムスケジュールはやけにタイトだ……。

短いセミの成虫期間に限って寄生し、必要な成長を遂げるというのは、セミへの対応(寄生)がそうとう効率的でなければ達成できないのではないだろうか?
セミヤドリガがどういう経緯でセミに寄生するようになったのかわからないが、寄生経験が無かった種類がいきなりセミに寄生して、この「超効率化」ができたとは想像しにくい。
そこで思い浮かんだのがハゴロモヤドリガの存在だ。ハゴロモヤドリガという「助走期間」があってセミへの飛躍(対応)が可能になったのではないか?

セミヤドリガを知った時は、そのミニチュア版としてハゴロモヤドリガをイメージし、ハゴロモヤドリガがセミヤドリガの派生種のような認識でいたのだが……歴史としてはハゴロモヤドリガの方が古く、これが基本だったのではないかと思い直した。
セミと違ってハゴロモは幼虫時代から成虫と同じような環境で育っている。これならば、これに寄生する種にとっては成虫限定でははなく、幼虫の時代から寄生できる。実際、ハゴロモヤドリガ幼虫はハゴロモの幼虫にもつくようだ。「セミの成虫期間」よりも長い「ハゴロモの生活期間」で寄生を成立させ、成長を効率化してきた種類の中から、セミの成虫(短期間)に対応できるセミヤドリガが誕生た──と考えると納得しうる気がしないでもない。

それにしても気になるのが、《「セミヤドリガがとりついたセミの寿命」が「セミヤドリガ幼虫の成長に充分な養分と時間」を満たす前に尽きてしまったらどうするのだろう?》──ということだ。とりついたセミが死んでしまえば、他のセミに引っ越すというのは難しかろう。
そうしたリスクを考えると、寿命がつきそうな個体にとりつくようなムダは避けたいところだ。とすれば、セミが羽化する時をねらって取り付くのが合理的だろう……きっとそうしているのだろうと想像した。
ところが、前記アブラゼミと同じ公園でみつけたミンミンゼミにとりついていたセミヤドリガ幼虫を目にして、その想像は崩壊した。

セミヤドリガ幼虫@ミンミンゼミ


これ↑がそのミンミンゼミ。かなり大きさの違うセミヤドリガ幼虫が複数混在していたのだ。成長段階に格差があるということは、幼虫たちがとりついた時期がバラバラだったということを意味している(とそのときは感じた)。こんな状況で「末っ子幼虫」までもが、きちんと成長をとげることができるのだろうか?

調べてみたら、セミの成虫は、野外では1ヶ月ほど生きるらしい。一方セミヤドリガの幼虫は2週間余りで1齢から5齢(終齢)まで育つそうで、だとすれば、少々遅れてとりついた幼虫も成長しきれる可能性はあるということになる。
ということで、セミヤドリガ幼虫がセミにとりつくタイミングについては《羽化直後》説を破棄し、《随時》なのだろうと1度は考え直したのだが……その後さらに疑問に思うことがあって《随時》説にも懐疑的になっていく……。
というのも──、
今回セミヤドリガ幼虫に寄生されたアブラゼミとミンミンゼミの2匹をみつけた公園では、とにかくわんさかセミが見られた。ところが、セミヤドリガ幼虫を付けている個体は他には見つからなかったのだ。セミヤドリガ幼虫が寄生する機会(確率)は、そう高くはないということだ。
そんな中で1匹のセミだけが集中的に何度も低い確率(寄生の機会)を引き当てたというのは考えにくい。

つまり、ミンミンゼミに複数のセミヤドリガ幼虫がついていたのは、「何度もくり返し寄生チャンスが訪れた」というより、「一度の機会に複数個体がとりついた」と考える方が自然だということだ。
セミヤドリガの卵が密集するような箇所があって、たまたまそこへやってきたセミに、複数の幼虫がとりつくことに成功した──と考えれば納得できる。

寄生幼虫の成長格差は、とりついた時期の差ではなく、とりついた後の成長速度の差ではないのか? 幼虫がくいついた部位によって養分供給量に差があるのかもしれない?──同じ時期にとりついた幼虫でも、良いポジションをキープしたものは成長が早く、そうでないものは遅いというようなことがあるのではなかろうか?
ミンミンゼミの画像を見ると左側には2匹の大きな幼虫がついており、右側にはそれより小さな幼虫が3匹見られる。養分を多くの幼虫が奪い合う側で、幼虫の成長に遅れが出ていると見ることもできる。
同じ時期に取り付きながら、そうしたことで生じる成長の格差があり、これを見て別々の時期にとりついたものだと判断(誤認?)してしまったのではないかと思い直した。

しかし、複数とりついたことでセミヤドリガ幼虫の成長に格差や遅れが生じるとすれば、セミの寿命の間に充分成長できるのか、ちょっと心配になる。
そこでふと──「セミヤドリガ幼虫が寄生したことでホストのセミが延命するなんてコトでもあれば都合が良くて面白いのだが……」などと思った。
冗談めいた発想だが……ちょっと頭の体操で、考えてみた。

セミは成虫になってからも木の汁を吸っている──これは「成虫になってからも必要な成長のための養分補給」なのではないだろうか? セミは羽化後、性成熟するのに日数が必要らしい。
長い幼虫生活を経て成虫になったセミにとって最も大事なことは繁殖活動だろう。この繁殖活動が完了することで寿命は閉じる──そういうプログラムになっているのだと思う。

つまり「成虫になってからも必要な成長のための養分補給」を充分行ない繁殖活動に充分な成長を遂げることが成長の終着点と考えれば……セミ(成虫)になってからの成長に必要な栄養分をセミヤドリガ幼虫の寄生によって横取りされれば、そのぶんセミ成虫の成長には遅れが出ることになる。寄生されていないセミよりも、性成熟等の準備が整うまでによけい時間がかかることになれば、結果的にセミヤドリガ幼虫の寄生によってセミの「成長の終着点」はズレ込み──すなわち延命されることになるのではないか!?

宿主であるセミの寿命が延びれば、そのぶん成長時間が稼げることになりセミヤドリガ幼虫にとっても都合がよい。
昆虫界に寄生は多い。宿主を食い尽して成長するのが合理的なような気がしていたので、宿主を殺さないセミヤドリガの寄生スタイルを不思議に感じていたが、もしかするとセミの延命によって自分たちの成長時間を稼ぐという、そんな戦略が成立しているからではないか……などと考えてみたりもした。

もちろんこれは例によって、根拠の無いド素人の妄想的想像。セミヤドリガ幼虫を見てあれこれ思い感じたことを記してみたしだい。
昆虫には見た目のキャッチで好奇心を覚えるものもいるが、それとはまた別に生態などで想像力を刺激するものがいる……ということで。